インドネシアにおける駐在員事務所の種類と設立方法

公開
2023/11/04
更新
2024/09/21
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インドネシアで会社を設立する際、大きく分けて現地法人と駐在員事務所の2つの方法があります。駐在員事務所は現地法人と比べて手続きが簡易なため、この記事を読まれている方のなかには駐在員事務所の設立を検討しているという方もいらっしゃるでしょう。

駐在員事務所には3つの種類があり、それぞれで対応できる業務範囲や内容、設立の条件、設立手順などが違うため、事前に調べておくことが重要です。また、場合によっては駐在員事務所ではなく、現地法人で設立したほうがよいケースもあるため、自社のケースがどちらに当てはまるのかをしっかりと考えておく必要もあります。

本記事では、インドネシアにおける駐在員事務所の種類と設立方法をまとめたので、インドネシアへの進出を考えている方は参考にしてみてください。

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外資法人設立には資本金が約1億円ほど必要ですが、インドネシアへはもっとカジュアルに進出できる選択肢があります。

駐在員事務所や内資法人もそうですし、そもそもインドネシアに法人を設立せずに雇用代行という形で進出(営業)できます。

駐在員事務所とは

駐在員事務所と現地法人との違い

インドネシアで会社を設立する際、駐在員事務所のほかに選択肢として挙がるのが現地法人です。現地法人は駐在員事務所と比べると設立手続きが複雑なものの、駐在員事務所のように業務の範囲が厳しく規定されることはありません。

駐在員事務所の種類

駐在員事務所には商事駐在員事務所、企業駐在員事務所、建設駐在員事務所の3種類があり、それぞれで行える業務の範囲が異なります。

以下は、駐在員事務所の3つの種類とそれぞれの特徴です。

商事駐在員事務所企業駐在員事務所建設駐在員事務所
目的市場調査やプロモーション外国投資企業の設立や開発準備インドネシア国内での建設サービスの準備
管轄商業省投資調整庁公共事業省
対応可能な業務範囲・内容・外国企業の製品紹介
・プロモーションや販売促進のための市場調査 など
・インドネシア国内にある子会社や関連会社の監督
・海外本社との調整
・外国投資企業の設立準備 など
・さまざまな建設プロジェクトへの入札参加、契約の締結、建設業務の実施 など
禁止されている業務範囲・内容・インドネシア国内での直接的な商品の取引や販売活動
・入札への参加
・契約の締結 など
・監督・調整を超えた子会社・関連会社の事業運営
・自ら収益を上げる行為 など
・自ら収益を上げる行為
役員インドネシア人または日本人(外国人)1名インドネシア人または日本人(外国人)1名インドネシア人または日本人(外国人)1名
資金規定なし規定なし規定なし
銀行口座会社・従業員ともに口座開設可能会社・従業員ともに口座開設可能会社・従業員ともに口座開設可能
備考・外国人労働者1人あたりインドネシア人3人の雇用が必要
・外国人労働者は大卒以上または大卒相当かつその分野で少なくとも3年の経験があること
・所長が外国人の場合、法令に従ってインドネシア人労働者の雇用が必要・建設工事を受注する場合、公共事業省から建設業ライセンスの取得が必要

上記の表からもわかる通り、駐在員事務所は利益を出すための営業行為が認められていません。許可されているのは市場調査や調整・連絡業務、交渉、物流の管理などになります。

業務範囲が狭い一方で、設立手順がシンプルなこと、比較的少額で設立できることから、本進出前の調査を目的に会社を設立する場合、利益が発生しない業務を目的に会社を設立する場合などは、駐在員事務所の設立を検討するのもよいかもしれません。

また、就労ビザを発行して日本人を雇用することも可能ですが、その場合は表の備考欄に挙げられている条件に従い、インドネシア人も雇用する必要があります。

参考1:長島・大野・常松法律事務所「インドネシア会社法に関する報告書|P7. 第 2 節 駐在員事務所」
参考2:ジェトロ「インドネシア 外国企業の会社設立手続き・必要書類「外国企業の会社設立手続き・必要書類」詳細|P1~14」
参考3:国土交通省「インドネシア 建設業に関する外資規制等」

それぞれの駐在員事務所で設立の手続きや書類が異なるため、設立する事務所の情報をしっかりと調べておくことが大切です。

それでは、この3つの駐在員事務所の必要書類と設立手続きを以下で説明します。

商事駐在員事務所

市場調査などを目的としたものが商事駐在員事務所です。設立するためには、主に以下の3つのステップをクリアする必要があります。

  1. 仮許可の取得
  2. 駐在員事務所長の労働許可の取得(駐在員事務所長が外国人の場合)
  3. 本許可の申請

仮許可の必要書類

仮許可の際に必要な書類は以下の通りです。

  • 在日本インドネシア大使館が認証したLetter of Appointment、Letter of Intent、Letter of Statement
  • 在日本インドネシア大使館の商務官が発行したLetter of Reference
  • 駐在員事務所の活動計画
  • 駐在員事務所長の履歴書と卒業証明書
  • 駐在員事務所長が外国人の場合はパスポートの写し、インドネシア人の場合は住民登録(KTP)と納税者番号(NPWP)の写し

仮許可は発行から2か月間有効です。この間に事務所の契約、労働許可の取得等を完了することで本許可の申請に進むことができます。

本許可の必要書類

次に、本許可で必要な書類は以下の通りです。

  • 仮許可証原本
  • 外国人労働者の労働許可の写し
  • 駐在員事務所の所在地証明(州都あるいは県・市に限り設立可能)

上記に加えて、定められた事業以外行わないことについての宣言書(Declareration)、駐在員事務所長が外国人の場合は暫定居住許可(ITAS)の写しなどが求められることもあります。

外国人の雇用

商事駐在員事務所は、外国人を雇う場合「大卒以上あるいは大卒相当で、かつその分野で少なくとも3年の経験があること」と、「外国人労働者1人に対してインドネシア人労働者3人の割合で雇用すること」の2つの条件を守る必要があります。

企業駐在員事務所

現地法人の設立や開発準備を目的としたものが企業駐在員事務所です。設立の際は、OSS RBAというシステムを通して事業基本番号(NIB)や外国企業駐在員事務所事業許可を取得する必要があります。

事業許可の申請に必要な書類

  • 駐在員事務所を設立する外国企業の英文の定款、または宣誓翻訳者によって翻訳されたインドネシア語の会社定款の写し
  • 駐在員事務所を設立する外国企業によるLetter of AppointmentとLetter of Intent(※)
  • 駐在員事務所長がインドネシアに滞在し、所長以外の役職を兼任せず、インドネシアでほかのビジネス活動を行わないことについての Letter of Statement(※)
  • 在外インドネシア大使館等からの Letter of Reference
  • 駐在員事務所長となる者の有効なパスポート(外国人の場合)、または住民登録証(KTP)の写しや証明写真

※は全て在日本インドネシア大使館等の認証が必要

企業駐在員事務所に対する活動範囲の規則

企業駐在員事務所を運営する上で、以下の活動範囲や条件を守る必要があります。

  • 会社と関連会社との間の利益の監督、仲介、調整、運用は可能
  • 現地法人の設立・事業開発の準備は可能
  • あらゆる会社・子会社・支店の運営への参加は不可
  • インドネシア国内で売買活動や売買契約の締結は不可
  • インドネシア国内の州都でのみ設立可能、所在地はオフィスビル内に限る
  • 企業駐在員事務所の許可は3年間有効で、1年ずつ2回まで延長可能(5年経過後、以前とは別の活動のために延長が認められる場合がある)
  • 駐在員事務所長はインドネシアに居住し、事務所運営責任を持つ
  • 駐在員事務所長は2社以上の外国企業駐在員事務所の役職を兼任しない
  • 駐在員事務所の所長が外国人の場合、法令に従ってインドネシア人労働者を雇用する

商事会社駐在員事務所が州都だけでなく県や市での設立も認められている一方、企業駐在員事務所は州都でのみ設立可能な点に留意する必要があります。

また、商事会社駐在員事務所のもう1つの特徴として、駐在員事務所長がインドネシアに居住する必要があることが挙げられます。

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建設駐在員事務所

建設駐在員事務所は、入札・契約締結・建設工事の実施などの事業主体となることができます。官公庁との大規模なプロジェクトに携わることがほとんどであるため、この形態で設立することになるのは主に大企業だと言えます。

必要書類と手続き

建設駐在員事務所の設立に必要な書類と手続きは以下の通りです。

  1. オンライン・シングル・サブミッション(OSS)に必要書類をアップロードし、事業基本番号(NIB)と事業体認証(SBU)を申請
  2. 事業体認証機関(LSBU)が認証
  3. 建設サービス開発庁(LPJK)がSBU番号を給付
  4. 申請者はOSSシステム上でSBUを受理
  5. SBUの発行から30日以内に建設機器、同1年以内に品質マネジメント・システムを完備し、OSSシステムに品質マネジメント・システム関連の書類をアップロード
  6. 公共事業国民住宅省の審査
    条件順守と見なされれば、OSSシステムからNIBと、外国建設駐在員事務所許可に相当する基準認証が発行される。

なお、ステップ1のOSSシステムでのNIB・SBU申請の際に必要な情報は以下の通りです。

  • 年間売上高
  • 財務能力
  • 建設労働者の準備
  • 建設機器の準備能力
  • 品質管理システムの導入状況
  • 贈収賄防止管理システムの導入状況

自社の状況に合った進出形態を選ぶことが重要

本記事ではインドネシアで駐在員事務所を設立する方法について説明しましたが、これからインドネシアへ進出する企業は、駐在員事務所に限らず自社の状況に合った進出形態を選ぶ必要があります。

例えば駐在員事務所のほかには、外資法人(PMA)や内資法人(PMDN)として設立する選択肢もあります。現地法人の場合は駐在員事務所とはまた違った手続きや書類が必要になりますが、業務範囲が広がるといったメリットがあります。

インドネシアで行うビジネスの内容や規模によって適切な設立形態は異なるので、これから本格的に進出を考えている方は、それぞれの進出形態を比較するところから始めてみてはいかがでしょうか。

インドネシアでのビジネスにお悩みの方へ

最後まで文章を読んでいただきありがとうございます。ここまでご覧いただいたということは、記事の内容に対して一定の信頼感や満足感を得ていただいたのかなと推測しています。
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インドネシアの駐在員事務所にはどのような種類がありますか?

インドネシアでは、市場調査やプロモーションを目的とした「商事駐在員事務所」、外国投資企業の設立や開発準備を目的とした「企業駐在員事務所」、インドネシア国内での建設サービスの準備を目的とした「建設駐在員事務所」があります。

それぞれの駐在員事務所の特徴を教えてください。

商事駐在員事務所は外国人労働者1人あたりインドネシア人3人の雇用が必要で、企業駐在員事務所は所長が外国人の場合、法令に従ってインドネシア人労働者の雇用が必要です。また建設駐在員事務所は建設工事を受注する場合、公共事業省から建設業ライセンスの取得が必要といった特徴があります。

インドネシアで駐在員事務所を設立する際、役員や資金に規定はありますか?

インドネシアで駐在員事務所を設立する場合、資金に決まりはありませんが、役員はインドネシア人または日本人(外国人)1名を用意する必要があります。

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