日本企業がインドネシアから撤退する理由と事例紹介

公開
2023/08/16
更新
2024/02/03
この記事は約6分14秒で読めます。

豊富な資源や急速な経済発展に加え、日本人や日本製品に好意的な人が多いなど、日本企業がビジネスに挑戦する上で魅力的なインドネシア。しかし、多くの日本企業がインドネシアでのビジネスに成功している一方、撤退を余儀なくされた企業があるのも事実です。

インドネシア進出にあたっては、先例を見たうえで、どのような課題が存在するのかを把握し、対策を練っておくことは、撤退のリスクを下げることに繋がります。

そこで本記事では、インドネシア進出の際によく遭遇する問題やインドネシア進出で苦労する日本企業の特徴、インドネシアから撤退した日本企業の事例などをまとめました。

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日本企業の海外進出の動向

2022年度にジェトロが行ったアンケート調査によると、海外への輸出拡大を図る日本企業の割合は全体の72.5%。2021年度と比べて10ポイントほど減少し、海外への輸出に対してやや後ろ向きになっていることが伺えました。

輸出方針について現状維持・縮小・撤退を検討する主な理由としては、「コロナ禍や戦争などに関連する国際情勢」や「相手国のインフレなど経済的な要因」などが挙げられます。

輸出意欲に陰りが見える一方、「材料の現地調達化が進み日本からの調達が少なくなる」、「円安が続かない見通しから現地調達化を考えている」と答えた日本企業もありました。

輸出に対してはやや後ろ向きではあるものの、現地調達化を意識している企業が複数あることから、海外での事業展開や事業拡大に対して、全体的にはネガティブなわけではないといえそうです。

参考:JETRO「2022年度|ジェトロ海外ビジネス調査 日本企業の海外事業展開に関する
アンケート調査|P14. 今後数年の輸出拡大、新たな輸出開始意欲に陰り」

インドネシアで苦戦する日本企業の特徴

入念な準備のもとインドネシアへ進出したものの、思うような結果が出ず、最終的には撤退してしまう日本企業も珍しくありません。

ここでは、インドネシア進出後に直面する課題に軽く触れるとともに、インドネシアで苦戦する日本企業の特徴をまとめました。

本社の意向を聞きすぎる

インドネシアに事業所を置いて現地でビジネスをする場合でも、経営の最終決定権が日本本社にある場合について。

最終決定権が本社にあることから、特に規模の大きな企業の現地支社では、本社の稟議が通るのを待つ必要があったり、本社への報告業務に労力がかかりすぎたりすることがあります。本社とのやりとりで決断スピードが遅くなった結果、ビジネスチャンスを逃しやすいのがインドネシア進出で苦戦する要因の1つです。

また、インドネシアのような新興国は日々の状況が目まぐるしく変わるものですが、そういった状況の変化を知らない本社の意見や意向を聞きすぎて、間違った方向に事業が進んでしまうケースもあります。

ローカライズができていない

日本人の考える「高品質な商品」や「優れたサービス」が、インドネシアの人々にとって必ずしも魅力的に映るわけではありません。インドネシアに限らず、海外で事業を行う場合はその国のニーズを理解しローカライズする必要があります。

ローカライズ戦略で海外展開に成功した企業の1つとして、世界的なアパレルショップのユニクロを運営するファーストリテイリングが挙げられます。

同社は、海外出張者が多い国ではたとえ一年中気温が高くてもフリース製品を販売するなど、現地のニーズを徹底的に満たす事業戦略で次々と海外進出を成功させました。インドネシアでも、日本よりも高い販売価格ながら人気を集め、店舗数を増やしています。

「日本ですでに売れているから」という成功体験や思い込みを頼りに商品やサービスを売り出すのではなく、その国の気候や文化、生活、国民性などを調査し、何が求められているのかを理解した上で計画を練ることが重要だと分かる事例です。

異なる商習慣についていけていない

インドネシアの商習慣や仕事観には、日本と異なる点がいくつもあります。日本からやってきたばかりのときは、それを理解できず苦労するケースがよく見られます。

例えば、日本人は世界的に見て時間をよく守る国民性といわれており、上司が部下の進捗状況を細かく管理しなくても大きな問題が発生しないことが多いものです。

一方、インドネシア人の中には日本人と比べて時間厳守の意識が弱い人も多いことから、納期を早めに設定したり、進捗を細かく確認したりといった対応が必要となるケースもあります。

ほかに、人口の約90%近くをイスラム教徒が占めるインドネシアでは、イスラム教徒ならではの文化や習慣がビジネスの場に絡んでくることもあります。

日本企業が海外事業で感じている課題

次に、実際に海外でビジネスを始めてみて感じる課題に関する調査結果を紹介します。

下記は、海外進出・海外ビジネス支援プラットフォームのDejimaが、1年間の進出相談と海外進出企業、海外進出支援企業を対象に実施したアンケートの調査結果です。

Dejima

同調査によると、日本企業が海外へ事業を展開する上で最も課題を感じていることが「情報収集(61.3%)」でした。以降は「現地パートナー探し(50.9%)」、「売り上げが上がらない(42.5%)」、「現地調査の実施(38.7%)」と続きます。

インドネシアに進出した企業でも、言葉の壁があり情報収集がはかどらない、現地でのネットワークが弱くパートナー探しが上手くいかないなどの問題を抱えるケースが少なくないようです。

画像出典・参考:Didima~出島~「海外事業の撤退の理由(タイミング)は?撤退の判断基準は?」

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日本企業が海外事業の撤退を決める理由

海外に進出していた日本企業の撤退理由について知ることは、これから海外へ進出する企業にとって、撤退のリスクを下げることに繋がります。

やや古い調査ですが、中小企業基盤整備機構の「平成28年度中小企業海外事業活動実態調査報告書」によると、日本企業が海外事業を撤退した(または撤退を検討している)理由は以下の通りでした。

平成28年度中小企業海外事業活動実態調査報告書

最も多いのは「日本本社の経営方針変更(84%)」で、以降は「現地の従業員人件費等のコスト上昇(78%)」、「現地における競合激化(63%)」、「現地の商習慣、法制度等への対応が困難(61%)」と続きます。

国際情勢の変化によるコスト上昇などの環境的な要因のほか、現地の商習慣や現地社員の確保・育成など、進出国への理解不足が撤退の要因となったケースもあります。

参考:中小企業基盤整備機構「平成 28 年度中小企業海外事業活動実態調査報告書|P82. 図表 102 撤退した(または撤退を検討している)拠点の撤退理由(最大 3 つまで回答)」

インドネシアから撤退した日本企業

それでは最後に、インドネシアから撤退した日本企業の事例を紹介します。

楽天

インドネシアから撤退した楽天
画像出典:Rakuten BLOG

2011年、楽天はインドネシア企業との合弁でECサイト「Rakuten Belanja Online」をオープンし、「日本風の通販プラットフォーム」として注目されました。

日本製品が簡単に手に入ることもあり、ネット通販に熱心な人たちの間では人気となりましたが、2年後の2013年には合弁が解消され、2016年3月にはインドネシアから撤退。楽天は同じタイミングで、シンガポールとマレーシアからも撤退しています。

楽天のインドネシア撤退には、いくつかの理由があります。まず、インドネシアは人口の多さや経済成長率の高さという点で魅力的ではあったものの、経済格差が大きいことやSNSを介した直接販売が盛んであることなどから、ECサイトの市場が当時は想定していたほど大きくなかったことが挙げられます。

また、現地の人々の嗜好や消費傾向に通じている現地企業との競争も熾烈で、外資系としてECサイトの運営を継続するコストと見合うほどの利益を上げられず、事業の見直しを迫られた形です。

セブンイレブン

セブンイレブンは2009年にインドネシア1号店をオープン。以来、店舗を増やし、最終的には161店舗を展開していましたが、2017年6月をもってそのすべてを閉店し、インドネシアから撤退しました。

インドネシアでは、海外の小規模小売業は直営店を持つことができません。現地の商店、食堂、屋台などを保護するため規制されているのです。そこで、撤退したセブンイレブンを含め日系コンビニ各社は現地企業と提携し、フランチャイズ形式の「飲食店」としてインドネシアに進出しました。

店内または敷地内にイートインスペースがあり、店内購入品をそこで食べられるようにした、カフェスペース併設コンビニです。ホットスナックやドリンクをレジで注文するスタイルは、当時のインドネシアの人々の目には新鮮に映りました。

しかし、インドネシアはもともと外資系コンビニの進出先としては条件が厳しい上に、ここ数年で取扱品や出店数に関する規制が強くなりました。その影響で日本のコンビニ最大手であるセブンイレブンも、とうとう経営が厳しくなったというわけです。

インドネシアの日系コンビニとしては、セブンイレブンとミニストップが撤退し、ローソンも伸び悩んでいます。一方で、2012年にインドネシア進出を果たしたファミリーマートは、2022年現在、215店舗まで数を増やしました。

インドネシアの規則は驚くほどコロコロ変わりますし、外資系の小売企業に対する風当たりは依然として強いのが現状です。そんな中で事業拡大に前向きで相性の良い地元企業と手を組めたかどうかが、インドネシアに進出した日系コンビニの明暗を分けました。

昭和電工

昭和電工マテリアルズと統合し、現在はレゾナックに社名を変更した昭和電工も、インドネシアから事業を撤退した過去があります。

同社は2007年、インドネシアで酸化アルミニウムを生産する会社INDONESIA CHEMICAL ALUMINA(インドネシア・ケミカル・アルミナ)を、現地合弁企業のAntam(アンタム)社と設立しました。

それから4年間にわたり工場を稼働し、現地従業員への技術指導などを通して酸化アルミニウムの製造に取り組んできました。しかし、従業員の熟練度が不足していたことから工場の操業が安定せず、2017年には出資の取りやめと事業撤退を決めました。

インドネシア人従業員の育成は、予想以上に難航する場合があります。工場建設や開業までは上手くいっても、管理者である日本人と部下の現地従業員が上手くコミュニケーションを取れない、現地従業員のスキルが不足しているなどの問題により事業の運営でつまずくケースがあります。

未経験者でも教育すればどうにかなると思いがちですが、国が違えば人々の価値観や教育的なバックグラウンドも違い、それがモチベーションや向上心、理解力の差に繋がる場合があります。

事業を撤退するに至る理由は1つではなく、さまざまな問題が複合的に絡まっていることがほとんどですが、昭和電工の事例に関しては人材の採用や育成の面が大きな要因となったようです。

日本企業がインドネシア進出で成功するために

日本とインドネシアは国民性や商習慣、物価などさまざまな面で違いがあるため、日本でビジネスをするのとはまた違った視点や戦略を立て、進出の準備を進める必要があります。

国際情勢の変化などの要因は避けにくいものの、インドネシアビジネスにはどのような課題や難しさがあるのかを理解しておけば、撤退のリスクを少しでも下げられるはずです。

これからインドネシアへの進出を考える企業様は、本記事をぜひ参考にしてみてください。

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日本企業がインドネシアに進出後、どのような理由で苦戦するのか教えてください。

インドネシア進出で苦戦する理由は企業によってさまざまですが、例えば本社の意向を聞きすぎる、ローカライズができていない、異なる商習慣についていけていないなどの理由が挙げられます。

日本企業が海外事業を撤退する理由を教えてください。

中小企業基盤整備機構の「平成28年度中小企業海外事業活動実態調査報告書」によると、日本企業が海外事業を撤退する最も大きな理由は「日本本社の経営方針変更」で、以降は「現地の従業員人件費等のコスト上昇」、「現地における競合激化」、「現地の商習慣、法制度等への対応が困難」と続きます。

過去にインドネシアから撤退した日本企業について教えてください。

過去にインドネシアから撤退した日本企業には、楽天やセブンイレブン、昭和電工(現レゾナック)などが挙げられます。

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