グリコはどのようにインドネシアのお菓子市場でマーケティングを実践してきたのか

公開
2022/09/04
更新
2023/09/01
この記事は約1分42秒で読めます。

人口の増加、それに伴い経済成長も著しいインドネシア。様々な日本企業が好機を見出し、インドネシアに進出しています。一方、習慣や嗜好が異なるため、インドネシアのトレンドやマーケティングについてまだ知られていないことも多いと考えています。本連載は実際にインドネシアに進出している日系企業のマーケティング担当者に戦略や戦術などをお伺いする企画です。

今回お伺いしたのは、グリコのインドネシア支社でお菓子のマーケティング担当をされている山科裕二さん。グリコは、1980年代から代理店が輸入をする形でインドネシアで商品販売をスタートしており、2012年に駐在員事務所、2014年に支社を立ち上げ本格的に進出しました。インドネシアは人口が増えているため、お菓子の市場も伸びており、グリコとしても注力していく国のひとつとしています。

山科さんは、日本で8年間アイスのマーケティングを担当後、アイスメーカーであるグリコウイングスを立ち上げるため、インドネシアへ。2017年からお菓子のマーケティング担当として働いています。インドネシアにおいて重視しているマーケティング手法や、現在のトレンドなどをお伺いしました。

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人口が多くても、ポッキーを買える人は多くない

インドネシアでグリコはどれくらいの方に知っていただいているのでしょうか?

山科 ジャカルタでは認知が高くなっていますが、インドネシア全土となるとまだ十分ではありません。インドネシアのマーケットをとるためには人口を確保することが重要です。なので、まずは大都市圏から広め、最終的には地方含めてどこでもグリコの商品を買える状態を目指しています。

となると、多くの方にすでに買っていただいているのでしょうか?

山科 いえ、そういうわけではないんです。インドネシアは収入の格差が非常に大きいので、富裕層の人たちはフェラーリを乗り回しているのに、貧困層の人たちは毎日20円の麺を食べて過ごしています。つまり、約2億7000万人の人口がいてもグリコの商品を食べてもらえる数は非常に限られているんですよね。加えて、普通のお菓子が10円、20円、30円、ポッキーは80円、90円なので、ポッキーは比較的高いんです。なので、どれだけその価値を伝えられるかというのが重要になってきます。

つまり、どの階層のお客さんをターゲットにするのか、その人たちにどのように売っていくのかを、きちんと考える必要があります。特にお菓子のように大衆に売る必要がある場合は、人口が多い階層がどこかを考えないといけない。一方で、フェラーリのような非常に高い商品を売るとなった場合、それを買える富裕層の数は少ないけど利益がかなり取れるという振れ幅も大きい。そこはある意味、非常に楽しい魅力になる点です。

インドネシアの富裕層の人数と割合・増加率

経済成長著しいインドネシアでは富裕層の数が急増中です。例えば2016年から2021年の富裕層の増加率で見ると、日本では10%、インドネシアでは50%でした。

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他にマーケティングに影響のある文化の違いなどがあれば教えてください。

山科 インドネシア人の特性としてあるのは、家族や人とのつながりを大事にする点。例えば、友だちと集まるときのおみやげ用としてポッキーを持っていくといった使われ方が多くあります。あとは、仕事中でも常に何かを食べています(笑)お腹が減ったらちょっとつまむという場面が多いので、商品開発やマーケティングでも意識していますね。

健康志向のトレンドや季節限定商品における変化

逆に日本と共通している点はありますか?

山科 人気のフレーバーですね。チョコレートやいちごはやはり人気があります。ただ、日本と違うのは、特にチョコレートの味が好まれていること。アイスクリームの最もポピュラーなフレーバーは日本だとバニラだと思いますが、インドネシアだとチョコレートがダントツなんです。

インドネシアのポッキー
インドネシアで販売されているポッキー。パッケージなども日本とほぼ同じ

山科 チョコレートの味は基本的に日本と同じようにつくっているのですが、インドネシアやASEAN諸国は非常に暑いので、日本のチョコレートを使うとすぐに溶けてしまいます。なので、チョコレートはその気候に合わせたものにしています。

あと、まだトレンドにはなっていないですが、健康意識が芽生え始めているというのも日本と近い点ですね。コロナ禍でワークフロムホームになって、家から出なくなって、太ったという方が増えていることが理由です。「◯◯を食べて健康になりたい」といういわゆるサプリメント的な商品ではなくて、カロリーをそこまで気にせずに食べられる商品、例えば健康系のビスケット、日本のカロリーメイトみたいなひとつで栄養を摂れるものや、ポテトチップス系だと揚げていない、油を使っていないものが増えていますね。

弊社でもそのトレンドに合わせて、ポッキーをリニューアルしました。今までの材料は小麦粉がメインだったんですが、より身体によいといわれている全粒粉に変えました。

トレンドに合わせた新商品は多く販売されているのでしょうか?

山科 インドネシアは日本のように3ヶ月に1回とかのペースで新商品は販売されないですね。というのも、特に地方では生産や輸入の規制、ハラルの問題も厳しいので、新商品の販売は難しいんです。 ただ、前よりは季節限定の新商品は増えていて、弊社でも今は年に1回くらいは季節商品を出すようになりました。他社の事例ですが、スターバックスでも8年前はコーヒーしか売っていなかったんですが、最近は日本のように季節限定商品も出てきています。

背景としては、新しい味を欲しがるようになったというのももちろんあると思いますが、おそらく流通が力を持ち始めた結果、メーカーに対する新味発売の期待が高まったという点も大きいと思います。今後も季節商品が増えたりポピュラーな味が変わったりする可能性があるので、そこは変化をしっかり見極めないといけないですね。

影響力の大きなインフルエンサーをいかに巻き込むか

ここからは具体的なマーケティング施策についてお伺いしていきたいと思います。いままで実施してきたなかで、売上に大きく貢献した施策について教えてください。

山科 tiktokを用いた季節限定商品であるポッキーのスイカ味のプロモーション施策は上手くいったと感じています。スイカ味には「クーリングエフェクト」と言って、食べたらちょっとすっきりするような仕掛けをしていました。この特徴をインフルエンサーの方が「おいしい」「本当にスカッとする。面白いよ!」と発信してくれて、それを見たお客さんが買ってくれるようになり、売上に大きく貢献しました。

この事例のように、インドネシアは特にインフルエンサーの影響が非常に大きいです。約2億7000万の人口に広めるためには、一気に多くの人に知ってもらう必要がある。なので、影響力の大きなインフルエンサーがたくさんの人に向けて発信してもらえると、売上につながりやすいなと。

インドネシアで売られているスイカ味のポッキー
スイカ味のポッキー

山科 私たちからインフルエンサーに依頼する際は、影響力が大きければいいというわけではなく、ブランドとの親和性、人となり、今までの投稿、フォロワーからの評価などを基準に選んでいます。食品に関する投稿に対するエンゲージメントなどの数値も見ていますね。

今はコロナ禍で難しいと思いますが、それまではオフラインでも何か取り組みはされてきたのでしょうか?

山科 オンラインほどは積極的に取り組んでいないですが、イベントを中心にやっています。少し前に、日本でもやってるポッキーデーのイベントを実施しました。11月11日のポッキーデーに、モールのアトリウムを貸し切ってポッキーのブースをつくって、お客さんに様々なポッキーの体験をしてもらいました。特に、中に人が入れる大きなポッキーの箱から顔を出して写真を撮る体験は人気でした。写真をインスタグラムに投稿してもらって、広めることができましたね。

インドネシアでのポッキーのイベント
イベントの様子

日本での成功体験を安易に輸出せずに、現地の人の琴線に触れるマーケティングを

インドネシアは色々な企業が注目している市場だと思います。インドネシアでマーケティングを成功させるために大切なことは何でしょうか?

山科 日本で上手くいったことをそのまま持ち込まないことですね。「日本で売れているから大丈夫だろう」「日本の商品は評判がいいので、値段が高くても大丈夫だろう」とマーケティングをしてしまうと、成功しないです。僕らのポッキーデーも日本そのままの企画ではなくて、インドネシア人に合わせて、よりソーシャルメディアで映えるような企画を入れ込む等の変更はしています。また、コマーシャルもキーメッセージのShare Happiness!は同じですが、見せ方は変えています。

何が大切かというと、インドネシア現地のお客さんの琴線に触れるかどうか、です。なので、私はマーケティングの施策をマネジメントしていますが、クリエイティブに関してはロジックの観点でチェックはするものの、色味や伝え方やデザインは現地のマーケティングスタッフに任せています。最終的には、彼らが面白いと思うか、彼らが刺さると思うかが一番重要だと思っているので。

日本で成功したから、インドネシアでも成功するというほど甘い市場ではないということですね。

山科 そうですね、人口が多いから、経済成長しているからという理由で進出して、日本で上手くいったことをそのまま持ち込むと上手くいかないですよというのは、伝えたいですね。一方、インドネシアはシビアに商品を見る人たちが多いですが、一回ハマるとリピートしてくれるので、面白い市場だと思います。

インドネシアは仕事もプライベートもピリピリせずに穏やかに過ごせますし、前向きな人たちが多いです。そのような国民性と経済成長もあり、これからも市場が成長して、収入も上がると思うので、ますます魅力的な市場になっていくと思いますね。

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