成長するインドネシアのキャッシュレス市場における決済アプリと電子マネーサービスの紹介

公開
2023/07/22
更新
2025/03/24
この記事は約8分34秒で読めます。

最近は世界的にキャッシュレス化が進んでいますが、インドネシアも例外ではありません。むしろ、インドネシアはキャッシュレス化が急速に進む国の1つで、ここ数年で市場が大きく伸びていることから、国内外多くの企業が注目しています。

キャッシュレス決済アプリが続々と登場し普及するインドネシアで、一体どのくらいキャッシュレス化が進み、どのくらいの市場規模になっているのか。

本記事では、インドネシアのキャッシュレス化事情について説明するとともに、現地でよく利用されるキャッシュレス決済アプリをまとめました。

円表記は2023年7月13日のレート(1ルピア=0.0092円)で換算し、記載しています。

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インドネシアのキャッシュレス決済ツールの種類

インドネシアのキャッシュレス決済ツールは、主に下記の4つに分けられます。

  • クレジットカード
  • デビットカード
  • 電子マネーカード
  • e-wallet(スマホ向け電子マネー決済アプリ、QRコード決済)

電子マネーカードは日本のサービスでいうとSuicaやPasmoなどがイメージに近いですが、インドネシアの電子マネーカードすべて銀行が発行したものです。

e-walletに関しては、日本のサービスでいうとPayPayや楽天ペイなど、QRコードを読み込んで決済するアプリをイメージすると分かりやすいでしょう。

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インドネシアのキャッシュレス化の現状

ここでは、インドネシアのキャッシュレス決済比率や各キャッシュレス決済ツールの普及率、市場規模、利用シーンなどを紹介します。

キャッシュレス決済比率

クレジットカードブランド大手のVISAが2022年に公表した資料「Consumer Payment Attitudes Study 2022 NAVIGATING A NEW ERA IN PAYMENTS」によると、東南アジアでは消費者の93%がクレジットカードや電子マネーカード、QRコード決済など、何らかのキャッシュレス決済ツールを利用しているとのこと。

なかでもインドネシアはキャッシュレス決済利用者の割合が95%と高く、本調査で「今後さらに頻繁にキャッシュレス決済を利用する予定」と答えた人の割合は78%、「キャッシュレス決済は安全な支払方法だと思う」と答えた人の割合は79%にのぼりました。

また、「キャッシュレス化に向けた政府の取り組みを支持する」と答えた人の割合は73%で、多くの人がキャッシュレス決済に対して好意的に見ていることが伺えます。

参考:VISA「Consumer Payment Attitudes Study 2022 NAVIGATING A NEW ERA IN PAYMENTS|P.5 SOUTHEAST ASIA CONTINUES ITS SHIFT TOWARDS CASHLESS」

各キャッシュレス決済ツールの普及率

本調査によると、インドネシア人が以前よりも現金を持ち歩かなくなっている理由の1位が「非接触型決済ツールの使用が増えたこと」、2位が「カード支払いの使用が増えたこと」、3位が、「現金は感染症感染リスクや盗難リスクがあること」となっています。

また、インドネシアで特に利用されているキャッシュレス決済ツールは、「Mobile wallet(おサイフケータイ)」(74%)、「Card online(オンライン上でのカード決済)」(56%)、「Swipe/Insert card(クレジットカードやデビットカードなど)」(54%)の3つとなっています。

e-walletを利用している割合は2021年時点で50%で、上記3つのキャッシュレス決済ツールと比べるとまだ割合が低いですが、2020年がわずか39%だったことを踏まえると、これからの成長が見込まれる分野と言えます。

参考:VISA「Consumer Payment Attitudes Study 2022 NAVIGATING A NEW ERA IN PAYMENTS|P39.INDONESIA、P12. QR CODE PAYMENTS」

成長するインドネシアのキャッシュレス市場

インドネシアのキャッシュレス決済市場は国内外から注目されるところですが、その理由として電子マネーによる取引金額が増加していることが挙げられます。

インドネシアにおける電子マネー取引件数・金額推移
インドネシアにおける電子マネー取引件数・金額推移
画像出典・参考:JETRO「新型コロナ禍での電子マネー最新動向(インドネシア)」

インドネシア銀行の資料をもとにJETROがまとめた上掲のグラフによると、2015年の電子マネー取引件数は5億3,560万件で、取引金額は5兆3,000億ルピア(490億3875万円)。それが2020年には取引件数が約46億2,570万件、取引金額は204兆9,000億ルピア(1兆8,960億円5,650万円)で、5年間で取引件数は約9倍、取引金額は約39倍になりました。

インドネシアの電子マネーサービスは、2021年4月時点ですでに56個もあります。新しいサービスが次々と登場し競争が激化する中、顧客獲得に向けて大手企業同士が協業する動きも出てきています。

キャッシュレス決済の主な利用シーン

上述のVISAによる調査では、インドネシア人がキャッシュレス決済を利用する場面としては「請求書の支払い」(71%)が最多で、以降は「タクシーやライドシェアリング(自動車の相乗り)」(69%)、「海外旅行」(59%)などとなっています。

ショッピングモールやスーパーマーケットなど、ある程度規模の大きな施設でのキャッシュレス化は以前から進んでいましたが、最近は個人経営のお店などでもキャッシュレス化が進んでいます。

特に、ジャカルタのような都市部では、小さな屋台やローカルの食堂での支払いもe-walletでできるようになりつつあり、現金を持たずとも食事や買い物が問題なくできる環境がかなり整っています。

また、飲食店だけでなくモスクに置かれた寄付用の箱にもQRコードが貼られ、電子マネーで寄付ができるなど、商用目的ではない場所でもキャッシュレス化は進んでいます。

参考:VISA「Consumer Payment Attitudes Study 2022 NAVIGATING A NEW ERA IN PAYMENTS|P39 INDONESIA」

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キャッシュレス化を加速させる統一QR決済コード「QRIS」

インドネシアのキャッシュレス決済事情を知る上で押さえておきたいのが、2019年に開始したQRIS(クイック・レスポンス・コード・インドネシア)です。

キャッシュレス化の加速の一因ともなったQRISとは一体何なのか、その詳細やメリット、さらに日本との関わりをまとめました。

QRISとは

Bank Indonesia(インドネシア銀行)が制定したQRISは、QRコード決済を一元化するために導入されました。

例えば飲食店の支払いをQRコードで済ませようとしたとき、自身が利用しているe-walletサービスがGoPayであろうとOVOであろうと、お店に置かれている1つのQRコードを読みこめばe-walletサービスの種類に関わらず支払いができるという仕組みです。

どのe-walletサービスを利用していても同じQRコードで支払いができるため、QRISによってQRコード決済の利便性がさらに増し、インドネシアのキャッシュレス化に拍車がかかりました。

また、2022年12月には日本の経済産業省とインドネシア銀行が「統一QRコード決済分野における協力に関する日本国経済産業省とインドネシア銀行との間の協力覚書」に署名し、両国での越境決済推進への動きも見られています。

参考:経済産業省「インドネシア銀行との間で統一QRコード決済分野における協力覚書(MOC)に署名しました」

越境QR決済も可能に

日本とインドネシアにおけるQRコードによる越境決済はまだ実現していませんが、2022年5月にはマレーシアとインドネシアの越境決済が始まりました。

インドネシアのQRISとマレーシアのDuitNow(ドゥイットナウ)の提携により、QRコードをスキャンするだけで、それぞれの国の人がそれぞれの国で決済ができるようになりました(※越境決済事業に参加している金融機関の決済サービスを利用する店舗やオンラインショップのみ)。

例えば、インドネシア人がマレーシアで飲食店に訪れた際、会計のときにレジでQRISのQRコードを読みこめば、マレーシアリンギットで価格が表示され、自身が普段から使っているe-walletサービスでそのまま購入できる仕組みです。

インドネシアとマレーシアの隣国同士が複雑な手続きを必要とせず、QRコードを読み込むだけで決済ができるようになったことで、両国の経済活動が促進されることが期待されています。

参考:YahooニュースJAPAN「【インドネシア】越境QRコード決済、マレーシアと商用開始」
参考:DuitNow「Cross-Border QR Payment」


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インドネシアで人気・有名なキャッシュレス決済アプリ

それでは最後に、インドネシアでよく利用されるキャッシュレス決済アプリを紹介します。

なお、以下で紹介している各キャッシュレス決済アプリの利用率は、データ収集プラットフォームStatistaの2022年7月時点の調査結果をもとにしています。

参考:statista「Most used e-wallet apps by consumers in Indonesia as of July 2022」

GoPay(ゴー・ペイ)

GoPay(ゴー・ペイ)

配車サービスGojekが提供するGoPayは、インドネシア人が最も利用するキャッシュレス決済アプリ(※)です。e-wallet利用者のうち88%がGoPayを利用しているという調査結果が出ています。

GoPayの魅力は、とにかく取り扱い店舗が多いこと。そして、配車サービスから買い物代行、フードデリバリー、ほかのユーザーや銀行への送金、光熱費の支払いなど、幅広いニーズをGoPay1つで満たせることにあります。

また、電子マネーのチャージはATMやインターネットバンキング、銀行振込、コンビニ、デビットカードに加え、Gojekのドライバーにお願いする形でも可能です。インドネシア在住者はもちろん、旅行中にGojekのタクシーやバイクタクシーを利用したい観光客からもGoPayはよく利用されています。

参考:gopay

もともとGopayはGojekアプリの中の機能の1つでしたが、現在はGopayの独立したアプリもリリースされています。

DANA(ダナ)

DANA(ダナ)

DANAはQRコードによる支払いのほか、送金機能やオンラインショッピング、携帯料金の支払いなどさまざまなシーンで利用できるキャッシュレス決済アプリです。

中国のEC最大手アリババグループの関連企業が運営しており、2022年7月の調査ではe-wallet利用者のうちDANAの利用者は83%で、GoPayに次ぐ利用者数となっています。

2023年には世界最大の国際送金サービスプロバイダーのRIA Money Transfer(リア・マネー・トランスファー)と提携し、シンガポールや台湾、香港など、海外からRIA Money Transferの口座を介して送金された電子マネーをDANAアプリで受け取れるようになりました。

また、インドネシアのキャッシュレス決済アプリ1位のGoPayに対抗するため、2020年には後述のOVOの運営会社と合併するといった大きな動きも見せています。

参考1:DANA
参考2:IDN FINANCE「DANA teams up with RIA to launch inbound remittance service」

OVO(オヴォ)

OVO(オヴォ)

2020年にDANAと合併したOVOは、インドネシアで3番目に利用されているキャッシュレス決済アプリです。インドネシアの財閥Lippo Group(リッポー・グループ)が手がけており、E-wallet利用者の79%がOVOを利用しているという調査結果が出ています。

OVOの強みは、利用できるオフライン店舗数が60,000以上にものぼること。幅広い地域やお店で利用できる、利便性の高さに定評があります。

また、インドネシアではGojekと同様にGrabという配車サービスが普及していますが、OVOはこのGrabアプリと連携しているのが特徴です。GoPayがGojekのドライバーから電子マネーをチャージできるように、OVOはGrabのドライバーからチャージができます。

参考:OVO

e-Moneyなどの電子マネーカードも

ここまでe-walletを中心にキャッシュレス決済ツールを紹介しましたが、インドネシアでは電子マネーカードも普及しています。インドネシアの電子マネーカードの代表例は、下記の通りです。

  • e-Money(イーマネー)
  • Flazz(フラッツ)
  • BRIZZI(ブリッジ)
  • Tap Cash(タップキャッシュ)

もともと電子マネーカードは高速道路の料金所における支払いの円滑化を目的として登場しましたが、今では使い方の幅が広がり、さまざまな用途で利用できるようになりました。

電子マネーカードではMRT(ジャカルタ都市高速鉄道)やTransjakarta(バス高速輸送システム)、KRL(ジャカルタ首都圏の通勤電車網)、LRT(軽量高架鉄道)など公共交通機関の支払い、店舗ごとの還元率によってポイントが貯まるe-walletは日常の買い物など、用途を分けて利用している人も珍しくありません。

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拡大が見込まれるインドネシアのキャッシュレス決済市場

コロナ禍で一気に加速したインドネシアのキャッシュレス決済市場ですが、コロナ禍が落ち着いてもその勢いは衰えず、今後も市場拡大が見込まれます。国内での競争が加速するだけでなく、今後は越境決済など他国との取り組みも盛り上がっていきそうです。

インドネシア進出というと、「何をどのように売るか」に注意が向きがちです。しかし、インドネシアの人たちがどのような支払い方法を使っているのかを把握し、品定めから購入、決済までをどのように行うのかをイメージすることも同様に、ビジネス戦略を立てるにあたっては重要と言えます。

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インドネシアではどのくらいキャッシュレス化が進んでいますか?

インドネシアのキャッシュレス決済利用者の割合は95%で、最近盛り上がっているe-wallet(スマホ向け電子決済マネー決済アプリ、QRコード決済)を利用している割合は2021年時点50%です。

インドネシアのキャッシュレス化促進の要因の1つともなったQRISについて教えてください。

QRISはQRコード決済を一元化するために導入されたもので、Bank Indonesiaが制定しました。どのe-walletサービスを利用していても同じQRコードで支払いができるため、QRISによってQRコード決済の利便性がさらに増したとされています。

インドネシアにはどのようなキャッシュレス決済アプリがありますか?

インドネシアのキャッシュレス決済アプリには、GoPayやDANA、OVOなどがあります。

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