インドネシアの銀行事情(口座保有率や貯金方法)と主要な銀行6選
- 公開
- 2024/03/15
- 更新
- 2024/09/16
- この記事は約7分20秒で読めます。
日本では、ある程度の年齢になれば銀行口座を持つ人がほとんどです。一方でインドネシアは、日本ほど銀行口座を持つことが当たり前ではなく、日々の貯金や支払いの方法が日本とは異なっています。
そこで本記事では、インドネシア人のライフスタイルを理解する上で知っておきたい、インドネシアの銀行事情についてまとめました。
記事の最後には、インドネシアの主要な銀行を国営・民営・日系の3つのカテゴリーに分けて紹介しているので、ぜひ最後までご覧ください。
※円表記は2023年12月7日のレート(1ルピア=0.0094円)で換算し、記載しています。
インドネシアの銀行数
1997年から2004年にかけての銀行数の大幅な減少はアジア通貨危機の影響です。インドネシアの銀行はその後も緩やかに減り続け、1995年10月には241行ありましたが、2019年12月には110行になっています。
数を減らした銀行の多くは、総資産額の小さな銀行です。総資産が1兆ルピア(94億円)~10兆ルピア(940億円)未満の銀行の減少が著しい一方で、10 兆ルピア(940億円)以上の銀行は増えていることがわかっています。
なお、2019年12月時点でのインドネシアの銀行110行の内訳は、国営銀行が4行、民間為替商業銀行が41行、民間非為替商業銀行が19行、地方開発銀行が27行、合弁銀行が11行、外国銀行が8行となっています。
参考:大和総研「再編が進むインドネシアの銀行セクター|P1~2. 1. 規模の小さい商業銀行数の減少が続く」
インドネシアにおける日系銀行の動き
インドネシアで銀行が減る中、日系の金融機関による買収や合併が目立つようになってきています。例えば三井住友フィナンシャルグループの連結子会社PT Bank Sumitomo Mitsui Indonesia(SMBCI、インドネシア三井住友銀行)は、2018年にPT Bank Tabungan Pensiunan Nasional Tbk(Bank BTPN、BTPN銀行)と合併しました。
また三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は2019年、同社の連結子会社であるアコム株式会社が67.6%を出資していたPT Bank Nusantara Parahyanganと、インドネシアの商業銀行PT Bank Danamon Indonesiaとの合併を実施しました。
タイやシンガポールにもインドネシアの銀行と合併、またはインドネシアの銀行を買収した企業はあります。合併や買収することによるメリットを感じている外国企業は多く、今後もしばらくインドネシアの銀行業界は再編が続くことが予測されます。
参考:大和総研「再編が進むインドネシアの銀行セクター|P7~8. 1. 3. 近年の業界再編の動き」
インドネシア人の銀行口座の保有率
インドネシア人は銀行口座保有率が低く、2021年時点での保有率は52%でした。なお、同じ東南アジアのシンガポールとタイは90%を超えており、インドネシアより銀行口座保有率が低い国としてはフィリピンやラオス、カンボジアなどが挙げられます。
銀行口座を保有している人の詳細な属性までは分かりませんでしたが、銀行の支店やATMがジャワ島を中心とした所得水準の高い都市に集中していることから、ある程度所得に余裕がある人々が銀行口座を保有していることがうかがえます。
わずか5%というクレジットカード保有率の低さも、銀行口座を持つ人の少なさに起因しています。
インドネシアのクレジットカード事情と人気のカードや保有者の特徴
インドネシアのクレジットカードの普及状況やよく利用されるクレジットカード、クレジットカード事業で参入する日本企業を紹介します。
参考:みずほファイナンシャルグループ「インドネシア マーケット環境」
参考:公益財団法人 国際通貨研究所「金融庁委託 ASEAN の金融包摂に係る委託調査 報告書|P20. 2. インドネシア」
インドネシア人の銀行口座保有率が低い理由
インドネシア人の銀行口座保有率が低い理由は、主に次の2つが考えられます。
1つは、資産が少ないため銀行口座がなくても困らない人が多いことです。インドネシアの平均月収は2万6千円で、物価が上昇している中、なかなか貯金できない人も少なくありません。また、貯金好きだといわれる日本人と比べると、インドネシア人は貯金する習慣があまりないのが特徴です。そのため、そもそも銀行口座にお金を預け、計画的に貯金するという考えがない人も一定数いることが考えられます。
もう1つの要因として、金融に関する知識が不足していることが挙げられます。インドネシアでは教育水準の低さが長年問題視されていることに加え、農村部を中心に小学校や中学校でも中退者が出ているなど義務教育も満足に受けていない人もいます。そのため、金融教育をしっかりと受けられておらず、貯蓄や投資への関心が薄い人が多いことも銀行口座保有率の低さにつながっていると考えられます。
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駐在員事務所や内資法人もそうですし、そもそもインドネシアに法人を設立せずに雇用代行という形で進出(営業)できます。
銀行口座を保有していない場合のお金の管理方法
銀行口座を持っていない人のお金の管理方法として、ここ数年で急速に注目を集めているのが電子マネーです。ここでは、インドネシアの電子マネー事情を紹介します。
電子マネーを利用する
クレジットカード保有率の低いインドネシアですが、キャッシュレス決済を利用する人の割合は95%と高水準にあります。
なかでもスマホ向け電子マネーアプリは今注目の決済方法で、GoPayやDANA、OVOなどさまざまなサービスが登場し競合しています。
スマホ向け電子マネーアプリは銀行口座が不要なものが多く、使いたい金額分だけコンビニで気軽にチャージできるのが魅力です。
銀行口座が必要なクレジットカードを持たなくても、スマホ向け電子マネー決済アプリがあれば、日々の決済や支出管理にはこと足りる人も多いでしょう。
インドネシアの主要銀行
それでは最後に、インドネシアの主要な国営銀行、民営銀行、日系銀行を紹介します。
国営銀行:Bank Mandiri(マンディリ銀行)
マンディリ銀行は、1988年10月に設立されたインドネシア最大の国営銀行です。Bank Bumi Daya(ブミダヤ銀行)とBank Dagang Negara(ダガンヌガラ銀行)、Bank Ekspor Impor Indonesia(インドネシア輸出入銀行)、Bank Pembangunan Indonesia(インドネシア開発銀行)の4つの政府系銀行が合併して設立されました。
最大手の国営銀行ということもあり、支店やATMの数が多い、クレジットカードやデビットカードの種類が充実しているなど、快適な取引環境が整っているのが特徴です。
また、キャッシュレス決済サービスの充実にも積極的で、同銀行のアプリ「Livin’ by Mandiri」は2021年のリリースから2か月も経たないうちに500万人以上がダウンロードしました。
同アプリには、銀行間でのリアルタイムな資金の送受信を可能にするサービス「BI-Fast」が実装されています。独自の電子マネーサービス「Mandiri e-money」も発行され、MRTやLRTなどの公共交通機関、駐車場、小売店など幅広いシーンで利用できます。
参考:Bank Mandiri
参考:Voice of Indonesia「Bank Mandiri Bawa Kabar Gembira, Mereka Terapkan BI Fast di Aplikasi Livin’ by Mandiri: Biaya Transfer Antarbank Kini Hanya Rp2.500」
国営銀行:Bank Rakyat Indonesia(インドネシア国民銀行)
BRI(インドネシア国民銀行)は、1895年に設立された国営銀行です。名前に「国民銀行」とある通り、インドネシア全土に広く普及しており、地方にも支店やATMがあります。
同銀行は2023年12月6日、2023年度の実績について、資産は前年比9.9%増、利益は前年比12.5%増という好成績を残したことを発表しました。
同銀行は、貧困層や低所得者に少額の融資を行うマイクロファイナンスを強みとしているのが特徴です。また、事業を始めたばかりの中小零細企業や、資金に余裕のない個人への小口融資も得意としています。
インターネット上で銀行取引を行える法人向けのビジネスバンキングサービスも手がけており、金融サービスや機関投資家向けサービス、キャッシュマネジメントサービスなど、幅広いサービスを提供しています。
参考:朝日新聞デジタル「Public Expose Live 2023: BRIが好調な財務実績を伴って2023年を終了」
参考:REUTERS「Bank Rakyat Indonesia (Persero) Tbk PT」
民営銀行:Bank Central Asia(セントラルアジア銀行)
BCA(セントラルアジア銀行)は、インドネシアの大手民間銀行の1つです。インドネシア全土に支店やATMがあり、インタネットバンキングサービスやモバイルバンキングサービスなどを活用しながら、利便性の高い取引環境を構築しています。
同銀行はデジタルサービスの強化に力を入れており、例えばモバイルバンキングアプリの「BCA mobile」には2022年からタクシーの予約機能が追加されました。同アプリでは、飛行機や電車、映画館、テーマパークなどのチケットを購入することも可能です。
またBCAは、2009年には三井住友銀行、2018年には愛媛銀行、そして2019年にはJCBと業務提携を結ぶなど、多くの日本企業とパートナーシップ関係を構築しています。
民営銀行:Bank CIMB Niaga(CIMBニアガ銀行)
CIMBニアガ銀行は1955年に設立された民営銀行で、1987年にインドネシアで初めてATMを導入した銀行でもあります。
1991年にはインドネシアで初めてオンラインバンキングサービスを提供し、2018年にはQRコードを使ったオンライン口座開設サービスをリリースするなど、新しい技術やサービスにいち早く取り組んでいます。
2021年には日本のJCBと業務提携し、インドネシアでは初となるJCBタッチ決済対応カードを発行。また、同銀行はジャカルタに「ジャパンデスク」を持つ数少ない銀行の1つで、日本人の相談にも日本語で対応しています。
参考:CIMB Niaga
参考:JCB「JCB、インドネシア大手銀行CIMB Niagaと同国内初のJCBのタッチ決済(JCBコンタクトレス)対応カードを発行開始」
参考:Bank CIMB Niaga「Annual Report 2020 |P41. 27 NOVENBER」
日系銀行:Bank Danamon(ダナモン銀行)
ダナモン銀行は1956 年に設立されたインドネシアの大手銀行で、2019年に三菱UFJ銀行の連結対象子会社となりました。2023年9月時点でインドネシア全国に865の支店を持ち、6万台以上のATMを導入しています。
同銀行は、個人や小規模事業者、中小零細企業、大企業と幅広い顧客にサービスを提供しており、個人と法人の両方がデジタルバンキングサービスを利用可能です。
また、自動車に関わる金融サービスを提供する会社Adira Dinamika Multi Financeが傘下にあり、オートローンなど自動車業界向けの金融サービスに強みを持っているのが特徴です。
参考:Danamon
参考:三菱UFJ銀行「Think Asia, Think MUFG|P20. ダナモン銀行」
日系銀行:Bank BTPN(BTPN銀行)
BTPN銀行は、1958年に退役軍人向けの年金取扱銀行として設立されました。1960年に商業銀行へ変わり、小規模事業主や中小企業、個人富裕層など幅広い層へビジネスを展開。2019年には、インドネシア三井住友銀行の連結子会社となりました。
同銀行は2015年にモバイルバンキングサービス「BTPN Wow!」の提供を開始。銀行口座を持っていない人でも送金や公共料金の支払いができるようにしました。その後リリースされたモバイルバンキングサービスの「Jenius」ではオフラインの銀行口座の管理をオンラインでできるようになり、リリース翌年には利用者数が100万人以上にのぼっています。
また、イスラム金融の教えに則った銀行「BTPN SYARIAH」も手がけており、農村部に住む個人を対象とした銀行としてはインドネシアで唯一だとされています。
参考:三井住友銀行「海外ビジネスにおけるデジタライゼーションの推進」
参考:BTPN SYARIAH
日本とは異なるインドネシアの銀行事情
本記事で説明した通り、インドネシアでは銀行口座を保有している人が日本ほど多くありません。そのため銀行口座が必須のクレジットカードより、口座がなくても利用できる電子マネー決済を好む傾向にあるなど、日本人とは異なるお金の使い方が見られます。
インドネシアへの進出を考えるのであれば、インドネシア人がどのような方法でお金を使ったり貯めたりしているのかを理解することが重要です。
また、インドネシアの銀行の中には、日本の金融機関と提携しているところも多いので、インドネシアの銀行と日本企業のビジネスの関わりについて調べてみるのもおすすめです。
インドネシアでのビジネスにお悩みの方へ
最後まで文章を読んでいただきありがとうございます。ここまでご覧いただいたということは、記事の内容に対して一定の信頼感や満足感を得ていただいたのかなと推測しています。
もし宜しければ、現在抱えているお悩みを弊社に壁打ち的に相談してみませんか。何かしらお役に立てる情報を共有できる自信があります。
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インドネシアの銀行数を教えてください。
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2019年12月時点でのインドネシアの銀行数は110行です。内訳は、国営銀行が4行、民間為替商業銀行が41行、民間非為替商業銀行が19行、地方開発銀行が27行、合弁銀行が11行、外国銀行が8行となっています。
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インドネシア人の銀行口座保有率を教えてください。
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インドネシア人の銀行口座保有率は、2021年時点での保有率は52%となっています。
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インドネシアの主要な銀行について教えてください。
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インドネシアの主要な銀行には、国営銀行のBank Mandiri、Bank Rakyat Indonesia、民営銀行のBank Central Asia、Bank CIMB Niaga、日系銀行のBank Danamon、Bank BTPNなどがあります。
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弊社で公開している記事の1つ1つは、日本人とインドネシア人のライター、日本人とインドネシア人の編集者がそれぞれ協力しながら丁寧に1記事ずつ公開しています。
記事の内容にも自信がありますし、新しい情報が入り次第適宜アップデートもしています。これだけ手間ひまかけて生み出した記事はできれば一人でも多くのインドネシアのビジネス関係者に読んでもらいたいです。
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