インドネシアで小売業を始める際の外資参入規制の詳細と注意点

公開
2024/05/04
更新
2024/07/09
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インドネシアで外資法人としてビジネスを始める際、大きな障壁となるのが外資法人にのみ課される参入規制です。高額な資本金が必要、開業できる業種が限られるなど、インドネシア進出のハードルとなっています。

この外資参入規制の内容は、業種によって異なります。そのため、インドネシア進出の前に、開業を予定している業種にどのような規制が課されているのかをよく調べておくことが不可欠です。

そこで本記事では、インドネシアの外資参入規制の中でも、小売業に焦点を当てたものをまとめました。外資系小売企業に課される規制の内容や、実際に問題となった事例などを紹介しているので、参考にしてみてください。

円表記は2024年4月17日のレート(1ルピア=0.0095円)で換算したものです。

参考:ジェトロ「小売(Retail)インドネシア」

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インドネシアに進出する際の外資参入規制について

小売業にのみ課される外資参入規制について紹介する前に、インドネシアに進出するすべての外資法人に課される規制について紹介します。

以下は、外資法人の参入が禁止されている分野をまとめた表です。

分野具体例
農業米・トウモロコシ・大豆の作物・サトウキビ等の甘味植物・タバコ・綿花・ゴム等の栽培、畜産業(豚の飼育、鶏の飼育と交雑)、プランテーション作物の加工業
林業シナモン等の森林プランテーション事業、製材業、ラタン加工一次産業等
製造業穀物・根菜等の加工食品産業、手描きのバティック製造、特定の文化遺産や芸術的価値を有する手工芸産業、家庭用の陶磁器産業、二輪車の修理・メンテナンス産業等
公共事業工事金額が500億ルピア(4億7,600万円)までの建設業、100億ルピア(9,500万円)までのコンサルタント業
文化・観光旅行代理店、観光ガイドサービス業等
情報通信技術コミュニティー放送機関(LPK)、インターネットカフェ等

インドネシア国内の中小企業や共同組合を保護するため、インドネシア政府は外資法人が上記の業種の事業を始めることを禁止しています。

また、禁止はされていないものの、海洋産業や工業などの分野は現地の中小企業・協同組合とのパートナーシップ締結が必要。損害保険や生命保険の分野は外資の出資比率80%が上限など、一定の条件をクリアした場合にのみ外資法人として開業できるものもあります。

そのほか、内資法人は1,250万ルピア(11万9,000円)の資本金で開業できるのに対して、外資法人は100億ルピア(9,500万円)の資本金が必要。これも、外資法人の参入を規制することを目的としています。

インドネシアの小売企業設立と外資参入規制

インドネシアでは外資法人でも小売業に参入できますが、その場合はいくつかの条件を満たす必要があります。そこで次から、インドネシアで外資法人が小売業の会社を設立する際の規制の内容について見ていきます。

業種の規制

ドラッグストアやカーディーラーなど数ある小売業の中でも、外資法人が参入できるのは近代的商業施設(スーパーマーケット、デパート、ミニマーケット(コンビニエンスストア))で行う総合的な小売業のみで、それ以外の小売業を始められるのは内資100%の会社に限定されています。

つまり、現地の中小企業と競合しないような大規模なビジネスをする場合に限っては、外資法人でも小売業の開業が許可されているということです。とはいえ、参入可否については個別に事業を調べた方が確実なので、もしインドネシア進出を検討中の小売業関係者様がこの記事をご覧になっていたら、一度弊社までお問い合わせください。

また、アルコール飲料の卸や屋台での販売を含む小売業を行う場合は、アルコール飲料の管理・監督分野の法令に従って、強い規制と厳しい監督下に置かれるとされています。

参考:ジェトロ「外資に関する規制」

進出形態の規制

上記では外資でも開業できる場合として近代的商業施設で行う総合的な小売業を挙げましたが、開業する際は以下の条件をクリアする必要があります。

  • スーパーマーケット:売場面積1,200平米以上の場合は外資100%可能
  • デパート:売場面積400~2,000平米のデパートは外資67%まで、売場面積2,000平米を超える場合は外資100%可能
  • ミニマーケット:売場面積400平米以上の場合は外資100%可能

インドネシアではフランスの「カルフール」など外資系の大規模なスーパーが普及していますが、インドネシア企業のスーパーと比べて規模が大きい店舗が多いのには、上記のような事情が関係しています。

参考:DATABASE PERATURAN JDIH BPK「PERATURAN PRESIDEN REPUBLIK INDONESIA NOMOR 44 TAHUN 2016|P48. 項目179~181」

出資比率の規制

近代的商業施設以外での小売業に関しては、地場企業と合弁する場合のみ参入が可能です。

また、海外の投資家や企業から出資を受ける企業は、その出資比率や出資額に関わらず、すべてが外資法人として扱われます。

インドネシアで外資法人の小売業を開業する場合、ASEANに属する国とASEANに属さない国の投資家または企業からの出資比率に差がある場合は、開業手続きをする際にその旨を記載する必要があります。

現地企業と提携してブランドを展開している小売業の例

インドネシアで外資法人が小売業を始めるのは決して簡単とはいえませんが、実際にインドネシアを訪れると、ローソンなど日本の小売業の店舗を多く見かけます。

こういった店舗は外資参入規制をクリアし外資法人として運営しているケースも考えられますが、実際は外資法人が運営しているのではなく、インドネシア国内のパートナー企業にライセンスを与えて運営しているケースもあります。

例えばインドネシアでローソンのライセンスを所有しているのはインドネシアの企業Lancar Wiguna Sejahteraで、同社が日本で確立されたローソンのビジネスモデルを活用し、インドネシアでフランチャイズ展開を行っています。

出店場所の規制

インドネシアで外資法人が小売業を始める際は、出店場所に以下の制限が設けられます。

  • 住宅地域などの狭小道路沿いへの出店は不可
  • 近代的商業施設は店舗エリア60平米につき自動車1台分の駐車スペースを設けること
  • ゾーニング規制に従うこと

インドネシアでは各地方が「住宅地区」や「商業地区」などの利用区分を条例で定めており、この利用区分に関する規制はゾーニング規制といいます。外資法人が小売業を始める際は、このゾーニング規制に従わなければいけません。

ゾーニング規制の例の1つとして、伝統的な市場と距離をとって出店することが挙げられます。市場だけでなく、エリアによってはモスクなどの宗教施設や病院との距離に関する規制が設けられていることもあるので、よく確認することが重要です。

最低資本金

最初にした通り、外資法人として開業する場合は100億ルピア(9,500万円)の資本金が必要です。小売業だけでなくほかの事業も行う場合は、ビジネスライセンスを1つ追加するごとにさらに100億ルピア(9,500万円)の資本金が必要となります。

投資進捗報告書の提出が必須

実際に外資法人として小売業を始めた後は、LKPM(投資進捗報告書)をインドネシア投資調整庁に定期的に提出する必要があります。LPKMを提出しないと警告書が送られ、それでも対応しなければ行政罰の対象となるため注意してください。

なお、内資法人と比べて外資法人が営業許可を得るための基準は厳しく、会社の設立申請から従業員のビザ取得まで、各段階で厳しく審査されます。

開業後も外資法人ならではの様々な手続きが必要となるので、インドネシアで小売業のビジネスをご検討中の企業様はお気軽に弊社までご相談ください。

小売業の外資参入規制の運用実態

インドネシアでは外資法人の取り締まりが年々厳しくなっており、規制に従わずに開業・運営をした場合は罰則を受けることもあります。

ただ、規則が制定される前から住宅街などの現在の規制地域ですでに小売業を始めていて、後から規則が制定された場合は、厳しい取り締まりは受けていないようです。

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インドネシアの小売会社で取得必要な許可・ライセンス

インドネシアで外資法人が近代的商業施設でビジネスを始める場合、外国投資の原則許可やロケーション許可、恒久営業許可などのほか、以下の通り施設の分野に合ったIUTM(近代的商業施設事業許可)を取得する必要があります。

  • スーパーマーケット:Izin Usaha Toko Swalayan untuk Supermarket
  • デパート:Izin Usaha Toko Swalayan untuk Department Store
  • ミニマーケット:Izin Usaha Toko Swalayan untuk Minimarket

近代的商業施設の設立や運営を監督するのは地方自治体となっています。すべての申請が完了し、地方自治体から許可を取得するまでは早ければ20日間ほどですが、余裕をもって1〜2か月ほど確保しておくのが理想的です。

参考:ジェトロ「営業許可【ライセンス名称、所管省庁・機関、事業関連法(1. 外資規制の4(2))】|P2.小売」

小売の外資参入規制のルール違反の例

本記事内で述べた通り、インドネシアで外資法人が小売業を始めたい場合は、さまざまな外資参入規制を受けることになります。この外資参入規制を回避しようとして、日本のセブンイレブンがインドネシアで問題視された事例があります。

セブンイレブンはもともと、インドネシアの現地企業Modern Putra Indonesiaに運営を任せて現地でフランチャイズ展開していました。

インドネシアでミニマーケット(コンビニエンスストア)を始める場合は小売業の営業許可が必要で、さらにカウンターなどのイートインスペースを設ける場合はレストランまたはカフェテリアの営業許可が必要です。

しかし、セブンイレブンはレストランの営業許可しか取得していなかったため、インドネシア政府は小売業の営業許可を取得するよう求めました。

セブンイレブンがレストランの営業許可証しか取得していなかったのは、小売業に比べて、飲食業の外資法人規制が緩かったからという背景があります。

2017年に、セブンイレブンはインドネシアから全店撤退。原因の1つに、このような外資系小売業に対するインドネシア政府の風当たりの強さがあるといわれています(撤退に関しては、事業ライセンスの問題を含め複数の要因があります)。

参考:Kompas.com「Izin Usaha Seven Eleven dan Lawson Dipertanyakan」

インドネシアで成功している日本の小売業

ローソン

インドネシアのローソン
インドネシアのローソン

外資法人の小売業展開が難しい状況にあるインドネシアですが、そのような状況下でも店舗数を急激に増やしているのが、コンビニエンスストアのローソンです。

ローソンは2011年にインドネシアへ進出。長い間伸び悩み、10年以上経った2022年時点での店舗数は200店舗に満たない状況でした。しかし2023年には「2023年中に1,000店舗追加」を目標に掲げ、さまざまな取り組みを実施。日本のローソンで販売されているような高品質なホットスナックやおでんの提供で人気を獲得しながら、店舗数を急増させています。

そのほか、三菱商事と協力してローソン商品の移動販売を始めるなど、新たな取り組みも注目されています。

Aeon Store(イオン・ストア)

インドネシアのイオンストア

2015年、イオン・インドネシアは日本のショッピングセンターブランドのイオン・モールをインドネシアに初出店。インドネシアのイオン・モールには、スーパーマーケットのイオン・ストアも入っています。

2024年3月にはインドネシアのフラッグシップモールとなる5号店の「イオン・モール・デルタマス」を開業し、総賃貸面積約8万6,000㎡のインドネシア最大級の広さで話題を呼んでいます。

インドネシアでイオン・モールが数を増やせている背景には、イオン・ストアの貢献もあると考えられます。イオン・ストアは、日本の食品もインドネシアの食品も手に入る、惣菜が充実している、イートインコーナーがある、生鮮食品が新鮮で安いなどの点で評判がよく、安定した人気を集めています。

外資法人の小売業を開業する前に考えたいこと

インドネシアで外資法人の小売業を始める場合、開業形態や資金、立地など多くのハードルがあります。そのため、これからインドネシア進出を考えている方は、事前に綿密なリサーチをしたうえで進出方法を考えることをおすすめします。

例えばこれから始めるビジネスの内容や条件によっては、インドネシアのパートナー企業と組んで内資法人として始める、あるいは事業の展開方法を変えて小売業とは別の業種で開業するほうがよい可能性もあります。

弊社カケモチでは市場調査などを通してインドネシア進出をサポートしていますので、インドネシア進出の方法や情報収集でお悩みの企業様は、お気軽にご相談ください。

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インドネシアで小売業を始める際、どのような外資参入規制を受けますか?

インドネシアで外資法人が小売業を始める場合、業種や進出形態、出資比率、出店場所、資本金などに関する規制を受けます。

インドネシアで小売会社を始める際に取得が必要な許可・ライセンスはありますか?

インドネシアで外資法人が小売会社を始める場合、スーパーマーケットやデパート、ミニマーケットなど、開業する形態に合わせたIUTM(近代的商業施設事業許可)を取得する必要があります。また、外国投資の原則許可やロケーション許可、恒久営業許可などの取得も必要です。

インドネシアで成功している日本の小売企業を教えてください。

インドネシアで成功している日本の小売企業には、ローソンやAeon Storeがあります。

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