インドネシアの外資規制とネガティブリスト/プライオリティリスト
- 更新
- 2025/04/15
- この記事は約6分8秒で読めます。
インドネシアで会社設立を検討する際に、外資として参入するとどのような規制があるのかが気になると思います。最近ではネガティブリストという言葉に加えて、プライオリティリストという言葉も聞くようになりました。
インドネシアにおける会社設立は難度が高いため自社だけで進めていくのは至難です。ただし、そうは言っても外部のコンサルに丸投げするのではなく、インドネシアの外資規制やネガティブリストの概要を把握するだけでも、プロジェクトを進めやすくなります。
この記事ではその外資規制やネガティブリストに焦点をしぼってご説明をしていきます。尚、事業ライセンスの話については、こちらの記事を参考にしてください。
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インドネシアで開設できる事業形態
海外の企業がインドネシアで拠点を置く場合、大きく3つの形態に分けられます。
- 駐在員事務所
- 現地法人
- 支店
現在、インドネシアで「支店」の設立は金融機関に限られています。そのため、そのため多くの企業は「駐在員事務所」か「現地法人」を設立することとなるので、本記事においてもこの2つに絞って説明をしていきます。
駐在員事務所
法人設立準備や市場調査を目的として開設できるのが駐在員事務所です(KPPA:Kantor Perwakilan Perusahaan Asing)。駐在員事務所は、目的が市場調査・現地法人の設立準備、自社と現地企業との調整に限られており、直接の営業活動・販売活動は禁止されています。
- 外国企業駐在員事務所:現地法人の設立や開発準備を目的とした事務所。
- 外国商事駐在員事務所:市場調査などを目的とした事務所。
- 外国建設駐在員事務所:官民プロジェクトの事前審査や入札に参加し、契約締結・建設工事の実施などの事業主体となることができる。
駐在員事務所の中でも上記のように更に細分されます。業種によっては事業許可や活動許可などの取得が必要になりますが、現地法人よりも少ない許可で設立が可能です。
弊社にご依頼いただければ、駐在員事務所の設立は30万円ほどの費用で設立可能です。また、設立期間についても約2ヶ月ほどです。ご相談はこちらから。
現地法人
営業活動をするためには現地法人が必要になります。大きくは下記の3種類に分けられ、全て外資企業扱いです。
- 現地企業への出資
- 現地企業との共同出資(合弁会社、Joint Venture)。
- 100%出資
海外の投資家または企業から出資を受ける企業は、その出資比率・金額などは関係なしに、全てが外資企業として扱われます。これらは、有限責任会社(PT:Perseroan Terbatas)で日本でいう株式会社にあたります。
そのなかでも、内資はPMDN・外資はPMAと分けて呼ばれ、設立後も様々な手続きでPMAという言葉が出てくるのでぜひ覚えておきましょう。
- PMDN(内資):Perusahaan Penanaman Modal Dalam Negeri
- PMA(外資):Perusahaan Modal Asing
PMA(外資)を設立する場合には、払込資本金100億ルピア以上が必要になります(約8,525万円)。この金額は、2021年3月29日付のインドネシア投資調整庁(BKPM)長官規定 2021年第4号で定められたもので、以前までは25億ルピアでした。金額は数年毎に改正され上がってきており、この傾向は今後も続くと考えて良いでしょう。

外資法人にしろ内資法人にしろ、インドネシアにおける法人設立のハードルは高いと言えます。そこで、法人を設立することなく、異なるスキームでインドネシアでの新規ビジネスが可能な方法があります。このスキームに興味がある企業様は、まずはこちらからお気軽にご相談ください。
さらに外資法人は、会社ごとではなく、事業ライセンスごとに100億ルピア以上の投資額を用意する必要があります。
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外資規制、ネガティブリストとは
インドネシアでは、外資の参入が禁止または規制されている分野があります。その内容をまとめているのが投資ネガティブリスト(Daftar Negatif Investasi/DNI)、通称ネガティブリストです。
インドネシアへの投資を考える際には、どのような業種が対象なのか、規制の内容を理解しておく必要があります。これらも大きく2種類に分けられます。
- 外資の参入が禁止されている分野
- 外資の参入が規制されている分野
「内資・外資ともに禁止されている分野」もありますが、今回の記事では説明を割愛します。
外資の参入が禁止されている分野
次に説明するのは、国内の中小企業や協同組合の保護などを目的とし、外資企業の参入が禁止されている分野です。厳密には下記の分野が全て禁止されているわけではなく、禁止されている対象を具体例として表に追記しています。
分野 | 具体例 |
---|---|
農業 | 米・トウモロコシ・大豆の作物・サトウキビ等の甘味植物・タバコ・綿花・ゴム等の栽培、畜産業(豚の飼育、鶏の飼育と交雑)、プランテーション作物の加工業 |
林業 | シナモン等の森林プランテーション事業、製材業、ラタン加工一次産業等 |
製造業 | 穀物・根菜等の加工食品産業、手描きのバティック製造、特定の文化遺産や芸術的価値を有する手工芸産業、家庭用の陶磁器産業、二輪車の修理・メンテナンス産業等 |
公共事業 | 工事金額が500億ルピアまでの建設業、100億ルピアまでのコンサルタント業 |
文化・観光 | 旅行代理店、観光ガイドサービス業等 |
情報通信技術 | コミュニティー放送機関(LPK)、インターネットカフェ等 |
農業の場合には25ヘクタール以下の栽培など細かい条件がつけられているため、当てはまる場合にはネガティブリストの確認が必須です。農業に限らず、実際に進出を検討する際はネガティブリストの確認は必須です。
ここまで記事をご覧いただいて何かご不明点や疑問点があれば、下記よりご質問ください。
一両日中にご返信をさせていただきます。
インドネシアビジネス関連のご質問であれば何でも構いません。
外資の参入が規制されている分野と規制の種類
最後に、外資100%での設立が禁止されているパターンです。主な条件は下記の3種類で、国内企業とのパートナーシップや合弁会社の設立が必要です。
- 中小企業、協同組合とのパートナーシップが条件付けられる分野
- 外資比率が制限される分野
- その他特別な条件が科される分野
中小企業、協同組合とのパートナーシップが条件付けられる分野
まず、内資の中小企業または協同組合とのパートナーシップが条件付けられている分野です。こちらも同様に下記の全ての分野が制限されているわけではなく、制限されている対象を具体例として表に追記しています。
分野 | 具体例 |
---|---|
海洋水業 | 魚の育成・肥育、塩の生産・抽出、水産加工業、水産物の販売 |
工業 | 魚の缶詰、野菜・果物の塩漬加工業、醤油・テンペなど豆類を使った食品産業、ラタン加工業、ヤシ産業、精油産業、4輪以上の自動車の部品及び付属品産業、通信機器・家電機器の修繕 |
商業 | 農業機械やオフィス機器のリーシング |
エネルギー鉱物資源 | 電力設備分野のコンサルティング |
情報通信 | 国際宅配便の代理店事業 |
公共事業・住宅 | ビル建設、橋・高架橋の建設 |
外資比率が制限される分野
次に外資比率の制限がある分野です。ASEAN加盟国からの出資で上限が変わる分野もありますが、その場合の出資上限は本記事では説明を割愛しています。
上限80~95%まで
- 損害保険、生命保険、再保険、保険代理店等(80%)
- 保健、特許薬製造(85%)
- ベンチャーキャピタル(85%)
- 地熱施設操業・メンテナンスサービス(90%)
- 地熱掘削、送配電等(95%)
- 公共事業 飲料水事業、高速道路事業(95%)
上限67%まで
- 商業:製造に関連しない卸売業、倉庫業
- 観光業:星0~2の星ホテル
- 物流:空運サポートサービス
- 情報通信技術:固定通信網事業、インターネットサービスプロバイダ
- 保健:病院
上限51%まで
- 観光業:スパ
上限49%まで
- 農業:米・トウモロコシ・大豆等基本食用作物の25ha超の栽培
- 林業:狩猟区域での狩猟事業、野生植物繁殖
- 物流:観光用・旅客用・貨物用などの国内海上輸送、州・県・市をまたぐ輸送、観光用・旅客用河川及び湖輸送
- 人材:国内の労働者雇用サービス、人材派遣業
- 製造業:車両メンテナンス
- リース業:消費者金融等のリース以外のファイナンス事業
以下の分野は設立の場合は内資100%、事業追加の際に外資の参入が認められています。
- プレス(新聞、雑誌など):外資40%まで
- 民間放送機関:外資20%まで
- サブスクリプション放送機関:外資20%まで
特別な条件が科される分野
この分野は、農業であれば農林省・林業であれば森林省など、関連する官庁から許可証などを取得する場合で、今回は省略します。出資比率の上限は分野・事業の内容で異なりますので、やはりネガティブリストの確認が必須です。
本記事では外資の参入が規制されている分野において、説明を割愛した分野がいくつかあります。自社ビジネスに関わる分野はどうなのか疑問に思った企業様は、こちらよりお気軽にお問い合わせください。
ネガティブリストからプライオリティリストへ
現地法人を設立する場合にはネガティブリストの確認が大切とお伝えしてきましたが、2021年には新しく投資プライオリティリスト(Daftar prioritas investasi)が発表されています。(投資事業分野に関する大統領令2021年第10号)
このプライオリティリストは、これまでのネガティブリストと違い、投資の優先産業をリストアップしたものです。対象分野に投資する場合には税制上の優遇措置・手当・輸入税の免除・事業許可書の取得の容易さなど、インドネシアでビジネスしやすいようになっています。
ネガティブリストもプライオリティリストも、優先事業分野・条件付き事業分野等が定められているものですが、それぞれ下記のように変わっています。
- 優先事業分野リスト:明記無し→245事業分野
- パートナーシップが必要な事業分野リスト:145事業分野→89事業分野
- 条件付き事業分野リスト:350事業分野→46事業分野
優先事業分野リスト
この分野は、財政的優遇(法人所得税優遇、法人所得税一時減免、関税免除等)や非財政的優遇(許認可取得の容易化、インフラ、エネルギー、原材料の提供、労働力確保等)を受けることができます。
- 国家戦略的プログラムの一環
- 資本・労働集約型
- 高度な技術の利用
- 先進的な産業への分類
- 輸出志向
- 研究・開発その他革新的な活動を対象
パートナーシップが必要な事業分野と条件付き事業分野は前章で挙げた分野です。プライオリティリストによって優先事業分野が規定されたり、規制される分野の緩和がされましたが、これまでのネガティブリストと同様で特定の分野では規制が科せられるという考え方は変わりありません。

● アフターサービス(C19):97,000円
● 修理やメンテナンス(C20):97,000円
● 就労ビザ(E23/E24/E25):25.000.000ルピア(約220,000円)
● 家族同行ビザ(E31B):15.000.000ルピア(約130,000円)
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インドネシアでの会社設立
以上見てきたように、インドネシアで外資企業を設立する場合、その設立条件が非常に複雑になっていることがご理解いただけたと思います。この複雑な外資規制やネガティブリストなどを正確に理解して、会社設立を進めていくのは非常に難度が高いです。
弊社では会社設立の経験豊富なインドネシア人スタッフが多数在籍しているので、安心してご依頼いただけます。まずはインドネシア事情をお聞きになるだけでも参考になるため、お気軽にご連絡をいただければと思います。
関連記事内に必要な情報が見つからない方は、下記のサイト内検索を活用してください。

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インドネシアでは、農業、林業、製造業、公共事業などの特定のカテゴリーで外資系企業の参入が禁止となっています。また、海洋水業、工業、商業などの一部カテゴリーで、外資比率に上限が設けられています。
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弊社で公開している記事の1つ1つは、日本人とインドネシア人のライター、日本人とインドネシア人の編集者がそれぞれ協力しながら丁寧に1記事ずつ公開しています。
記事の内容にも自信がありますし、新しい情報が入り次第適宜アップデートもしています。これだけ手間ひまかけて生み出した記事はできれば一人でも多くのインドネシアのビジネス関係者に読んでもらいたいです。
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