日系企業がインドネシアから撤退する際の会社清算手続きとスケジュール
- 公開
- 2024/02/09
- 更新
- 2024/11/27
- この記事は約5分23秒で読めます。
日本からインドネシアへ多くの企業が進出し成功している一方、なかには事業が軌道に乗らず撤退を余儀なくされるケースも少なくありません。インドネシアから撤退する主な方法は、「事業の譲渡」または「会社の清算(閉鎖)」です。
何らかの事情で会社を清算しなければならないとき、経営者は会社清算の手続きを進めると同時に、新聞や官報への公告、従業員や取引先へ清算の通知などをしなければいけません。
そこで本記事では、インドネシアに進出する企業が事前に知っておきたい、外資法人(PMA)の会社清算手続きを紹介します。具体的な清算プロセスのほか、清算の際の注意点も紹介しているので、参考にしてみてください。
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日系企業のインドネシア進出と撤退の動向
外務省が公表する海外進出日系企業拠点数調査(2022年調査結果)によると、インドネシアには2,103の日系企業の拠点があるとのこと。2021年時点での調査結果は2,046拠点、2020年時点は1,959拠点で、コロナ禍にも関わらず拠点数は増えています。
一方、インドネシアから撤退する日本の大企業の存在も目立ちます。2016年に楽天、2017年にセブンイレブンが撤退したほか、2023年12月にはサントリー食品インターナショナルが撤退することを発表しました。
これからインドネシアへ進出する日本企業は、過去にどのような企業がインドネシアへ進出し、どういった流れで撤退することになったのかを一度確認しておくのがおすすめです。
日本企業がインドネシアから撤退する理由や事例に興味がある方は、以下の記事をぜひご覧ください。
インドネシア進出で苦労する日本企業の特徴や海外事業で感じる課題と撤退の理由、インドネシアから撤退した日本企業の事例などを紹介します。
参考:外務省「海外進出日系企業拠点数調査 3 調査の対象」
清算のための準備
インドネシアで外資法人を清算するためには、以下の通りいくつかの準備が必要です。
- 関係者の合意
- 在庫の処分
- 固定資産の処分
- 賃貸物件の処分
- 労務手続き
- 最終決算処理
- 会社清算手続き
例えば在庫の処分に関しては、取引先に説明したうえで新規の発注を止めたり、残った原材料の売却先を探したりする必要があります。製品を製造するための設備を所有している場合は、売却や破棄を済ませるほか、工場や借家の処分方法も考えなければいけません。
また、従業員に残りの賃金や退職金を支払ったり、会社清算前の最後の決算報告をしたりする必要もあります。
特に従業員を雇用していたり、会社の事業規模が大きかったりする場合は、従業員や取引先との調整が必要となり、会社をすぐに清算できるわけではありません。そのため、どのタイミングで清算を完了したいのかというスケジュールを意識して、計画的に手続きを進めることが大切です。
インドネシアの会社清算のプロセス
ここでは、上記の「清算のための準備」の中でも「会社清算手続き」のプロセスを中心に紹介します。ただ、清算手続きの状況によっては順番が前後する可能性もあるので、あくまで基本的な流れとして参考にしてください。
参考:
ジェトロ「インドネシア 外国企業の会社清算手続き・必要書類 詳細」
法務省「インドネシア会社法に関する報告書|P91~93. (2) 清算手続」
岡山県庁「岡山県インドネシアビジネスサポートデスクレポート Vol.93(2019.4月号)」
Bizlaw「Inilah Cara Pembubaran PT PMA Di Indonesia 2023」
株主総会
裁判所から会社閉鎖の命令を受けたなどの強制的な閉業の場合を除き、会社を清算するためには株主総会を開くことになります。
会社の清算には、株主総会に株主の4分の3以上が参加したうえで、議決権総数の4分の3以上の賛同を得る必要があります。ただし、会社によっては賛同数により厳しい条件が定められている場合もあるので、事前に確認しておきましょう。
なお、会社清算のための株主総会を開くためには、事前に株主へ株主総会の実施を案内し、清算の審議が開かれることに賛同してもらうことが不可欠です。
清算人の選定
法第142条第1項にて、会社を清算する事由として以下の6つが挙げられています。
- 株主総会決議
- 定款に規定された会社の存続期間の満了
- 裁判所の決定
- 破産費用の支払ができないことを理由とした商事裁判所による破産手続の取消決定
- 破産宣告を受けた会社の破産財団が破産及び債務の支払猶予に関する法律に規定された債務超過状態にある場合
- 会社の営業許可が取り消され、法令に従って会社を清算しなければならない場合
上記の1、2、4、6を理由に清算する場合は、清算人を選定する必要があります。清算人とは清算に関する諸々の手続きを行う人のことで、1の「株主総会決議」で清算の決議を行う場合は、この株主総会決議で清算人も選定します。
清算人は会社の資産や負債の記録、債権者に対する支払い、すべての株主に対する残存資産の支払いなどを行いますが、もし何らかの理由で清算人が職務を全うできなくなった場合は、解任することが可能です。
議事録の公正証書化
会社の清算が決定した後、株主総会の議事録を公正証書化します。このタイミングから、会社は清算中のステータスになります。
清算の告知
解散日(清算決議がなされた日)から30日以内に、会社の清算が株主決議されたことを全国版の新聞と官報に掲載します。これは債権者などへの周知を目的としており、この決議に異議がある債権者は60日以内であれば申し出ることが可能です。
なお、清算の告知に記載される内容は以下の通りです。
- 会社を解散した旨とその法的根拠
- 清算人の氏名と住所
- 債権届出書の提出方法
- 債権届出書の提出期間
清算人が公告を怠ったことで第三者に損害を被らせた場合、清算人は会社と連帯してその責任を負うことが定められています。
従業員への通知
従業員へどのタイミングで解雇の説明をするかは会社によって異なりますが、清算が決まってから早い段階で説明するのがよいでしょう。清算の理由について納得が得られるまで説明すること、解雇までのスケジュールや予定を話すことなどが必要です。
また雇用契約の内容によっては、従業員に退職金を支払う必要もあります。従業員への通知に関する具体的な注意点については、後ほど詳しく説明します。
清算の申請
清算の申請は、法務人権省のシステム(オンライン・シングル・サブミッション)を通じて解散日から30日以内に行います。清算の受理書を受け取るのは、債権者の異議申し立て期間の60日間を超えてからになります。
申請の際には、会社設立証書(AKTA)や最新の財務報告書、事業に関する許可書などいくつかの書類を添付する必要があるため、書類を揃えておきましょう。
負債の返済・資産の管理
会社を清算する前に、債権者への負債や税金の支払いを済ませる必要があります。また、法規定によっては資産の売却または譲渡が行われるため、すべての資産が適切に管理されていることも確認しなければいけません。
清算人は負債と資産をまとめた資産分配計画を公告し、これに不服のある債権者は60日以内に異議を申し出ることが可能。その後、清算人は計画通りに資産を分配します。
また、会社の資産と負債を確認した結果、会社が債務超過に陥っている場合は、破産の申し立てを行わなければいけません。
清算
清算の申請が完了し、法務人権大臣によって承認された後、税務署で納税番号と付加価値税課税者登録を返却・抹消する必要があります。
納税番号と付加価値税課税者登録を抹消するためには、税務署の税務調査を受けなければいけません。この際、納税や申告のミスがあれば指摘や追徴課税を受け、場合によってはすべての調査が終わるまでに1年以上かかります。
調査の中で税務署から書類や資料の提出を求められることがあるため、調査が完全に終わるまでやりとりをする担当者が必要です。税務署とのやり取りは社内の担当者に任せるのか、それとも外部のコンサルタントにお願いするのかなどは、清算前から決めておくと安心です。
許可の取り消しと会社登記簿からの削除
債務が完済されたことが分かれば税務調査は終わり、納税番号と付加価値税課税者登録などが抹消されることになります。
清算の公告
清算が完了したら、法務人権大臣へ報告し新聞広告へ掲載します。その後、法務人権大臣は会社の法人格終了を記録し、会社登記簿から会社名を削除してすべての清算プロセスが完了します。
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インドネシアの会社清算の注意点
インドネシアで外資法人を清算する際、特に注意したいのが従業員への通知です。会社は清算が決まると、従業員へ解雇通知書を渡さなければいけません。
解雇通知書を渡す具体的なタイミングは決まっていませんが、遅くても解雇の14日前までと定められています。その後、労働組合と話し合いを行い、解雇に異議がない旨の見解書を得て、解雇通知書とともに労働省や地域の労働局へ届けを出します。
従業員への残りの賃金や退職金の支払いは、清算中の会社が特に優先して行うべき事項です。一定の条件(会社の財務状況の悪化や会社の効率化による事業閉鎖など)に当てはまる場合は、退職金を既定の0.5~1倍で計算することになります。
賃金や退職金の支払いは最優先で取り組まなければならず、しかも、清算プロセスの中で特にトラブルになりやすいポイントです。どのような決まりがあるのかを早めに確認して、スムーズに手続きできるよう準備を進めましょう。
スケジュールに余裕を持って清算手続きをしよう
インドネシアで外資法人を清算したいと思っても、経営者の独断ですぐに清算できるわけではありません。株主総会を開いて賛同を得る、在庫や固定資産を処理する、新聞と官報に清算の公告をするなど、多くの手続きや作業が発生します。
そのため、たとえ可能性が低くても会社の清算が選択肢としてある場合は、早い段階で必要な手続きや清算の流れを把握しておくことが大切です。
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日本企業のインドネシア進出・撤退の動向を教えてください。
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外務省の海外進出日系企業拠点数調査によると、2022年時点でインドネシアには2,103の日系企業の拠点があります。拠点数は年々増えていますが、楽天やセブンイレブン、サントリー食品インターナショナルが撤退するなど、いくつかの大企業が撤退するケースも見られています。
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外資法人(PMA)を清算するプロセスを教えてください。
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外資法人(PMA)を清算するためには、株主総会から始まり清算人の選定、清算の告知、清算の申請、許可の取り消しと会社登記簿からの削除、清算の公告などを行う必要があります。
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外資法人(PMA)を清算する際の注意点はありますか?
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外資法人(PMA)の清算で特に注意したいのが従業員への通知です。遅くても解雇の14日前までに従業員へ解雇通知書を渡さなければいけません。通知後は、従業員への残りの賃金や退職金の支払いを行うことになります。
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