インドネシアの小売フランチャイズ展開の注意点と日本企業の進出事例

公開
2024/05/12
更新
2025/08/23
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インドネシアで事業を始めて、店舗数がある一定のラインを超えるときに必要となるのが、フランチャイズ化の手続きです。

実際にインドネシアで店舗をフランチャイズ化している日本企業もあり、ジャカルタなどの都市部では日本のフランチャイズのコンビニチェーンや飲食店をよく見かけます。

ただ、インドネシアで外資法人として店舗をフランチャイズ化させる場合、内資法人にはない規制を受け、これが外資法人のフランチャイズ展開の高い壁となっています。

そこで本記事では、インドネシアの小売業におけるフランチャイズの外資規制についてまとめました。どういった規制を受けるのか、日本企業がどのようにフランチャイズ化して店舗を拡大しているのかなどを紹介しているので、最後までご覧ください。

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インドネシアの外資規制の現状

インドネシア政府は、国内企業を保護するために主に以下の4点において外資法人に規制を課しています。

  • 業種
  • 出資比率
  • 土地所有
  • 資本金

業種に関しては、内資法人であれば問題なく開業できるが、外資法人の場合は禁止されている、あるいは条件付きでの開業のみ認められているものがあります。また、業種によっては外資法人の出資比率に制限があるものもあります。

そのほか、土地の所有はインドネシア人にのみ認められているため外資法人は所有権を得られない(利用権は取得可能)、資本金が内資法人は1,250万ルピア(11万9,000円)で済むのに対して外資法人は100億ルピア(9,500万円)かかるといった規制もあります。

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インドネシアで小売フランチャイズを始めるための条件

内資・外資関係なく、インドネシアでフランチャイズ事業を行うためには、政府による規制「2007年第42号」にて定められた以下の条件を満たす必要があります。

  • ビジネスの特性を有していること
  • 利点があることが証明されていること
  • サービスや商品の品質が一定の基準を満たしており、そのことを書面で申し出ること
  • (技術やビジネスモデルを)習得したり応用したりするのが簡単なこと
  • フランチャイザー(本部)からフランチャイジー(加盟店)に継続的なサポートがあること
  • 知的財産権を登録していること

上記を満たしているのに加えて、インドネシアの法律に準拠した契約であること、契約書がインドネシア語で書かれていることなどが定められています。

参考
DATABASE PERATURAN JDIH BP「Peraturan Pemerintah (PP) No. 42 Tahun 2007|P2~P3. Pasal3、Psal4」
ジェトロ「外資に関する規制」

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インドネシアで小売フランチャイズを始める際の手続き

インドネシアで小売業の店舗をフランチャイズ展開する場合、フランチャイザーとフランチャイジーは商業省からSTPW(登録証明申請書)を取得する必要があります。新規でSTPWを取得するフランチャイザーは、以下の書類を提出しなければいけません。

  • フランチャイズ契約の目論見書の写し
  • フランチャイズ契約の写し
  • 営業許可証の写し
  • IPR(知的財産権)登録証明書の写し
  • 会社の所有者あるいは責任者のKTP(身分証明書)の写し
  • 就労者の構成の内訳が分かるもの
  • フランチャイズ化される商品・原材料の構成が分かるもの

このSTPWは5年ごとに更新手続きを行う必要があり、その際はオリジナルのSTPW、データに変更があった場合はその旨が分かる書類、国産品の使用状況が分かる書類などを提出します。

参考:DATABASE PERATURAN JDIH BP「Peraturan Menteri Perdagangan Nomor 53/M-DAG/PER/8/2012 Tahun 2012|P29. DAFTAR DOKUMEN PERSYARATAN PERMOHONAN STPW」

インドネシアの小売フランチャイズの外資規制事情

次に、インドネシアで小売業者が店舗をフランチャイズ展開する際の、外資規制事情を紹介します。

開業できる事業の種類が限定

外資法人がインドネシアで始められる小売業の種類は、近代的商業施設(スーパーマーケット、デパート、ミニマーケット(コンビニエンスストア))に限定されます。さらに、これらの近代的商業施設を開業するためには、以下の条件を満たす必要があります。

  • スーパーマーケット:売場面積1,200平米以上の場合は外資100%可能
  • デパート:売場面積400~2,000平米のデパートは外資67%まで、売場面積2,000平米を超える場合は外資100%可能
  • ミニマーケット:売場面積400平米以上の場合は外資100%可能

売場面積が上記に満たないような小規模なビジネスは国内企業と競合してしまうため、国内企業保護の目的から、小売業において外資法人は大規模なビジネスしか行えないことになっています。

ミニマーケットを例にみると、日本のコンビニエンスストアの面積は一般的に200平米前後。外資100%のためには400平米以上必要という規制がいかに厳しいかがわかります。

国産品を優先的に販売

インドネシアでフランチャイズを展開する場合は、原材料や商品などに国産品を優先して使うことが定められています。ただし、これは義務だとされるものの、販売するものの種類によっては例外が認められています。

例えば日本人やそのほかの外国人向けの本を販売する書店をフランチャイズ化させる場合、どうしても日本語やそのほかの外国語で書かれた本を輸入して販売しなければいけません。

外資法人がインドネシアで小売業を行い、店舗をフランチャイズ化する場合、日本人など外国人をターゲットにしたビジネスを行うケースが少なくありません。こういった事例は、国産品使用優先義務の例外になる可能性があります。

こういった細かい規制やルールを全て調べ上げるのは労力もかかるため、インドネシアへの進出を本格的に検討されている企業様は、ぜひ一度弊社までお問い合わせください。

150店舗を超える場合はフランチャイズ契約が必須

現地企業にライセンスを渡すといったことはせず、外資法人として小売業の店舗数を拡大する場合、直営店の数は150店舗までに制限されています。150店舗を超える場合は、全店舗のうち40%以上をフランチャイズ化する必要があります。

参考:DATABASE PERATURAN JDIH BP「MENTER! PERDAGANGAN REPUBLIK INDONESIA PERATURAN MENTER! PERDAGANGAN REPUBLIK INDONESIA NOMOR : 68/M-DAG/PER/ 10/2012|P4. Pasal3、Pasal4」

子会社のマスターフランチャイジー化は可能

マスターフランチャイジーとは、特定の国や地域においてフランチャイザーの代わりにフランチャイジーを募集する権利を与えられた個人または企業のこと。ライセンス契約を結べる唯一の存在で、フランチャイジーの募集のほかに、労務管理やコンサルティングなどを担うこともあります。

インドネシアで外資法人がフランチャイズ事業を行う場合、その外資法人が設立した子会社をマスターフランチャイジーに置くことは可能です。ただし、店舗の設置や運営を行う場合は上述の外資規制を受けるため、このマスターフランチャイジーは店舗の運営などは行わないことが一般的です。

銀だこの事例

インドネシアの銀だこ

小売業の企業ではありませんが、インドネシアの企業をマスターフランチャージ―に置いた日本企業の事例の1つとして、インドネシアでも大人気のたこ焼きチェーン「銀だこ」が挙げられます。

この銀だこを手がけているのは日本の飲食企業のホットランドですが、同社は2017年にインドネシアで飲食サービスを手がけるFoods Beverages Indonesiaをマスターフランチャイジーとする契約を締結しました。

Foods Beverages Indonesiaはインドネシアの62都市で500以上の飲食店舗を運営する企業で、銀だこのほかにドリンク専門店のchatimeや日本のカレー専門店ゴーゴーカレーなどを展開してます。

ホットランドは、飲食店経営について豊富な実績とノウハウがあるFoods Beverages Indonesiaをマスターフランチャイジーとすることで、インドネシアでの店舗拡大を加速度的に進めたいという狙いがあったとされています。

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インドネシアで小売業を始める際の注意点

ここまで紹介した内容のほかにも、インドネシアで小売業を始める場合はいくつか注意すべき点があります。

例えば豚が含まれた商品をスーパーで販売する場合はその旨をパッケージに記載すること、住宅地域などの狭小道路沿いへ出店しないこと(自治体のゾーニング規制に従うこと)、LKPM(投資進捗報告書)を提出することなどが挙げられます。

特にイスラム教徒が大半を占めるインドネシアでは、商品によってはハラール表示が義務化されているものもあります。2024年10月には飲食品のハラール認証取得が義務化される流れがあるので、この新制度の動向についても追いかけておくことが大切です。

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インドネシアで外資法人が小売フランチャイズを始める難しさ

ここまで紹介した通り、インドネシアで小売業を始めるためには多くの外資規制があり、フランチャイズ化にまで至らないケースが多いのが現状です。

実際に、セブンイレブンとミニストップがインドネシアでフランチャイズ化まで進んだものの、すでに撤退しています。

撤退の背景には、ホットスナックがインドネシアの屋台文化に勝てなかった、イートインスペースが溜まり場になってしまい上手く活用されなかったなどの事業戦略的な側面もありますが、厳しい外資規制も大きな要因とされています。

小売フランチャイズで成功する日本企業の事例

一方で、インドネシアで小売業として参入し、着実に店舗数を伸ばしてフランチャイズ化で成功している日本企業もあります。

例えばファミリーマートは2022年1月時点でインドネシアに215店舗あり、撤退したセブンイレブンの旧店舗を活用しながら店舗を運営しています。

インドネシアでファミリーマートを運営しているのは、日用品大手のWingsグループ傘下のFajar Mitra Indah(ファジャール・ミトラ・インダ)社です。

インドネシアのファミリーマート
インドネシアのファミリーマート

ファミリーマートがインドネシア市場で成功している要因の1つとしては、ローカライズを意識しつつ日本の文化も取り入れていることが挙げられます。

同社は2022年1月にロボットがコーヒーを淹れる「バリスタ・ロボット」サービスを導入するなど、先進的な取り組みを積極的に行っていることでも知られます。

インドネシアで店舗拡大するなら外資規制について調べておくことが重要

インドネシアで店舗拡大をしたい企業にとって、フランチャイズは目指すべき1つの形態でもあります。経済成長が著しいインドネシアでは人々の購買意欲が上がっており、人々のニーズにマッチするものを提供できれば、爆発的に売り上げを伸ばせる可能性もあります。

ただ、海外企業がインドネシアでビジネスをするうえで、高いハードルとなるのが外資規制です。本記事で紹介した通り、小売業にもさまざまな規制が存在するので、本格的な進出を考える前に情報を集めておくことをおすすめします。

小売業に限らず、これからインドネシアへの進出を考えている企業様は、弊社カケモチまでお気軽にご相談ください。弊社ではインドネシアの市場調査や営業、集客などを通して、日系企業のインドネシア進出を全面サポートしております。

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インドネシアの小売業や小売フランチャイズにはどのような外資規制が課されますか?

インドネシアの小売業や小売フランチャイズが課される外資規制には、開業できる事業の種類が限定される、国産品を優先して使う必要がある、150店舗を超える場合はフランチャイズ契約が必須などが挙げられます。

インドネシアで外資法人が小売フランチャイズを始めるのは難しいですか?

インドネシアで小売業を始めるためには多くの外資規制があり、フランチャイズ化しても長く続かないケースがよく見られています。実際にセブンイレブンとミニストップがフランチャイズ化まで進んだものの、2024年4月現在は全店撤退しています。

インドネシアでフランチャイズ化に成功している日本の小売企業を教えてください。

インドネシアでフランチャイズ化に成功している小売企業の例として、コンビニエンスストアのファミリーマートがあります。

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