インドネシアにおける付加価値税(VAT)について
- 公開
- 2024/02/06
- 更新
- 2024/11/27
- この記事は約5分32秒で読めます。
付加価値税(Value Added Tax:VAT、インドネシア語でPPn)は、商品やサービスの購入時に課される間接税の一種です。製造・販売の過程で商品に価値が付与される時点で課税されるため、付加価値税といいます。現在、約175カ国でVATが採用されており、その税率や課税対象の商品やサービスは国によって異なります。
今回は、インドネシアにおける付加価値税(VAT)とその納税について紹介します。
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付加価値税(VAT)の仕組み
VATは、製造・販売段階で商品やサービスに付加される価値に課税されます。
例えば、製品が生産者から卸売業者、次に小売業者、そして最終的に消費者へと移動するという過程を想像してみましょう。各ステップで、課税対象者(生産者、卸売業者、小売業者)は自分が製品に付加した価値に対してVATを税務署へ支払います。
VATの特徴は、消費者が間接的に税金を負担する点です。課税事業者が発行するレシートには、必ず「VAT(11%)」あるいは、「VAT税込み」の記載があり、記載がない場合は購入先がVAT課税事業者でないということになります。
付加価値税(VAT)の税率
インドネシアのVATの税率は以下の2つに分けられます。
- 11%=国内の一般取引
- 0%=輸出の取引
JETROによれば、2025年1月1日から一般取引の税率は12%に引き上げられる予定です。税率は政府の政策や法律の変更によって変動する場合があるため、最新の税率を確認するためには、インドネシアの税務署や公式の情報源を参照することをおすすめします。
参考文献:税制|インドネシア
課税対象の物品とサービス
税率11%の課税対象には以下のものが含まれます。インドネシア国内で行われる取引の多くは課税対象となります。
- 会社による関税地域内での課税対象物品の引渡し
- 課税対象物品の輸入
- 会社による関税地域内での課税対象サービスの提供
- 関税地域外で創造された無形の課税対象物品(財産権)の課税地域内での使用と消費
- 課税地域外で創造された課税対象サービスの課税地域内での使用と消費
税率0%の対象には以下のものが含まれ、VAT課税事業者(Pengusaha Kena Pajak, PKP)にのみ適用されます。
- VAT課税事業者による(有形・無形の)課税対象物品の輸出
- VAT課税事業者による課税対象サービスの輸出
非課税対象の物品とサービス
非課税となる物品やサービスには以下のものが含まれます。
- 生活必需品である食品:米、肉、卵、牛乳、果物、野菜、砂糖、塩など
- 鉱産物(原油、天然ガス、鉄鉱石など)
- レストラン、ホテルで提供される飲食物
- 医療サービス、教育サービス、社会サービス、保険サービス、金融サービス、公共交通サービス、労働サービス
- ワクチン、教科書、聖典
- 水道水(設置料と固定費用を含む)
- 電気(6,600VA以上の家庭を除く)
- 紙幣、政府の外貨準備のための金地金、有価証券
非課税対象の輸入品
非課税対象の輸入品には以下のものが含まれます。
- ワクチン、教科書、聖典
- 工場機械、工場設備
- 水産物、畜産物、種、苗、飼料、飼料原料
- 電気、水道水、武器、弾薬
- インドネシア国軍や国家警察用の車両
- 水上乗り物、列車、漁船、航空機
- 障害者用商品
- 研究関連用品
- 引っ越し荷物、受託手荷物
VAT課税事業者
VAT課税事業者は、国内において物品の販売あるいはサービスの提供を行う事業者で、年間売上高が48億ルピア(約4,800万円)以上の企業や個人です。該当する企業や個人は税務署で課税事業者(Pengusaha Kena Pajak, PKP)として登録する必要があり、その登録者にはVATの徴収と納税の義務があります。
VAT課税事業者はVATの徴収と納税の義務がありますが、支払ったVATを受領したVATと相殺できるという利点があります。これは日本でも消費税が支払い分と受領分で相殺できるのと同じと言えばイメージがつきやすいでしょうか。
一方、VAT「非」課税事業者は当然VATを納税する必要はありませんが、徴収もできません。つまり、VAT課税事業者との取引が多くてVATを多く支払うことがあっても、それを相殺するためのVATを他社から徴収できないので利益を減らす要因となります。しかし、48億ルピア未満の事業者でも、VAT課税事業者として登録することが可能なので、自社の状況を勘案しながら判断すべきだと言えます。
付加価値税(VAT)の納税と申告について
徴収から納税までの流れ
インドネシアのVATはインボイス方式を採用しています。
インボイス方式は、VATの徴収方法のひとつで、売上に対してではなく、請求書(インボイス)の発行に対して税金を計算し、徴収します。具体的な仕組みについては以下の通りです。
- インボイスの発行
VAT課税事業者は提供した商品やサービスに対する請求書(インボイス)とVATの申告に必要な税務伝票(Faktur Pajak)を発行します。インボイスには、提供した商品やサービスの価格(税抜き価格)と付加価値税の額が記載されます。
- VATの計算
VAT課税事業者は、インボイスに記載された税抜き価格に対して適用する税率をかけることで、VATの額を計算します。
- VATの徴収と納付
顧客は、VAT課税事業者から発行されたインボイスに記載された価格(税抜き価格)とVATの合計額を支払います。VAT課税事業者は、顧客から徴収したVATを納付し、VAT申告書と税務伝票(Faktur Pajak)を税務署へ提出します。
- 税額控除
VAT課税事業者は、自身が支払ったVATを、顧客から徴収したVATから控除することができます。具体的には、VAT課税事業者が買い入れた商品やサービスについて支払ったVATの額を、顧客から徴収したVATの額から控除します。この結果、実際に税務署に納付するVATの額が算出されます。
インボイス方式では、売上を対象にVATを徴収し、その後で自身が支払った税金を差し引く仕組みになります。これにより、VAT課税事業者が付加した価値にのみVATが課されることになります。
例)卸売業者B社がVAT課税事業者である場合
申告書提出提出と納税期限について
申告書提出期限と納税期限とは以下の通りです。
- 申告書提出期限:翌月末日
- 納税期限:申告書提出前
納税の支払遅延には罰則が設けられています。罰則は1か月単位で、1日でも遅延した場合は1か月以内の遅れとみなされ、遅延利息計算上1か月分の罰金を支払わなければなりません。罰金は、最大24か月分が課されます。
罰金の計算式
- 罰金=税率(※1)×遅れた月数×納税するべきVATの額
※1:税率は毎月更新される月次財務省利率を適用して計算します。
また、申告書の提出遅延には以下の罰金が課されます。
- VAT申告書提出遅延:50万ルピア(約5,000円)
付加価値税(VAT)の還付について
VAT課税事業者は会計年度末にVATの還付申請を行うことができます。申請後は国税総局(DGT)が税務調査を行い、12か月以内に申請の通過・不通過を判断します。尚、12か月以内に結果が出ない場合は、法律により申請が承認されたとみなされます。
申請に必要な証拠資料は申請日から1か月以内に国税総局(DGT)へ提出しなければなりません。1か月を過ぎて提出した書類は受理されたとしてもVAT還付の計算に含まれないので、期日を守って提出することが必要です。
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まとめ
付加価値税(VAT)の制度は、インドネシア国内の税収を確保し、公共サービスや社会インフラの整備に資金を供給するために重要な役割を果たしています。さらに、インドネシアでビジネスを行う上では、VAT課税事業者として登録をすべきかどうかを見極めるためにも、VATの仕組みをしっかりと理解しておくことはとても重要です。
課税対象の商品やサービスは多岐にわたりますので、詳しい情報や最新の税制改正についてはインドネシアの税務署の公式ウェブサイトや税務専門家の助言を参考にすることを推奨します。
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付加価値税(VAT)の税率は何%ですか?
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現在の税率は11%です。2025年から12%への増税が予定されています。
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付加価値税(VAT)を税務署へ納税するのは誰ですか?
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課税事業者が消費者や顧客から支払われたVATを税務署へ納付します。
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VAT課税事業者として登録しなければならない企業はどんな企業ですか?
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年間売上高が48億ルピア(約4,800万円)以上の企業や個人は税務署でのVAT課税事業者の登録が必須です。
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付加価値税(VAT)の納税が遅れた場合どうなりますか?
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罰金の支払いが発生します。罰金は1か月単位のため、期日から1日でも遅れた場合は1か月分の罰金として計算されます。
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