インドネシアの事業ライセンス(KBLIコード)とその調べ方や注意点

公開
2023/12/25
更新
2024/03/01
この記事は約7分12秒で読めます。

インドネシアで会社設立の準備を始める際、はじめにチェックするのが「KBLIコード」と呼ばれる事業ライセンスです。KBLIコードは事業分野ごとに割り振られている番号で、その会社が行える事業の範囲やリスクレベルなどが定められています。

また、インドネシアには外資法人の参入が禁止・規制されている事業があり、投資の優先産業をリストアップした「プライオリティリスト」があります。これを見れば、外資法人の参入が禁止・規制されている事業のKBLIコードを知ることもできます。

そこで本記事では、インドネシアで事業を始める際に必ず押さえておきたいKBLIコードの詳細についてまとめました。

お役立ち資料の無料ダウンロード

インドネシアにおける会社設立の概要を知りたくありませんか?

無料で資料をダウンロードする

インドネシアでの会社設立
まずはこちらをお読みください

KBLIコードとは

KBLI(Klasifikasi Baku Lapanan Usaha Indonesia)とは、インドネシア中央統計庁が作成・公表している事業分野ごとの番号のこと。それぞれの事業に5桁の番号が割り振られており、この番号は新しく会社を設立する際やビジネスライセンスを取得する際に使われます。

それぞれのKBLIコードでは、事業の内容や範囲、リスクレベルなどが定められています。そのためこれからインドネシアで会社を設立する方は、会社の事業に合ったKBLIコードを選択して設立すること、そしてKBLIコードが定める業務のみを行うことが求められます。

また、KBLIコードは内資法人だけでなく、外資法人にとっても重要な項目です。KBLIコードを見ることで、これから始める事業がインドネシアで外資規制されているかどうかを知ることができ、事業を展開する上での重要な判断材料となります。

KBLIコードの調べ方

以下で、KBLIコードの調べ方を説明します。

1.Webサイトにアクセスしてキーワード検索

KBLIコードの調べ方

はじめに「KLASIFIKASI BAKU LAPANGAN USAHA INDONESIA (KBLI) 2020」へアクセスし、検索欄に調べたい事業に関連するワードを入力します。

例えば教育関係の事業を調べたい場合は「Pendidikan(教育)」、コンサルタント業について調べたい場合は「Konsaltasi(コンサルタント)」などと入力します。

KBLIコードの調べ方

上の画像は「Pendidikan(教育)」で検索した際の結果で、例えば以下のような項目が出てきました。

  • 8515‐イスラム寄宿学校教育と幼児及び小学生のためのイスラム宗教教育
  • 8516‐幼児および小学生における宗教教育
  • 8527‐中等宗教教育

2.該当する事業を探してKBLIコードをクリック

この検索結果の中から、該当する事業のKBLIコードをクリックして詳細を確認します。

KBLIコードの調べ方

上の画像は、KBLIコード「85321」の「Pendidikan tinggi akademik swasta(私立学術高等教育)」のページです。

3.事業規模を選択して内容を確認

Usaha Mikro(小規模事業者)、Usaha Kecil(小企業)、Usaha Menengah(中企業)、Usaha Besar(大企業)4つの企業規模の内容を見ることができますが、ここではUsaha Mikroを取り上げます。

KBLIコードの調べ方

このページで確認するのは、主に2点です。

1つは事業の概要について書かれている「URAIAN(説明)」です。

例えばこのKBLIコード「85321」には「高等学校・研究所・大学において、学部・修士課程における学術教育の種類を含め、民間が運営する科学技術分野の研究に親しむための専門性の形成を重視した教育と博士課程」と書かれています。

事業内容によってはほかの事業コードが相応しい場合や、ほかのKBLIコードを追加で取得しなければいけない場合もあるので、これから始める事業に本当に合っているかどうかを正しく確認する必要があります。

KBLIコードの調べ方

次に確認するのが、URAIANの下にある「RUANG LINGKUP(範囲)」の項目です。ここでは、この事業を行うことができる企業の範囲や事業のリスクについて書かれています。

一番上のSkalaは事業規模を示しており、Usaha Mikro(小規模事業者)が事業を始める際の取り扱いについて書かれています。ここでいう小規模事業とは、個人または個々の事業体による経済活動を指し、純資産が5,000万ルピア以下で最大年間売上収益は3億ルピアの事業者など、基準が明確に定められています。

また、その2つ下の項目の「Tingkat Risiko」はリスクのレベルを指します。この事業のリスクレベルは「Tinggi(高い)」と書かれており、最もリスクが高い事業であることを意味しています。

このリスクレベルによって、開業の際に必要な手続きや書類が変わります。以下はそれぞれのリスクレベルの申請に必要な書類となっているので、参考にしてみてください。

リスクレベル必要書類
Risiko Rendah (低リスク)・NIB(事業者識別番号)
Risiko Menengah Rendah(中低リスク)・NIB(事業者識別番号)
・自己申告の証明書
Risiko Menengah Tinggi(中高リスク)・NIB(事業者識別番号)
・地方自治体に認められた証明書
Risiko Tinggi(高リスク)・NIB(事業者識別番号)
・地方自治体による許可
・地方自治体に認められた証明書
KBLIコードの調べ方

そのほかにも、このページには事業に必要な土地面積やビジネスライセンスについて書かれているので、詳細をチェックしておきましょう。

参考1:Website Portal Kelurahan Sukorejo「Pengertian UMKM Menurut Undang-Undang, Kriteria, dan Ciri-Ciri UMKM」
参考2:Kementerian Investasi BKPM「MEKANISME PERIZINAN BERUSAHA BERBASIS RISIKO|P9. Tingkat Risiko」

外資法人とKBLIコード

インドネシアで会社を設立する際、内資法人と外資法人では違ったルールがあります。

特に外資法人として会社を設立する場合は、事業ライセンスをいくつ取得するのか、どのような事業を始めるのかによって費用が数億円変わる可能性があるため、注意が必要です。

インドネシアにおける外資法人(PMA)の設立手順と書類準備

海外の企業がインドネシアで設立できる会社の形態は、主に駐在員事務所、現地法人、支店の3つです。それぞれの設立手順や注意点をみていきましょう。

続きを読む

そこでここでは、インドネシアで外資法人を設立する際に覚えておきたい、KBLIコードのルールを説明します。

事業ライセンスを1つ追加するごとに1億円が必要

外資法人の場合、事業ライセンス(KBLIコード)を1つ追加するごとに土地建物を除いて100億ルピアの資本金を支払う必要があります。2023年11月27日のレートで、約9,600万円となります。

資本金の支払いは会社ごとではなく、KBLIコードに紐づいているのがポイントです。なお、株主の出資金額は1,000万ルピア以上となっています。

ただし、建設施工事業や統合建設事業は少なくとも250億ルピアの資本、ビル全体または統合住宅地の形の不動産業は土地建物を含めて100億ルピア超の資本が必要など、事業ごとにルールが異なる点に注意してください(政令2021年第5号)。

参考:ジェトロ「外資に関する規制」

目的は同じでも事業内容・範囲によって資本金が異なる

(1)木製品、ゴム製品、布製品(2)鉄製品(キーチェーンなど)(3)プラスチック製品
(A)製造KBLI32402
Industri Mainan Anak-anak
 
人形、フィギュア、カードゲームなど
KBLI 25999
Industri Barang Logam Lainnya YTDL
 
鉄を含むおもちゃ
KBLI22299
Industri Barang Plastik Lainnya YTDL
 
プラスチックを含むおもちゃ
(B)卸売KBLI46495
Perdagangan Besar Alat Permainan dan Mainan Anak-anak
 
一般的なおもちゃの卸売
KBLI46699
Perdagangan Besar Produk Lainnya YTDL
 
鉄、プラスチックのおもちゃの卸売
鉄、プラスチックのおもちゃの卸売

例えば「インドネシアに日本のおもちゃを広めたい」という目的で会社を設立する場合、「人形やフィギュアの製造事業」を行うのであれば、事業ライセンスはKBLI32402のみになります。

一方、「人形やフィギュアの製造」に加えて「人形やフィギュアの販売」も行うのであれば、事業ライセンスはKBLI32402とKBLI46495になります。

先述の通り、インドネシアでは資本金の支払いは会社ごとではなく、KBLIコードに紐づいています。

KBLIコードを1つ追加するごとに100億ルピアが新たにかかるため、「インドネシアに日本のおもちゃを広める」という目的でも、事業の範囲や内容によっては数億円の違いが生まれることになります。

目的は同じでも複数のKBLIコードがある

先ほどのおもちゃの製造・販売の事例と同様に、目的は同じでもKBLIコードが同じだとは限りません。例えば「教育事業ができる会社を作りたい」という目的で会社を設立する場合でも、以下の通り複数の事業コードがあります。

業種事業内容の例KBLIコード
人材紹介インドネシア人のエンジニアを国内外に紹介78102
教育受託大学講座の受託85321
教育受託紹介前教育の受託85492
日本語学校e-ラーニングを中心としたコンテンツを提供85493
フランチャイズ日本語学校設立の支援77400

「教育事業」といっても人材紹介や教育受託、日本語学校など、事業内容によってKBLIコードが異なるため、これから設立する会社がどれに当てはまるのかをしっかりと理解しておく必要があります。

インドネシアで会社設立を予定されていますか?
  • 外資で設立すると資本金だけで約1億円が必要と聞いて困惑している
  • 資本金自体に問題はなくて、手続きを丸投げできる会社を探している
  • 会社設立の手法について、内資での設立も選択肢として検討している
現在、上記のようなお困りごとがありましたら、ぜひとも私たちカケモチへご相談ください。インドネシアにおける会社設立のプロフェッショナルが御社に最適なプランをご提案させていただきます。まずはサービスページをご覧ください。

外資法人の参入が禁止・規制される事業・KBLIコード

インドネシアでは、国内の産業を守るため、事業によっては外資の参入が禁止・規制されています。そこで最後に、外資法人の参入が禁止・規制されている事業(KBLIコード)についてまとめたので、参考にしてみてください。

外資法人の参入が禁止されている事業

外資法人の参入が禁止されている事業として「テクノロジーを使用しない、または簡易なテクノロジーしか使用しない事業活動」と「工程がユニーク、労働集約的、かつ伝統的な文化遺産を有する事業活動」の2つが定められています。また、土地建物を除いた資本が100億ルピアを超えない事業活動も認められていません。

そのほか、バティック(ろうけつ染め)や木製建築資材、伝統化粧品など、特定の業種に関しては内資100%の会社のみ事業を行えるとされています。

参考:ジェトロ「外資に関する規制」

内資企業とのパートナーシップが条件付けられる事業

以下は、内資の中小企業または協同組合とのパートナーシップが条件付けられている分野です。こちらも同様に全ての分野が制限されているわけではありません。各産業の右側の列が、制限される具体的な事業内容です。

分野具体例
海洋水業魚の育成・肥育、塩の生産・抽出、水産加工業、水産物の販売
工業魚の缶詰、野菜・果物の塩漬加工業、醤油・テンペなど豆類を使った食品産業、ラタン加工業、ヤシ産業、精油産業、4輪以上の自動車の部品及び付属品産業、通信機器・家電機器の修繕
商業農業機械やオフィス機器のリーシング
エネルギー鉱物資源電力設備分野のコンサルティング
情報通信国際宅配便の代理店事業
公共事業・住宅ビル建設、橋・高架橋の建設

上記は、インドネシアの中小企業または協同組合とパートナーシップを結ぶことで、外資企業でも参入できる事業です。パートナーシップの形は、下請け契約やフランチャイズ、ディストリビューションと代理店業、合弁事業などがあります。

外資比率が制限される事業

以下は、外資法人の参入は可能なものの、外資出資比率の上限が定められている事業です。

・外資の出資49%まで:武器・火器、軍事用車両・船舶・航空機、レーダー、国内海運・水上輸送、空運、宅配
・設立時内資100%、拡張で外資49%まで:新聞、雑誌、メディア発行
・設立時内資100%、拡張で外資20%まで:民間・有料放送局

参考:ジェトロ「外資に関する規制」

特別な条件が課される事業

ここまで外資法人の参入が禁止・規制されている事業を紹介しましたが、建設事業への外資の出資は67%までなど、個別で出資比率が設定されている事業もある点に注意が必要です。

出資比率の上限は分野や事業によって異なるので、これから事業を始める方は、まずはプライオリティリストを確認することが不可欠です。

会社設立に向けて事業ライセンス(KBLIコード)を理解しよう

インドネシアで会社を設立するためにはさまざまな手続きが必要ですが、これから立ち上げる事業がどのKBLIコードに当てはまるのかをまずは理解することが重要です。

本記事でも説明したように、例えば「教育事業」といっても人材紹介や日本語学校など、事業によってKBLIコードが変わります。また、KBLIカードが1つ追加されると新たに約1億円がかかるため、費用面についてもよく考える必要があります。

インドネシアで会社設立を検討している方は、本記事を参考に事業ライセンス(KBLIコード)について理解を深めてみてください。

インドネシアで会社設立にお悩みの方へ

下記のようなお悩みを抱えているなら
今すぐお問い合わせをください

  • 会社設立の大雑把なスケジュールを知りたい
  • 情報が全くないので壁打ちに付き合ってほしい
  • 会社設立の具体的なアクションリストが知りたい

KBLIコードとは何ですか?

KBLI(Klasifikasi Baku Lapanan Usaha Indonesia)コードとは、インドネシア中央統計庁が公表している事業分野ごとの番号のこと。事業の内容や範囲、リスクレベルなどが定められています。

外資法人を設立する際のKBLIコードの取り扱いについて教えてください。

外資法人は事業ライセンス(KBLIコード)を1つ追加するごとに、100億ルピアの資本金を支払う必要があります。そのためKBLIコードを複数選択する場合など、事業の範囲や内容によっては資本金に数億円の違いが生まれることになります。

外資法人の設立が禁止・規制されている事業(KBLIコード)について教えてください。

インドネシアでは、外資法人の「テクノロジーを使用しない、または簡易なテクノロジーしか使用しない事業活動」と「工程がユニーク、労働集約的、かつ伝統的な文化遺産を有する事業活動」への参入が禁止されています。そのほか、内資企業とのパートナーシップを結ぶことで参入できる事業、外資出資比率の上限が定められている事業などがあります。

読後のお願い

ここまで文章を読んでいただきありがとうございました。もしこの文章が少しでもお役に立てたようでしたら、是非SNSでシェアしていただけると嬉しいです。宜しくお願い致します。

SNSでも積極的に情報発信していきます

おすすめのインタビュー記事

  • インドネシア全土の病院と提携。異国でゼロから事業の立ち上げに成功したSMSIDの軌跡

    医療を通じたプロモーション支援を専門とするメディカル広告会社PT. Senior Marketing System Indonesia様へのインタビューです。

  • グリコはどのようにインドネシアのお菓子市場でマーケティングを実践してきたのか

    インドネシアのお菓子市場についてグリコのマーケティング担当者にインタビューを行いました。インドネシア人のお菓子に対する嗜好性やトレンドなどをお伺いしています。

すべての記事を見る

インドネシアで会社を設立する際、予算と目的に合わせた設立方法があります。
弊社では豊富な設立実績があるためまずは一度ご相談ください。

お電話でのお問い合わせ

092-707-2032

(9:00〜19:00)

カケモチの自己紹介

無料

インドネシアで初めてのWebマーケティング

資料ダウンロード
  • 【800名以上が購読中】インドネシアのビジネスニュースレター
  • インドネシアのマーケティング情報に特化した月刊誌
       
インドネシアでの会社設立
まずは気軽にご相談ください。