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日本アニメは世界各国で人気ですが、インドネシアも例外ではありません。

インドネシアには、英語の「Weaboo（ウィアブー）」を語源とする「Wibu（ウィブ）」という言葉があります。Wibuとは、日本文化、特にアニメや漫画を熱狂的に愛するいわゆる「オタク」のことで、Wibuのための情報サイトやコミュニティーもあり、コスプレイベントなども開催されています。

当記事では、インドネシアで見られている日本アニメや、アニメが人気な理由、インドネシア人と日本アニメの関係などについてご紹介します。

インドネシアで日本アニメが人気な理由

一般的に、海外で日本アニメが人気な理由としては、以下のような点が挙げられます。

• 作画・アニメーション・声・音楽のクオリティーが高い
• ジャンルが多様
• コンセプト・ストーリー・キャラクターがユニークかつ魅力的
• ストーリーに深みがあり、大人も楽しめる

海外においてアニメーション作品の多くは「子供向け」であり、ストーリーが単純で、普通は一話完結です。一方で日本アニメには、複雑な伏線が引かれ読み解く楽しみがある作品や、人間の内面や登場人物が成長する過程を丁寧に描き出す作品が多いため、大人たちからも愛されています。

インドネシアでも、上記のような理由で日本アニメが人気となっています。加えて、テレビで連日放送されているメロドラマや愛憎劇、子供向けアニメ番組に飽き飽きしている人たちが一定数いて、日本アニメが彼らの受け皿となっているという事情もあります。もちろん、日本の町並みや学校の様子などが垣間見えることも、人気の理由の一つです。

インドネシアで人気の日本アニメ

インドネシアに日本アニメが進出し始めたのは1970年代です。まずは日本で1975年から放送されていた『わんぱく大昔クムクム』が、インドネシアのテレビでも放送されました。

その後、民放テレビ局が増えるに従って、日本アニメの放送が増えていき、『ドラえもん』を始め、『ちびまる子ちゃん』、『とっとこハム太郎』、『ONE PIECE』、『クレヨンしんちゃん』、『遊戯王』など、これまで様々なアニメが放送されてきました。

出典：CNN Indonesia「Sejarah Anime: Sejak 1907 hingga Mewabah ke Indonesia」

以下では、インドネシアで人気の日本アニメを、大まかな年代ごとにご紹介します。年代は各作品が日本のテレビで最初に放送された年を基準としています。

20年以上愛され続ける定番アニメ（初回放送時期：～1990年代）

• ドラえもん（1973年～）
• 機動戦士ガンダム（1979年～）
• ドラゴンボール（1986年～）
• 美少女戦士セーラームーン（1992年～）
• SLAM DUNK（1993年～）
• るろうに剣心（1996年～）
• 名探偵コナン（1996年～）
• ポケットモンスター（1997年～）
• ONE PIECE（1999年～）

2000年代以降の人気アニメ（初回放送時期：2000年代～）

• 犬夜叉（2000年～）
• NARUTO -ナルト-（2002年～）
• BLEACH（2004年～）
• 銀魂（2006年～）
• DEATH NOTE（2006年～）
• CLANNAD（2007年～）
• FAIRY TAIL（2009年～）
• バクマン。（2010年～）
• HUNTER×HUNTER（2011年～）
• 進撃の巨人（2013年～）
• 四月は君の嘘（2014年～）
• ソードアート・オンライン（2014年～）
• ハイキュー!!（2014年～）
• 食戟のソーマ（2015年～）
• ワンパンマン（2015年～）
• 僕のヒーローアカデミア（2016年～）
• 鬼滅の刃（2019年～）
• 呪術廻戦（2020年～）
• 東京リベンジャーズ（2021年～）

一覧を見てみると、幅広いジャンルや内容のものが人気となっていることがわかります。これには、インターネットが普及し、Netflixなどの動画配信サービスが登場したことが影響しています。

アニメを見たければ民放テレビ番組を視聴するしかなかった頃とは違い、今は各自が好きな作品を選んで視聴できるからです。

中には原作漫画を書店で購入したり、コスプレイベントに参加したりする熱狂的なファンもいます。アニメ専門のニュース・情報サイトも複数あり、「Otaku」または「Wibu」と呼ばれるアニメファンたちの重要な情報源となっています。

インドネシアの映画館で上映された日本のアニメ映画

ドラえもんやコナンは毎年上映

インドネシアでは日本アニメの人気がますます高まっており、上映される映画も増えています。以下では、直近3年間で公開された主なアニメ映画をご紹介します。

2020年

• デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆
• 空の青さを知る人よ
• 僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ヒーローズ：ライジング
• 劇場版「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」Ⅲ.spring song

2021年

• 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編
• STAND BY ME ドラえもん 2
• 映画ドラえもん のび太の新恐竜
• 名探偵コナン 緋色の弾丸
• クレヨンしんちゃん 激突！ラクガキングダムとほぼ四人の勇者
• 劇場版 Fate/Grand Order 神聖円卓領域キャメロット
• ジョゼと虎と魚たち
• 劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン

2022年

• ONE PIECE FILM RED
• 映画ドラえもん のび太の宇宙小戦争
• 名探偵コナン ハロウィンの花嫁
• ドラゴンボール超 スーパーヒーロー
• シン・エヴァンゲリオン劇場版 EVANGELION:3.0 +1.0 THRICE UPON A TIME
• 劇場版 呪術廻戦 0

2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて劇場公開が延期された作品もありましたが、2021年以降は上映数が増えてきています。

アニメ映画の観客動員数歴代第一位は『ONE PIECE』

2022年10月現在、インドネシアの映画館で上映された日本のアニメ映画の観客動員数ベスト3は、以下の通りです。

1. ONE PIECE FILM RED（2022年）：130万人
2. 劇場版 呪術廻戦 0（2022年）：78.9万人
3. STAND BY ME ドラえもん 2（2021年）：57万人

出典1：ProNusantara.com「Mengejutkan! One Piece Red Rilis di Indonesia Tembus 1,3 Juta Penonton, Terlaris Sepanjang Sejarah」
出典2：yoursay.id「Jujutsu Kaisen 0 Duduki Urutan ke-2 Anime Terlaris di Indonesia」

1位の『ONE PIECE FILM RED』は、日本では公開38日間で観客動員数1000万人を達成しました。それに比べると、日本の2倍以上の人口を抱えるインドネシアで130万人というのは、非常に少なく見えます。

とはいえ、毎年のように観客動員数の記録が塗り替えられているということは、日本のアニメ映画の人気が高まっているということの裏付けと言えます。映画版ONE PIECEを例にとると、2022年の『ONE PIECE FILM RED』の観客動員数は、2019年に上映された前作の約2.8倍に上りました。

インドネシアの映画館のチケットは350円前後で、都市部に住む人たちにとってさほど高い値段ではありません。今後も観客動員数の最多記録が更新されていく可能性は、十分にあるでしょう。

日本のアニメキャラクターとコラボしたインドネシア企業の商品

続いて、日本のアニメキャラクターとコラボレートした商品を販売しているインドネシア企業をご紹介します。定番はドラえもんとポケットモンスターで、アニメ作品を見たことがなくてもキャラクターを知っているインドネシア人は大勢います。

My Baby Kidsシリーズ（ドラえもん）

My Baby Kidsのドラえもんパッケージの商品には、シャンプー、コンディショナー、ボディーソープ、ハンドサニタイザーなどがあります。同じTempo Scan社の商品としては、幼児向けビタミンサプリメントVidoranにもドラえもんが起用されています。

Paddle Pop（ドラえもん）

アイスクリームメーカーWall’sのPaddle Popシリーズのパッケージには、通常ライオンのマスコットキャラクターがいますが、ソーダ味のアイスクリームのみ、ドラえもんパッケージとなっています。

Chiki Balls（ポケットモンスター）

食品大手Indofood社のスナック菓子「Chiki Balls」は、ポケットモンスターとコラボレートしたことがあります。

2021年には、Chiki Ballsに期間限定でついている「ポケモンコイン」で遊んでいるところを動画に撮ってTik TokおよびInstagramに投稿するとプレゼントが当たるというキャンペーンや、商品の購入数に応じオリジナルトートバッグがもらえるECサイト限定企画が実施されました。

Yoshinoya Indonesia（ドラえもん/ポケットモンスター）

Yoshinoya Indonesia（吉野家）は、ドラえもんやポケットモンスターとコラボしたボウル、タンブラー、バッグなどの商品を期間限定で販売することがあります。

以上の他、McDonald’s Indonesia（マクドナルド）は子供向けセット「ハッピー・ミール」のおまけのおもちゃに、ドラえもん、ONE PIECE、ポケットモンスターなどのキャラクターを採用したことがあります。また、Vans Indonesiaは日本でも人気を博した「美少女戦士セーラームーンコレクション」や「ONE PIECEコレクション」を、インドネシアでも販売しています。

特定の企業とのコラボレーションに限らず、日本のアニメキャラクターは衣類や文房具など、様々なグッズとなって親しまれています。ドラえもんやポケットモンスターはもちろん、ドラゴンボール、NARUTO、ONE PIECEなども人気です。

インドネシア人と日本アニメの関係

日本アニメは日本語学習のきっかけになっている

インドネシアの日本語学習者数は約71万人で、中国に次ぎ世界で2番目に多くなっています。

国際交流基金の調査（2018年度）によると、インドネシアの日本語学習者のうち、日本語学習の目的を「アニメ・漫画・J-Pop・ファッション等への興味」と答えた人は全体の70.7％（複数回答）と一番高く、アニメや漫画を始めとする日本文化への関心の高さが伺えます。

教育段階別では、初等教育時の日本語学習の目的として「アニメ・漫画・J-Pop・ファッション等への興味」と答えた人は80.6％、中等教育時で74.9％、高等教育時で56.0％、学校教育以外で48.1％となっています。

年齢が上がるにつれて留学や就職を目的に挙げる人の割合が増えるものの、小中高生に対するアニメや漫画の影響は非常に大きいことが見て取れます。日本アニメは多くのインドネシア人にとって、日本語を学ぶきっかけとなっているのです。

出典：国際交流基金「2018年度　海外日本語教育機関調査　8. 日本語学習の目的」

イスラム教徒と日本アニメ

インドネシアでは、テレビや雑誌などのアダルトコンテンツが厳しく規制されています。明らかなアダルトコンテンツが放送禁止なのはもちろん、放送されている作品でも、セクシーなキャラクターの胸元などにモザイクがかかることは珍しくありません。例えば以前テレビで放送されていた『NARUTO』にも、度々モザイクが入っていました。

こうした事情から、インドネシアでは現在、『ONE PIECE』がテレビで放送できなくなっています。暴力的なシーンが多いことに加え、何と言ってもセクシーなキャラクターが多いためです。

また、国民の約87％がイスラム教徒であるインドネシアでは、イスラムの教えとアニメの関係を気にする人もいます。実際にインターネットで調べると、「アニメを見ることはイスラム法で許されているか」「断食月に見てはいけないアニメは何か」といった記事や動画が多数見つかります。

いくつかの情報サイトを確認したところ、「道徳的・教育的に悪いものでなければアニメ観賞はイスラム法違反にはならない」が、断食月においては「性的表現・セクシーなキャラクターが登場するアニメや、テーマ自体が食事・食べ物であり、食事のシーンが多く登場するアニメは断食中に見るべきではない」と説明される場合が多いようです。

日本アニメはインドネシアでますます人気に

ご紹介してきたように、インドネシアでは日本アニメが大変人気です。しかも、『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』、『ONE PIECE』など日本人なら誰でも知っているような長寿作品だけではなく、ライトノベルやゲームを原作とする新しいアニメも含め、色々なジャンルのアニメが親しまれています。

インドネシアのテレビでは、アメリカ、韓国、マレーシア、インドなどのアニメも放送されていますが、いずれも多くが子供向けです。そんな中、インターネットの力も借り、日本アニメは大人の趣味の選択肢の一つとして、大きな存在感を示しています。

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