インドネシアは、人口約2.8億人を抱える東南アジア最大規模の消費市場です。経済成長とともに若年層の購買力が高まり、スマートフォンとSNSを活用した情報収集・購買行動が一般化しています。

また、親日的な文化背景や日本ブランドへの高い関心も、進出企業にとって大きな追い風となっています。本記事では、インドネシア市場の特性と消費者傾向を踏まえた上で、オンライン・オフライン両面から効果的なプロモーション手法とその実践ポイントについて詳しく解説します。

インドネシアのマーケティング市場

人口約2.8億人の巨大市場

インドネシアの人口は2025年時点で約2.8億人で、2030年には2.9億人を超えると予測されています。この巨大な市場において、画一的なマーケティングを実施しても成功は難しいでしょう。市場を細分化して、自社の見込み客がどのようなセグメントに多くいるのかを考える必要があります。

加えて、国土面積が日本の約5倍あるインドネシアでは、都市部と地方部でインフラの整備状況や最低賃金、生活水準などに差があり、購買力や商品に対するニーズも異なります。たとえばジャカルタやスラバヤなどの大都市ではトレンドに敏感で新商品への関心が高い一方、地方では価格重視の傾向が強くなっています。したがって、エリア特性を把握した上でのセグメント戦略が鍵となります。

• 参考：BPS「Analisis Profil Penduduk Indonesia P.4」

若年層中心、SNS・スマホ利用が活発

インドネシアは日本と違い、若年人口の比率が高い国です。2020年の国勢調査によると、インドネシアのミレニアル世代は6,938万人で総人口比25.9%、Z世代は7,549万人で総人口比27.9％となっています。彼らはスマホを活用してInstagramやTikTokなどのSNSから情報収集するのが一般的なため、そのユーザー行動に合わせたプロモーションが重要です。

若年層は口コミやレビューに対して敏感に反応します。家族や身近な友人からの口コミに加え、SNS上のコメントなども購買の判断基準とする傾向があります。そのため、ユーザー参加型キャンペーンやUGC（ユーザー生成コンテンツ）を活用することも、若年層のエンゲージメントを高めるうえで有効な戦略です。

• 参考：Kompas.com「Generasi Z dan Milenial Dominasi Jumlah Penduduk Indonesia」

日本ブランドやアニメ文化への親近感

インドネシアは、日本に対してポジティブなイメージを持つ人が多いことで知られています。たとえば、『鬼滅の刃』、『呪術廻戦』、『SPY×FAMILY』などのアニメが、インドネシアでも多くの人に見られています。

日本の化粧品、食品、家電といった製品も、「高品質」「信頼できる」というイメージで受け入れられています。こうした文化的好意を活用し、アニメキャラとのコラボや日本らしさを演出した商品パッケージ、販売イベントを通じて、感情的な訴求を行うことが可能です。

オンラインプロモーション

オンライン施策は、スマホ中心のライフスタイルを送るインドネシアの若者に対し、特に有効です。コスト効率も高く、ターゲットごとにパーソナライズされた広告配信が可能です。また、リアルタイムでの効果測定やPDCAを素早く回すことができるため、柔軟な戦略調整も容易です。

特に動画コンテンツやライブ配信は、ユーザーのエンゲージメントを高める手段として急速に浸透しています。

Instagram、TikTok、YouTubeなどのSNS活用

インドネシア人はブログやWebメディアなどの文字媒体よりも、ショート動画を中心とした動画媒体を好んで閲覧する傾向があります。その中でも、InstagramやTikTokは特に人気が高く、オンライン上でプロモーションを行うのであれば、優先度が高い媒体です。

イギリスのメディア企業We Are Socialのレポート（2022年）によると、インドネシア人のインターネット利用時間は1日あたり8時間52分で、そのうちSNSに割く時間が最も長く、3時間17分とされています。これは、日本人の約3.8倍にあたります。

各SNSには独自のアルゴリズムやカルチャーがあるため、コンテンツは媒体に最適化した形で制作することが重要です。ハッシュタグやチャレンジ機能を活用した参加型施策も、高い拡散力を持ちます。

• 参考：We Are Social「DIGITAL 2022 Indonesia P.22」

インフルエンサーとの連携

インドネシア人はインフルエンサーから良くも悪くも強い影響を受けやすいため、SNSとインフルエンサーの組み合わせは非常に強力です。

インフルエンサーの選定では、フォロワー数だけでなく、フォロワーのエンゲージメント率やブランド親和性を確認することが大切です。メガインフルエンサーにこだわらず、特定の地域や趣味に強いマイクロインフルエンサーを起用することで、より信頼感のある訴求が可能になります。

ECプラットフォーム（Shopee、Tokopedia）上のプロモーション

ECサイトを訪問するユーザーの多くは、「何かを購入する」という強い動機でWebサイトやアプリを開きます。

ShopeeやTokopediaなどインドネシアの大手ECプラットフォームでは、このような見込み客に対し、EC内検索広告を打てます。検索広告は、ユーザーの検索キーワードに連動して広告を表示させられるため、非常に効果的なプロモーション施策となります。

また、これらのプラットフォームでは「ライブコマース」も人気で、商品の使用感を実演しながらリアルタイムで購入を促す方法も注目されています。タイムセールや送料無料キャンペーンなどとの併用も効果的です。

オフラインプロモーション

オンライン施策が進化する一方で、インドネシアではリアルな体験や人との交流を重視する文化も根強く残っています。そのため、モール内イベントや地域コミュニティとの連携を通じたオフライン施策も、ブランド認知や信頼構築に大きく寄与します。

ポップアップ・イベント出展

インドネシアのショッピングモールなど商業施設では、週末になるとよくイベントが実施されます。たとえば、1つの企業が単独で開催するポップアップイベントや、商業施設が主催する「○○フェア」「○○バザール」のような多くの企業・ブランドが参加するイベントがあります。

このような期間限定開催のイベントでは、現地のトレンドや季節性を反映させた演出が重要です。SNSと連動した撮影スポットや限定グッズのプレゼント、プロモーション価格で提供される新商品や、特別なセット販売品を用意することで、自然な口コミ拡散にも繋がり、効率的なオフラインプロモーションになります。

特に単独で開催するイベントの場合、開催期間中に企業や開催地の公式SNSで情報発信することに加え、地域ごとの週末のイベントを紹介する人気SNSアカウントなどから、事前に情報を共有することも大切です。

ガチャガチャやオリジナルグッズによる店舗集客

インドネシアでもガチャガチャの人気が高まりつつあり、ショッピングモール内やイベントなどで見かけるようになりました。ガチャガチャが楽しめる場所はまだ限られているため、特に子どもや若者層を惹きつける、魅力的なアクティビティの一つになります。

ガチャガチャやオリジナルグッズの作成にあたっては、人気キャラクターや季節限定デザインを取り入れたグッズを用意することで、幅広い年齢層への訴求が可能になります。コレクション欲を刺激する仕掛けができれば、再来店やSNSでの拡散を促進することができます。

モールでの体験型マーケティング

ショッピングモール内のイベントにインフルエンサーを招き、新商品の魅力やメリットなどを説明しながら、イベントの後半では実際に参加者に使ってもらうような、体験型のマーケティングも非常に有効なプロモーションです。

このような体験を通じて、製品の使用感や効果をリアルに伝えることができ、SNS上での話題化にもつながります。体験後に割引クーポンを配布するなど、最後の一押しをすることで、購買までの導線を強化できます。

場合によっては、インフルエンサーのトークショーやファンとの交流イベント、コンペティション企画を用意してもよいでしょう。

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プロモーション実施のポイント

文化や消費者習慣を理解した上での企画

インドネシアは宗教、民族、言語が多様であり、地域によって生活習慣や価値観が異なります。イスラム文化を意識した表現や商品の見せ方が必要な場面も多く、日本と同じ感覚でプロモーションを行うと反応が得られにくいこともあります。

加えて、ラマダンや独立記念日などの国民的行事、あるいは地方ごとの祝祭など、年間のイベントカレンダーに沿ったタイミングでプロモーションを打つことで、自然と注目を集めやすくなります。宗教上の配慮や言語ローカライズも、信頼獲得の鍵です。

オンライン・オフライン両軸での展開、現地パートナーとの連携

インドネシアではSNS（特にInstagram、TikTok、YouTube）の影響力が非常に大きく、オンライン施策は欠かせません。一方で、都市部のショッピングモールやレジャー施設、地域イベントなどオフラインでの接点も有効です。どちらか一方に偏らず、デジタルとリアルを組み合わせた複合的なプロモーションが効果的です。

さらに、現地文化や消費者の好みに精通したパートナー企業との連携により、より実効性の高いマーケティング活動が可能になります。特に現地のインフルエンサーや制作会社の活用は、自然なブランド訴求につながります。

日本文化や日本製品への関心に応える

上述したように、インドネシアでは日本文化や日本製品への関心が高く、ポジティブな印象を持つ人が多くなっています。たとえば、アニメカフェ（イベント）などのコラボレーションイベントを開くと、多くの来場者を惹きつけます。

日本の「おもてなし」精神や高品質な商品づくりへの信頼も強く、こうしたブランドストーリーをしっかり伝えることで差別化につながります。日本企業としてのアイデンティティを前面に出し、文化的共感を促す戦略が有効です。

まとめ

インドネシア市場で成功するためには、単にプロモーション施策を導入するだけではなく、現地の文化的背景や生活習慣、消費者心理を深く理解することが不可欠です。

オンラインとオフラインの施策をバランスよく組み合わせ、現地パートナーと連携しながら柔軟に戦略を調整していくことで、持続的なブランド認知と売上向上が期待できます。日本文化や品質への信頼を追い風に、ターゲット層に響く「ローカライズされた価値提案」を行うことが鍵となるでしょう。

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