インドネシアの華人・華僑の特徴(歴史的背景、性格、宗教、金銭感覚)とビジネス

公開
2023/07/01
更新
2023/12/24
この記事は約7分45秒で読めます。

インドネシア人と聞くと、ヒジャブをまとう人や、モスクでお祈りをする人の姿を思い浮かべるかもしれません。インドネシアはイスラム教徒が8割を超えるため、そのイメージは間違いではないでしょう。

一方でインドネシアは、華人や華僑の割合が高い国としても知られており、儒教の教えに沿った生活を送っています。

華人・華僑は東アジア系の顔立ちをしているため、一目見て分かることがほとんどです。また、顔立ちだけでなく文化や習慣、金銭感覚、仕事観など、さまざまな面でほかのインドネシア人とは違いがあります。

本記事では、そんなインドネシアの華人・華僑の特徴やビジネスについてまとめました。

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華人と華僑の違い

中国系インドネシア人は華人や華僑と呼ばれますが、この2つは意味が異なります。

華人とは、中国にルーツを持つ移民の中でも居住国の国籍を取得している人のこと。一方で華僑とは、中国にルーツを持つ移民の中でも、居住国の国籍を取得していない人のことを指します。

インドネシアに住む中国系の人のことをまとめて華僑と呼ぶケースをよくみますが、ほとんどが華人だと考えてよいでしょう。インドネシアの華人の多くは中国にルーツを持つもののインドネシアで生まれ育っているため、中国語を話せない人がほとんどです。

多くのインドネシアの華人は、17世紀から19世紀頃に中国南部の福建省からやってきた中国人の子孫です。同時期に移住した人々の子孫はシンガポールやマレーシア、タイなどにも多くいます。

インドネシアの華人人口と存在感

インドネシアの華人・華僑の人口と割合

インドネシアの全国紙Kompasによると、インドネシアには700万人以上の華人・華僑が住んでいるとのこと。華人・華僑の数を正確に把握するのは難しいため、調査機関によって結果は異なりますが、世界で最も華人の割合が高い国はインドネシアまたはタイだとされています。

インドネシアの人口に占める華人・華僑の割合はわずか3%と言われています(※)。数字だけ見ると国内における華人の存在はマイノリティです。しかし、華人はマイノリティであるにも関わらず、社会的に成功した富裕層が多いのが特徴です。

インドネシアの総人口に占める華人・華僑の割合は正確に把握されていません。2010年の国勢調査では1.2%ですが、実際はさらに多いとされています。

参考:Kompas.com「Sejarah Etnis Tionghoa di Indonesia」

インドネシア経済を握る華人・華僑の存在

Robert Budi Hartonoo(ロバート・ブディ・ハルトノ)氏とMichael Bambang Hartono(マイケル・バンバン・ハルトノ)氏の兄弟、Low Tuck Kwong(ロー・タック・クォン)氏、Anthoni Salim(アンソニー・サリム)氏など、世界の富豪リストに載っているインドネシアの富豪の多くが華人・華僑です。

インドネシアの華人・華僑は歴史的に見ても裕福な人が多く、例えば上記で挙げた富豪たちも同族経営で財を築きました。フォーブス誌の調査によると、インドネシアで最も裕福な上位20人のうち14人が中国系インドネシア人(華人・華僑)だとされています。

インドネシアに昔から住むマレー系インドネシア人と華人・華僑の経済力の差を正確に測ることは難しいですが、彼らのビジネスがインドネシア経済に大きな影響を及ぼしてきたことには間違いありません。実際に、大規模なインフラ事業を行ったり、先進的な技術にいち早く投資をしたりするのは大企業の華人経営者がほとんどです。

参考:CNBC INDONESIA「JK Sebut Ekonomi RI Dikuasai China, Cek Faktanya!」

インドネシアの華人・華僑の宗教

イスラム教徒が大半を占めるインドネシアですが、華人・華僑の信仰する宗教は多岐にわたります。歴史家のCharles Coppel(チャールズ・コッペル)氏は「華人・華僑の約半数が仏教徒で、プロテスタントは27%、カトリック教徒が17%、イスラム教徒と儒教はそれぞれ4%のみである」と述べました。

これは推定値のため実際の割合は定かではありません。ただ、インドネシアで街に出てみると、仏教寺院を訪れている人には確かに東アジア系の顔立ちの人が多く、反対にモスクではほとんど見かけないことから、華人・華僑にイスラム教徒が少ないことは確認できます。

参考:BBC NEWS INDONESIA「WNI keturunan Cina bisa ‘lebih Indonesia dibanding suku bangsa lain’」

華人・華僑にはなぜ富裕層が多いのか

インドネシアだけでなく、ほかの東南アジアの国々においても、華人・華僑の富裕層の割合が高い傾向があります。

華人・華僑に裕福な人が多い要因には諸説あり、はっきりしたことはわかりません。今回は、ハーバード・ビジネス・レビュー研究員のJohn Kao(ジョン・カオ)氏が中国の外に住む中華系起業家150人に実施したインタビュー調査の結果を紹介します。

参考:CNBC INDONSIA「Kenapa Keturunan Tionghoa Banyak yang Jadi Pengusaha Sukses?」

歴史的背景とマイノリティ性

華人・華僑に裕福な人が多い理由の1つとして、中国から移民としてやってきた際の苦労を通して得たハングリー精神が、代々受け継がれていることが考えられます。

John Kao氏の調査によると、インタビューをした150人の中国系起業家のうち90%が戦時中にやってきた移民一世で、その中でも嵐や干ばつなどの災害を経験した人の割合は高かったとのこと。

文化大革命などの政治・権力闘争の影響で迫害を受けた経験がある人の割合は40%で、家を失った経験がある人も32%います。華僑たちはこのような困難から立ち直るため懸命に努力し、ハングリー精神を培ったと考えられます。

中国からの移民にとって、ビジネスは生き延びるための手段でもあります。過酷な日々を生き抜くメンタリティが受け継がれた結果、勤勉でビジネスに積極的な華人・華僑が現代社会で成功しているという考え方があります。

儒教の教えと国民性

インドネシアの華人・華僑で儒教を信仰しているのは4%と述べましたが、中国における儒教は宗教というより学問または思想体系であり、その教えは華人・華僑にも受け継がれています。

中国で生まれた儒教は、家族を大切にすることを重視します。例えば、「家業においては、優秀な他人の判断よりも、能力の低い身内の意見を常に優先すること」といった考えもあるほどです。

起業した華人・華僑の中にも、家族内から創業メンバーを集めたり、創業社長がその子どもに地位を譲ったりするケースがよく見られます。少数精鋭のチームにすることで効率的な事業運営を実現し、次のリーダーを家族のメンバーに代々引き継ぐことで、一族で裕福になる傾向にあります。

また、中国には「大きな集団の末端よりも小さな集団のトップになるほうがよい」を意味する「鶏口となるも牛後となる勿れ(けいこうとなるもぎゅうごとなるなかれ)」ということわざがあります。華人・華僑の起業家にもこのことわざを信奉している人は多く、大企業で雇われるよりも、中小企業の社長になりたいという思いから起業に挑戦し、成功しているケースも多いのかもしれません。

金銭感覚

社会的な成功を収める華人・華僑が多い理由として、華人・華僑以外のインドネシア人(主にマレー系インドネシア人)にはない独特の金銭的価値観を持つことが考えられます。

インドネシアのオンライン保険会社Lifepalによると、華人・華僑はクレジットカードよりも現金で買い物することを好む傾向にあるとのこと。資金が足りない場合は買い物を延期し、無理な出費を慎む傾向もあります。

計画的な消費や貯金が苦手と言われることが多いインドネシア人に対し、節約や堅実な家計管理・資金運用を重視する人が多い華人や華僑。諸説ありますが、これには、質素倹約を重視する儒教の教えが反映されているという見方もあります。

参考:Lifepal「13 Sifat Orang Cina yang Bikin Mereka Sukses di Mana Aja」

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インドネシアの華人・華僑によるビジネス

インドネシアの大企業の中には、華人・華僑が成功させたものが少なくありません。最後に、インドネシアの華人・華僑のビジネスの傾向や、華人による財閥系企業の成り立ち、有名な財閥系企業を紹介します。

華人・華僑の多くが貿易分野の仕事を選択

インドネシアの華人・華僑は、貿易分野の職業を選ぶ傾向があります。

考えられる理由の1つとして、1968~1998年のSoeharto(スハルト)政権時代、華人・華僑に貿易以外の仕事を選ぶ自由がなかったことです。

当時、1965年9月30日に行われたクーデター「9.30事件」への華人・華僑の関与が疑われたことから、インドネシア政府は華人に対し様々な制約を課していました。例えば、華人・華僑には職業選択の自由がなく、漢字の使用や中国語教育も禁止されました。

華人・華僑が貿易産業で栄え始めたのは1799年から終戦までのオランダ植民地時代ですが、その後もスハルト政権の政策により貿易分野の職しか選べず、結果として貿易業で働くしかなかった先祖の知識やノウハウが子孫に引き継がれているという見方があります。

参考:Kompas.com「Ini Alasan Warga Tionghoa Memilih Jadi Pedagang」

財閥系企業の成り立ち

華人・華僑のビジネスの特徴として、財閥の存在も見逃せません。インドネシアの経済は主に、もともとインドネシアに住んでいた人たちpribumi(プリブミ)の資本と、pribumiではない人たちnon pribumi(ノン・プリブミ)の資本の2つで構成されています。

華人・華僑はnon pribumiに当てはまり、財閥という企業団体を通して数多くの経済分野に進出してきました。財閥のうちPribumiが創業したものはわずか6社であるのに対し、Non Pribumiが創業したものは約30社に上り、民間企業間だけでなく、政治や軍にも大きな影響力を持っています。

参考:名古屋女子大学「インドネシアにおける財閥構造の分析―スハルト元インドネシア大統領の関与した財閥を中心に―」

有名な財閥系企業

以下は、インドネシアの華人・華僑の財閥の例です。

  • Salim Group(サリム・グループ)
  • Astra International(アストラ・インターナショナル)
  • Sinar Mas Group(シナルマス・グループ)
  • Djarum Group(ジャルム・グループ)
  • Lippo Group(リッポー・グループ)
  • Gudang Garam(グダン・ガラム)
  • Barito Pacific(バリト・パシフィック)

金融や製糸、たばこ製造、不動産、石油化学、農業、林業など事業は多岐にわたります。

インドネシアの代表的な財閥については、以下の記事もご覧ください。

インドネシアを代表する7つの財閥とその主要な事業内容

インドネシアの財閥の特徴と、代表的な7つの財閥の歴史や代表的なビジネス、日本企業との提携を含む最新の動向などを紹介します。

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日本と共同で事業を行う企業もあり、例えば日本の総合建設会社の大林組は2020年1月、Salim Group傘下のGallant Venture(ギャラント・ベンチャー)社の子会社Persada Hijau Cemerlang(プルサダ・ヒジャウ・チュメルラン)社と、シンガポールに近いビンタン島での農業事業化調査の共同調査実施契約に署名しました。

これは大林組が持つ温度や湿度などの環境制御技術を活用し、熱帯での作物の栽培に最適な環境の実現を目指す試みです。

参考:ジェトロ「大林組とサリム・グループ企業、インドネシア・ビンタン島でトマトなど栽培へ」

インドネシアの経済を大きく動かす華人・華僑の存在感

インドネシアにおいて華人・華僑はマイノリティではあるものの、ビジネスを通して国に与える影響力は大きく、無視できない存在です。インドネシアの企業と取引をする際、経営者が華人・華僑であるというケースも珍しくはないでしょう。

これからインドネシアへの進出を考えるのであれば、マジョリティのインドネシア人の特性を理解するとともに、マイノリティな華人・華僑についても理解を深めることが大切です。

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インドネシアに華人・華僑はどのくらい住んでいますか。

全国紙Kompasによるとインドネシアには700万人以上の華人・華僑が住んでいるとされていますが、正確な数は把握できていません。おおよそ人口の3%だとされています。

インドネシアの華人・華僑の特徴を教えてください。

大企業の経営者など、インドネシアの富裕層の多くが華人・華僑です。華人・華僑に裕福な人が多い理由は定かではありませんが、移民としてやってきた苦難を経てハングリー精神や勤勉性が育まれことなどが一説として挙げられます。

インドネシアの華人・華僑による財閥を教えてください。

インドネシアの華人・華僑が経営する財閥にはSalim Group(サリムグループ)、Astra International(アストラインターナショナル)、Sinar Mas Group(シナールマスグループ)、Djarum Group(ジャルムグループ)などがあります。

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