インドネシア・マランの特徴と日系企業が進出するメリットと注意点

公開
2025/04/30
更新
2026/08/10
この記事は約10分56秒で読めます。

インドネシア・ジャワ島南東部に位置するマランは、豊かな自然、涼しい気候、教育都市や観光都市としての顔を持つ魅力的なエリアです。産業としては観光業に加え、クリエイティブ産業の拠点としても急速に発展しています。

本記事では、マランの人口、気候、交通などの基本情報と、主要産業、日系企業が進出する際のメリットと注意点について解説します。

【補足】
本記事の円表記は、2025年4月27日のレート(1ルピア=0.0085円)で換算したものです。

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マランの基本情報

東ジャワ州マラン市
グーグルマップより
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位置・面積・人口

マラン都市圏
グーグルマップより

マラン(県・市)は、インドネシア・ジャワ島の南東部に位置します。東ジャワ州の州都スラバヤからは、南に100㎞ほど離れています。

マラン市は、スラバヤ市に次ぐ東ジャワ州第2の都市です。人口に加えて人口密度も、東ジャワ州で2番目に高くなっています。

マラン市、マラン県、隣接するバトゥ市は、合わせてマラン都市圏(Malang Raya)と呼ばれています。 

  • マラン市:面積 145.3㎢、人口 87万2,700人
  • マラン県:面積 3,530.7㎢、人口 273万6,000人
  • バトゥ市:面積 136.7㎢、人口 22万2,700人

2018年以降の人口を見てみると、マラン市は0.8%、マラン県は5.9%、バトゥ市は8.1%増加しています。

マラン県とマラン市

マランには、「東ジャワ州マラン県」と、「東ジャワ州マラン市」があります。

インドネシアにおける「県(Kabupaten)」と「市(Kota)」は、行政単位としては対等です。マランの場合、マラン県がマラン市を囲んでいますが、行政上は県の中に市があるのではなく、それぞれ独立して東ジャワ州の下に属しています。

気候

ジャワ島は東西に長いものの南北には短く、平地であればどこでも気候に大きな差はありません。マランも大きく括ればジャカルタなどと同じ熱帯気候で、季節は10月~3月頃の雨季と4月~9月頃の乾季の2つです。

ただしマラン市もマラン県も、広い範囲が標高数百メートル以上の高さにあります。そのため地域によっては、朝晩の気温が頻繁に20℃を下回る、涼しい気候が特徴です。マラン市の年間平均気温は25.3℃(2023年)で、インドネシア平均の27.2℃よりも2℃近く低くなっています。

参考:

交通

電車

長距離列車

東ジャワ州の主要都市の一つであるマランには、ジャワ島各地からの長距離列車が停車します。ターミナル駅はマラン駅(マラン・コタバル駅)です。

ローカル列車

マランには複数の駅があり、マランと名がつくものとしてはマラン・コタラマ駅もあります。マラン・コタラマ駅は通勤列車「コミューターライン(ペナタラン線・ドホ線)」の停車駅となっています。

マラン・コタバル駅には、ペナタラン線・ドホ線に加え、スラバヤとマランを結ぶコミューターライン(トゥマペル線)も停車します。コミューターラインはマラン市中心部を通りマラン県の北側を縦断しますが、南側には伸びていません。

バス

マランには、市や県が運行する路線バスがありません。また、東ジャワ州が運行する都市間バス「トランス・ジャティム」も、現状ではマランを通る路線はありません。

マラン市は路線バスを含む、統合された公共交通サービスのシステム開発を進めています。トランス・ジャティムの誘致についても協議が行われていますが、具体的なサービス開始時期は未定です。

なお観光客向けには、車内から街の様子を見学できる周遊バス「Malang City Tour(MACITO)」が毎日運行しています。

アンコット(Angkot)

山がちで、道幅も狭いマランではアンコットが主な公共交通機関です。「路線シェア(乗り合い)タクシー」などと呼ばれるアンコットは、10人程度が乗れるライトバンなどを使い、決まった路線を走ります。ただし停留所はなく、路肩でも乗り降りできます。

インドネシア経済の魅力について

日本からマランへの行き方

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飛行機で日本からマランまで

マランの最寄り空港は、スラバヤ郊外のジュアンダ国際空港です。ただし、2025年4月時点では日本とジュアンダ国際空港間に直行便は就航していません。

日本からジュアンダ空港までは、香港(キャセイパシフィック航空など)、シンガポール(シンガポール航空など)、クアラルンプール(マレーシア航空など)、スカルノ・ハッタ国際空港(ガルーダインドネシア航空など)などで乗り継ぐフライトを利用することになります。

なお、スカルノ・ハッタ国際空港からジュアンダ国際空港までの所要時間は、約1時間30分です。

【補足】
※マランには国内線専用のアブドゥル・ラフマン・サーレ空港があり、本数は少ないもののスカルノ・ハッタ国際空港からの便も就航しています。

ジュアンダ国際空港からマランまで

ジュアンダ国際空港には鉄道の駅がないため、マランまでは基本的にはバスかタクシーを使います。電車を利用する場合は、空港から20㎞ほど離れたシドアルジョ駅までタクシーで行き、マラン行きのコミューターラインに乗る方法があります。

一方バスは、青いタクシーで知られるブルーバードグループの「シティ・トランス」が、2025年から高速バスの運行を開始しています。現状では運行本数が限られているため、スケジュールを確認して利用しましょう。所要時間は約1時間30分、料金は13万5,000ルピア(1,150円)です。

ジャカルタからマランまで

ジャカルタを経由してマランへ向かう場合は、電車やバスが利用できます。

電車

ジャカルタからマランまでは、ジャワ島を横断する長距離列車を利用します。

ジャカルタの出発駅は、中央ジャカルタのガンビール駅とパサール・セネン駅で、マラン駅までの所要時間は直行便で13~15時間程度です。料金は利用する列車や座席の等級によって異なり、通常はエコノミーなら35万ルピア(2,940円)前後から、エグゼクティブなら70万ルピア(5,950円)前後からとなっています。

この区間は乗り換えが必要な列車も多いため、チケット購入の際は注意してください。

バス

ジャカルタ市内からは多数の高速バスが運行しています。

ジャカルタからマランまでの運賃は利用するバスや乗車日によりますが、通常は40万~60万ルピア(3,400~5,100円)程度です。所要時間は10~12時間程度のものが多くなっています。

チケットは各バスの運行会社のWebサイトや、Travelokaなど旅行予約サイトから購入できます。乗車地・降車地はバス会社によって異なるので、事前の確認が必要です。

必要な情報が見つからない方は、下記のサイト内検索を活用してください。

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マランの主要産業

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観光業

観光資源

マランは観光地として知られています。マラン市内では、テーマパーク「ジャティム・バーク」や東南アジア初の交通博物館「アンクット博物館」などが有名です。

また隣のバトゥ市には、温泉、リンゴ農園、滝など、自然と融合した観光スポットが多数あります。茶葉などのプランテーションを活用したアグリツーリズムや、近年人気の「ヒーリング」「SNS映え」がテーマのスポットも人気です。

さらにマランは、インドネシア有数の観光地であるブロモ山への玄関口として知られています。ブロモ山の観光客の多くがマラン市内に宿泊し、日の出の時間を目指して未明に宿泊地を出発します。

シンハサリ経済特区(KEK Singhasari)

マラン県には、インドネシア初のデジタル経済特区「シンハサリ経済特区」があります。主要なカテゴリーは観光、デジタルテクノロジー、教育(デジタル教育)、クリエイティブの4つで、特に地元の観光資源と若い人材を活かし、観光事業とデジタル経済の発展の相乗効果を創出することを目指しています。

クリエイティブ産業

マランのクリエイティブ産業支援

マラン市は、クリエイティブ産業の発展を重要視しています。

象徴的なのが市内に建設されたマラン・クリエイティブ・センター(MCC)です。MCCは各分野のクリエイターや学術関係者などに活動スペースを提供し、その活動を支援しています。またクリエイティブ産業関連の研修、会議、イベントを頻繁に開催するなど、地域のクリエイティブ産業の拠点となっています。

マランのクリエイティブ産業の中でも特に盛んなのが、ゲーム産業です。マラン市は「国家ゲーム産業発展促進に関する大統領令第19号(2024年)」に基づいてこの分野の成長に向けた取り組みを進め、インドネシアのゲーム開発の模範となる7つの都市のうちの一つに選ばれています。

そんなマランからはすでに多くの人気ゲームが誕生し、いくつかは国際的にも評価を得ています。マランのゲーム開発会社としては、Algorocks Studio、Clay Game Studio、Let’splay Indonesiaなどがあります。

またeスポーツ分野でも、インドネシアeスポーツ協会などと協力し、大規模なイベントを開催した実績があります。

なお前述のシンハサリ経済特区には、インドネシア最大のアニメーションおよび映画の製作所「Animation and Film Factory (AFF)」が設立されています。シンハサリAFFは地元の職業高校や大学と連携し、人材育成や作品制作を進めています。

デジタル化が進むマラン

マラン市は2024年、通信情報省(現通信デジタル省)から、「デジタル社会指数(IMDI)が高い6都市」の一つとして表彰されています。同年のマランの指数は52.6で、全国平均の43.3を大きく上回りました。

IMDIは、デジタル技術の使用における市民の能力とスキルレベルを測定するためにインドネシア政府が設定している指標です。インフラとエコシステム、デジタルスキル、エンパワーメント、雇用の4つの柱からデジタル社会の現状を把握することを目的とし、2022年から県・市ごとに測定されています。

マラン市が社会のデジタル化に成功している背景には、市政府の支援とともに、デジタルテクノロジーに関心の高い若者層の厚さがあります。

「教育の街」として知られるマラン市には、難関大学として知られるブラウィジャヤ大学、マラン国立大学、マラン・ムハマディヤ大学などを始め、多くの高等教育機関が集まっています。そのため教育機関、研究機関、企業、行政が連携した、観光やクリエイティブ産業に関する活動が活発です。

製造業

国に指定された工業団地はありませんが、製造業も、マランの主要産業の一つです。オランダ植民地時代から続くお茶やコーヒー、カカオ豆のプランテーションが多いことから、特に食品加工業が盛んという特色があり、複数の企業が農園経営と食品加工事業を展開しています。

食品加工業に関連し、農業や物流産業も、マランにとっては重要な分野です。

南マラン工業団地

マラン県政府は2024年、工業団地の開発のため、県南部のブルラワン地区で300haの土地を確保したと発表しました。2025年から2026年にかけて開発が始められる予定です。

マラン県はこの新しい工業団地を「フードエステート(大規模農業生産プロジェクト)」として位置づけています。食品加工業者を誘致し、周辺地域から魚介類、果物、牛乳などを集めて製品を製造する計画です。

この工業団地を通してマラン県は、地元産業の活性化、新たなビジネスチャンスの創出、雇用機会の創出などを目指します。

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マランに進出している日系企業

マランに現地法人の拠点や工場を構えている日系企業は現状では限られています。

代表的なのは大塚製薬で、マランに工場と流通支店を持っています。またヤクルトも支店を開設しています。

他にも日本の自動車・バイクの販売店や修理店、飲食店、コンビニエンスストアなどがマラン市内を中心に出店しています。

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マランに進出する上での注意点

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給与水準

東ジャワ州は国内でも最低賃金が低い州の一つです。

ただし、インドネシアでは州内の県または市が独自に、州よりも高い地域最低賃金を設定することができ、マラン市やマラン県も地域最低賃金を設定しています。中規模および大規模企業は、この地域最低賃金を適用する義務があるため、注意が必要です。

2025年 州・地域最低賃金

  • マラン市地域最低賃金:350万7,693ルピア(2万9,820円)
  • マラン県地域最低賃金:355万3,530ルピア(3万210円)
  • バトゥ市地域最低賃金:336万466ルピア(3万1,110円)
  • 東ジャワ州最低賃金:230万5,985ルピア(1万8,330円)
  • 全国平均州最低賃金:331万5,728ルピア(2万8,020円)

東ジャワ州には200万ルピア台の地域最低賃金の県・市が多いなか、マラン都市圏の最低賃金は比較的高い水準になっています。なおジャカルタの2025年の最低賃金は、539万6,761ルピア(4万5,870円)です。

参考:

交通渋滞

人口が増えていることやインフラ不足により、交通渋滞が深刻なエリアがあります。特に大きな駅、市場、交差点周辺で渋滞が常態化しています。

また観光地として人気のバトゥ市に向かう道も、混雑しやすくなっています。交通量が多いことに加え、雨季には地滑りや倒木による渋滞も発生しやすいエリアです。

インフラ・輸送コスト

マラン市内では道路設備やインターネットインフラが比較的整っていますが、郊外にいくと不十分なところもあります。また、公共交通機関も便利とはいえません。

輸出入が関わる企業にとっては特に、輸送コストがネックになります。東ジャワ州の輸出入の拠点といえばスラバヤ郊外のタンジュン・ペラク港やジュアンダ空港ですが、マラン市からは約100㎞離れています。

マラン都市圏では新しい高速道路や鉄道の建設計画もあります。マランへの進出を検討する際は、インフラ整備計画にも注目するとよいでしょう。

映像でみるマランの街と産業

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マラン・クリエイティブセンター(MCC)

マラン・クリエイティブセンター(MCC)

2023年にオープンしたマラン・クリエイティブセンターは、クリエイティブ産業に従事する人たちの活動拠点として活用されています。

8階建てのビルのスペースのうち約60%は「支援スペース」で、クリエイターや業界関係者が活動に利用できるさまざまな設備を備えた部屋が設けられています。また、ショーや展示会などのイベントも開催されます。

残りの40%は「商業スペース」で、クリエイターたちが自らの作品を展示・販売できるようになっています。

マランで人気の観光地

マランで人気の観光地

2024年版、マランで人気の観光地3つをまとめたこちらの動画で、最近の流行をチェックしてみましょう。

まず気が付くのが、どこもとても広いということです。市内中心部から少し足を延ばせばまだまだ利用可能な広い土地があるマランでは、周囲の山々を望む美しい景色を売りにしたさまざまな観光スポットが登場しています。一か所で遊んだり食べたりといろいろな体験ができることや、写真・動画映えすることもポイントです。

1つ目は2023年にオープンしたマラン・スカイランドです。360℃のマウンテンビュー、乗り物やアクティビティ、SNS映えフォトスポット、カフェが楽しめます。

2つ目はフローラウィサタ・サンテラ(サンテラ観光花園)。フローラという名前ですが、花畑だけでなく、遊園地やプールもある複合レジャー施設です。

3つ目はNKカフェです。マランには広い庭や景色がポイントのおしゃれなカフェが次々と登場しています。NKカフェでは食事のほか、サイクリングなどのアクティビティやプールも楽しめます。

マランの茶畑でアグリツーリズム

マランの茶畑でアグリツーリズム

アグロウィサタ・ウォノサリは、スラバヤが拠点のPT Perkebunan Nusantara XII(プルクブナン・ヌサンタラ、PTPN XII)が運営するレジャー施設です。PTPN XIIはお茶、コーヒー、カカオ豆などの農園経営や製品製造を行っています。

こちらの施設はさまざまなアクティビティを楽しめる屋外スペース、レストラン、宿泊施設を備えており、もちろん茶畑も見学できます。

今後の発展が期待されるマラン

マランは、観光、教育、クリエイティブ産業、食品加工業など多様な分野で発展が期待される地域です。現時点では日系企業の進出例は多くありませんが、その分市場開拓の余地は大きいといえます。現地の地方政府や地元企業、教育機関などとの連携が鍵となるでしょう。

一方で、交通インフラの未整備や公共交通機関の限界といった課題もあるため、進出の際には現地事情を十分に把握することが不可欠です。

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