
【インタビュー】「就職の手前に関われたら、もっと面白い」。ゼロからN1まで育てるJellyfish Education Indonesia・福村志郎氏の日本語教育
- 公開
- 2026/08/13
- 更新
- 2026/09/28
- この記事は約1分12秒で読めます。
人口が多く、今後も市場の成長が期待されるインドネシアには、さまざまな日本企業が事業機会を見いだしています。一方、日本で培った技術やサービスをそのまま持ち込むだけでは、現地に根づく事業にはなりません。
本連載では、インドネシアで実際に事業を展開してきた経営者や事業責任者に、現地市場との向き合い方や事業づくりの難しさを伺います。
今回お話を伺ったのは、PT. Jellyfish Education Indonesiaの福村志郎さんです。
福村さんは、日本の人材紹介会社で約5年間働いたあと、2014年にインドネシアへ渡りました。その後、Jellyfish Education Indonesiaの経営に携わり、2019年からインドネシア法人のMBOを進め、2020年前半に独立しました。
現在、Jellyfish Education Indonesiaはインドネシアで10校の日本語学校を直営し、初心者から日本語能力試験(JLPT)でN1を目指す学習者まで、幅広く指導しています。近年は、工学や建築などの専門性を持つインドネシア人材を日本企業で働けるようゼロから教育する、高度人材向けの日本語教育にも力を入れています。
加えて福村さんは、別会社のJoyful Care Indonesiaを設立し、日本で働きたいインドネシア人の教育・送り出しにも取り組んでいます。
人材紹介の仕事から、なぜ「人を育てる側」へと軸足を移したのか。日本語教育の質をどう高め、事業や組織をどのように広げてきたのか。インドネシアで教育事業に向き合ってきた福村さんに、その考え方と挑戦について伺いました。
最大の出資予定者が撤退。それでもMBOをやり切った
まず、インドネシアに来るまでの経歴から教えてください。
福村
大学を出てから最初の5年ぐらいは、日本の人材紹介会社で働いていました。20代後半になって、「ちょっと海外に出たいな」と思ったんです。
ただ、どこの国がいいとか、言葉ができるとかは全然なくて。インドネシアが南半球にあることも知らないぐらいの状態で来ました。それが2014年ぐらいですね。最初は人材紹介会社のインドネシア法人で仕事をしていました。
そこからJellyfish Education Indonesiaに関わり、最終的にはMBOをすることになります。
福村
2019年ぐらいから話を進めて、実質的に完了したのは2020年前半ぐらいです。インドネシア法人だけをMBOする形で、元の会社とは今も業務提携しています。喧嘩別れしたわけではなくて、資本だけ分かれたという感じですね。
当初は、日本側の2社に出資していただき、僕自身の負担は10%ぐらいという形で会社を買い取る計画でした。
ところが、座組みもかなり固まり、それぞれの出資額も見えてきた段階で、一番大きく出資する予定だった方から「やっぱりやめる」と言われたんです。本当に「やばい」となりましたね。
かなり進んだ段階で、資金計画を組み直すことになったと。
福村
そうですね。急きょ日本へ行って、以前勤めていた会社の方などに話をしに行き、資金調達に奔走しました。それぐらい切羽詰まっていました。今となっては笑い話ですけど、当時は大変でしたね。
ただ、結果としては今の形で良かったと思っています。当時考えていた座組みのままだったら、僕自身も結局、役員の一人のような立ち位置になっていたと思うんです。
今はジョイントベンチャーをつくったり、新しいことを調べて始めたりするのも割と自分の判断でできます。当時の計画通りに進んでいたら、こんなに自由にはできていなかったと思うので、そういう意味では良かったですね。
人材紹介から「育てる側」へ。ゼロからN1まで支える日本語教育
人材紹介から日本語教育へ。仕事の軸はどのように変わっていったのでしょうか。
福村
人材紹介って、ある程度でき上がった人、ある程度スキルがある人を、その人を必要としている会社につなぐ仕事だと思うんです。
でも、そこに至るまでには皆さんそれぞれいろいろな経験がありますよね。スキルを得るまでに勉強したり、経験したりして、その先に就職や転職がある。
その手前の部分に関われたら、もっと面白いと思ったんです。だから「育てる」というところは意識していますね。
現在、Jellyfishではどのような日本語教育を行っているのでしょうか。
福村
現在はインドネシアで10校を直営していて、日本語をまったく学んだことがない方からN1を目指す方まで教えています。
日本語教育自体はインドネシアにもいろいろありますが、N2やN1といった高いレベルまで、組織として体系立てて教えている学校はそれほど多くないと思っています。そこが僕らの強みの一つですね。
社内には、日本人の有資格の先生を中心とした「Jellyfish Lab」というチームもあります。新しい指導方法を考えたり、教材をつくったりして、何十人もいる先生たちの知見も取り入れながら改善したものを横展開しています。
最近特に力を入れているのが、日本で働く高度人材への日本語教育だそうですね。
福村
はい。Jellyfishでは、日本で技人国(技術・人文知識・国際業務)の在留資格で働く方への日本語教育に力を入れています。
例えば、インドネシアのトップ大学で工学や建築を学んだ優秀な学生で、専門分野への意欲や能力はあるけれど、日本語力だけがない。そういう方をゼロから教育して、実際に8か月から10か月ぐらいでN2を取得するケースもあります。スーパーゼネコンをはじめ、複数の日本企業からこうした教育を受託しています。
「日本語ができる人を探す」のではなく、「専門性のある人に日本語を身につけてもらう」と。
福村
そうですね。最初からN2レベルの日本語ができて、さらに建築や工学などの専門性も高い人を探そうとすると、当然候補者は限られます。
それなら、専門分野で優秀な人を採用して、日本語をゼロから身につけてもらう。日本人の新卒採用にかかる費用と比較しても、そういう新しい採用チャネルをつくることは十分考えられると思っています。
日本語教育だけでなく、日本への留学支援もJellyfishの大きな事業の一つですね。
福村
はい。日本の国立大学やトップ私立大学から、インドネシアでの広報を受託しています。
例えば京都大学では、初めて外部エージェントを活用した広報を始める際に当社へ依頼してくださり、現在、当社がインドネシアで唯一の代理店となっています。
日本語を教えるだけではなく、その先にある日本での進学や就職まで含めて、選択肢を広げていくところに関われたらと思っています。

「集めて紹介するだけなら、他の人がやればいい」。Joyful Careでも貫く「育てる」姿勢
一方、日本での技能実習や特定技能などの就労支援は、Jellyfishとは別の会社で手がけているそうですね。そちらでも日本語教育を提供していますか。
福村
はい。Jellyfishとは別に、2020年にJoyful Care Indonesiaという会社を立ち上げました。日本で働きたいインドネシア人の日本語教育や送り出しを行っています。
手軽にやりたいんだったら、すでにある程度育っている人を集めてきて紹介して、手離れよくやるのがたぶん一番楽だし、儲かるんでしょう。でも、それは他の人がやると思うので、僕らがやる意味はあまりない。
Joyful Careでも、最初はオンラインで学んでもらい、やり切った人を次の対面学習に進める流れで、教育の段階から関わっています。途中で離脱できる仕組みにしているので、結果的にやる気や時間管理、学習習慣を持った人が残る。学ぶ本人にとっても、日本企業にとっても意味のある仕組みにしたいと思っています。
教育から送り出しまでとなると、場所も人も抱えるのでリスクは正直大きいです。それでも、単に人を集めて紹介するのではなく、「育てる」ところから関わることにはこだわっています。
事業を広げる中では、自社の社員をどう育てるかも重要になりますよね。
福村
そうですね。立ち上げのときにいた初期メンバーが今も残っていて、その人たちが核になって組織が広がっている部分があります。だから、最初のチームづくりは結構重要だなと思います。
ただ、僕の場合は「信じて任せた」というより、「もうどうしようもないから任せていたら、信じられる人になった」みたいな感じなので、同じ方法でもう一回同じ組織ができるかと言われると、全然そんな気がしない。再現性があるかはよくわからないです。
採用時に役割を細かく決め切るのではなく、入社後に適性を見ていくイメージでしょうか。
福村
入り口の段階では、その人の適性まではあまりわからないと思っています。教育部門、マーケティング、バックオフィスといった大きな職種は分けて採用しますが、その中の細かい役割は入社後に動かすことがあります。
チームを引っ張れそうな人だったらリーダー寄りにする。黙々と突き詰めて考えられる人なら、カリキュラムや教材をつくるような専門職のほうへ寄せる。入社してから、その人が感じるやりがいや適性に合わせて少しずつ方向を変えていく感じですね。
先生も含め、正社員での雇用を基本にしているのも特徴ですよね。
福村
はい。できる限り正社員として雇っています。契約社員からスタートする場合も、基本的には正社員登用を前提にしています。
インドネシアの日本語教育では、大学生のアルバイトやフリーランスの先生を集めたり、オンラインで教えたい人と勉強したい人をマッチングしたりする形も多いと思います。
でも、それだとかなり個人依存になってしまう。すごく優秀な先生であればいいんですけど、会社として品質をつくるのは難しいですよね。
もちろん、フルタイムで会社の仕事にコミットしてもらう以上、会社としての覚悟と責任を持つ必要があると思っています。「採用して、事業がちょっとうまくいかなくなったら減らせばいい」というような考えで採用しないようにしたいです。
最近ではキッズデイケア事業も始めています。そこではまた違う組織づくりの難しさがありますか。
福村
デイケアは2023年末から2024年にかけてスタートしました。そこは正直、最初の組織づくりがあまりうまくいっていなくて、まだ試行錯誤しています。
保育士の方は当然、教育や保育の質を高めることを考えます。それはすごく大事なんですけど、僕は経営する側として、「どうやってもっと多くの方に使ってもらうか」ということも考える。両者の視点が必ずしも同じではないんですよね。
日本語教育のほうでは、教育の視点を持ちつつ、僕の視点もある程度理解してくれるマネージャーがいたりするので話が進みやすいんですけど、デイケアはまだそこが十分に機能していない。事業によって組織づくりの難しさも違うなと思っています。
「終わりかけたと思ったら、ルールが変わる」。許認可取得に3年かかった
日本での就労支援事業を進めるうえでは、許認可の取得でもかなり苦労されたそうですね。
福村 特にP3MIのライセンスはかなり苦労しました。スタートから取得まで3年ぐらいかかったんです。何が正解なのかわからない世界というか、インドネシアは杓子定規にいかない部分もかなりあるんですよね。
3年間、どのように対応していったのでしょうか。
福村 基本的には自分たちでやりました。リーガルスタッフと、設立周りをサポートしてくださる方と連携して、一つずつ対応していった感じです。
正面から、地道にコツコツ進めていったと。
福村
そうですね。それしかなかったです。必要なことを、一個ずつ言われるんですよ。まとめて言ってほしかったですけど(笑)。手続きが終わりかけたと思ったらルールが変わり、対応せざるを得なくなることもありました。
結果的に定款を何回か書き換えたりして、ノタリス(公証人)などに余分なお金を使った部分もあったと思います。正直、専門家に依頼したほうが無駄な時間やお金を減らせる部分はあると思いますね。
「早くやってみたほうがいい」。まだ試せる余地が大きいインドネシア
最後に、これからインドネシアへ進出する日本企業へメッセージをお願いします。
福村
僕自身、別にすごくうまくいっているわけではなくて、まだまだ道半ばだと思っています。だからアドバイスと言えるほどではないんですけど、入り口は大変ですよね。外資規制だったり、資本金やビザだったり、外国人に対するハードルはどうしてもある。
ただ、そこを乗り越えられるのであれば、僕は早くやったほうがいいと思います。マーケットとしてはまだまだチャンスが多いと思いますし、日本人の感覚で当たり前にやっていることが、こちらでは「品質が高い」と言われることもあると思うんです。
特に教育では、例えば授業が時間通りにスタートするとか、それだけでも違いになったりする。ものすごく特別なことをしているつもりがなくても、日本で普通にやっていることをきちんとやれば差別化できるケースはあると思います。
もちろん、実際にやってみないとわからないことも多いです。だから、インドネシアへの進出を考えているのであれば、早く始めて、試してみる。結局そこからしかわからないんじゃないかなと思います。

企業情報
| 会社名 | PT. Jellyfish Education Indonesia |
| 事業内容 | 日本語教育・留学支援 |
| 住所 | Gading Serpong, Ruko Fluorite No. 77, Pakulonan Bar., Kec. Klp. Dua, Tangerang, Banten |
| 設立日 | 2013年 |
掲載内容は取材時点の情報に基づきます。カケモチは掲載企業のサービス内容・取引結果を保証するものではありません。
いつでもお気軽にご相談ください
-
WEBからお問い合わせ
ご相談はいつでも無料24時間受付(2営業日以内に返信いたします)
-
すぐにでも日程調整を行いたい
日程調整フォームへ代表の柳沢が説明いたします。







