インドネシアのEdTech(エドテック)企業や教育系スタートアップが抱える課題

公開
2022/11/13
更新
2023/12/24
この記事は約8分60秒で読めます。

多数の島々からなる日本の約5倍の国土面積を有するインドネシアでは、学校教育の質の地域差が問題となっています。

そんな中、eラーニングが問題解決の足掛かりになると期待されており、ここ数年で様々なカテゴリーの教育関連スタートアップ企業が誕生しています。ただ、資金不足や未発達なITインフラに悩む企業も多いのが現状です。

そこで本記事では、インドネシアの教育・エドテック業界とeラーニングの現状や主な課題について見ていきます。また、インドネシアの主なエドテック企業・教育系スタートアップ企業と、日系の教育関連企業もご紹介します。

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インドネシアの民間教育とエドテック業界

インドネシアにもいわゆる「塾」はたくさんあり、毎年数が増えています。教育文化省の調査(2017年)によると、Lembaga Bimbingan Belajar (略称LBBまたはBimbel)と呼ばれる学校外の教育機関は、認可されているだけで1,866機関あります。

従来の学習塾に加え、2020年以降のコロナ禍の影響もあり、現在ではオンデマンド配信やオンライン個別指導などのeラーニングサービスも人気を呼んでいます。

出典:KOMPAS.com「Bimbel Masih Jadi Pilihan Siswa Persiapkan Diri Masuk SBMPTN」

インドネシアのエドテック市場規模

インドネシアでは、eラーニングを含むエドテックサービスが、今まさに普及し始めているところです。コロナ禍で全国の学校が休校になり、オンライン学習の需要が高まったことで、業界全体の発展が促進されたといえます。

エドテックサービスは、学校教育で不足する部分を補いたいという子どもや保護者のニーズに応えると共に、地域による教育の格差是正という面でも期待されていますが、課題も少なくありません。

インドネシアの教育業界の現状と課題については、以下の記事をご参照ください。

インドネシアの教育業界とリモート授業の現状と課題

インドネシアでは日本と同じ、6・3・3・4の教育制度が採用されており、小学校と中学校が義務教育です。現状や課題についてみていきましょう。

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インドネシアにおけるエドテックの市場規模(2019年)は、約121億円とされています。野村総合研究所のレポートによると、日本における2019年の市場規模は2,044億円なので、比較するとインドネシアのエドテック市場規模がまだ非常に小さいことは確かです。

ただ、今後の成長が見込まれるエドテック市場へ参入する企業が増えているのも事実で、インドネシアのエドテック関連のスタートアップ企業の数は、2020年の42社から、2021年は210社、2022年は342社と急増しています。

出典1:野村総合研究所「ITナビゲーター2020年版」
出典2:alinea.id「Ramai-ramai berebut pasar pendidikan digital」
出典3:parapuan.「10 Perusahaan Startup Education Technology di Indonesia, Ruangguru hingga Pahamify」

インドネシアのエドテック業界の課題

インドネシアのエドテック市場拡大には、以下のような課題があると言われています。

供給側の課題

  • 投資家からの積極的な投資 / インドネシア政府・地方政府からの支援
  • 収益化モデルの確立
  • 人材育成・人材確保
  • 個人情報保護法のスムーズかつ適切な運用

インドネシアでは2022年10月に個人情報保護法が施行されました。

需要側の課題

  • 国民の教育に対する意識の向上
  • 国民のデジタルリテラシーの向上
  • デジタルインフラの改善

インドネシアのエドテック業界は投資家からまだ不安定かつ利益の少ない分野と見られており、資金集めに苦労する企業が多いのが現状です。他の企業に成功モデルを示せる影響力のあるスタートアップ企業が登場すること、そして収益性と社会的影響のバランスが取れたビジネスモデルが確立することが、今後のエドテック市場の拡大には欠かせません。

インドネシアのエドテック企業のサービス分野

インドネシアにおいて、外資系のエドテック関連の企業は幅広い分野のサービスを提供しています。一方のインドネシア国内の企業はモバイルアプリや遠隔教育(eラーニング)関連に、政府供給プログラムはSTEAMや言語教育に偏っているのが特徴です。

インドネシアにおける外国籍企業のエドテック進出分野
インドネシアにおける国内企業のエドテック供給分野
インドネシアにおける政府によるエドテック供与分野

教育文化省はこういった傾向を踏まえ、政府と国内外の企業が協力することでインドネシアの教育業界に幅広くアプローチし、課題を克服していきたいと考えています。

インドネシアのエドテック業界参入のポイント

JETROの分析によると、インドネシアのエドテック業界に参入する場合のポイントとしては、以下のような点が挙げられます。

主な課題

  • 収益性
  • ITインフラの脆弱性

特にITインフラの脆弱性に起因し、以下のような点に留意したサービスの提供が求められます。

  • 地域によってインフラに大きな差があること
  • 多くの人がスマートフォンを中心とする携帯端末でインターネットに接続していること
  • 遠隔地に限らずインターネットの接続は不安定で、常時接続している必要があるアプリの使用や、重いファイルの送受信は難しい場合が多いこと

有望参入分野

  • 既存プレーヤーが多く参入しやすい分野
    ⇒STEAM、遠隔教育、言語教育、モバイルアプリ、LMS、学校管理
  • 既存プレーヤーが少なくニッチマーケット開拓の可能性がある分野
    ⇒ワイヤレス技術、教育デバイス、モニタリング、教育機材教育システム、ロボット、AI、ゲームベース学習、クラウド、生徒・学校管理、AR/VR

対象者

  • 既に多くのサービス・コンテンツが提供されている層
    ⇒小学生~大学生、教師 ※特に中高生を対象としたものが多い
  • サービス・コンテンツの提供がまだ不十分な層
    ⇒企業、社会人、保護者、幼児

出典:JETRO「インドネシア教育(EdTech)産業調査」

インドネシアの主なエドテックサービス・教育系スタートアップ企業

以下では、インドネシアの主なエドテックサービスや教育系スタートアップ企業をご紹介します。上述の通り、今のところインドネシアの民間エドテックサービスは、中高生を対象としたモバイルアプリまたはeラーニングの分野に偏っていますが、その他の分野の成長も期待されます。

Ruangguru(小中高校生向けオンライン・オンサイト塾)

Ruangguruはインドネシアの教育系スタートアップ企業の代表格Ruang Raya Indonesia(2014)が提供するオンデマンド授業サービスで、3,800万人が利用しています。

同社はRuangguruの他、オンラインチューターサービス、企業の従業員向けプログラム、小学生以下の子ども向けのライブティーチングやアニメーションプログラム、オンライン英会話教室、そしてオンライン授業と組み合わせることができる対面授業の塾など、様々なカテゴリーのサービスを提供しています。

2022年7月の報道によると、Ruangguruの評価額は8億ドルを超えており、あと一歩で10億ドルに届いて「ユニコーン企業」になるとされています。

出典:CNBC Indonesia「Ruangguru Rajin Akuisisi Startup, Duitnya Masih Banyak?」

Zenius Education(小中高校生向けオンライン・オンサイト塾)

Zenius Educationのオンラインプログラムは2007年に始まりました。インドネシアのオンライン教育サービス最大手であり、パイオニア的な存在でもあります。

Zeniusは、学校の授業内容を理解するためのオンラインビデオ授業プログラムとライブティーチングプログラムを提供しています。対象は主に小学生から高校生で、2020年12月時点の登録ユーザー数は1,600万人以上と言われています。

なお、Zeniusはインドネシアの学習塾最大手Primagamaを持っており、全国で400以上の教室を運営しています。

Pintar Pemenang Asia(社会人向けオンライン講座)

Pintar Pemenang Asia(Pintar)は企業の従業員や大学生が対象のサービスを提供する教育系スタートアップ企業です。

2022年にHarukaEduからリブランディングし、現在は大学と提携したオンライン学習プログラムや企業の従業員または求職者のスキルアップのための学習プログラムを提供しています。例えば、「ゲームプログラマーになる」「農家向け水耕栽培で野菜を育てる方法」「店を開くためのチョコレート菓子の作り方」など、多様なオンラインクラスやウェビナーが開かれています。

Cakap(オンライン外国語学習プログラム)

2015年創業のCakapは、インドネシア初となるオンライン双方向学習(オンライン家庭教師)プログラムを開発しました。英語、中国語、日本語、韓国語を中心に、子どもから大人までを対象とした外国語学習クラスが開講されています。この他、現在は社会人向けのスキルアップクラスもあり、合わせて100万人以上のユーザーがいます。

CoLearn(小中高校生向け学習モバイルアプリ)

CoLearnは、小学校5年生から高校性の算数・数学、科学、物理に特化したオンライン個別指導のモバイルアプリを提供しています。ライブ形式の授業の他、生徒が問題の写真を送信すると、問題解決のための説明動画が提供されるサービスがあります。2020年のサービス開始から約400万人の生徒が利用しています、

Pinduit Teknologi Indonesia(教育業界向け金融サービス)

2018年創業のPinduit Teknologi Indonesia(Pintek)は教育業界向けの金融テクノロジー企業です。学生向けの授業料ローン、教育関連機関向けの運転資金ローン、教育業界の企業向けの教育・開発ローンを提供するオンラインプラットフォームを運営しています。

Gredu(学習管理モバイルアプリ)

Greduは、学校やその他の教育機関向けの学習管理モバイルアプリを提供しています。例えば、教師向けには生徒の出欠確認や成績表の作成、生徒向けには学習スケジュールの作成・管理、保護者向けには子どもの活動スケジュールの確認や教師とのメッセージ機能など、多様な機能があります。

Hacktiv8(デジタルテクノロジー関連オンライン教育プログラム)

Hacktiv8は16週間で初心者をフルスタック・デベロッパーに鍛え上げるための「コーディング・ブートキャンプ」を始め、データサイエンティストやデジタルマーケターになるための集中コースをオンラインまたはオンサイトで提供しています。他に、個人のスキルアップや企業のトレーニングに利用できるデジタルテクノロジー関連の多彩な教育プログラムがあります。

インドネシアに進出している日本の教育関連企業

最後に、インドネシアに進出を果たしている日本の企業や日本人が創業した教育関連企業をご紹介します。

eラーニング・モバイルアプリ・VR

Surala Indonesia

2008年創業の株式会社すららネットは、2015年にJICA「中小企業海外展開支援~普及・実証事業~」への採択を受け、インドネシアで事業をスタートしました。2020年には経産省・JETROの「「未来の教室」海外展開支援等事業」にも採択されています。

インドネシアでは、ゲーミフィケーションを応用した対話型アニメーション教材Surala Ninja!を公立中学校に提供する他、eラーニングのための教師・生徒向け学習管理システムや、小学生向けの算数オンラインレッスンなども行っています。

Quipper

Quipperは、DeNAの共同創業者である渡辺雅之氏が2010年にロンドンで設立した教育テクノロジー企業で、日本、インドネシア、フィリピン、メキシコで同名のモバイルラーニングアプリを提供しています。

インドネシアでは教師と生徒がeラーニングの際に利用できる学習管理システムや、大学入試、国家試験などの試験対策のためのビデオストリーミングプログラムが利用できます。600万人以上の生徒、40万人以上の教師が登録しています。

Jolly Good

東京を拠点とする株式会社ジョリーグッドの外国人材介護教育VRサービス「CareVR」(ケアブイアール)は東南アジア各国で導入されており、インドネシアでも2020年から活用されています。

介護教育の分野において、従来のオンライン教育では文字では理解しづらい現場でのコミュニケーションや介護業務のシミュレーションが不足するのが課題でした。CareVRを使えば、国境を超えたオンライン授業はもちろん、臨場感のある現場体験が可能です。

以上の他、2019年にシンガポールで創業したManabieも、2022年内を目途にインドネシアへの進出を計画しています。

学習塾

Kumon Indonesia

世界中に教室を展開する公文。インドネシアでは1993年に現地の子ども向けの教室を初めてオープンしました。現在は21の州に800以上のフランチャイズ教室を展開し、15万人以上が算数・数学や英語を学んでいます。

Benesse Indonesia

ベネッセは個別指導またはグループ指導の小学生向け算数塾「Shinkenjuku」を、ジャカルタとその近郊に3教室展開しています。

Sakamoto Indonesia

Sakamoto Indonesiaは2001年に創立された算数塾で、現在はインドネシア国内に約120の教室を持っています。

Sakamotoは「サカモト式」と呼ばれる和算法を教える塾で、最初は小学生向けでしたが、現在は3歳から中学生までに対象を広げています。1年に1回、東南アジアの国々の生徒たちを対象とした数学競技会「World Sakamoto Mathematics Championship」を開催しています。

Risshikan Indonesia

大阪を拠点とする立志舘ゼミナールは、2013年にインドネシアに進出しました。現在は幼稚園(年長)から中学生までが対象の算数・数学クラスと、小学5年生から中学生まで、または高校生以上が対象の日本語のクラスを開講しています。コロナ禍前の2019年までは、日本へのスタディーツアーも実施していました。

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インドネシアの将来を担う教育業界

インドネシアの教育業界には、克服するべき課題が山積みです。

そんな中、教育の地域間格差の是正や教育水準の引き上げのため、デジタルテクノロジーの活用が期待されています。エドテック業界の順調な成長は、インドネシアとしては大変重要な課題なのです。

インドネシアのエドテック業界が草創期の困難を乗り越え、国の将来を担う教育産業の発展を推し進めていけるかが、注目されます。

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インドネシアのエドテックの市場規模はどれくらいですか。

インドネシアにおけるエドテックの市場規模(2019年)は、約121億円とされています。一方、日本における2019年の市場規模は2,044億円でした。

インドネシアにはエドテック関連のスタートアップ企業がどれくらいありますか。

インドネシアのエドテック関連のスタートアップ企業の数は、2020年の42社から、2021年は210社、2022年は342社と急増しています。

インドネシアに進出している日本の教育関連企業を教えてください。

インドネシアに進出している日本の教育関連企業としては、公文、ベネッセ、さかもと式、立志舘ゼミナールなどが挙げられます。

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