インドネシアの中小零細事業者を支援するモバイルアプリ

公開
2025/12/30
更新
2026/06/20
この記事は約6分10秒で読めます。

インドネシアでは、しばしば「UMKM(Usaha Mikro, Kecil, dan Menengah :中小零細事業所/企業)が経済を支えている」と言われます。

そのため、インドネシアの政府、地方自治体、ECプラットフォームやその他のIT系スタートアップ企業などが、デジタル化を含む様々なアプローチで中小零細事業所の発展を支援しています。

その中から今回は「モバイルアプリ」に焦点を当て、2月6日のRepublika.co.id「40 Ribu UMKM di Indonesia Telah Manfaatkan Majoo untuk Menjalankan Usaha(インドネシアの4万の中小零細事業所がビジネスにmajooを活用)」を参考に、財務アプリmajooについてご紹介すると共に、他の中小零細事業所向けの人気アプリもご紹介します。

インドネシアの中小零細事業所は6,400万

4.3人に1人が中小零細事業者

インドネシアの協同組合中小企業省によると、インドネシアの中小零細事業所の数は約6,400万で、全ビジネスユニットの99%に達しています。またこれらの事業所は国のGDPの60.5%と、96.9%の雇用機会を創出しています。

インドネシアにある6,400万の中小零細事業所の大部分は、伝統的な屋台やwarung(ワルン)と呼ばれる小さな売店など、家族や個人が経営する小規模なビジネスが主流でした。

一方で昨今は、ECプラットフォームやSNSのショップ機能の登場によって多額の資本金や大きなスペースがなくてもビジネスを始めやすくなったこともあり、屋台やwarungの形態にとらわれず、新しいスタイルの事業で起業する人も増えています。

中小零細事業者のニーズ

インドネシアにおける中小零細事業者たちは、製品開発以外にも、営業、財務、人事労務など、事業規模が小さいゆえに自身だけでは解決が難しい、様々な課題に直面しています。

そこで最近は、こうした事業者たちのニーズを受け止めて解決するための、テクノロジーを駆使したサービスが人気となっています。

特にモバイルアプリは、個人や家族経営で人手が足りない、あるいはITテクノロジーに精通している人がいないと悩んでいる中小零細事業者たちが利用しやすくなっています。

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インドネシアの4万の中小零細事業所がビジネスにmajooを活用

このような状況下で、大躍進を遂げているのが中小零細事業所向け財務アプリmajooです。majooは2022年、600以上の都市で4万以上の中小零細事業所のビジネスのデジタル化を支援しました。

majooとは

インドネシア語でmajooは「マジュー(本来の表記はmaju)」と読み、「前進する」という意味があります。

2019年に設立されたmajoo Indonesiaは、「フィンテックのイノベーションで中小零細事業所を進化させ、インドネシアのデジタル経済の成長を促進する」をモットーに、中小零細事業者を中心とした起業家を支援するモバイルアプリmajooを提供しています。アプリの利用にかかる費用は、月額129,000ルピア(約1,142円)からとなっています。

ルピア円は、2月22日現在のレート(1ルピア0.0089円)で換算しています。

このアプリには、下記のような機能が含まれています。

オンラインストア設立:

独自ドメインで簡単にオンラインストアを開設でき、ホームバナー、製品カタログ、お問い合わせフォーム、店舗の地図、プロモーション、WhatsAppチャットなど様々な機能をmajooのアプリから直接利用できる。

オンライン決済機能

電子マネー、デビットカード、クレジットカード、口座振替など各種の支払い方法に対応。

勤怠管理・従業員管理機能

majooへの出資者であるBRI銀行と共同し、給与計算機能、給与明細書、銀行口座と統合した給与支払いツールを備えた給与管理機能を今年実装予定。

その他の機能

  • 在庫管理機能
  • 財務・会計機能
  • CRM機能(顧客管理システム)
  • 業績分析機能

majooは、これらの実用的な機能により、起業家はビジネス効率を最大30%向上させることができるとしています。

majooの業績とこれから

majoo Indonesiaの創設者兼CEOであるAdi Wahyu Rahadi氏によると、majooを通した取引は、2022年には1か月あたり2兆ルピアとなり、前年と比較して80%増加しました。

同氏は、majooは中小零細事業のビジネスの効率化に役立っただけでなく、コロナ禍で行われていた社会的行動制限に太刀打ちできる柔軟性を提供できたと評価しました。

2020年から続いていたインドネシア政府による行動制限は、2022年末に解除されました。

コロナ禍やインフレなどの影響で苦戦を強いられる企業が多い中、majooが好業績を残していることは、中小零細事業所のデジタル化やビジネスの効率化のニーズが急増していることの表れです。

インドネシアでは、コロナ禍において、仕事、交流、買い物、趣味など人々の生活と日々のアクティビティーの場の多くがオンラインにシフトしました。そのことが中小零細事業所のデジタル化を加速させたのです。

majooは4万の中小零細事業所をカバーしているものの、インドネシアに6,400万を超える中小企業があることを考えると、まだまだ伸びる余地があります。

Adi氏は「私たちのミッションは、事業所だけでなく、事業所のインフォーマルワーカーも「デジタル化」し、包括的な金融サービスを提供することです。これにより、majooが去年の3倍の成長を遂げ、より広い範囲をカバーできるようになるでしょう。」と述べました。

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インドネシアの中小零細事業所を支援するアプリケーション

インドネシアにはmajoo以外にも、中小零細事業所を支援する様々なアプリがあります。以下ではそのうち2つをご紹介します。

Warung Pintar

「Warung(ワルン)」はインドネシア語で「屋台」、「Pintar(ピンタル)」は「賢い、利口」という意味で、「Warung Pintar」はIT技術を導入した「スマート屋台」あるいは「スマート売店」を意味しています。現在、Warung Pintarには約50万の事業所が参加しています。

Warung Pintarは、屋台や食料品店の在庫管理のためのアプリです。ショップのオーナーは、様々な販売者から安い価格で多種類の商品を、仲介者なし、送料無料で購入できます。他にも財務管理など様々な機能が付いています。

また、Warung Pintarからは、他にも以下のようなアプリが提供されています。

  • Grosir Pintar:
    卸売業者の新規顧客開拓を支援し、小売業者と繋げることを目的としたアプリ。
  • Warung Pintar Distribution:
    倉庫管理システムと在庫に関する様々なソリューションを提供。ユーザーは、リアルタイムダッシュボード、需要予測など、1つのアプリケーションで流通プロセス全体を監視することが可能。 
  • Bizzy Connect:ブランドや販売代理店が屋台などのオーナーにアプローチするためのアプリ。マーケティング支援も受けられる。

Buku Warung

Buku Warung(Bukuは本、ノート、銀行通帳などを意味する)は、「簡単、無料、安全」がキャッチフレーズの財務アプリです。このアプリを使うと、収入、費用、買掛金、製品在庫などすべての記録をアプリ1つにまとめることができます。

デジタル決済、取引の記録、財務報告書の自動作成、借金の記録と顧客への自動支払い督促、在庫管理と在庫僅少時の通知など多様な機能が備わっており、Google Playストアで500万人以上のユーザーにダウンロードされています。

この他、大手ECプラットフォームやオンラインフードデリバリーサービスなども、中小零細事業所がオンラインビジネスを始めたり継続したりしやすくするため、システム、機能、企画など様々な形で支援しています。

カジュアルにインドネシア進出を試した企業様の事例

インドネシア進出は、調べれば調べるほど、そのハードルの高さに頭を抱える方が少なくありませんが、もっとカジュアルに進出する方法もあります。

  • 月額5万円でインドネシア人をフルタイムで雇用してリサーチチームを作り、バンドンでのLPKの調査や大学との連携可能性を確認。事業化の見通しが立った段階で正式な進出を決定した。
  • 営業経験のあるインドネシア人を2名チームで雇用し、スポーツジムや病院、リハビリ施設などへの営業活動を実施。販売代理店候補の開拓や市場ニーズを調査し、調査後に販売体制を構築した。
  • 飲食業界経験者を3名チームで雇用し、現地食材の調達先や厨房設備、物流体制を調査。あわせてフランチャイズやライセンス展開の可能性も検証し、最適な進出方法を決定した。

上記のように、法人を設立しなくてもカジュアルにインドネシアに進出している企業様はいます。インドネシア向けのビジネスとして、貴社でもそれが可能です。

インドネシアの中小零細事業所の代表「warung(ワルン)」とは

補足として、ご紹介したアプリの名称にもなっている「warung」とは何かを簡単にご紹介します。

上述の通り、warungとは小さな食堂や食料品店などの売店を指します。その多くは個人または家族経営で、自宅の通りに面した部分を店舗として使用したり、家の前や借りたスペースに屋台を設営したりして開業しています。

売店の場合、主な商品は飲料水やガスなどの生活必需品や日用品、たばこ、スナックなどで、中には生鮮品や玩具、文房具などを取り扱うところや、簡単な調理スペースを併設して揚げ物やドリンクを売っているところもあります。

warungのバリエーションとしては、インスタント飲料やインスタント麺、トーストなどの軽食を提供する喫茶店「ワルコプ (warkop) 」や、ご飯と作り置きのおかずを提供する食堂「ワルン・ナシ (warung nasi) 」などがあります。

このようなwarungは都市部でも農村部でも非常に一般的です。インドネシア政府が海外の小規模小売店の進出に高い障壁を設けているのには、warungに代表される小規模事業所を保護するという目的があります。

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インドネシアの中小零細事業所と支援のこれから

「シャッター街」という言葉に象徴される日本の状況を思うと、インドネシアのwarungを始めとする中小零細事業所は、非常に頑張っているという印象を受けます。

コロナ禍、大通り沿いやショッピングモール内で多くの飲食店が閉店していくのを横目に、家賃を支払う必要のない自宅に併設した売店や、イートインスペースを持たない屋台などは、普段通りに営業しているようにさえ見えました。

とはいえ、インドネシアでも近代的なショッピングモール、スーパー、コンビニは増えてきています。加えて人々の所得も上がってきており、小路のwarungがこの先もずっと今のままとも思えません。

インドネシアの中小零細事業所と、政府や企業の多様な支援策に注目することは、インドネシアの経済界やビジネス界を見て行く上で、欠かせない視点の一つと言えるでしょう。

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