インドネシアの輸入関連法の規定内容と輸入ライセンスの種類

公開
2023/02/20
更新
2024/02/16
この記事は約7分37秒で読めます。

日本からインドネシアへの輸出ビジネスを行う場合、日本国内の製造業者や輸出業者の他、インドネシアの業者とも協力する必要があります。インドネシアの法律では、外国からの輸出、自国への輸入から販売までを1つの業者が一貫して行えないことになっているからです。

本記事では、このようなインドネシアへの輸出ビジネスに関わる業者や資格についての基本情報や、特に注意すべき点を、輸入関連法の規定に基づいてご紹介します。

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インドネシアの国内流通に関する規定

国内流通に関わる3つの業者

日本からの輸出ビジネス(インドネシアへの輸入販売)を行う際、インドネシア国内流通過程では、以下の3つのプレイヤーが登場します。

  1. 輸入業者
  2. ディストリビューター(卸売業者)
  3. 小売業者

これらの各業者については、以下のような規則があります。

  • 輸入業者、ディストリビューター、小売業者の資格はそれぞれ別。
  • 輸入業者はディストリビューターまたは小売業者の資格を取得できる。ただし、取得できるのはどちらか一方のみ。
  • ディストリビューターの資格を持たない輸入業者が小売業者に製品を直接売ることは禁止されているが、輸入業者と小売業者の資格を両方持っていればディストリビューターを指名する必要はない。

つまり、日本企業がインドネシアで日本からの輸入販売を行う場合、一番シンプルなのは自社で輸入業者と小売業者の資格を持ち、輸入から販売までを一貫して行うパターンです。外国の企業であっても、現地に拠点を持っているなどいくつかの条件をクリアすれば、資格を取得することはできます。

ただし、小売業者には取り扱う商品のカテゴリーによっては外資規制があります。例えば医薬品の小売業者は内資企業のみという規定があり、この場合は自社で販売はできないため、現地企業と提携することになります。また、現地に支社などの拠点を持っていない場合は輸入業者やディストリビューターになれないので、輸入から販売までを現地起業に委託する必要があります。

参考1:KEMENTERIAN PERDAGANGAN「PERATURAN PEMERINTAH REPUBLIK INDONESIA NOMOR 29 TAHUN 2O2I TENTANG PENYELENGGARAAN BIDANG PERDAGANGAN|P.39  Pasal 55」
参考2:KEMENTERIAN PERDAGANGAN「PERATURAN MENTERI PERDAGANGAN REPUBLIK INDONESIA
NOMOR 66 TAHUN 2019 TENTANG PERUBAHAN ATAS PERATURAN MENTERI PERDAGANGAN NOMOR 22/M-DAG/PER/3/2016 TENTANG KETENTUAN UMUM DISTRIBUSI BARANG|P.4 Pasal 19」

ディストリビューター(卸売業者)の指名

上述の通り、輸入業者は小売業者への物品の直接供給が禁止されています。そこで、ディストリビューター業の事業許可を有しない輸入業者は許可を持つ企業(ディストリビューター、サブディストリビューター、エージェント、サブエージェント)に間に入ってもらう必要があります。

なお、小売業者に物品を供給するためにディストリビューターを指名する必要があるのは、インドネシア国外の製造業者のみ、つまり輸入品を販売する場合のみです。また、製造業者が原材料や資本財などを他の製造業者に供給する場合は、ディストリビューターを介する必要はありません。

参考1:JETRO「インドネシア 貿易管理制度 「輸入関連法」詳細|P.5 国内流通規程 」
参考2:SURIA NATAADMADJA & ASSOCIATES「Apa itu Distributor dan Bagaimana Menjadi Distributor yang Sah Secara Hukum?」

インドネシアの輸入ライセンス

輸入業者の種類

インドネシアにはいくつかの種類の輸入業者がありますが、一般的な貿易品の輸入を行う業者を「Importir Umum(一般輸入業者)」といいます。

他には、外国の企業が現地に設立した輸入代理業者(Solo Agent Importir)、外国籍企業の現地法人で、自社の製品の製造などに使用する目的で機器、部品、材料などを輸入する限定輸入業者(Importir Terbatas)などがあります。

いずれの種類の業者であっても、輸入者は輸入される商品に対して全責任を負います。輸入者が違反を犯した場合や輸入品に対して責任を負わない場合、資格の取り消しなどの制裁の対象となります。

参考:Tokopedia「Importir」

輸入ライセンス

インドネシアで輸入を行うためには、営業許可証(SIUP)や納税者番号(NPWP)などの会社の設立・営業にまつわる基本的な許可証や書類の他、いわゆる輸入ライセンスが必要です。

インドネシアで輸入ライセンスと呼ばれるのは輸入業者認証番号(API)です。2018年の商務大臣規則では、「輸入業者は原則、輸入業者認証番号(API)として有効な事業基本番号(NIB)を取得しておく必要がある」とされています。

  • API:
    輸入業を行う個人または企業を識別する番号で、輸入業者は必ず持たなければいけない輸入ライセンス。APIは1つの企業に1つあればよく、本社が取得したAPIは支社も使用できます。
  • NIB:
    企業が事業許可として取得する番号で、事業許認可オンラインサービス(OSS:オンラインシングルサブミッション)から取得します。

参考:detikcom「Apa Itu Angka Pengenal Importir dan Fungsinya?|Apa Itu Angka Pengenal Importir」

輸入業者認定番号(API)の種類

主なAPIには以下の2種類がありますが、1つの会社が保有できるのは1種類のみとなっています。

①API-U(API Umum)

一般輸入業者(輸入販売業)用のAPI。貿易目的で特定の品目を輸入する企業に付与されます。

②API-P(API Produsen)

製造業者用のAPI。生産工程で使用する資本財、原材料、補助材、生産プロセスをサポートする材料を自社で使用するために輸入する企業に付与されます。そのため、API-Pを持つ業者は輸入品を取引することや、他者へ譲渡することは禁止されています。

また、API-Pを持つ業者による完成品(工業製品)の輸入は、特定の産業分野の企業が「保管」「市場テスト」「アフターセールス」といった特定の目的で用いる物品に限られ、しかも事前に商業省国際貿易総局長の輸入承認を得る必要があります。

※輸入品が免税対象品の場合、輸入通関届の日から2年以上使用された後は、他人に譲渡できるようになります。

参考1:JETRO「インドネシア 貿易管理制度 「輸入関連法」詳細|P.2-3 輸入一般規定 」
参考2:INDONESIA.GO.ID「Angka Pengenal Impor (API)」

この他、特別なAPIとして、上述の限定輸入業者(Importir Terbatas)に付与されるAPI Terbatas(限定API)や、米、とうもろこし、大豆、砂糖など政府が定めた特定の品目を輸入する企業が持つAPI Khusus(専門API)もあります。

参考:Mekari 「Apa Itu Importir? Dasar Hukum, Jenis, Syaratnya」

輸入業者認定番号(API)なしで輸入できるもの

APIなしで輸入できるのは、原則、販売目的以外の物品で、例えば以下のようなものが挙げられます。

  • 一時輸入品
  • プロモーション品
  • 学術研究用の物品
  • 災害支援品
  • 政府調達の医療品
  • 再輸入品
  • 海外バイヤーからの返品
  • 販売しないサンプル
  • 引越貨物
  • 送付物

参考:JETRO「インドネシア 貿易管理制度|輸入関連法」

「送付物」というのは、Door to Doorの配送サービスを利用して輸送される物品、または郵便物です。したがって、インドネシアのお客さんから注文を受けた品物を日本からDHLなどの配送業者を利用して送る場合は、APIは必要ありません。

そもそもDoor to Doorの配送サービスの場合は、税関で梱包を開封して確認されることは基本的にはありません。ですので、輸入が制限されているものであっても、危険物など特別な配慮が必要なもの以外、例えば衣料品や履物であれば、インドネシアにこっそり持ち込むことはできます。

※Door to Door:送り主の荷物を受取人まで届ける過程を1つの業者が請け負う配送サービス

輸出入に利用する配送業者としては、大きく分けてクーリエとフォワーダーがあり、このうちDoor to Doorのサービスを行うのはクーリエです。配送業者について詳しくは、以下の記事をご確認ください。

クーリエとフォワーダーを比較、インドネシアへ輸出するならどちらの輸送業者か

輸出ビジネスを行うにあたり、輸送業者としてクーリエとフォワーダーが選択肢にありがます。どちらを使えばよいのか、2つを比較しながら説明します。

続きを読む

クーリエを利用した輸入がAPI不要ということになると、たいていのものは輸入可能なように思えます。実際、本当は販売目的の物品であっても、あまり量が多くなければ個人が引越しなどのために送る荷物と区別がつかないので、輸出時の書類の作成のしかた次第でインドネシアに送ることはできます。

ただし、ばれて通報されてしまうと言い逃れできませんし、ばれなかったとしても違法なビジネスを継続するのは事業主にとってかえって負担になることもあるため、おすすめの方法ではありません。

輸入業者認定番号(API)以外の事業許可が必要なケース

携帯電話、飲食料品、サプリメント、化粧品、衣料品、靴、玩具などは、インドネシアへの輸入に制限がかかっている「輸入制限品目」に含まれます。

輸入制限品目は分野ごとに担当省庁の大臣令などで規定されており、「輸入港が限定されている」「指定されたラベルを貼る必要がある」「特別な登録が必要」など、輸入に際してそれぞれ異なる条件が定められています。

輸入制限品を輸入するには、各製品や輸入方法、梱包方法などが条件を満たしていることはもちろん、輸入業者が「登録輸入業者(IT)」または「製造輸入業者(IP)」という事業許可を取っている必要があります。また、輸入承認(PI)も必要です。

参考:JETRO「インドネシア 貿易管理制度 「輸入関連法」詳細 |P2. 輸入一般規定」

輸入禁止および輸入制限品目については、以下の記事をご覧ください。

日本からインドネシアへの輸出規制まとめ(輸出入禁止・制限品目、各種製品認証、輸送業者の種類)

各種認証制度や輸入禁止品目、関連業者、輸出のプロセスなど、日本からインドネシアへの輸出事業の概要を把握するために必要な情報を紹介します。

続きを読む

自由貿易地域

インドネシアの中でシンガポールに近い3つの島、バタム島、ビンタン島、カリムン島は「自由貿易地域(KPBPB)」に指定されています。この3島で輸出入を行う場合、ライセンスこそ必要ですが、手続きはかなり簡単になっています。

例えば、許可を得た事業者が3島の指定された港で輸出入を行う場合は、「シングル・アドミニストレーション・ドキュメント通関申告書(PP-SAD)」と呼ばれる簡略化された書類を使用することになっています。また、輸入税や付加価値税などが免税されます。

参考1:JETRO「インドネシア 貿易管理制度 「輸入関連法」詳細|P.4 バタムのシングルドキュメント通関」
参考2:JDIH Kemaritiman dan Investasi「Kawasan Perdagangan Bebas dan Pelabuhan Bebas (KPBPB)」

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現地企業と協力してインドネシアでのビジネスをスムーズに

ご紹介してきたように、日本から物を輸出してインドネシアで販売するには、複数の関係者の協力を得る必要があります。また、輸入禁止・制限品目に関する規定についても知っておく必要があるため、輸入関連法の確認は欠かせません。

加えて、輸出から販売までのプロセスを自社で完結できない以上、良いパートナー企業を探すことも非常に重要です。該当する製品カテゴリーや産業分野の輸入販売の実績があり、信用できる企業を探すことは、インドネシアへの輸出ビジネス成功の第一歩となります。

輸入関連法やパートナー企業探しについては、本記事の情報の参照元でもあるJETROのホームページを見たり、問い合わせたりしてみるのがおすすめです。内容によっては、在日本インドネシア大使館も頼りになります。

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インドネシアの輸入ライセンスにはどのような種類がありますか。

インドネシアの輸入ライセンスは「輸入業者認証番号(API)」と呼ばれ、一般的なのは一般輸入業者のAPI-Uと、製造者用のAPI-Pの2種類です。

インドネシアの輸入業者は小売業者を兼ねることができますか。

インドネシアにおいて、輸入業者は資格を取得すれば小売業者を兼ねることができます。

インドネシアでは資格を持った業者は何でも輸入販売できるのですか。

商品カテゴリーによっては、インドネシアで流通・販売するために特定の認証の取得が必要です。また、輸入のために大臣の許可が必要などの規制のある品目もあります。

インドネシアで輸入ライセンス(API)を持っていなくても輸入できるものはありますか。

一時輸入品、プロモーション品、学術研究のための物品、サンプル品など、販売目的でないものは輸入ライセンスなしで輸入できます。

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