インドネシア・マラン:成長率0.89%に低迷する農業分野のエコシステム改革
- 公開
- 2025/12/19
- 更新
- 2026/06/21
- この記事は約4分36秒で読めます。
インドネシア東ジャワ州マラン県では、製造業やサービス業が成長を続ける一方、農業分野の成長率は0.89%と低迷しています。地域の食と暮らしを支える農業の再生に向けて、マラン県は「Kembange Tani Bersiul」と呼ばれる統合型農業エコシステムの改革に取り組んでいます。
はじめに
豊かな自然環境に恵まれたマラン県では、多彩な農作物が生産されています。しかし経済統計を見ると、農業分野の成長は遅れています。こうした課題を打開すべく、県当局や農家、民間企業が連携し、新たな農業モデルの構築が進められています。
本記事では、2023年に始まったマラン県の農業エコシステム改革「Kembange Tani Bersiul」について取り上げます。また後半では、マラン県の農家の様子を動画で紹介します。
数字でみるマランの農業
域内総生産3位、成長率最下位のマランの農業
2024年、マラン県は東ジャワ州の経済成長率(4.93%)をやや上回る、4.96%の経済成長を遂げました。マラン県の産業別域内総生産(PDRB)を見ると、全体に占める割合が高い順に製造、卸売・小売・自動車およびオートバイの修理、農林水産、建設、情報となっています。
一方、成長率では、輸送および倉庫、政府行政・防衛・社会保障、その他サービス、情報、医療サービス・社会活動が高く、PDRBの割合が3位の農林水産業は成長率0.89%で最下位でした。
なお、マラン県のこの状況は、インドネシア全体の状況に似ています。インドネシアの2024年の産業別GDPの上位は製造業、商業、農業で、農業の成長率は全産業分野の中でもっとも低く、0.67%に留まりました。
資料:
- BPS Kabupaten Malang「Pertumbuhan Ekonomi Kabupaten Malang Tahun 2024 P.9」
- BPS「BERITA RESMI STATISTIK 5 FEBRUARI 2025 P.13」
マラン県の農業改革「Kembange Tani Bersiul」
マラン県食糧作物・園芸・プランテーション局(DTPHP)は、農業によって人々の生活を豊かにすることを目指し、最大限に成果を上げられる「統合型農業エコシステム」の構築に乗り出しています。
DTPHPが構築を目指すのは、「Kembange Tani Bersiul(口笛を吹く農夫の花)」と呼ばれる農業モデルです。これは、「地域の強みを活かした農業エコシステムの構築による協働開発」を意味し、地方政府、農業団体、民間企業、学術界などの協業が含まれます。このエコシステムでは、農家は、優良な種の提供、栽培技術の指導、収穫後の処理や販売に至るまで、さまざまな関係者と協力します。また、肥料の費用の補助や「ミレニアル農家」とよばれる若い農業従事者に対する助成金の支給なども進んでいます。
このエコシステムは2023年、まずジャガイモ農家とタバコ農家で導入されました。
例えばジャガイモは、マラン県の主要農作物の一つでありながら、地域の需要に生産量が追い付いていません。生産の中心地であるマラン県ポンチョクスモ郡ンガダス村では、約350ヘクタールの農地でジャガイモの栽培が行われており、1年に2回の作付けが可能ですが、種イモの品質が古く、生産性が低いことが課題でした。
そのためマラン県では、優良品種の種イモを農家に提供することで、収穫量を以前の4倍に増やすことに成功しました。加えて、種苗生産者の育成も行っています。
2024年には他の農作物でも「Kembange Tani Bersiul」の導入が進み、特にコメ、トウモロコシ、サトウキビ、コーヒー、トウガラシ各種、赤タマネギ、バナナ、アボカド、ミカンで、作付面積と収穫量が大幅に増加しました。このような取り組みが、生産量の増加と農家の生活水準の向上に繋がることが期待されています。
参考:
- Times Indonesia「Kembange Tani Bersiul, Inovasi Ekosistem Pertanian Terintegrasi DTPHP Kabupaten Malang」/「Ada Sentra Penghasil 11 Komoditas Unggulan Pertanian di Kabupaten Malang」
- Times Malang「Pemkab Malang Bangun Rumah Pintar Klaster Kentang, Pusat Edukasi Jaga Varietas Unggulan」
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映像でみるマランの農業
山地のレタス農家

こちらの動画は、マランのある農家の様子です。早朝から家族総出で忙しくレタスの収穫を行う様子や、山に囲まれた農村の景色が垣間見えます。こちらの農家ではレタスのほか、ネギ、セロリ、チンゲンサイ、ハクサイ、キャベツ、ニンジンなどを生産しています。
動画で収穫作業を行っている女性は家業の傍ら、TikTokで農村での暮らしを共有したり、スナックを販売したりしています。
ミレニアル農家の金曜日

こちらはマランでインゲン豆、トウモロコシ、チンゲンサイなどを生産するミレニアル農家です。
この日は金曜日。従姉妹だという女性が2人で30㎏の長インゲン(ささげ)を抱え、畑に向かいました。しかし畑仕事をするわけではありません。路肩に長インゲンを並べ、「Jumat Berkah、1人1束どうぞ」というメッセージを添えました。
「Jumat Berkah」は「祝福された金曜日」という意味です。イスラム教徒にとって金曜日は特別な日で、集団礼拝やクルアーンを読むことなど、いくつかの行いが推奨されています。
その一つが、「施し」です。この女性たちはイスラム教の教えに従い、収穫した長インゲンの一部を、近隣住民に無料で提供していたのです。動画には、道行く人が嬉しそうに長インゲンを持ち帰る様子が収められています。
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農業改革の成功事例になるか
マラン県の農業改革「Kembange Tani Bersiul」は、種苗改良や技術指導、販路拡大など多面的な支援を通じて、農家の生産性と収入向上を目指しています。
こうした取り組みは、地域経済のバランスのとれた成長と農村コミュニティの活性化にもつながるでしょう。農業が主要産業であるにも関わらず、機械化や技術導入の遅れ、生産性の低さ、農業従事者の所得の低さなど多くの課題を抱えるインドネシアでは、このような地域ごとの取り組みの成功事例が積み重なり、より広域で実践されていくことが期待されます。
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