インドネシア人生徒の集客方法と日本語学校での教育内容

公開
2024/10/18
更新
2024/11/27
この記事は約9分24秒で読めます。

71万人が日本語を学んでいるとされるインドネシア。その中には、学業や仕事の傍ら、日本語学校に通ったり、オンラインレッスンを受けたりする熱心な学習者も大勢います。

ではそのような学習者たちが、お金を払ってまで日本語を学ぶ目的は何なのでしょうか。

本記事では、インドネシアの日本語学校に対するニーズや教育内容と、日本語学校における生徒の募集方法を、具体例を紹介しながら説明します。また記事の最後では、インドネシアの日本語学校が抱える課題についても触れます。

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インドネシアの日本語学校のニーズ

インドネシアの日本語学校や、語学学校日本語コースの多くが、日本語能力試験(JLPT)の合格に向けたレベル別コースを設けています。

JLPTの特定の級に合格することは、大学の単位取得、留学、就職、特定技能制度を利用した日本での就業などに繋がります。

また、スキルアップや自己研鑽などの、よりプライベートな目的のために日本語を学ぶ人もいます。

子どもの習い事としての外国語は英語や中国語が一般的ですが、子供向け日本語コースを開講する日本語学校もあります。

インドネシアでの日本語学校の設立方法

日本語学校の設立には、法人設立とは別に、法律が定める「非正規教育(PNF:pendidikan nonformal)」の中の「コース機関およびトレーニング機関(LKP:Lembaga kursus dan lembaga pelatihan)」として認証を受けるための手続きが必要です。

日本語学校としての認証取得にあたっては、関係する役所窓口への事業計画、カリキュラム、建物の見取り図などを含む必要書類の提出や、現地視察への対応が必要です。

また、法人設立から始める場合は、そのための書類や資本金の準備が必要です。

法人設立および日本語学校設立の方法は、以下の記事で説明しています。

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インドネシアの日本語学校の教育内容

設置コースの例

日本語学校の設置コースは一般的に目的別・レベル別で、子ども向け以外は、高校生以上が対象の場合が多くなっています。

JLPT級別コース

インドネシアの日本語学校の多くは、上述のとおり、JLPTの合格を目指すレベル別クラスを設置しています。JLPTの初級レベルである「N5」向けクラスとは別に、日本語学習をゼロから始める人向けのビギナークラスを設けている日本語学校もあります。

日本語会話コース

日本語会話クラスは、JLPTの級別クラスに併設されている学校と、単独で設けている学校があります。

ビジネス日本語コース

ビジネス向け日本語コースを設けている学校もあります。

その他の目的別コース

留学準備、就活準備、翻訳・通訳者を目指すクラスなど、特定の目的別クラスを設けたり、進路に関する無料のコンサルティングサービスを提供している学校もあります。

また近年の需要増加を受け、特定技能制度を利用し介護職員として日本で働く人のためのクラスを設ける学校もあります。対象者はインドネシアの看護・介護学校の在校生や卒業生で、主にJLPTのN4合格と、特定技能の資格を得るためのその他のサポートを行います。

コーポレートトレーニング

企業研修としての日本語の出張授業を行う学校もあります。

キッズクラス

子ども向けの日本語クラスを設置する学校もあります。

開講形態・クラス編成

インドネシアの日本語学校には、対面授業のみ、またはオンライン授業のみの学校と、どちらかを選べる学校があります。また、オフラインとオンラインのハイブリッド形式を取り入れている学校もあります。

「レギュラーコース」と呼ばれることの多い「グループレッスン」の場合、定員は10~15名程度です。

各レベルのコースについて、他に、少人数クラス、プライベートクラス(1対1)、プライベートグループ(友人・家族などで参加)などから選べる学校も多くなっています。また、「ゼロから始めて4か月でJLPTのN4合格」など、短期集中型のコースも、多くの学校が取り入れています。

語学以外の教育内容の例

日本にある日本語学校や大学、専門学校、企業とパイプのあるインドネシアの日本語学校では、日本の文化(書道、茶道、漫画など)を体験するクラスや、履歴書の書き方などを学べるクラスを設けたり、実際に日本を訪れるスタディーツアーを企画したりしているところもあります。

またこれらの日本語学校が、留学、ホームステイ、インターンシップ、就職などを支援、斡旋するサービスを手掛けているケースもあります。

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日本語学校を卒業したインドネシア人生徒の主な進路

最初に紹介したとおり、日本語学校に通う生徒の目的は人それぞれです。

基本的に、日本語学校のゴールは語学の上達や試験合格ですが、一部の日本語学校では、提携する企業や大学と協力し、求人情報の提供や、留学、就職の斡旋サービスも行っています。

また、グループ内に技能実習生の送り出し機関としての許可を取得している職業訓練機関LPK(Lembaga Penilaian Kesesuaian)を持ち、連携して職業訓練や送り出しを行う日本語学校もあります。

留学や就職など、特に具体的な目的を持っている日本語学校の生徒の進路としては、以下のような選択肢があります。

  • 大学の単位認定、留学や就職の条件クリアなどを目指してJLPTの特定の級を受験する
  • インドネシアの政府系機関や貿易産業、観光産業などの企業に就職する
  • インドネシアにある日本企業や日本語教師職の求人に応募する
  • 会社員として、またはフリーの翻訳・通訳者になる
  • 日本での求人(特定技能など)に応募する
  • 日本の日本語学校や大学に留学する(留学後に就職する)

インドネシアの日本語学校の生徒の集客方法

オンラインでの集客

ソーシャルメディア(SNS)

SNSの運用に力を入れ、日本語学習者の間で高い認知度を誇る日本語学校もあります。ターゲットである若者層の嗜好に合わせ、最近は特にInstagramとTikTokに力を入れる学校が多くなっています。

■ Cetta Japanese
日本語学校Cetta Japaneseインスタグラム

画像出典:Cetta Instagram

例えばオンライン語学学校Cettaの日本語コースのInstagramアカウントは、20万人以上にフォローされています。ここでは、日本の文化、政治、経済のニュース、JLPTの日程、役立つ日本語など色々な内容を配信しています。また、授業の様子や卒業生の声なども共有しています。

日本語学校Cetta Japanese Tiktokアカウント

画像出典:Cetta TikTok

一方、10万6,000人のフォロワーを持つTikTokは、シーン別日本語表現や文法、語彙を中心に、講師陣が登場してミニ授業を行うショート動画を投稿しています。

■ Sakura Japanese Learning Center(さくら日本語講座)
Sakura Japanese Learning Center(さくら日本語講座)フェイスブック

画像出典:Sakura Japanese Learning Center Facebook

オンラインとオフライン両方の授業を提供するSakura Japanese Learning Center(さくら日本語講座)は、Facebookに22万人のフォロワーを持ちます。

こちらのアカウントでは、学校の様子や授業スケジュールなどに関する情報、シーン別日本語表現などを頻繁に共有しています。

公式ウェブサイト

多くの日本語学校が、公式ウェブサイトでの情報提供にも力を入れています。

■ Akamonkai Jakarta(赤門会日本語学校)
Akamonkai Jakarta(赤門会日本語学校)Webサイト

画像出典:Akamonkai Jakarta

赤門会日本語学校のWebサイトは、視覚的にわかりやすいレイアウト。シンプルながら、トップページを見れば、学校の実績や設置コースなど、学校のことが一通りわかるようになっています。

コーナーごとに、登録または無料体験クラスへの申し込みボタンが設置されている点も特徴的です。

■ Cetta Japanese
Cetta JapaneseのWebサイト

画像出典:Cetta Japanese

CettaのWebサイトも、明るい配色とわかりやすい構成で、SNSを見慣れた若者層に受けそうな見た目になっています。

メニューが見やすく、わかりやすいのはもちろん、トップページの上部にコース・クラスの説明や料金が掲載されており、サイトを訪れた人が素早く重要な情報を受け取れるようになっています。

早期登録・期間限定登録割引

早期、もしくは特定の期間に登録した人向けの登録料や授業料の割引を提供する学校もあります。

■ Jellyfish Education Indonesia
日本語学校Jellyfish Education IndonesiaInstagramアカウント

画像出典:Jellyfish Education Indonesia Instagram

例えばバンテン州タンゲランに拠点を置くJellyfish Education Indonesiaは、時々期間限定の割引キャンペーンをInstagramやFacebookで告知しています。

■ Akamonkai Jakarta(赤門会日本語学校)
Akamonkai Jakarta(赤門会日本語学校)登録料半額キャンペーン

画像出典:Akamonkai Jakarta Instagram

また赤門会日本語学校は、インスタグラムのフォローで登録料が半額になるキャンペーンを行っています(2024年10月)。

無料体験クラス

多くの日本語学校が、 無料の体験クラスを提供しています。先ほどの赤門会日本語学校のWebサイトは、「無料体験」のボタンをクリックすると、WhatsAppに誘導されるようになっています。

■ NORTHERN LIGHTS EDUCATION CENTER
NORTHERN LIGHTS EDUCATION CENTER日本語学校Webサイト

画像出典:NORTHERN LIGHTS EDUCATION CENTER

同様にWebサイト経由でWhatsAppから申し込めるタイプの学校は多く、例えばバンドンのNORTHERN LIGHTS EDUCATION CENTERもWebサイトにわかりやすいWhatsAppのボタンが設置されています。

ウェビナーなどの開催

日本語学習者の交流や、日本語学校のアピールの機会として、セミナーなどを開催する日本語学校もあります。

■ NORTHERN LIGHTS EDUCATION CENTER
NORTHERN LIGHTS EDUCATION CENTERのオンライン交流会

画像出典:NORTHERN LIGHTS EDUCATION CENTER Instagram

例えば前述のNORTHERN LIGHTS EDUCATION CENTERは、「好きな日本文化」「ストレス解消法は何?」など、1つのテーマについて、ネイティブ講師を交えて日本語で語り合う交流会を定期的に実施しています。

オフラインでの集客

交流会などの開催

■ Jellyfish Education Indonesia
Jellyfish Education Indonesiaの料理会

画像出典:Jellyfish Education Indonesia Instagram

またJellyfish Education Indonesiaも、一緒に料理をしながら日本語で交流するイベントや、ネイティブ講師によるデモ授業と個人相談会などを開催。色々な方法で学校や日本語学習の魅力を地域に発信する機会を設けています。

日本文化イベントの開催

地域に開かれたイベントを開催している日本語学校もあります。

■ Fuji Japanese Language School Bali
Fuji Japanese Language School Baliの日本祭り

画像出典:Fuji Japanese Language School Bali Instagram

例えばバリ島の日本語学校Fuji Japanese Language School Baliは2024年8月、自校で日本祭りを開催。けん玉、書道、浴衣の着付け体験などの文化体験や、たこ焼き、唐揚げ、おにぎりといった日本のグルメが提供されました。

同校SNSによると、来年も第2回を開催予定とのことです。

日本留学フェアへの参加

日本留学フェアに参加する日本語学校もあります。

2024年11月にジャカルタで開催される日本留学フェア「Study in Japan Fair」には、Jellyfish Education Indonesiaが提携する文化外国語専門学校の代表として出展します。

参考:Jellyfish Education Indonesia Instagram

インドネシアの日本語学校教育に関する課題

日本語力の高い講師の不足

インドネシアの日本語学校の講師の多くは、日本への留学経験や日本での就労経験のあるインドネシア人です。

一方、ビギナーや初心者レベルのクラスでは、大学で日本語を学んだが、日本に行ったことがないという講師もいます。このような講師はそもそもの日本語力が高くないことに加え、給与が低く、モチベーションを保ちにくいという点で、教育の質を担保しづらいという問題もあります。

インドネシアにおいてネイティブの講師の確保は、リクルーティングと費用面で厳しく、反対に、豊富なネイティブ講師を有する学校はそれをアピールポイントにできます。

日本語上級レベル、特にJLPTのN1合格を目指すレベルの学習者には熟練した講師が必要なので、JLPTのレベル別クラスはN2までしか開講していない学校もあります。

講師のモチベーションと授業の質の問題

インドネシアでは、講師のマネジメントに苦心する日本語学校もあります。日本語学校に限らず、インドネシアの教師職に就く人の中には自己流を貫きたがる人や、教材研究や教案作り、クラス運営、生徒へのフィードバックなどに消極的な人も多く、優れた講師を育てることは、日本語が流暢な講師を雇う以上に難しいといえます。

その要因の1つは、前述のように、給与が低いことです。特に日本語力が高くない人やパートタイムの講師は、日本語学校からの給与だけでは生活できないケースもあります。

加えて、インドネシア人の仕事に対する考え方も影響していると考えられます。インドネシアではジョブ型採用が一般的なこともあり、「自分の仕事は契約時に決めたここからここまでで、給与はそれに対して支払われている」と割り切り、仕事内容に線引きをする感覚を持つ人が多いのです。

そのため、講師本人のモチベーションに委ねられる面が大きい授業の質の向上は、日本語学校経営者が悩むポイントとなります。人件費や人材確保が難しいなどの理由から、講師の指導役の職員を配置できない学校が多いことも課題です。

このような事情から、改善を重ねたカリキュラムや講師研修のプログラムを持つ歴史ある日本語学校や、日本人、日本企業が運営に関わる日本語学校でも、講師の研修で苦労するという話はよく聞きます。

広告宣伝のコスト

どんな企業も悩むのが広告宣伝コストの問題です。日本語学校も例外ではなく、充実したWebサイトやSNSアカウントを持ち、頻繁に更新している学校もあれば、WebサイトやSNSアカウントを持たなかったり、持っていても更新が止まっていたりする学校もあります。

SNSの需要が増えてきたこと、日本語学校のターゲットが主に10代、20代の若者であることもあってか、最近はSNSに力を入れる学校が多く、Webサイトのブログ記事は更新が止まっているケースが目立ちます。

インドネシアの学校教育の問題

日本語学校のような語学学校の前に、誰もが通る学校教育にも、日本語学校に影響を及ぼす問題があります。

講師に関していえば、インドネシア語の知識不足です。

インドネシアでは地域の言語で育つ人が多いため、インドネシア語を学校で学びますが、義務教育を修了しても語学的な知識を満足に持たない人が多いのが現状です。そのため、日本語が流暢でもそれをインドネシア語で正確に説明するのが苦手な人がいるという問題があります。

また生徒に関しては、高校の第2外国語としての日本語の授業が文法に偏り過ぎていて退屈だったがために、そこで日本語学習の意欲を削がれてしまう人が多いという指摘もあります。

特に地方の高校ではレベルの高い講師の確保が難しく、様々な点で生徒のモチベーション維持や能力向上をサポートしきれません。結果的に、その後、日本語学校に通う意欲を持つ人が減っている可能性があります。

課題の多いインドネシアの日本語学校

紹介してきた通り、様々な目的をもって日本語を学びたいと思っているインドネシア人は大勢おり、日本語学校も各地に設立されています。ただ、特に地方では、高校の授業がつまらないと感じて挫折したり、身近に質の高い日本語学校がなかったりして、せっかく芽生えた日本語学習への興味を失ってしまう人も少なくありません。

一方で最近はSNSで情報を収集し、独学や、オンラインコースを受講することでめきめきと力をつける学習者もいます。そのような人に現地で出会うと、珍しく見つけたネイティブスピーカーに自分の日本語を披露しよう、一言でも多く生の日本語を聞き取ろうというまなざしと勢いに圧倒されることもあります。

特定技能制度や、改正される技能実習制度における、日本とインドネシアとのつながりは、今後もさらに強くなっていきます。もちろん、これらの制度を利用して日本で働くため、日本語を学ぼうという人も増えるでしょう。

インドネシアでの日本語学校の設立や運営に興味をお持ちの企業様、もっと知りたいことがある企業様は、ぜひお気軽に弊社カケモチまでお問い合わせください。

インドネシア人の紹介ビジネスに関わる方へ

最後まで文章を読んでいただきありがとうございます。ここまでご覧いただいたということは、記事の内容に対して一定の信頼感や満足感を得ていただいたのかなと推測しています。
もし宜しければ、現在抱えているお悩みを弊社に壁打ち的に相談してみませんか。何かしらお役に立てる情報を共有できる自信があります。

インドネシアの日本語学校に通う生徒の主な目的は何ですか。

インドネシアの日本語学校や、語学学校日本語コースに通う生徒の主な目的は、日本語能力試験(JLPT)の合格です。また、スキルアップや自己研鑽などの、よりプライベートな目的のために日本語を学ぶ人もいます。

インドネシアの日本語学校の教育内容はどのようなものですか。

レベル別に日本語能力試験(JLPT)の合格を目指すコースや、日本語会話、ビジネス日本語などのコースを設ける日本語学校が多くなっています。

インドネシアの日本語学校はどのように生徒を募集していますか。

インドネシアの日本語学校は、SNSやWebサイトでの宣伝、無料体験授業の提供、イベントの開催などを通して生徒を募集しています。

読後のお願い

弊社で公開している記事の1つ1つは、日本人とインドネシア人のライター、日本人とインドネシア人の編集者がそれぞれ協力しながら丁寧に1記事ずつ公開しています。

記事の内容にも自信がありますし、新しい情報が入り次第適宜アップデートもしています。これだけ手間ひまかけて生み出した記事はできれば一人でも多くのインドネシアのビジネス関係者に読んでもらいたいです。

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