「なぜそれをやるのか」をしっかりと伝え、挑戦を歓迎する。Webシステム開発やサイト制作を手がけるアジアクエストに人が集まる理由
- 公開
- 2023/06/23
- 更新
- 2024/09/17
- この記事は約1分43秒で読めます。
人口の増加、それに伴い経済成長も著しいインドネシア。様々な日本企業が好機を見出し、インドネシアに進出しています。一方、習慣や嗜好が異なるため、インドネシアのトレンドやマーケティングについてまだ知られていないことも多いと考えています。本連載は実際にインドネシアに進出している日系企業のマーケティング担当者に戦略や戦術などをお伺いする企画です。
今回お話を伺ったのは、Webシステム開発やモバイルアプリ開発、 Webサイト制作、 ECサイト構築などを事業とするAsiaQuest Indonesiaのジェネラルマネージャー佐伯裕基さんです。
2012年に設立した同法人は、インドネシア国内の日系企業100社以上から依頼を請け負っています。jakarta(ジャカルタ)とJogjakarta(ジョグジャカルタ)の二拠点でオフィスを構え、2024年には100名規模の組織に、エンジニアは8割以上を目指しています。
佐伯さんは、2017年から出張ベースでインドネシアに通い、2018年から駐在。現在は、営業をしつつ、マネージャー層のトレーニングなどを主な仕事としています。
営業で売上をしっかりと立てつつ、採用が難しい職種であるエンジニアも着実に増やし、定着率を上げている佐伯さん。インドネシア地域の特徴を活かしてどのように採用をしているのか、長く働いてもらうためにどう従業員と接しているのかなどを伺いました。
何を作りたいか、お客さんと中長期的な関係を築く
はじめに、事業の特徴を教えてください。
佐伯
クライアント企業の情報システム部を丸っと請け負うのが、もっとも力を入れ、実績も大きい事業となります。イメージとしては、私たちのエンジニアの時間を購入してもらい、オーダーされたものをどんどん開発していく……という感じです。受託開発で作って納品=終了ではなく、お客様と一緒に成功するまでトライアンドエラーで改善していく委託開発型ですね。
その次に利益として大きいのは、Webサイトやシステム開発などを受託して、納品する仕事です。こちらはまさに要件が確定している人で「これをなるべく早く作って欲しい」がある人に対する受託開発納品です。
インドネシアにおいても、Webサイトやシステム開発を手がける企業は増えていると思います。その中でも、AsiaQuest Indonesiaの強みはなんでしょうか?
佐伯
一番は、お客さんと長期的な関係を築くために、プロダクトマネジメントも大事にしていることです。これを大切にするため、何を基盤にサービスを作るか、サービスの良し悪しの基準作りを手がけられるメンバーを揃えています。
よって、作りたいものの構想はあるけど、どうやって作ればいいかわからない人やIoTやDXを求められているのだけど、長期計画をどのように作ろうか迷ってる人に是非ご相談いただきたいです。私たちが目指すのは、お客様の成功を支えるパートナーなので。
正直今では、ローカル企業やフリーランス、日本企業、どれも技術的な差は少なくなってると感じます。特に技術面で、各種開発ツールの進歩やハードの進化によって、処理速度が上がっていたりするので、少しコードが長い処理になっていても一般の人たちがわかるような差が出なくなっているためです。企業にはライブラリがあるので、多少開発スピードが上がりますが……。
一方で、何を作りたいかの具現化をサポートできるローカル企業は、まだまだ少ないです。なので、作りたいものが具体的に決まっている人であれば、ローカル企業に頼んでも技術的に問題はないでしょう。
お客様の成功をゴールに協業すると。
佐伯
日系の強みはそこにあると思っています。多くのローカル企業は、納品して仕事が終了になります。なので、技術面から見た設計アドバイスや提案はなく、納品後も「言われた通りに作りました」の一点張りになりがちです。他のシステム会社にサポートの相談をしても自社で作っていない物を補償するのは好まれず、結局ベンダーを変えて作り直す事例を多く聞きます。
また、納品後に不備があり泣き寝入りしてしまうことも。私たちは外国から来て仕事をすることになります。外資よりインドネシア企業を守るように法律が作られていることは容易に想像でき、実際に賠償ハードルは高いでしょう。
「なぜその仕事をするのか」をしっかり伝える
AsiaQuest Indonesiaでは、オフィスをJakartaとJogjakartaの二拠点においていると伺いました。どう使い分けているのでしょうか?
佐伯
Jakartaは営業、Jogjakartaは開発と使い分けています。
Jogjakartaではエンジニアの採用に力を入れています。ITに強い大学は、バンドン工科大学とインドネシア大学、ガジャ・マダ大学の3校です。そのうち、バンドン工科大学とインドネシア大学は Jakartaに近くて、そこで就職する人が大半です。
その中でも、Jakartaでの採用は競争率が高い上に、雇っても数ヶ月で給与を上げるために転職をしてしまう傾向にあります。
一方で、Jogjakartaはそこまで競争率が高くありません。ガジャ・マダ大学は日本で言う京都大学に似ていて「優秀で、京都が好きで離れたくない人」が一定数いて、そんな人たちが入社してくれています。
Jakartaに比べるとJogjakartaは競争率が低く長く働いてもらいやすいと。どのように採用活動をしているのか教えてください。
佐伯
とにかく「紹介の紹介」は試してみるようにしています。異例ですが、IT未経験の子にも挑戦させたこともあります。Jogjakartaはオフィスビルがなく、一軒家を借りて、オフィスボーイを雇うのが一般的です。そのオフィスボーイが「ITに興味がある」というので、挑戦させたことがあります。
通常の紹介は、「同じ研究室所属の〇〇さん」というように大学での繋がりができています。1年で5人程雇っていたら、彼らから何人かは紹介してもらえて、そこから入社という形が多いです。
大学との提携はしていないのでしょうか?
佐伯 していません。前提として、新卒学生を対象にして在学中に採用選考を行い、卒業後にすぐ入社するような新卒一括採用制度はインドネシアにはないです。一度、大学と提携してみようとかけあってみたのですが、「毎年50人以上雇ってもらえるなら」と大学が提示する条件が厳しくて。企業よりも大学のほうが強くなってしまうんですよね。もっと大きな規模の企業だとできるのですが、今の私たちだと紹介が低コストで安定しています。
採用後の定着率を上げるために、何か工夫をしていますか?
佐伯
何をしてほしいか、どうすれば評価が上がるかをしっかり伝えています。私がインドネシアで働くなかで感じるのは、「なぜその仕事をやるのか」を疑問に思わない人が多い点です。例えば、「レンガを積んでおいて」と伝えると、そのまま積んでしまう。なぜレンガを積むのか、積んだ先にどんなビジョンが待っているのかを考える習慣や文化が、宗教的背景から薄いのではないかと考えています。
なので、どういう仕事をすると本人の将来に繋がるかのイメージを持ってもらうために、マインドマップを一緒に作成しています。
一人ひとりに寄り添ったサポートですね。
佐伯 私としては、AsiaQuest Indonesiaで働いたことを踏み台にしてほしいと思いながら従業員と接しています。「雇ってあげたんだから、なんで他社に行くんだ!」と怒ったりしません。違う会社に挑戦してもいいし、出戻りしてきてもいい。それが理想の関係だと考えていますし、長く働いてもらえている要因かなと思っています。
「いろいろあるけどインドネシアが好き」そんな気持ちを持つ人が成功する
最後に、インドネシア進出を考えている企業の方にアドバイスをお願いします。
佐伯
まずは、日本の常識は自分の常識と偏見であると受け入れることだと思います。マネジメントやシステムなど、日本のものをインドネシアに適用させようとするとうまくいきません。見落としがちですが、休みの取り方や法律などは苦戦している人たちが多いような気がします。
次に、インドネシアを好きになってほしいですね。こちらで成功している人たちに共通する部分はは、なんやかんや文句は言うけど、結局はインドネシアが好きなことです。
インドネシアの魅力は、今後の経済が伸びるのが確定していることです。日本は少子高齢化の影響もあり、経済が鈍化していくでしょう。今は、AsiaQuest Indonesiaは日系企業がお客さんになっていますが、これからはインドネシア法人に向けてビジネスをやっていかないといけないと考えています。
これからも何度も失敗はあるでしょう。でも、成功するまで諦めなければ、失敗ではないです。それができる人がインドネシアで活躍できる人だと思います。
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