インドネシアで日本語学校を設立する手順と費用

公開
2024/10/15
更新
2024/11/27
この記事は約9分40秒で読めます。

インドネシアにおいて日本語は、最も学習者の多い外国語の1つです。

国際交流基金の「2018年度日本語教育機関調査結果」によると、インドネシアの日本語学習者は約71万人で、そのうち65万人が高校の第二外国語の授業などで日本語を学ぶ中等教育段階の生徒です。

残りの6万人のうち、学校教育以外で日本語を学ぶ人は約2万3,000人。学校教育以外での学習方法としては独学のほか、語学学校(日本語学校)などが挙げられます。

そこで本記事では、インドネシアで語学学校を設立するための基本的な知識として、法的な位置づけや設立手続き、費用などを紹介します。

参考:国際交流基金「What We Do 事業内容を知る インドネシア(2020年度)」

円表記は、2024年10月11日のレート(1ルピア=0.0095円)で換算したものです。

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インドネシアにおける語学学校とは

語学学校の法的位置づけ

国民教育制度に関する2003年法律第20号によると、インドネシアの教育は、正規(小学校、中学校など公的教育機関による教育)、非正規(私設教育機関による教育)、非公式(家庭教育など)の3つがあります。

語学学校は「非正規教育(PNF:pendidikan nonformal)」にあたります。非正規教育とは、正規教育以外のルートで体系的かつ段階的に実施される教育のことで、正規教育の代替、補完、または追加などの機能が期待されます。

非正規教育機関の分類

  • コース機関およびトレーニング機関
  • 学習グループ
  • コミュニティ学習活動センター
  • マジェリス・タクリーン(宗教教育の場)
  • 非正規の幼児教育

PNFのうち語学学校は、「コース機関およびトレーニング機関(LKP:Lembaga kursus dan lembaga pelatihan)」に分類されます。機関やクラスによって、その目的は就職や昇進のための試験合格、個人の意志によるスキルアップなどさまざまです。

公的な学校教育の外に位置づけられるため、語学学校の「学校」はSekolah(学校)ではなく、Lembaga(機関)やKursus(コース)、またはLembaga kursus(コース機関)と呼ばれることが多くなっています。

法人設立と語学学校設立の関係性

コース機関およびトレーニング機関(LKP)としての語学学校は、個人、グループ、または法人によって設立することができます。つまり、語学学校を設立する主体が、必ずしも法人である必要はありません。

法人の場合の選択肢としては、財団(yayasan)、協同組合(koperasi)、株式会社(PT)などがあります。事業コード(KBLI)は「85493(民間言語教育)」です。

コース機関およびトレーニング機関(LKP)と職業訓練機関(LPK)

PNFの「コース機関およびトレーニング機関(LKP)」に分類される語学学校と似た機関に、職業訓練機関(LPK:Lembaga Pelatihan Kerja)があります。

LPKは職業訓練をする機関で、労働省の管轄。職業訓練校としての語学学校もこれにあたり、労働省のデータによると、日本語教育のLPKは305機関あります。

一方の語学学校を含む「コース機関およびトレーニング機関(LKP)」は、教育文化省が管轄する機関です。

参考:Kementrian Ketenagakerjaan Republik Indonesia「Jumlah Lembaga Berdasarkan Kejuruan」

インドネシアでの語学学校設立に必要な法的要件と手続き

事業形態(法人、グループ、個人)を選んだあとは、語学学校設立の許可申請手続きを行います。

語学学校設立に必要な書類

2013年教育文化大臣規則第81号によると、語学学校設立のためには、行政要件と技術的要件を満たしていることを証明する、以下の書類が必要です。

行政要件

  • 設立者の身分証明書(KTP)のコピー
  • 経営陣の構成と職務内容の詳細
  • 村長または地区長からの居住証明書
  • 学習場所の所有権または3年間の使用権証明書
  • 設立者が法人の場合、法務人権省からの法人認定書を添付

技術的要件

  • 国家教育基準に基づいた教育機関開発計画書

ジャカルタの非正規教育施設設立許可申請チェックリストによると、必要書類は具体的に、以下の通りです。

  • 6,000ルピア(57円)の印紙付き申請書
  • 申請者/責任者の身分証明書(インドネシア国民の場合、身分証明書(KTP)及び家族証明書(KK)のコピー)
  • 代理申請の場合は代理者のKTPおよびKKのコピー
  • 法人/事業体の場合、設立および変更に関する証書(Akta Pendirian)のコピー
    ※支店がある場合は支店も
  • 法人の場合、法人の納税者番号(NPWP)
  • 建築許可(PBG、旧IMB)のコピー
  • 近隣住民の承諾(左右、前後)、および近隣住民のKTP(左右、前後)
    ※地区長発行の書類 SPPLを求められる地域もあり
  • 6,000ルピア(57円)の印紙付き誓約書
  • 事業計画、銀行口座、職員数・生徒数、教室及びその他設備の構成・見取り図などの内容を含む技術提案書
  • 土地所有権または賃貸許可を証明する各種書類

なお、地域によって一部内容が異なる場合があります。

参考:
DPMPTSP Provinsi DKI JAKARTA「Detail Perizinan: Izin Operasional Lembaga Kursus dan Pelatihan (LKP) || Baru」
Mal Pelayanan Publik Kota Bogor「Izin Penyelenggaraan Satuan Pendidikan Nonformal」

語学学校設立の手続きの流れ

教育局への申請

法人の場合、語学学校を含む非正規教育機関(PNF)設立許可の申請は、法人設立後に行います。法人の設立方法については、以下の記事をご確認ください。

インドネシアにおける外資法人(PMA)の設立手順と書類準備

インドネシアにおいて外資法人(PMA)を設立する場合は資本金を100億ルピア(約1億円)を準備した上で、外資特有の規制なども理解する必要があります。

続きを読む

PNF設立許可申請手続きの流れは、以下の通りです。

  1. 必要条件を満たしたうえで、設立者が地域の教育局長に対し設立申請(多くの場合オンライン申請)
  2. 教育局長による確認
  3. 地方の地方の投資・ワンストップ統合サービス局(DPMP-TSP)および教育局による現地調査
  4. 教育局長が承認または拒否を通知
    ※承認された場合、教育局長がPNF設立許可証とともに非正規教育機関登録番号(Nomor Induk Satuan Pendidikan Nonformal)を発行

ここで発行されたPNF設立許可証は、その教育機関で、登録内容に変更なく外国語コースが運営されている限り有効です。

語学学校の設立許可は地方の教育局に対し行うもので、申請フォームや承認までの所要日数は、地域によって異なります。所要日数は10~30日以内と規定されている場合が多くなっています。

事業者登録番号(NIB:Nomor Induk Berusaha)の取得

法人であるか否かに関わらず、語学学校を含む非正規教育機関(PNF)は事業者登録番号(NIB:Nomor Induk Berusaha)を取得する必要があります。NIBは、電子統合システムOSSを通して発行され、事業者や事業内容の登録証明書で、ビジネスIDとして機能します。

NIB取得のためには、語学学校の設立者のKTP、KK、NPWPなどのデータが同期している必要があります。

NIBはWeb サイト(https://oss.go.id)から申請・取得できます。基本的には、上記の地域の教育局に対するPNF設立許可の申請と同時または事前に行います。

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語学学校設立にかかる費用の内訳

語学学校の設立にかかる費用の例を紹介します。

初期投資費用の例

初期費用としては、施設の整備や設備、必要な備品の購入などが挙げられます。具体的には、例えば以下のようなものです。

施設の購入または賃貸費用

初期費用としてもっとも大きいのは、場所を準備するための費用です。ジャカルタで語学学校を設立する場合の、施設の購入または賃貸費用は、立地や規模などにより大きく上下します。以下は、その目安としてご覧ください。

  • スペース(教室)のレンタル:月額500万~1,000万ルピア(4万7,500~9万5,000円)
  • 建物のレンタル:年額2億ルピア~5億ルピア(190万~475万円)
    ※Ruko(ショップハウス)と呼ばれる2~3階建ての長屋型住居兼店舗向け建物を想定。
  • 建物の建築:5億~15億ルピア(475万~1,425万円)
    ※2階建ての小規模なRukoを想定。土地購入費を除く。

改築・改装費用

定められた語学学校の規格(教室の大きさ、トイレの数など)に合うよう、建物を改装する場合の費用は、おおむね5,000万~3億ルピア(47万5,000~285万円)です。こちらも実際には内装にどれだけ力を入れるかで、3億ルピア(285万円)を大きく越えたりもします。

備品購入費用

机、椅子、ホワイトボード、IT機器など、備品の購入費用は、備品の種類や数によります。1つの教室の立ち上げでは、1,000万~5,000万ルピア(9万5,000~47万5,000万円)が目安です。

以上に加え、教材や図書などの購入費用がかかります。

運営費用の例

実際に事業をスタートしてからの運営費用には、以下のようなものが含まれます。

人件費

2024年のジャカルタと近郊都市の最低賃金は約500万ルピア(4万7,500円)前後です。

常勤の日本語講師を雇う場合、給与はその講師の経験やスキルに応じて、月額で500万~1,000万ルピア(4万7,500~9万5,000円)程度になります。事務職員は、やや安くなる傾向があります。また語学学校では、経営陣および講師と事務職員の他、運転手、警備員、清掃員などを雇うケースもあります。

なお、語学学校に限りませんが、インドネシアの教育機関では、コマ給の非常勤講師を雇っている例も少なくありません。

施設維持費

毎月の光熱費や清掃費などとして、200万~500万ルピア(1万9,000円~4万7,500円)ほどかかります。

以上の他、広告宣伝費や保険料、税金などの費用がかかります。

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インドネシアの語学学校の授業料

様々な費用を工面して設立した語学学校ですが、開校してからの収入はどうなるでしょう。

参考として、以下ではジャカルタの3つの語学学校の授業料などを紹介します。
語学学校の日本語クラスにはまず、大きく分けてオフラインか、オンラインかの違いがあります。両方持っている学校もあれば、どちらかのみの学校もあります。

日本語中級レベルのクラスを見てみると、授業時間や回数はまちまちですが、オフラインのグループレッスンの授業料は月額200万~250万ルピア(1万9,000~1万3,750円)のところが多くなっています。オンラインレッスンの場合は、安いところで20万ルピア台(1,900円~)からあり、相場は30~50万ルピア(2,850~4,750円)程度です。

Akamonkai Jakarta

Akamonkai Jakarta(赤門会日本語学校)は、1985年に東京で設立された語学学校で、2023年に北ジャカルタのショッピングモールBaywalk Mallに開校しました。例として、いくつかのクラスの授業料を紹介します。

通常クラス(グループレッスン、3~3.5か月で17〜25回)

赤門会日本語学校は、日本語能力試験初級(N5)から上級(N1)まで5つのレベルごとにコースを設置しています。いずれも3~3.5か月、17~25レッスンのコースで、授業料は230万~320万ルピア(2万1,850~3万400円)です。登録料と教材費は、それぞれ10万ルピア(950円)です。

プライベートクラス

プライベートレッスンは、ネイティブの講師か、インドネシア人講師かで料金が違います。ネイティブ講師の場合は1時間33万5,000~40万5,000ルピア(3,183~3,848円)、インドネシア人講師の場合は、1時間24万3,000~31万1,000ルピア(2,328円~2,979円)です。

Cetta Online Class

Cettaは南ジャカルタに拠点を置くオンライン語学学校で、2020年に開校しました。日本語以外にも英語、フランス語、韓国語などのコースがあります。以下では、日本語コースの料金を紹介します。

通常クラス(グループレッスン)

グループレッスンは4か月の初心者コース、7か月の初級コース、9か月の中級コース、12か月の上級コースと、初級と中級の会話コースがあります。

授業料は平日が月額35万~79万5,000ルピア(3,353~7,616円)、週末が月額41万5,000~97万5,000ルピア(3,976~9,341円)です。

集中クラス

Cettaには試験合格など目指す4~6か月の集中クラスがあります。レベルは初心者から中級まで、授業料は月額85万~120万ルピア(8,143~1万1,496円)です。

プライベートクラス(グループ)

こちらは、家族や友達と一緒に勉強したい人向けの、グループのプライベートレッスンです。 レベル分けは通常クラスと同じで、授業料は月額215万~440万ルピア(2万597~4万2,152円)です。

プライベートクラス(個人)

1対1のプライベートレッスンも、レベル分けは通常クラスと同じです。授業料は、月額107万5,000~220万ルピア(1万213~2万900円)です。

Sakura Japanese Learning Center

Sakura Japanese Learning Center(さくら日本語講座)は、2012年に設立された、ジャカルタ郊外の都市ブカシを拠点とする日本語学校です。現在はブカシに4校を持ち、出版や日本留学サポート事業を行うほか、SAKURA JLCの名前でSNSを使った情報発信にも力を入れています。

オンラインクラス

オンラインクラスは日本語能力試験の各レベルに合わせた、合計5コースが設置されています。授業料は月額12万5,000~32万5,000ルピア(1,188~3,088円)です。登録料は15万ルピア(1,425円)です。

常クラス(週3時間・4か月間)

オフラインクラスの授業料は、4か月で初級が185万ルピア(1万7,575円)、中級が200万ルピア(1万9,000円)です。月額に直すと、初級が46万2,500ルピア(4,394円)、中級が50万ルピア(4,750円)です。登録料は教材費込みで15万ルピア(1,425円)です。

集中プログラム

オフラインの集中プログラムは、平日コースと週末コースがあり、それぞれレベル別になっています。平日コースはレベルによって2~14か月、1か月あたり100時間で授業料は280万ルピア(2万6,600円)です。

週末コースはレベルによって4~24か月、1か月あたり50時間で、授業料は140万ルピア(1万3,300円)です。登録料は教材費込みで、49万5,000ルピア(4,703円)です。

語学学校設立には法人設立とは別の認証が必要

紹介したように、語学学校の設立には、法人設立とは別に、法律が定める「非正規教育(PNF:pendidikan nonformal)」の中の「コース機関およびトレーニング機関(LKP:Lembaga kursus dan lembaga pelatihan)」として認証を受けるための手続きが必要です。

語学学校としての認証取得のためには、関係する役所窓口への書類提出や現地視察への対応が必要です。また、法人設立から始める場合は、そのための書類や資本金の準備が必要です。

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インドネシアには何人の日本語学習者がいますか。

国際交流基金の「2018年度日本語教育機関調査結果」によると、インドネシアの日本語学習者は約71万人で、そのうち約65万人は高校など中等教育課程で日本語を学ぶ生徒です。

インドネシアで語学学校(日本語学校)を設立するには、法人である必要がありますか。

インドネシアで日本語学校を含む語学学校を設立するには、法人である必要はありません。個人や非営利団体でも可能です。

インドネシアの語学学校(日本語学校)で学ぶ生徒の目的はなんですか。

インドネシアの語学学校(日本語学校)で学ぶ生徒は、就職、昇進、試験合格、自己研鑽など色々な目的で日本語を学んでいます。

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