インドネシアの出生率の推移と近年の出生率低下の背景

公開
2025/03/19
更新
2025/03/22
この記事は約8分54秒で読めます。

インドネシアの出生率は長年にわたり低下傾向にあります。2024年の合計特殊出生率(TFR)は2.0で、2050年には1.95まで下がると予想されています。ただ、日本の合計特殊出生率は1.26 人なので、日本と比較すると良好な数字であることは間違いないです。

2050年には1.95まで下がると予想されていても、まだ25年先の話であるため、現時点でいくらでも手の打ちようがあります。人口約3億人の国で、人口ボーナスが2040年近くまで続き、しかも2050年になっても合計特殊出生率が1.95を維持しているというのは、国としての大きなポテンシャルを感じざるをえません。

女性の初婚年齢の変化や妊娠・出産年齢の変化などの要因がインドネシアの出生率の低下に影響を与えていますが、経済成長を遂げていく国には共通の現象です。低下し続ける出生率ではありますが、「人口」という切り口で見た際に、やはりインドネシアは東南アジアで最も魅力的な国だと言えるでしょう。

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インドネシアの出生率の推移と予測

1971年の調査で5.6だったインドネシアの合計特殊出生率(TFR)は低下を続け、2024年にはついに2.0となりました。

インドネシア中央統計庁(BPS)は、出生率は多少の増減を繰り返しながらもこのまま下がり続け、2050年に1.95になると予測しています。これはインドネシアにおける人口置換水準(ある死亡率の水準の下で、人口が長期的に増えも減りもしない出生の水準)に近く、2050年を過ぎると人口がほぼ増えない時期に突入することを意味します。

インドネシアの出生率の推移

  • 1971年 5.61
  • 1980年 4.68
  • 1990年 3.1
  • 1995年 2.8
  • 2000年 2.54
  • 2005年 2.43
  • 2010年 2.45
  • 2015年 2.34
  • 2020年 2.19
  • 2025年 2.11(以下予測)
  • 2030年 2.06
  • 2035年 2.02
  • 2040年 1.99
  • 2045年 1.97
  • 2050年 1.95

※1971年と1980年は10年ごとの国勢調査、1990年以降は毎年の調査を参照。

参考:
databoks「Angka Kelahiran Indonesia Turun 30% dalam Tiga Dekade」
GoodStats「Tren Tingkat Kelahiran di Dunia, Indonesia Peringkat 5 di ASEAN」
BPS
「Angka Kelahiran Total / Total Fertility Rate (TFR) Menurut Provinsi, 1971-2020」
「Proyeksi Penduduk Indonesia 2020-2050 Hasil Sensus Penduduk 2020|P.16」

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インドネシアの人口の推移

インドネシアの人口の推移

インドネシアの人口の推移

インドネシアは世界で4番目に人口が多い国です。BPSによると、2024年の人口は2億8,160万人で、1950年と比較すると、約3.5倍になっています。BPSは人口増加は2065年頃まで続き、2050年には3億2,893万人に達すると予測しています。

インドネシアの人口の推移

  • 1950年 7,954万人             
  • 1960年 9,393万人
  • 1971年 1億1,920万人
  • 1990年 1億7,932万人
  • 2000年 2億346万人
  • 2010年 2億3,852万人
  • 2015年 2億5,559万人
  • 2020年 2億7,020万人
  • 2024年 2億8,160万人

参考:
BPS「Jumlah Penduduk Pertengahan Tahun (Ribu Jiwa), 2022-2024」             
Harian Indonesia「Data Rilisan Jumlah Penduduk Indonesia,Serta Agama yang Dianutnya, Per 31 Desember 2021」
Studi Ilmu Indonesia「Dinamika Penduduk Indonesia」
国立社会保障・人口問題研究所「表1-16 人口の多い国:1950,2000,2050年」
DataIndonesia.id「BPS: Penduduk Indonesia Diproyeksi Capai 328,93 Juta pada 2050」

インドネシアの人口増加率の推移

インドネシアの人口増加率の推移

一方で、インドネシアの人口増加率は低下を続けています。こちらのデータは、BPSが10年ごとに行っている国勢調査のものです。

インドネシアの人口増加率の推移

  • 1971-1980年 2.31%
  • 1980-1990年 1.98%
  • 1990-2000年 1.49%
  • 2000-2010年 1.49%
  • 2010-2020年 1.25%
  • 2020-2025年 1.1%(以下予測)
  • 2035-2040年 0.6%
  • 2045-2050年 0.3%

なお、2020年以降も人口増加率は年々低下しており、2020年から2024年にかけての人口増加率は1.1%になっています。BPSは将来の人口増加率について、2020~2025年が1.1%、2035~2040年が0.6%、2045~2050年が0.3%になると予測しています。

参考:
BPS
「Rata-rata Laju Pertumbuhan Penduduk menurut Provinsi, 1971 – 2024」
「Laju Pertumbuhan Penduduk (Persen), 2024」
DataIndonesia.id「BPS: Penduduk Indonesia Diproyeksi Capai 328,93 Juta pada 2050」

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インドネシアの出生率低下の背景

インドネシアの出生率の低下に影響を与えている事柄を、データとともに紹介します。

女性の初婚年齢の変化

インドネシアにおける平均初婚年齢は徐々に上がっています。BPSによると、2024年のインドネシア人の平均初婚年齢は21.8歳でした。男性が23.9歳、女性が19.9歳です。

平均初婚年齢
2021年20.7歳
2022年21.0歳
2023年21.5歳
2024年21.8歳

インドネシアでは以前、1974年に制定された法律により、結婚できる年齢の下限が、男性が19歳、女性が16歳となっていました。それが2019年の法改正により、男女ともに原則19歳とされています。初婚年齢の上昇にはこの法改正に加え、特に女性の高学歴者が増えたことや、キャリア形成の機会が増えたことも影響しています。

参考:
BPS「Rata-rata Umur Perkawinan Pertama Menurut Jenis Kelamin (Tahun), 2023-2024」
Databoks「10 Provinsi dengan Rata-rata Usia Kawin Perempuan Terendah pada 2022」

BPSが2024年に若者(16~30歳)を対象に実施した調査によると、初婚年齢は学歴が高いほど高くなる傾向があります。例えば、高等教育を修了している層では平均初婚年齢が23.8歳ですが、小学校卒業の層では19.6歳です。また平均初婚年齢は、農村部(20.7歳)よりも都市部(21.8歳)の方が若干高くなっています。

インドネシアの国家人口・家族計画庁は理想的な結婚年齢について、女性が21歳、男性が25歳としています。これには20歳以下、とりわけ法的には原則禁止である18歳以下の児童婚や、若すぎる出産を防ぎたいという意図があります。

参考:
BPS「Statistik Pemuda Indonesia 2024|P.274」
CNA「Tren menikah terus menurun, 69,75% pemuda Indonesia masih melajang, apa penyebabnya?」

妊娠・出産年齢の変化

BPSによると、2020年から2023年にかけて、女性が最初に妊娠した年齢は平均で21.6を維持し、2024年に21.7とわずかに上昇しました。

学歴や居住地との関係は初婚年齢と同様で、高学歴なほど、また、都市部在住の人ほど、最初の妊娠の年齢が高くなっています。

例えば2024年のデータでは、高等教育修了者は25歳、小学校卒業者は20.2歳でした。また都市部の居住者は22.2歳、農村部では21歳でした。さらに、高所得者ほど最初の妊娠の年齢が高くなる傾向も続いています。

なお日本の場合は、第一子出産の平均年齢が31歳です(2023年)。

参考:
BPS「Profil Kesehatan Ibu dan Anak 2024|P.267」「Profil Kesehatan Ibu dan Anak 2022|P.200」
生命保険文化センター「少子化が進んでいるのはなぜ?」

年齢別出生率

2020年の国勢調査に基づくインドネシアの年齢別出生率(Age Specific Fertility Rate/ASFR)を紹介します。これをみると、25~29歳で出産する人がもっとも多く、次いで30~34歳、20~24歳となっていることがわかります。

最初の妊娠の平均年齢が22歳であることと合計特殊出生率が「2」を考慮すると、25歳~34歳は第二子、第三子の出産の人が多いのでしょう。

年代年齢別出生率(ASFR)
15-1926.6
20-2497.9
25-29130.6
30-34101.4
35-3958.1
40-4417.9
45-492.8

ここまでのデータから、インドネシア全体では初婚年齢が上がり、出産年齢が上がり、出生率が低下している一方で、国家人口・家族計画庁がかかげる理想的な結婚年齢「女性21歳、男性25歳」が必ずしも達成されていないことがわかります。特に農村部では中卒程度の学歴の人も珍しくなく、特に女性はその後、就職も進学もせずに家業を手伝うなどして、早々に結婚してしまうケースも少なくありません。

若者、特に女性がどのように人生設計をし、いつどのようなライフイベントを迎えるかは、地域や経済力によってかなり差があるといえます。

※年齢別出生率(ASFR)

ASFRは、特定の年齢層の女性1,000人あたりの年間出生数を示す指標です。例えば20~24歳の出生率が97.9の場合、この年齢層の女性1000人あたり97.9人が過去1年間に出産したことを表します。ASFRは合計特殊出生率の算出に用いられるほか、出産する人の多い年齢層を把握するのに役立ちます。

参考:BPS「Angka Kelahiran Hasil Long Form SP2020 Menurut Kelompok Umur Ibu (Age Spesific Fertility Rate/ASFR) dan Provinsi/Kabupaten/Kota, 2020」


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出生率「2」のインドネシアのいま

賑わうプレイグラウンド

賑わうインドネシアのプレイグラウンド

子どもが多いインドネシアでは今、子ども向けの公園や遊園地が続々とオープンしています。ショッピングモールにはほぼ必ずプレイグラウンドがあり、子どもの遊び場を併設するカフェやレストラン、ホテルなども人気があります。

また、こちらの動画で紹介されているような、屋外のプレイグランドも増えています。中には昔懐かしい市場の雰囲気を残すものもありますが、モダンでフォトジェニックな新しいスポットも続々と登場しています。子どもの遊び場情報を共有するSNSアカウントもたくさんあります。

なおインドネシアの15歳未満の人口は、総人口の23.9%を占めます(2023年)。これに対し日本は11.3%ということです(2024年)。

参考:
BPS「Jumlah Penduduk Menurut Kelompok Umur dan Jenis Kelamin, 2023」
日本経済新聞「子どもの数、最少の1401万人 総人口比率は最低の11.3%」

独身志向の高まり

インドネシアの若者たちの独身志向の高まり

動画の前半はコンサート会場でしょうか、「結婚しなくても問題ない、死ぬまでファンガール(熱狂的なファンの女の子)でいればいい」の文字とともに仲間とはしゃいでいる女性の様子が映っています。一方、後半の独りぼっちの映像には、「パートナー選びで失敗するのが怖い」と心の声が語られています。

こちらの女性は韓国の俳優のファンで、普段は買い物の様子やグッズを開封する様子をTikTokで共有しています。インドネシアのSNSでは彼女のように、趣味に打ち込みひとりを楽しむ様子を共有して人気者になる人も少なくありません。

一昔前であれば、10代で「結婚しなくてもいい」などと発言しようものなら大人たちに驚かれ、変な考えはよせとたしなめられたでしょう。若者たちは、たとえ結婚する気がなくても「『結婚しない』と言ってはいけない、『まだ結婚しない』と言いなさい」と忠告されたものです。

動画の女性は17歳の誕生日を迎えたばかりです。結婚をするかどうか決めるには早すぎますが、もしかするとすでに、親や親戚からのプレッシャーを受けているのかもしれません。

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増える人口、減る出生率、社会構造の変化に注目

インドネシアの出生率は徐々に低下しており、人口増加率も緩やかになっています。要因としては、経済発展とともに人々の経済力や価値観が変化してきたことが挙げられます。

出生率の低下は長期的に経済や社会構造に影響を与えるため、政府や企業は新たな施策を講じる必要があるでしょう。しばらくは人口ボーナスの恩恵にあずかりつつ、長期的にはどのような対策が求められるのかを、併せて考えていくことが重要です。

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インドネシアの出生率はいくつですか。

1971年の調査で5.6だったインドネシアの合計特殊出生率(TFR)は、2024年にはついに2.0となりました。東南アジアの国々の中では真ん中に位置します。

インドネシアの人口は何人ですか。

2024年の人口は2億8,160万人で、1950年と比較すると、約3.5倍になっています。BPSは人口増加は2065年頃まで続き、2050年には3億2,893万人に達すると予測しています。

インドネシアの人口増加率はどのように推移していますか。

インドネシアの人口増加率は低下しています。1970年代は2%を超えていましたが徐々に下がり、1990年~2000年代には1.49%、2020年~2025年には1.1%になっています。

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