インドネシアの米の価格、東南アジアで一番高い1キロ173円
- 公開
- 2024/10/17
- 更新
- 2024/10/17
- この記事は約4分42秒で読めます。
日本と同じく、インドネシアの多くの地域では米が主食です。
国民にとって非常に重要な食料である米を安定的に供給するため、インドネシア政府は様々な政策を行っています。一方で、インフレや異常気象などにより米の価格の上昇は続き、市民にとっては厳しい状況が続いています。
本記事ではインドネシアの米の価格について、他国の価格と比較したうえで、その推移や原因を紹介します。また、インドネシアの米の輸入状況や米農家の現状についても触れていきます。
【補足】
円表記は2024年10月16日のレート(1ドル=149.25円/1ルピア=0.0096円)で換算したものです。
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数字でみるインドネシアの米の供給と価格
インドネシアの米の価格は東南アジア一高い
世界のものやサービスの小売価格をリサーチするGlobalProductPrices.comによると、2024年4月時点のインドネシアの米1㎏あたりの価格は、1.16ドル(173円)でした。これは調査対象となっている81か国中69位で、全体を見ると安い印象を受けます。
一方で東南アジア諸国に目を向けると、シンガポールが71位、タイが73位、ベトナムが74位。この調査の対象となっていないフィリピンやカンボジア、ミャンマーもインドネシアより安いので、インドネシアがもっとも米の高い国といえます。
なおインドネシア政府は米の価格をPremium(高級)、Medium(中級)、Rendah/Luar Kualitas(低級/規格外)に分けており、2024年の調査で1.16ドルだったのは高級ランクの米です。
この調査で米の価格がもっとも高かったのはアメリカで1㎏あたり4.5ドル(672円)、日本は4位で3.94ドル(582円)でした。
参考:
GlobalProductPrices.com「Indonesia – Rice – price, April 2024」
Katadata.co.id「Harga Beras Indonesia Termahal di Asia Tenggara」
インドネシアの米の価格の推移
実際、インドネシアの米の価格は、ぐんぐん上昇しています。
例えば高級米は、2020年の1㎏1万2,400ルピア(119円)から、2024年の初めには1万8,000ルピア(173円)まで上昇。中級米は同じ期間で、1万600ルピア(102円)から、1万4,000ルピア(134円)になっています。
インドネシア銀行副総裁は、米の上昇の原因は、長引く猛暑、不均一な降雨量、エルニーニョ現象により乾季に少雨が頻発することなどにより、収穫量が減ったり収穫時期がずれたりしたことだとしています。
参考:GoodStats「Harga Beras di Indonesia Mahal? Penyebab Kenaikan Belakangan Ini」
この他、インフレーションや肥料、燃料、労働力などの生産コストの上昇、人口増加や経済成長に伴う需要の増加なども、米の価格の上昇の要因とされています。
一方、価格に大きな影響を与える米の生産量は、過去数年間、増減を繰り返しながら微減しています。いい見方をすれば「ほぼ横ばい」とも言えますが、あと2、3年の動向を見ないと判断できないところです。
国民一人あたりの米消費量はやや減少傾向にありますが、人口が増えているので、全体的な需要は増加しています。
参考:
Badan Pusat Statistik「Rata-Rata Konsumsi per Kapita Seminggu Beberapa Macam Bahan Makanan Penting, 2007-2023」
Tempo.co「Bagaimana Tren Produksi Padi Indonesia?」
映像でみるインドネシアの米の供給と価格
到着したベトナムからの輸入米
この動画は2024年1月、ベトナムからの輸入米が到着した様子です。ナレーションでは、「2023年から2024年にかけて、過去5年間で1番の輸入量となった」と紹介されています。
インドネシア政府は国内市場への米の安定的な供給のため、米不足の年には米の輸入量を増やします。2019年からの4年間、輸入量は40万トン前後で推移していましたが、2023年は前年の6倍以上になる250万トンを輸入。主な輸入先はタイとベトナムです。
参考:CNN Indonesia「INFOGRAFIS: Tren Impor Beras Sepanjang 2008-2023」
2023年から2024年にかけて、インドネシアは米の価格上昇や米不足のニュースがあふれていました。米不足の原因は前年から続く気象の問題が大きく、国内米の収穫時期がずれたことにあるようです。加えて政府の見立ても甘く、正確な収穫時期や輸入米の到着時期が国民に知らされなかったという印象です。
スタートアップの米農家支援
インドネシアの米価格の高騰や米不足には、農家の生産性の低さや農家の減少が関係しています。高齢化と労働力不足、生産コストの上昇によって、厳しい状況に立たされる米農家に対し、政府は機械化・デジタル化支援などを進めています。
こちらの動画は、中部ジャワ州のRembang(レンバン)県で、地域の農業普及食料安全保障事務所とスタートアップ企業PT Maxxi Tani Teknologiが協力し、米農家に田植え機を提供した様子です。
インドネシアでも、比較的平坦で広い面積が確保できる水田や大規模な農家では機械の導入が進んでいるものの、多くの地域で、依然として手作業による田植えや収穫が行われています。
Maxx Tani社は農業の機会化・デジタル化を通して農家を支援し、農産業の発展や食糧安全保障の維持に貢献することを目的とした企業。東ジャワ州の州都スラバヤに拠点を置き、ジャワ島全域で活動しています。
参考:Maxxi Tani
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インドネシアでも「令和の米騒動」
日本でも「令和の米騒動」が話題になりましたが、その時のニュースの映像は、まさに今年の3月、4月頃のインドネシア。コンビニやスーパーマーケットからは高級米が姿を消し、低級米の価格も上がりました。政府は米について最高小売価格を設定していますが、それを超える地域もありました。
米の価格上昇や米不足には一時的な天候不順も影響しますが、農家の人手不足などによって、そもそも、需要に供給が追い付いていないのは明らかです。
これまで農業従事者の数の力で支えられてきたインドネシアの米産業界も、変化の時期に来ているということでしょう。
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