【インタビュー】インドネシアの財閥グループに参画したBeautynesiaの強みとインフルエンサーマーケティングの秘訣
- 公開
- 2022/09/18
- 更新
- 2025/03/23
- この記事は約1分44秒で読めます。
人口の増加、それに伴い経済成長も著しいインドネシア。様々な日本企業が好機を見出し、インドネシアに進出しています。一方、習慣や嗜好が異なるため、インドネシアのトレンドやマーケティングについてまだ知られていないことも多いと考えています。本連載は実際にインドネシアに進出している日系企業のマーケティング担当者に戦略や戦術などをお伺いする企画です。
今回お話をお伺いしたのは、月間約400万人のインドネシア人女性が訪れるライフスタイルメディア「Beautynesia(ビューティーネシア)」の創業COOの長谷川智紀さん。ビューティーネシア(beautynesia.id)は、美容、ファッション、日常生活、健康などのインドネシア人女性の興味関心の高いカテゴリーを網羅しています。
長谷川さんは、日本の大企業メーカーと人材会社で働いた後、31歳でタイに移住し店舗事業経営を経験。2014年からバンコクとジャカルタの二拠点生活をスタートし、2015年7月にビューティーネシア社(PT. Beautinesia Media Nusantara)を創業。メディア事業においては、現地のトレンドを反映し続けることが重要であり、そのために現地のライターやインフルエンサーとの関係構築は欠かせません。インドネシアで最も効果的なマーケティング手法や、現地のメンバーとの関係構築において大切にしていることをお伺いしました。
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ビューティーネシア買収の背景とインドネシアの財閥グループで働ける貴重な経験
ビューティーネシアの事業内容について教えてください。
長谷川 ビューティーネシアは2015年に立ち上げ、もともと名前の通りビューティー、コスメの情報に特化したWebメディアとしてスタートしました。ですが、今ではスキンケアやファッション、ムスリム、健康、ライフスタイル情報なども加わり、女性が興味を持つカテゴリーを網羅しています。記事としては、例えばメイクアップ、ビューティーアイテムレビュー、匂いや体型の悩みの解決方法、有名人のメイク方法や自宅で手軽に試せる健康方法といった内容です。化粧品ブランドや健康食品メーカーと連携し、商品の購買を喚起させるような記事も配信しています。いまでは月間約1,000記事のペースで公開しています。

長谷川 Webメディア以外では、オンライン・オフライン両方の広告事業を幅広く展開しています。メーカーのお客様を中心に、解決されたい課題を伺って、メディア施策、インフルエンサーマーケティング、オフラインイベント、ソーシャルメディア広告といったソリューションをご提案しています。 2015年7月に会社を立ち上げて、2016年10月に初めて売上が立ったのですが、当時は動画制作やイベント運営事業が主な収益源になっていました。本業のメディア事業でも売上が立つようになったのは2018年頃からですね。
2019年にはインドネシアの財閥グループの一つであるCTコープに買収されました。CTコープはインドネシアでかなり大きな財閥で、主軸のメディア・小売以外にも金融・アパレルなど幅広く事業を展開しています。CTコープがビューティーネシアを買収するまでの経緯や背景を教えていただけますでしょうか。
長谷川
ビューティーネシアを立ち上げたときから、実はゴールから逆算して事業をつくり込んでいました。インドネシアでは、外資企業がメディア事業で上場するのは難しいので、事業のゴールの一つとして事業会社に買ってもらえるような会社づくりという考え方があり、そのために売上やWebメディアの数字を伸ばし続けることを重視してきました。実際に、数値を伸ばすことで注目を浴びるようになり、インドネシアや日本の企業からのコンタクトが増えました。
CTコープはテレビ会社やトラフィックの多いニュースサイトも持っており、特にメディアに強い財閥です。CTコープがビューティーネシアを買収した背景には、広告予算がテレビからデジタルに移ってきているので、Webメディア事業を補強したいという意図があったようです。そのなかでも、広告主の多くを占めるメーカーが予算を出しやすい、ビューティーネシアのようなライフスタイルメディアに着目していたのです。ニュースサイトは読む人は多くても商品の購買を喚起するメディアにはならない、一方でビューティーネシアのようなライフスタイルメディアでは商品の紹介をしやすく読者の購買行動に影響を与えやすい。ですので、CTコープはビューティーネシア、そして同タイミングで我々の競合でもあったFEMALE DAILYを買収しました。
実際に現地の企業で働いてみて、印象などはいかがですか?
長谷川
インドネシアの財閥は中華系が多いものの、CTコープはプリブミ※のインドネシア人が築いてきた財閥です。中華系の財閥に対してはかなりストイックなイメージを持っていましたが、CTコープにはそういうイメージを持っていませんでした。ところが実際には、みなさん夜遅くまで働き、数字も細かく追うなど、かなりストイックに働いています。少し宗教がかっているというか、トップであるハイルル・タンジュンさんがカリスマ的存在で社員の皆さんから尊敬されていて、基本的に組織はトップダウンで動きます。彼の指示を的確に実行できる優秀なメンバーも揃っていますね。
ただ、重要な役員会でも机の上に果物やゴレンガン(揚げ物)を置いていたり、何か食べながらの会議だったり、その点はインドネシア人なんですよね(笑)会議で大事なトピックを話していてもイスラムのお祈りの時間になったら中断してお祈り休憩になりますし、インドネシア人らしく宗教の時間も大事にしながら働いています。
※プリブミ(PRIBUMI)とはインドネシア語で「大地の子」という意味になりますが、主にマレー系インドネシア人を意味する言葉です。
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「自分の仕事は組織を大きくし、メンバーに成長を感じてもらうこと」
Webメディアの運用についてお伺いしていきます。記事の方針などはどのように決められているのでしょうか?
長谷川 今はインドネシア人の編集長が担当しています。編集長は過去7年分の知見から大まかなトレンドを把握して、カテゴリー、キーワード、テーマを決めています。例えば、ラマダンの前はムスリムファッションに関する記事のPVが増えるので、そのような記事を増やすとかですね。過去の実績からは予測できないデイリーのトレンドもウォッチしながら、2週間〜1か月以内ぐらいのスパンで微調整しています。
コスメから複数のカテゴリーに広がった背景には、どのような変化があったのでしょうか?
長谷川
以前ユーザーの興味関心が強かったのは化粧をして美しくなることだったのですが、2018年〜2019年頃に内面から美しくなること、例えばインナービューティー、健康、ダイエット、美白に関する記事へのアクセスが増えていきました。今では、さらに金融、キャリアなどにも興味を持つようになってきていますね。
先進国でも近しいことが起きていると思うのですが、社会進出に伴って女性の所得が向上して、お金の使い方に変化が起きていると感じています。ビューティーネシアはインドシア人女性の一定層が見ているので、日々Webメディアの数値からこの変化を実感しています。
自分は日本人男性で、メイン読者の年齢層からも大きく離れていているので、読者の気持ちはなかなか分かりません。ですので、読者層の世代に近い若いライターさんたちが良いといったものはすべて記事として出すようにしています。トレンドを反映し続けるために、知識や経験よりも、その世代の人たちの直感を大切にしていますね。
インドネシアだと離職率が比較的高く、長く働いてもらうことも簡単ではないと思います。採用や人材の定着で大切にされていることはありますか?
長谷川
自社メディアにライター募集の掲載をすると、一定数応募は集まりますね。ビューティーネシアを読んでいるということは、掲載しているカテゴリーに興味を持っているということであり、親和性が高いです。初期の頃は特に読者から採用していて、その頃に採用したライターは今でも20人くらい残っていると思います。
最近、社員に弊社の良い点を聞くアンケートを実施したら、上位に「会社自体が成長し続けてるのが面白い」「一緒に自分が成長できている」「新しい仕事がどんどん来るのが面白い」という回答が多くありました。ビューティーネシアがそこまで有名ではない状態から関わってくれている社員も多いので、「自分がビューティーネシアの成長に貢献した」という誇りを持ってくれてるのだと思います。
結果的にこの4〜5年で、全員の給料が2倍、中には4倍になった方もいます。会社を大きくすることで彼らの収入を上げる、それが我々のような外国人がインドネシアで新しい事業を起こす意義だなと感じていますね。なので、僕の仕事は会社とメディアを大きくし続け、仕事を増やしていくことで、関わっているメンバーに様々な経験をしてもらうことだと思っています。
インフルエンサービジネスはとにかく地道な開拓と関係構築が重要
ビューティーネシア以外にもマーケティングに幅広く関わられているなかで、何が効果的な手法だと考えられていますか?
長谷川
インドネシアで非常に効果的だと感じるのは、インフルエンサーマーケティングですね。インドネシア人は、テレビCMやGoogle広告よりも、自分がフォローしているインフルエンサーに影響を大きく受けます。なので、特に限られた予算で施策を実施する場合は、インフルエンサーマーケティングの施策を提案していますね。
なぜインフルエンサーマーケティングかというと、日本人だと多くの人が中流階級で、肌の色や状態もほとんど同じですが、インドネシア人だと中華系の方、マレー系の方、アラブ系の方と、肌の色や状態も違えば、宗教も違う。自分に似た肌や宗教の人を探しているため、マスに向けた広告よりも、自分に合った属性を持つインフルエンサーの影響が強くなるんです。
インフルエンサーを探してから仕事を依頼するまでで大切にされていることを教えてください。
長谷川
良いインフルエンサーを集めるための近道や抜け道というのはなくて、常にソーシャルメディア上を色々なキーワードで検索して、くまなく見ることですね。みんなが知ってしまったり人気になったりしてからでは遅いので、フォロワーが1万人になる前くらいの人を見つけるようにしています。
インフルエンサービジネスは、良いインフルエンサーを見つけてコンタクトして案件を紹介したら成り立つので、実は誰でも始められるビジネスです。そのために、競合も多くなりやすい。そのなかで、他社と同じインフルエンサーを提案しているだけでは差別化ができないので、私たちはまだ他社が知らない、これから人気が出てくる人を提案するようにしています。
コンタクトをとれた後は、なるべく早めに案件をご紹介するように心がけていますね。つながっても、一年間案件をご紹介できないとインフルエンサーからの信頼が損なわれてしまいます。インフルエンサーは引く手あまたなので、この会社と付き合っていきたいと思ってもらうために、この会社は良い仕事をくれる、仕事を通じて自分の収入や経験値が上がった、と思ってもらえるようにしています。
最後に、インドネシア進出を考えている企業の方にアドバイスをお願いします。
長谷川
インドネシアは魅力あるマーケットですが、ビジネスが成り立つまでに時間がかかります。日本で成功したノウハウがあれば簡単に初年度で黒字が出る、人件費が安いからといった考えで進出しても、うまくいかないです。3〜4年間腰を据えるつもりで来ていただいたほうが、国、土地、国民に愛される、本当にしっかりと地に足が着いた事業になると思います。
進出する前にまずは、マーケット調査やテストマーケティングを実施することをおすすめしたいですね。結果を見ると、日本とインドネシアとの違いから、日本のノウハウが通用しないことがすぐに分かります。いま進出するのが良いか、どのようにしたら成功するかを考えることで、成功確率が高まると思いますね。
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