インドネシアで外資法人が小売業を始める際に覚えておくべき雇用規制

公開
2024/05/18
更新
2024/05/21
この記事は約6分8秒で読めます。

インドネシアで事業を始める際、事業の形態や規模に合わせて従業員を雇うことになります。その際に気を付けなければいけないのが、従業員を雇う際の規制についてです。

例えば小売業を手がける外資法人が外国人(インドネシア人以外)を雇った場合、DKP-TKA(外国人労働者雇用補償金)を支払う必要があったり、外国人従業員が就けない役職があったりと、いくつかの雇用規制が存在します。

そこで本記事では、インドネシアで外資法人が小売業を始める際の雇用規制についてまとめました。ほかにも、日本とは違うインドネシア人従業員の働き方や給与の特徴、外資法人全般に課される外資規制などを紹介しているので、参考にしてみてください。

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インドネシア人従業員の働き方・雇用形態

はじめに、インドネシア人従業員の働き方・雇用形態について紹介します。インドネシアでは、日本でいうアルバイトのような働き方はあまり普及しておらず、主に以下の3つの働き方が主流となっています。

  • 正社員(PKWTT)
  • 有期雇用契約社員(PKWT)
  • 業務委託

以下では、それぞれの働き方・雇用形態について詳しく説明します。

参考:ジェトロ「インドネシア 外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用「現地人の雇用」詳細|P2. 有期雇用契約、業務委託」

正社員(PKWTT)

日本と同じく、インドネシアの正社員も雇用期間に定めがない雇用形態のことを指します。インドネシアで正社員は、PKWTT (Perjanjian Kerja Waktu Tidak Tertentu)と呼ばれます。

企業は正社員を一度雇用すると解雇するのが難しいため、多くの企業は入社後3か月間の試用期間を設けます。この試用期間中、社員のスキルや人間性が自社の求める基準に満たないと感じた場合は、解雇(正社員として採用しない)が可能です。

有期雇用契約社員(PKWT)

インドネシアには、雇用期間に決まりのある契約社員として働く人も少なくありません。有期契約社員は、PKWT(Perjanjian Kerja Waktu Tertentu)と呼ばれます。

有期契約を結ぶことができるのは、完了までに長い期間がかからないと予測される業務に携わる人、季節要因に伴う業務に携わる人、新規製品に関わる業務に携わる人に限られています。

インドネシアでは、まず有期契約社員として雇用され、優秀だと認められた場合に正社員として雇用されるケースもよく見られます。

業務委託

そのほかの働き方として多いのが、業務請負契約書などを結んで業務を一部委託される形で引き受ける業務委託です。

委託できる業務は、「委託する企業の主要事業から切り離されている業務」、「委託する企業からの指示に基づいて実施される業務」、「生産工程を妨げない業務」、「会社全体の事業活動を補佐する業務」の4つとされています。

インドネシア人従業員の給与

インドネシアでは、固定手当を含む基本給が、その地域の最低賃金を下回ってはいけないと定められています。

業界や役職によって給与は変わりますが、例として首都ジャカルタの2024年の最低賃金は月506万7,381ルピア(約4万8,200円)のため、ジャカルタで働く人は基本的にこれを下回らない給与が支払われていることになります。

参考までに、インドネシアの新株式取引アプリを運営するAjaibが公表した、コンビニエンスストアIndomaretで働くインドネシア全国の従業員の2023年の給与を以下に紹介します。

  • レジ係:200万~400万ルピア(1万9,000円~3万8,000円)
  • 販売員:200万~270万ルピア(1万9,000円~2万5,700円)
  • 品質保証:400万~600万ルピア(3万8,000円~5万7,000円)
  • 物流監督者:250万~450万ルピア(2万3,700円~4万2,800円)
  • 副店長:250万~400万ルピア(3万8,000円)
  • 支店長:348万ルピア(3万3,000円)
  • マーケティングマネージャー:246万ルピア(2万3,400円)
  • ITサポート:300万~450万ルピア(2万8,500円~4万2,800円)

※記事中に説明はありませんが、これは全国のIndomaretの給与の平均または中央値と考えられます。そのため、ジャカルタなどインドネシアの中でも特に給与水準が高い地域の最低賃金を下回る給与額になっています。

参考:ジェトロ「ジャカルタ特別州の最低賃金、2024年は3.4%増」
参考:ajaib「Bisnisnya Semakin Besar, Intip Besaran Gaji Karyawan Indomaret 2023」

インドネシアで事業を始める際の外資規制について

インドネシアでは国内の企業を保護するために、外資法人にいくつかの規制を課しています。その1つが、開業できる業種の制限です。

例えば外資法人はバティック(インドネシアの伝統布)や伝統造船などの事業に関わることができない、船舶や空運などの事業を始める場合は出資比率が制限されるなどの規制があります。また、開業はできるものの、現地企業とフランチャイズ契約や下請け契約などのパートナーシップを結ぶ必要がある業種もあります。

そのほか、内資法人の資本は1,250万ルピア(11万9,000円)で済む一方、外資法人の資本金は100億ルピア(9,500万円)必要など、高額な資本金も外資規制の1つです。

インドネシアの会社設立に必要な資本金の概要

インドネシアの外資法人と内資法人それぞれの資本金の金額とルール、最低投資額の例外、資本金送金のタイミング、増資の方法などを紹介します。

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インドネシアで小売業を始める際の雇用規制について

上記で紹介した外資規制はすべての外資法人に課されるもので、それに加えて業種ごとに課される規制も存在します。そこで以下では、特に小売業に関係する雇用規制について紹介します。

現地人の雇用義務

以前までは外国人1人に対して、採用しなければいけないインドネシア人の人数に関する規定が存在しましたが、現在は撤廃され、ローカルスタッフの雇用は義務化されていません。

ただし、ローカルスタッフを優先して雇用することが推奨されており、実際に事業を始めた後は雇用状況に関する書類を提出する必要もあります。

外国人雇用の際の条件

外資法人が外国人を雇用する場合は、主に以下の2項目をクリアしなければいけません。

インドネシア人では担えない特殊な業務であることの証明

外資法人が外国人を雇用する場合、その外国人がインドネシア人では担えない特殊な業務に携わることが原則とされています。この「特殊な業務」の内容や外国人労働者が守るべき役職規定・能力基準は、労働移住大臣規定(2019年第 349号)に定められています。

この規定では、外国人を雇用したい事業主は労働移住省へRPTKA(外国人従業員雇用計画書)を提出することが義務付けられています。RPTKAは、その外国人が当該業務の役職に必要かどうかの審査のための資料になります。

参考:ジェトロ「学歴や職歴要件を厳格化、自国民の就労を優先−アジア主要国の就労許可・査証制度比較(2)−」

IMTA(就労許可証)の取得など

外国人を雇用する外資法人は、その外国人のスポンサーになり、IMTA(就労許可証)などの必要な許可を取得する必要があります。IMTAを申請する際は、外国人労働者の大学卒業証明書や履歴書、パスポート、雇用契約書案などの書類を提出します。

そのほかにも、外国人を雇用する場合はDKP-TKA(外国人労働者雇用補償金)を政府に支払うこと、外国人労働者は人事職に就けないことなど、内資法人にはない外資法人ならではの規制が存在します。

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資格の有無

外資法人が小売業を始める際、従業員に調理師免許や食品衛生管理者などの資格を取得させなければいけない義務はありません。ただし、開業する事業によっては、その分野に関する知識があることが分かる証明を求められるケースがあります。

短期出張者への指導制限

短期出張者がインドネシアへ訪れて、会社で打ち合わせだけをする場合、ビジネスまたは就労ビザの取得は不要です。ただし、小売業の製品を製造している工場を訪問したり、実際に現地の作業員へ指導したりする場合は、必要なビザを取得しなければいけません。

インドネシアへ訪れる人が取得すべきビザの種類に関しては以下の記事にまとまっているので、気になる方は参考にしてみてください。

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インドネシアの工場訪問ビザ(旧B211Bシングルビザ)の概要と現在の取り扱い、就労ビザとの違い、取得方法、延長方法などを紹介します。

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雇用規制の運用実態

先述の通り、外資法人にインドネシア人の採用人数に関する決まりは存在しません。しかしそれは形式的な話で、実際は会社立ち上げの際に「外国人1人に対してローカルスタッフを●人は採用すべき」などインドネシア人の雇用を要求されるケースもあります。

また、業務範囲外のことを行う外国人労働者が摘発されるなど、インドネシア人従業員と比べて外国人労働者への取り締まりは厳しい状況にあります。

特に昨今は、インドネシア政府が国内企業を守るための外資規制を強化しているため、知らず知らずのうちに規則違反をしてしまうことのないよう、小売業に関わる規制の内容についてよく調べておくことが大切です。

外資法人のインドネシア人雇用の際の優遇制度

インドネシアにおいて小売業は外資規制を受ける業種にあたるため、外資法人が小売業を立ち上げる際に活用できる優遇措置制度は現状ありません。

一方で、開業する事業が外資規制を受ける業種でなく、なおかつ「多くの労働者を雇い入れること」など一定の条件を満たした場合、優遇措置の適用となることがあります。

そこで最後に、外資法人のインドネシア人雇用に関わる優遇制度について紹介します。

参考:ジェトロ「外資に関する奨励」

タックスアローワンス制度

タックスアローワンス制度は、投資優先事業分野(国家戦略的に投資の優先度が高いとされる事業分野)に指定された183分野を対象とするもの。

この183分野に該当する業種に分類される外資法人が、300人以上のインドネシア人労働者の追加雇用を4年以上継続して行い、それからさらに600人以上の追加雇用を4年以上継続した場合、課税所得の控除や減価償却期間の短縮、外国配当課税率の引き下げなどの優遇措置の適用対象となります。

また、上記は雇用の条件を満たした場合の優遇措置ですが、投資後2年目から国内原料を70%以上使用する、地域の経済・社会インフラに100億ルピア(9,500万円)以上投資するといった活動も優遇措置の適用となります。

外資法人の雇用規制を理解したうえで開業方法を選ぶことが重要

インドネシアで外資法人を立ち上げようとすると、雇用規制に限らずさまざまな規制を受けます。事業の範囲が狭まる、高額な資本金が必要になるなどの理由から、外資法人での開業を諦めなければいけないケースも珍しくありません。

そのためこれからインドネシアへの進出を考えている方は、まずは外資法人の雇用規制や規制全般の内容を理解すること。そしてその内容をもとに、外資法人としての開業が可能かどうかをよく検討することが重要です。

進出にあたり、インドネシアのよりリアルな情報を集めたいという企業様は、弊社カケモチへお気軽にご相談ください。進出可否のご相談はもちろん、現地での市場調査や集客支援などを通して全面サポートいたします。

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インドネシアで外資法人が事業を始める際、どのような外資規制が課されますか?

インドネシアの外資規制には、開業できる業種が制限される、内資法人と比べて資本金が高額といったものがあります。

インドネシアで外資法人が小売業を始める際の雇用規制について教えてください。

インドネシアで外資法人が小売業を始める際は、外国人雇用の際に一定の条件を満たす必要がある、DKP-TKA(外国人労働者雇用補償金)を支払う必要があるといった雇用規制を受けます。

外資法人の優遇制度にはどのようなものがありますか?

開業する事業が外資規制を受ける業種でない場合、優遇制度を利用できる可能性があります。例えば投資優先事業分野に指定された183分野に関わる事業を始める場合、一定の基準以上のインドネシア人を雇用することで課税所得の控除などを受けられる「タックスアローワンス制度」という制度があります。

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