インドネシアにおける内資法人(PMDN)の設立手順と書類準備

公開
2023/12/06
更新
2024/02/25
この記事は約7分34秒で読めます。

インドネシアで会社を設立する際に考えたいのが、どのような形態で設立するかということ。インドネシアでの会社設立方法には外資法人(PMA)や駐在員事務所などがありますが、その中でも特に費用面で現実的な方法が内資法人(PMDN)です。

そこで本記事では、インドネシアにおける内資法人と外資法人の進出形態の違いや特徴、実際に内資法人を設立する際の手順などをまとめました。

また、記事の最後には内資法人を立ち上げる際によく登場するインドネシア語をまとめているので、実際の設立手続きに入る前にチェックしておきましょう。

円表記は2023年12月7日のレート(1ルピア=0.0094円)で換算し、記載しています。

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インドネシアにおける内資法人と外資法人の進出形態の違い

内資法人(PMDN)外資法人(PMA)
最低払込資本1,250万ルピア(12万円)100億ルピア(9,400万円)
(以前は25億ルピア(2,300万円))
最低投資金額5,000万ルピア(47万円)100億ルピア(9,400万円)
取締役最低1名最低1名
監査役最低1名最低1名
ライセンスプライオリティリストの
確認不要
プライオリティリストの
内容に準ずる
外国人(インドネシア人以外)
による出資
不可
株主2人(社)
日本人不可
2人(社)
日本人可

参考:ジェトロ「インドネシア 税制」

インドネシアに進出する際に、内資法人を設立するか外資法人を設立するかという話は常につきまといます。ただ、多くの企業様に共通する悩みとしては、外資で設立しようとすると資本金が高すぎて(約9,400万円)、本当は外資として進出したいけどできないという点です。

準備しないといけない資本金の額はタイやベトナムよりも圧倒的に高く、進出という意味では東南アジアで1番ハードルが高いと言えます。そういったハードルの高さで進出を断念される企業様も少なくないですが、進出方法はいくつかあるので諦めずに弊社までお問い合わせをください。

以下は内資と外資の会社設立の違いを簡単に比較しています。

費用

上述の通りですが、内資法人と外資法人の設立で大きく異なるのが、設立費用です。内資法人の場合は最低払込資本が1,250万ルピア(12万円)、最低投資金額が5,000万ルピア(47万円)。

外資法人の場合は最低払込資本と最低投資金額がそれぞれ100億ルピア(9,400万円)です。よほど資金に余力のある企業でないと、インドネシアで外資法人を設立するのが難しいと言われている理由がここになります。

設立スピード

外資法人と比べて内資法人のほうが、設立期間が短いことの方が多いです。早ければ2〜3ヶ月程度で設立が可能です。一方で、外資法人だと3ヶ月以上は最低でもかかります。

尚、外資法人の設立に1年近くかかっているケースがありますが、それは外注された会社設立の支援業者がオペレーションをサボっていることが原因なので(サボっていなかったとしても効率が異常に悪いなど)、何かおかしいと思った時点で早めに弊社までご連絡をいただいた方が致命的な事態を防げます。

事業ライセンス

外資法人と内資法人の設立における大きな違いとして、プライオリティリストの確認の有無が挙げられます。プライオリティリストとは、投資の優先産業をリスト化したもの。リストを見ることで、外資企業の進出が規制される業種が分かります。

このリストに該当する業種の場合、外資法人の場合は設立ができなかったり、設立に何らかの制限があったりする可能性があります。

会社の所有権

インドネシアで現地法人を設立する場合、会社設立にかかる費用の問題から、内資法人を設立するのは割と一般的な方法ではあります。ただし、内資法人の設立では、日本人の出資は一切不可となっています。また、会社の設立後も日本人が株主になることは許されていません。

このような事情から、会社の実権を日本人が握ることはできないので、信用できるインドネシア人をパートナーに選ぶ必要があります。また、信用を前提にしつつも、そのパートナーとトラブルに備えた契約を結んでおくことも不可欠です。

インドネシア人の名義を借りる形で内資法人を作る場合は、そこに内在するリスクを踏まえた上で設立をしないと後で後悔することになります。成功事例や失敗事例を予め情報として持っていた方が有利なため、内資法人の設立を検討しているのであれば、一度弊社までお問い合わせください。お役に立てると思います。

内資法人(PMDN)の設立概要

内資法人(PMDN)の設立は、法務人権省へ申請して登記するまでが1つの区切りとなっています。以下はインドネシアで内資法人を設立するための一般的な流れとなっているので、参考にしてみてください。

  • 会社名の予約
  • 定款(会社設立証明書、AKTA Pendirian)の作成・設立公正証書の申請
  • 所在地証明書(SKTU)の取得
  • 納税者番号(NPWP)・課税事業者番号(PKP)の取得
  • 資本金の払込み
  • 法務人権省への申請
  • OSS RBAシステムの申請

内資法人は外資法人と比べて登記までの期間が短く済むことが多いですが、上記の通り書類取得や申請など多くのステップが存在します。

また、業種によって手続きの詳細や書類が変わることもあり、思わぬところで時間がかかる可能性がある点に留意してください。

なお、会社名の予約から資本金の払込みまでは投資調整庁が担当ですが、それ以降は法務人権省、商業省へと担当が変わります。

内資法人(PMDN)設立の具体的な手順

会社名の予約

法務人権省に会社名を予約します。スムーズに予約できるよう、優先度順に3つ程度、会社名の候補を考えておきましょう。

会社名に数字と記号は使えず、3単語で構成されていることが条件です。また、すでに存在する会社と同じ名前や似た名前は不可となっています。分かりやすい英単語3文字だと却下される傾向があり、適度にインドネシア語をまぜることをおすすめします。

定款の作成・設立公正証書の申請

定款(会社設立証明書、AKTA Pendirian)は、公証人(Notaris、ノタリス)を通して作成します。定款に記載される主な情報は、以下の通りです。

  • 会社の名称と住所
  • 会社の設立目的と趣旨、事業の内容
  • 会社の存続期間
  • 授権資本、引受資本、払込資本額
  • 株式数、株券種類と種類毎の株式、株式に付帯する権利、一株の額面価格
  • 取締役及び監査役の職責と人数
  • 株主総会の開催場所の決定と運営方法
  • 取締役、監査役の選任、交代、解任に関する規定
  • 利益処分、配当に関する規定

所在地証明書(SKTU)の取得

会社が所在する地区の役所、または会社が入居するオフィスビルから所在地証明書(SKTU、Surat Keterangan Tempat Usaha)を取得します。

バーチャルオフィスやレンタルオフィスでも問題ないので、後の手続きが滞らないよう早めにオフィスを確保しておくことが重要です。

納税者番号(NPWP)・課税事業者番号(PKP)の取得

会社の納税者番号(NPWP)を取得します。納税者番号の作成は、所在地を管轄する税務署(KPP、Kantor Pelayanan Pajak)で行います。

また、顧客からVAT(付加価値税)を回収する場合は課税事業者としての登録も行う必要があります。ただし、年間売上が48億ルピア(4,500万円)を超えていない場合は、登録・回収をしなくても問題ありません。

銀行口座開設

口座開設をする前に、「資本金送金用の仮口座」を開設します。売上金の入金には利用できませんが、資本金を入金することは可能な口座です。売上金を入金する口座を作る際は、遠隔での開設ができないので、銀行窓口に行く必要があります。

なお、法人名義の銀行口座を開設する際は、先述の手順で発行したAKTAやNPWPが必要です。その他の必要な書類は銀行によって異なるため、確認しておきましょう。

参考までに、インドネシアの主要銀行にはBNIやBCA、Mandiri、BRIなどがあります。ビザや健康保険の支払いをスムーズに行えるよう、できるだけ有名な銀行で口座を開設することをおすすめします。

資本金の払込み

開設した口座へ資本金を送金し、銀行から資本金払込証明書を取得します。

法務人権省への申請

公証人が法務人権省に設立登記の申請を進めていきます。

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名義貸し(ノミニー)制度について

最後に紹介するのが、インドネシアで内資法人を設立する際、頭に入れておきたい名義貸し(ノミニー)制度についてです。

ノミニー制度とは、インドネシア人個人またはインドネシア企業の名義で株式を所有する手法のこと。インドネシア人(ノミニー)の名義を借りることで、たとえ内資法人であっても間接的に日本人が株を所有したり、経営の決定権を持てたりします。

間接的にと書いたのは、実態として株を所有しているのは当然ながらインドネシア人(企業)のためです。そのインドネシア人パートナーに対して貸付けを行い、その担保に事業を抑えて、間接的に法人を設立する手法が一般的です。ただし、この名義貸し(ノミニー)制度はインドネシアでは明示的に禁止されています。

参考:Nusantara Legal Partnership「Doing Business in Indonesia 2021|P16. 名義貸しの禁止」
出典:JETRO「インドネシア 外国企業の会社設立手続き・必要書類」
書籍『オムニバス法対応インドネシアビジネス法務ガイド』

内資法人(PMDN)の設立を検討中の企業様へ

インドネシアの内資法人設立は、外資法人設立と比べて費用が安いうえ、設立までの期間が短く済むのが利点です。しかし、日本とは法人設立の手順や必要書類が異なり、また手続きはすべてインドネシア語で行われるため、決してハードルが低いとはいえません。

そのためこれからインドネシアで内資法人の設立を考えている方は、どのような手続きや書類が必要なのかしっかりと調べておくことが不可欠です。

内資法人のメリット・デメリットについても事前に理解を深め、設立後のトラブルを減らせるよう準備を進めておきましょう。

インドネシア会社設立に関わる基本用語

  • KBLI:Klasifikasi Baku Lapangan Usaha Indonesiaの略で、インドネシア標準産業分類のこと。5桁の数字から構成される。
  • OSS RBA:Online Single Submission Risk Based Approachの略で、様々なビジネス関連のライセンスの申請・発行ができる電子システムのこと。前身のOSS Ver1.1と比較すると、資本やKBLIによって企業のリスクをレベル分けしたリスクベースという考え方が盛り込まれるなど、いくつかの変更点がある。
  • NIB:Nomor Induk Berusahaの略で、事業者識別番号のこと。13桁の数字で構成されている。
  • Sertifikat Standar:リスクベースの四段階で上ふたつの、高リスク、中・高リスクに当てはまる場合に必要な証書。事業実施のための条件を満たしていることを確認したうえで、中央政府または地方政府が発行する。なお、中・低リスクの場合は事業者本人が発行したものでOK。
  • SIUP:Surat Izin Usaha Perdaganganの略で、営業許可書
  • Izin Lokasi:立地許可
  • Akta:定款
  • NPWP:Nomor Pokok Wajip Pajakの略で、納税者番号のこと。なお、納税申告等についてはOSS RBAではなく、djpオンラインというシステムを利用する。
  • WLKP:Wajib Laporan Ketenagakerjaan Perusahaanの略で、義務的雇用報告書。オンライン化されており、毎年12月WLKPを通して労働大臣に従業員の数などの雇用状況の報告をする必要がある。外国人が就労許可・ビザ取得をする際にもこの報告書の提出が必要となる。
  • LKPM:Laporan Kegiatan Penanaman Modalの略で、投資進捗報告書のこと。中小企業は6か月ごと、大企業は3か月ごとにこの報告書の提出が求められている。

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インドネシアの内資法人(PMDN)と外資法人(PMA)の大きな違いは何ですか?

内資法人と外資法人の大きな違いとして、内資法人はプライオリティリストの確認が不要なこと、インドネシア人しか株主になれないことなどが挙げられます。

インドネシアで内資法人(PMDN)として会社を設立するメリットやデメリットはありますか?

インドネシアで内資法人として会社を設立するメリットには、費用が安く済み、設立スピードが早いことが挙げられます。一方、デメリットとしては日本人が株主になれないことが挙げられます。

インドネシアで内資法人(PMDN)を設立する手順を教えてください。

インドネシアで内資法人を設立する際は、会社名の予約、定款(会社設立証明書、AKTA Pendirian)の作成・設立公正証書の申請、所在地証明書(SKTU)の取得、納税者番号(NPWP)・課税事業者番号(PKP)の取得、資本金の払込、法務人権省への申請、OSS RBAシステムの申請を行います。

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