「米を食べないと食事じゃない」インドネシアの米文化と日本米事情

公開
2026/03/07
更新
2026/03/20
この記事は約7分3秒で読めます。

「インドネシアで食事に困ることはありますか?」

インドネシアへの進出や赴任を検討している方から、こうした質問をいただくことがあります。食の多様化が進み、外食の選択肢が増え、ECも発達している昨今、ある程度お金をかければ食べたいものを食べられるので、あまり心配する必要はないでしょう。

それでも、現地での食生活を事前にイメージしておくことは、ビジネスと同様に「生活の質(QOL)」を保つうえで重要なテーマです。

インドネシアは日本と同じく、米を主食とする国です。一人当たりの米消費量は日本人の3倍以上で、「米を食べないと食事じゃない」「米を食べないと物足りない」と感じる人もたくさんいます。

本記事では、そんなインドネシアの米の特徴から日本米との違い、現地で日本米を入手する方法、さらにはインドネシア人の日本食への関心まで、幅広くまとめました。

情報の一部は、弊社スタッフの現地取材・経験に基づく私見も含んでいます。統計データもあわせて、「現場の空気感」もお伝えできれば幸いです。

インドネシア人と米食文化

ナシゴレン

インドネシアは世界有数の米食大国です。FAO(国連食糧農業機関)のFAOSTATによると、2022年のインドネシアの一人当たりの年間米消費量は約185.2kgで、農林水産省が公表する日本の2024年度の数値(約53.4kg)の約3.5倍に相当します。

【補足】
インドネシアはFAO(2022年)、日本は農林水産省(2024年度)のデータを使用。国際統計は発表まで数年のタイムラグが生じるため、国ごとで最新の年度を参照しています。

近年、首都ジャカルタをはじめとする都市部を中心に、パンやピザ、麺類といった米以外の選択肢が増えており、全体的な傾向として一人当たりの米消費量は緩やかに減少しています。インドネシア農業省も、米以外の国内食材の消費を促進するプログラムを発表しています。

しかし、都市化が進んでいても「米を食べなければ食事をした気がしない」と感じるインドネシア人は非常に多いのが実情です。現地のレストランや食堂で食事を注文すると、今でも「Nasinya mau sekalian?(お米をご一緒にいかがですか?)」と聞かれることが少なくありません。

これは単なる慣習ではなく、米が食事の中心に位置づけられているインドネシアの食文化を端的に表す場面と言えるでしょう。

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インドネシア産の米の特徴

インドネシア産の米

インドネシアで主に食べられている米は、大きく2種類に分類できます。

インディカ種(Beras Pera / Beras Biasa)

インドネシアで最も広く流通している米です。米粒が細長く、パラパラ・サラサラの食感が特徴です。

アミロース含量が高く粘りが出にくいため、単体で白米として食べると物足りなさを感じる日本人も多いですが、ナシゴレン(インドネシア風チャーハン)やナシチャンプル(バイキング式の混ぜご飯)、ナシウドゥック(ココナッツミルクで炊いたご飯)といった料理ではそのパラパラ感が生きます。べたべたしないので、手で食事する文化にも向いているといえるでしょう。

ジャバニカ種(Beras Javanika / ジャワ米)

「熱帯ジャポニカ」とも呼ばれるジャバニカ種は、ジャポニカ米の変異型とされており、インドネシアのジャワ島を中心に栽培されています。

見た目はジャポニカ米に似て粒が大きく幅広ですが、食感はインディカ種に近くあっさりとしています。現在はジャポニカ種の中の「熱帯ジャポニカ」というグループに分類されています。

代表的な銘柄

インドネシア産の米にも特徴ある銘柄が存在します。

西ジャワ州チアンジュル地方の原生種「パンダンワギ(Pandanwagi)」は、かつて「チアンジュル米」として日本人コミュニティにも高評価を得ており、現在も国内市場で優良米として高値が付く銘柄です。

また「バタンレンバン米(Beras Batang Lembang)」はしばしば日本米(Beras Jepang)の異名で呼ばれることもある国産品種で、IR64とshinthaを交配して得られたものとされています。

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インドネシア産の米と日本米(ジャポニカ種)の比較

比較項目インドネシア産の米日本米(ジャポニカ種)
品種分類主にインディカ種(一部ジャバニカ種)ジャポニカ種
粒の形状細長い(長粒)丸みを帯びた短粒〜中粒
炊き上がりの食感パラパラ・サラサラもちもち・粘りあり
甘みあっさり・甘みが少ない噛むほどに甘みが増す
アミロース含量高い(粘りが出にくい)低い(粘りが出やすい)
主な調理法ナシゴレン・ナシチャンプルなど混ぜ・炒め料理白米・おにぎり・寿司など
インドネシアでの呼称Beras(ブラス)Beras Jepang(ブラス・ジュパン)
一人当たり年間消費量約185.2kg(FAO・2022年)約53.4kg(農林水産省・2024年度)

※本表は弊社リサーチを元に作成。一人当たり年間消費量はFAO(2022年)および農林水産省(2024年度)データによる。

詳細比較

品種と粒の形状

日本米(ジャポニカ種)は丸みを帯びた短粒〜中粒で、インドネシア産の主流であるインディカ種は細長い長粒です。

この形状の違いはでんぷん組成の違いに由来しており、インディカ種はアミロース含量が高いため炊いてもくっつかずサラサラになり、ジャポニカ種はアミロース含量が低くアミロペクチンが多いため、炊くと粘りとツヤが出ます。

食感と味

炊き上がりの食感は大きく異なります。

インドネシア産のインディカ米はパラパラとしてあっさりした味わいで、口の中で粒が独立したまま感じられます。一方、日本米は炊くとふっくらと柔らかく弾力と粘りがあり、よく噛むほどに甘みが増します。日本米は冷めても味が落ちにくく、おにぎりや寿司にも適しています。

料理との相性:「米にも適材適所がある」

「人に適材適所があるように、米にも適材適所がある」

インドネシアで暮らしていると、この言葉がよく実感されます。インドネシア産のパラパラした米はナシゴレンに非常に相性がよく、油や具材をまとって一粒一粒がほぐれる仕上がりになります。

逆に、日本米(ジャポニカ種)は白米だけで食べると甘みと粘りが楽しめますが、ナシゴレンに使うとべたつきが出てしまいます。

実際、インドネシア人が日本を訪れ、日本米で作られた炒飯などを食べると違和感を覚えるケースも少なくないようです。これは優劣の話ではなく、それぞれの米がそれぞれの料理文化の中で最適化されてきた証と言えるでしょう。

インドネシアで生産されている日本米(Beras Jepang)

インドネシアで生産されている日本米

近年インドネシアではジャポニカ種の米を指す「Beras Jepang(ブラス・ジュパン、日本米の意)」の存在感が高まっています。以前と比べてスーパーマーケットでBeras Jepangが目立つ場所にまとめて陳列されるようになり、人気ブランドも生まれてきています。

ジャポニカ種は本来冷涼な気候を好むため、熱帯での大規模栽培は難しいとされています。ただしインドネシア国産の「バタンレンバン米(Beras Batang Lembang)」のようにジャポニカ系とされる品種も存在し、「Beras Jepang」という名称で販売されるケースもあります。

Beras Jepangの認知度上昇の背景としては、後述する日本食レストランの増加との関連が考えられます。寿司やどんぶりなど日本食に触れる機会が増えたことで、もちもちとした食感の米への理解と好感度が深まってきたといえます。

食の面でも日本に対する関心が高いインドネシアへの進出にあたり、法人設立や立ち上げ準備を具体的に進めたい方は、法人設立に関する資料をこちらからご覧ください。

インドネシアのスーパーで手に入る日本米

ジャカルタなど都市部のスーパーでは、「Beras Jepang」と表示されたジャポニカ系の米を購入することができます。取り扱い店舗は主に外国人や富裕層向けのスーパーに集中しています。

日本食スーパー

インドネシアの日本食スーパーの米売り場
Papaya Fresh Galleryの米売り場

在インドネシア日本人の間で最もよく知られているのが「Papaya Fresh Gallery(パパイヤ)」です。ジャカルタに複数店舗を展開する日本食スーパーで、日本から輸入した調味料や食材を幅広く取り揃えており、日本産日本米も入手できます。

価格は日本の約2倍程度になることもありますが、日本食材を手に入れる場所として駐在員に重宝されています。またイオングループが展開する「AEON STORE」も、ジャカルタ近郊のイオンモール内に複数店舗あり、日本食材や日本米を購入できます。

ローカル系高級スーパー

ローカル系でも上位所得層向けの「Ranch Market」や「Kem Chicks」では、Beras Jepang(ジャポニカ系)の米が販売されています。また「Grand Lucky」のような大型ローカルスーパーでも、Beras Jepangコーナーが設置されているケースが増えてきました。

地方でのアクセス

一方、インドネシアの地方都市ではBeras Jepangを入手できる店舗が限られており、Tokopedia(インドネシアの大手ECサイト)などのオンラインショッピングを活用するケースも増えています。地方への赴任を検討している場合は、米の調達手段を事前に確認しておくとよいでしょう。

赴任前に現地のビジネス環境・生活環境を確認しておきたい企業様向けに、弊社ではインドネシア現地視察支援サービスをご提供しています。ぜひこちらからお問い合わせください。

インドネシアで日本米は買えますか?

ジャカルタなどの都市部なら購入しやすいです。日本食 / 日系スーパーのPapaya Fresh GalleryやAEON STORE、高級スーパーのRanch MarketやGrand Luckyなどで「Beras Jepang」と表示されたジャポニカ系の米や日本米が見つかることがあります。一方で、地方都市では取り扱いが限られるため、ECの活用も検討されます。

取得予定のビザについて、以下から詳しい情報を検索できます。

ビザ情報の検索
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●インドネシア経済の魅力をまとめた資料
1進出ブック
進出ハンドブック
2法人設立フロー
法人設立フロー
3経済の魅力
経済の魅力

日本食レストランで使われる米とインドネシア人の反応

インドネシアの吉野家

日本食レストランの増加

農林水産省が2025年に発表した調査によると、インドネシア国内の日本食レストランは約6,580店舗に達し、近年大幅に増加しています。吉野家・丸亀製麺・大戸屋・ゴーゴーカレーといった日本の外食チェーンも相次いで進出しており、ジャカルタなどの都市部では日常的に日本食を楽しめる環境が整ってきました。

日本食レストランで使われる米

寿司・どんぶり・定食といった日本食の提供には、ジャポニカ種の米が欠かせません。日本系の高級レストランや日系チェーン店では日本米またはジャポニカ系の国産米(Beras Jepang)を使用していることが多い一方、ローカル系の廉価な日本食店ではインディカ米を使用しているケースもあります。

口コミサイトでも「日本米ではないのでパサっとした仕上がり」というレビューが見られるなど、米の種類がその店の料理の質を左右する要因となっています。

インドネシア人の日本食・日本米への印象

インドネシアでは寿司・ラーメン・おにぎり・牛丼など多くの日本食が人気を集めています。特に寿司はジャカルタをはじめとする都市部で広く浸透しており、「Sushi Tei(すし亭)」や「Genki Sushi」などの寿司チェーンが人気です。

日本食に対して「ヘルシーで健康的」というポジティブなイメージを持つインドネシア人も多く、これが日本食レストランの拡大を後押ししています。

日本米のもちもちした食感についても、日本食レストランを通じた接触機会の増加とともに好意的な評価が広がっています。

ただし、本記事でも触れたように「米には適材適所がある」のも事実。ナシゴレンならインディカ米、寿司なら日本米というように、米の種類に合わせて食文化が発展してきたのであって、優劣の問題ではありません。

インドネシア人に日本米や日本食は人気ですか?

はい、都市部を中心に日本食への関心は高まっています。 寿司や牛丼、ラーメンなどの普及により、日本米特有のもちもちした食感も好意的に受け止められる場面が増えています。ただし、ナシゴレンにはインディカ米が合うように、料理によって好まれる米は異なります。

まとめ:駐在・出張者の目線から

インドネシアの米事情について、押さえておくべきポイントは以下のとおりです。

  • インドネシアは日本の3倍以上の米消費量を誇る米食文化の国。現地での食生活に米は欠かせない存在です。
  • 日本米とインドネシア産の米はまったく別物。パラパラのインディカ種はナシゴレンには最高の相棒ですが、白米として食べるには物足りなさを感じる日本人も多いです。
  • ジャカルタなど都市部では「Beras Jepang」がスーパーで手に入ります。パパイヤやAEON STOREなどの日系スーパー、Ranch MarketやGrand Luckyなどでも扱いがあります。
  • 日本食レストランは都市部を中心に約6,580店舗(2025年)と急増中。日系の飲食店であれば、日本に近い米の味を楽しめます。
  • 地方赴任の場合は日本米の調達手段を事前確認。ジャカルタ以外ではBeras Jepangを手に入れにくいエリアもあるため、オンライン購入も検討を。

「食」は海外生活のQOLを大きく左右する要素の一つです。インドネシアへの進出・赴任を検討している方は、ぜひ米事情も含めた現地の食生活をイメージしながら準備を進めてみてください。

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