インドネシアでTikTok ShopがECプラットフォームの脅威に

公開
2025/12/30
更新
2025/12/30
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コロナ禍でオンラインショッピングの需要が急増したインドネシアでは、InstagramやFacebookなどSNSのショップ機能を利用した商品の売買が流行しています。

SNSショッピングが人気な理由としては、ショップとの距離の近さや、いつも使っているSNSのモバイルアプリから直接買い物ができる利便性が挙げられます。またショップ(セラー)にとっても、多くの人にリーチできる可能性があるという点で魅力的です。

そんな中、2022年に急成長を遂げたのが2021年にサービスを開始したTikTok Shopです。本記事では、インドネシアにおけるTikTok Shop人気の状況や、人気となっている理由、注目のアカウントなどをご紹介します。

TikTok Shopとは

TikTok Shop(TikTok Shoppingとも)は、TikTokのEC機能です。日本ではまだ使えませんが、東南アジア諸国ではすでに人気を博しており、従来のECプラットフォームのライバルになりつつあります。

もともと動画共有サービスであるTikTokはライブコマースに強いのが特徴です。ECロジスティクス会社Ninjavanの調査によると、TikTok Shopはインドネシアの回答者の27.5%に支持され、最も人気の高いライブコマースプラットフォームに選ばれました。

なお、東南アジア全体では、Shopee、Facebookに次ぐ3番人気となっています。

TikTok Shopのメリット

ユーザーにとってのメリットは、TikTokから他のアプリに移動することなく買い物ができる手軽さや、おもしろい動画を視聴しながら気になったものをついでに購入できるエンターテインメント性の高さです。また、送料無料や割引などのプロモーションが多いことも魅力となっています。

セラーにとってのメリットの一つは、アクティブユーザーの数です。インドネシアのTikTokユーザー数はいまや1億人に到達しようとしています。その分、従来のECプラットフォームに店を構えているだけではアプローチできない層の大勢の人に商品をアピールできるチャンスがあるのです。

なお、TikTokのWebサイトを参照すると、セラー側のメリットは以下のように紹介されています。

  • 各種機能によりブランディングと販売が簡単になる
  • ショート動画やライブ配信によって商品の信頼性を高められる
  • ビジネスアカウントに提供される「TikTokクリエイターズ」を使うとコンテンツに関する洞察が得られる

TikTok Shopのセラーになるには

TikTok Shopのセラーになるには、登録者が18歳以上であることや、フォロワーが2,000人以上いることなどいくつかの条件がありますが、特に難しい点や厳しい審査はありません。基本的には、IDカードなどで本人確認ができ、銀行口座を持ち、TikTokのアカウントを持っていれば誰でもセラーになれます。

インドネシアでTikTok ShopがECプラットフォームの脅威となっている

それでは、2023年1月10日のCNBC Indonesia「TikTok Buat Shopee-Tokopedia Ketar-Ketir, Cek Data Terbarunya(TikTok人気にShopeeやTokopediaが震撼、最新データをチェック)」の情報を元に、TikTok Shopの現状をご紹介します。

TikTokを運営するByteDanceのデータによると、インドネシアを含む東南アジアでTikTok Shopは急成長しています。本プラットフォームを通じた商品の販売額は2022年中に4倍に増えており、東南アジアでの流通取引総額(GMV)は44億ドル(約5,700億円)以上と記録されています。

※ドル円は2023年1月25日現在のレート(1ドル=129.63円)で換算しています。

TikTokがインドネシアで提供するショップ機能は、大きく分けて2つあります。

1つ目は通常のEC機能です。TikTok ShopにTikTokのアカウント所有者がオンラインストアを開設すると、他のTikTokユーザーが訪問し、TikTokのアプリ内で支払いまで完了させることができます。

ユーザーは、ショップのページから商品を探す以外に、投稿動画に貼られたリンクをクリックしてショップの商品詳細ページを訪問することでも買い物を楽しめます。

2つ目はのライブ配信です。インドネシアでは最近、ライブ配信による商品の売買が流行しており、Tokopedia、ShopeeなどのECプラットフォームでも行われています。

TikTok Shopのライブ配信は、TikTokのアプリを開いているすべてのユーザーに広くアピールするチャンスがあるという点で、セラーにとって魅力的です。

オンライン調査会社Populixの過去の調査によると、SNSを利用してオンラインショッピングをしたことのあるインドネシア人の45%がTikTok Shopの利用経験があり、WhatsApp(21%)、Facebook Shop(10%)、Instagram Shop(10%)を上回っています。

ユーザーの年齢層を見ると、TikTok Shopのユーザーには18~25歳の女性が多く、この傾向は今後も続くことが予想されています。一方、Instagram ShopやWhatsAppは40歳前後の男性ユーザーの割合が高くなっています。

また、同調査によると、回答者の52%がSNSでのオンラインショッピングが流行していることを知っています。お気に入りのSNSを閲覧しながら、販売者と直接やりとりし、アプリを切り替えることなく支払いまで完了するショッピングのスタイルは、インドネシアの消費者の新しい選択肢となっていることがわかります。

TikTok Shopで人気のアカウント

続いて、インドネシアのTikTok Shopで人気があるアカウントを2つご紹介します。

人気化粧品メーカーのショップ@somethincofficial

まず、インドネシアの化粧品メーカーSomethincのTikTok Shopです。

インドネシアの化粧品メーカーSomethincのTikTok投稿動画
左側にある黄色のバッグのマークが商品詳細ページへのリンクボタン
インドネシアの化粧品メーカーSomethincのTikTok Shop商品詳細ページ
動画で紹介された商品の詳細ページ

SomethincがTikTokに投稿する商品紹介動画には、「商品はこちら」というボタンが設置されています。このボタンをクリックするとTikTok Shopの商品詳細ページにジャンプします。商品詳細ページには、一般的なECプラットフォームと同じく、ブックマーク(お気に入り)機能やショップとのチャット機能が付いています。

この方法なら、Somethincのプロフィールページやショップページを訪れていないTikTokユーザーでも、アプリを開いてさえいれば商品購入に繋がる可能性があります。

ティックトッカー猫のショップ@cicichania96

TikTok Shopには、比較的大きな企業から個人まで、さまざまなセラーがショップを構えています。

以下の写真は、Pororoというモデル猫が登場するTikTokアカウントです。Pororoは非常に有名なティックトッカーで、350万のフォロワーを有します。

インドネシアで人気のティックトッカー猫Pororo
インドネシアで人気のティックトッカー猫Pororoのショップ

このアカウントのショップでは、動画内でPororoが身につけているオリジナルの服やアクセサリーを販売しています。商品紹介としてはもちろん、かわいらしい猫の日常が垣間見える動画そのものが魅力的であることが、人気の理由でしょう。

他にも、インフルエンサーの知名度や、コンテンツの面白さを活かしたショップが多数出店しています。工夫次第で色々なことができるTikTok Shopは、クリエイティブなことが好きなセラーに向いていると言えます。

インドネシアとTikTok

ユーザー数世界第2位

TikTokユーザーが多い国ベスト10

調査データプラットフォームStatistaがまとめたデータによると、インドネシアはアメリカに次いで世界で2番目にTikTokのユーザー数が多い国です。その数は、2022年4月には9,907万人に達しました。

インドネシアで一番人気のSNSアプリ

インドネシアにおけるTikTok人気は、調査機関Data.ai(旧App Annie)のレポート「State of Mobile 2023」からも明らかです。このレポートによるとTikTokは、iOSおよびAndroidデバイスの両方で2022年を通じてインドネシアで最も多くダウンロードされたSNSアプリとなりました。

TikTok人気の理由

なぜ、インドネシアでTikTokが人気なのでしょうか。

ジョグジャカルタ州立大学のコミュニケーション研究講師Benni Setiawan氏は、コンテンツの短さが簡潔な情報を迅速に収集したい人々のニーズに合致していることが、TikTokの人気の理由としています。

その上で、「TikTokの人気は、このアプリケーションを介して商品を販売するセラーたちによっても支えられています。ライブ配信で数千冊の本を販売することさえできるのです。」と続けました。

TikTokの可能性

スマートフォンユーザーの多さ

また、Benni氏は、インドネシアの人口とスマートフォンユーザーの多さもTikTokブームに関係しているとしています。つまり、TikTok Shopに出店したり広告を出したりした場合にアプローチできるユーザーの母数の大きさがカギというわけです。

イギリスのメディア企業We Are Socialのレポート(2022年)によると、インドネシアでインターネットに接続されているモバイルデバイスの数は約3億7,000 万に上りました。インドネシアの人口(約2億7,000万人)と比べると133.3%で、国民一人あたり約1.4台のモバイルデバイスを持っている計算になります。

これに加えて特徴的なのは、モバイルデバイスでインターネットに接続する人の割合の多さです。インターネットユーザーのうち、スマートフォンを始めとするモバイルデバイスを使用する人の割合は、インドネシアでは94.1%に上ります。一方、日本では86.6%となっています。

モバイルデバイス、特にスマートフォンのユーザー数は、将来的にTikTokユーザーとなる可能性がある人の数とも言えます。

さらに、国民の半数以上が「最近はSNSでオンラインショッピングをするのが流行りだ」と認識している状況の中、TikTokのアプリのダウンロード数(ユーザー数)やユーザーがTikTokを利用する時間が増えていることは、オンラインセラーにとっては注目すべき事実です。

TikTokの勢い

同レポートによると、TikTokは「もっともよく使うSNS」と「お気に入りのSNS」の両方で、WhatsApp、Instagram、Facebookに次ぐ4位となっています。

TikTokの「勢い」にも要注目です。アプリのダウンロード数が多いことは既にご紹介しましたが、アプリを既に持っているユーザーがTikTokに割く時間も増えています。

We Are Sociaによると、TikTokユーザーは月に23.1時間をTikTokに費やしているとされ、前年比で67%増えています。増加率を見てみると、WhatsAppとYoutubeが2%、FacebookとInstagramはマイナスですから、その差は歴然。TikTokは、今インドネシアで一番勢いのあるSNSなのです。

なお、月に23時間というと1日あたり約0.8時間ですが、実際はTikTokにもっと夢中な人は多いようです。

インドネシア通信情報省とKatadata Insight Centre(KIC)の調査によると、1日2時間以上TikTokを使用する人は回答者の47.4%に上り、Facebook(41.4%)、Youtube(45.2%)、Instagram(42.4%)を上回っています。細かく見ていくと、2~5時間が31.8%、5~8時間が9.9%、8時間以上が5.6%となっています。

インドネシアのECとTikTok Shopの今後

WhatsAppやInstagramがすでに広く浸透し、アプリのダウンロード数やユーザー数の伸びしろが小さくなっている状況と比べると、新参者のTikTokはまだ伸び盛りが続きます。

TikTokのユーザー数が増え、それを見てショップを開設するセラーが増え、またTikTokのアプリをダウンロードしたりShopを覗いてみたりする人が増えていく、ポジティブな循環が起きていると言えます。

昨今は、ライブコマースを始めとするエンターテインメント要素を取り入れたオンラインショッピングのあり方として、「ショッパーテイメント」という言葉も登場し、世界的に注目されています。近い将来、TikTok Shopは「インドネシアにおけるショッパーテイメントのパイオニア」と呼ばれるようになるかもしれません。

インドネシアのEC業界を観察する上では、今後も要注目のサービスです。

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