特定技能の資格取得に必要な日本語試験「JLPT」と「JFT-Basic」
- 公開
- 2025/02/01
- 更新
- 2025/02/08
- この記事は約9分8秒で読めます。
特定技能1号の在留資格取得を目指す人は、指定された日本語試験に合格する必要があります。具体的には、日本語能力試験(JLPT)のN4レベル、または、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)です。
この記事では、これらの日本語能力試験がどのような試験で、合格した外国人がどれくらいの日本語力を身に着けているのかをイメージできるよう、試験の概要や内容、日本とインドネシアにおける直近の試験結果などを紹介します。
【補足】
本記事の円表記は、2025年1月29日のレート(1ルピア=0.0096円)で換算したものです。

在留資格「特定技能」とは
特定技能制度は2019年4月に開始されました。人手不足が深刻で、かつ、生産性向上などの取り組みを行っても人材確保が困難な特定の産業分野において、即戦力となる外国人を受け入れる制度です。2025年1月現在、16の産業分野で受け入れが可能です。
特定技能には1号と2号があります。「特定技能1号」の在留資格で経験を積んだあと、条件を満たせば特定技能2号の資格を得られます(一部産業分野を除く)。特定技能2号になると、家族の帯同が可能、在留期間の更新回数が無制限など、日本で安定した暮らしを営めるようになります。
特定技能の資格取得に必要な日本語試験の種類とレベル
特定技能1号の資格取得には、以下の2つの日本語試験のうち、いずれか1つに合格する必要があります。介護分野は、これに加えて介護の仕事に必要な日本語の習熟度を確認する「介護日本語評価試験」もあります。
【日本語試験(いずれか1つ)】
- 日本語能力試験(JLPT)のN4レベル
- 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)
特定技能2号の資格取得については、試験による日本語力の確認は不要とされています。例外的に、外食業分野と漁業分野のみ、JLPTのN3に合格する必要があります。
日本語能力試験(JLPT)
概要
日本語能力試験は、日本語を母語としない人の日本語能力を測定し認定する試験として、国際交流基金と日本国際教育支援協会が実施する、世界最大規模の日本語試験です。5つのレベルに分かれており、一番下が「N5」、一番上が「N1」です。日本と海外(約80の国と地域)で年に2回、特定の試験日に実施されます。
対象者
対象者は原則、日本語を母語としない人です。試験結果は、特定技能の在留資格取得のほか、日本への留学や就職、各国での大学の単位認定などに活用されています。
JLPTの受験資格として年齢の制限はありませんが、特定技能1号の資格取得にあたっては、インドネシア人の場合、テスト日において満18歳以上である必要があります。
特定技能に必要なレベル
特定技能1号の資格取得には、下から2番目の「N4レベル」※に合格する必要があります。
【補足】
※自動車運送業分野の「バス」および「タクシー」はN3レベルが必要
N4レベルの認定の目安は、以下の通りです。
- 読む :
基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を、読んで理解することができる。 - 聞く:
日常的な場面で、ややゆっくりと話される会話であれば、内容がほぼ理解できる。
国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)
概要
国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)は、主として就労のために来日する外国人が遭遇する生活場面でのコミュニケーションに必要な日本語能力を測定するための試験です。目的は「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力」があるかどうかを判定することで、レベル分けはありません。
対象者
JFT-Basicは、日本語を母語としない外国人向けで、その中でも、主として就労のために来日する外国人を対象としています。
特定技能1号の資格取得にあたっては、インドネシア人の場合、テスト日において満18歳以上である必要があります。
特定技能に必要なレベル
JFT-Basicでは、「ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の能力」の目安として、A2レベルの日本語力を持っているかどうかを判定します。
A2レベルとは、国際交流基金がヨーロッパの言語教育の考え方を元に作った「JFスタンダード」と呼ばれる日本語の熟達度を測る指標(A1、 A2、B1、B2、C1、C2)のうち、下から2番目のレベルです。A2レベルの熟達度の人は、以下のようなことができるとされています。
- ごく基本的な個人的情報や家族情報、買い物、近所、仕事など、直接的関係がある領域に関する、よく使われる文や表現が理解できる。
- 簡単で日常的な範囲なら、身近で日常の事柄についての情報交換に応ずることができる。
- 自分の背景や身の回りの状況や、直接的な必要性のある領域の事柄を簡単な言葉で説明できる。
参考:JF日本語教育スタンダード「JF日本語教育スタンダード 【新版】利用者のためのガイドブック」
試験免除
技能実習2号を良好に修了した外国人については、特定技能1号の技能試験および日本語試験が免除されます。技能実習3号の修了者も、技能実習2号を良好に修了したことを前提としているため、試験免除となります。
また、介護分野については、以下の条件に当てはまる人も、試験が免除になります。
- 介護福祉士養成施設を修了した方
- EPA介護福祉士候補者としての在留期間満了(4年間)の方
特定技能1号の資格取得に必要な日本語能力試験(JLPT)の概要
試験内容

JLPTはマークシート方式で、問題文や選択肢はすべて、各レベルに合わせた日本語で表記されます。
JLPT N4の試験の内容と試験時間は以下の通りです。
- 言語知識(文字・語彙):25分
- 言語知識(文法)・読解:55分
- 聴解:35分
合格基準
合格するためには、総合得点と区分別得点それぞれが合格基準点に達している必要があります。それぞれの合格基準点は、以下の通りです。
- 総合得点:90/180点
- 言語知識(文字・語彙・文法)・読解:38/120点
- 聴解:19/60点
受験地を問わず、試験結果は、第1回(7月)試験が8月下旬、第2回(12月)試験が1月下旬に、予約したWebサイトで閲覧可能です。
また日本国内の場合、全受験者に合否結果通知書が送付されます。第1回(7月)試験の結果は9月上旬、第2回(12月)試験の結果は2月上旬が目安です。
海外の場合は、通知書の代わりに「証明書」が届きます。第1回(7月)試験の結果は10月上旬、第2回(12月)試験の結果は3月下旬から4月頃です。
会場と日程
日本の試験会場
JLPTは全国47都道府県で実施されています。それぞれの都道府県の会場は毎回同じとは限らず、試験直前まで確定しないため、受験者には受験票で通知されます。
日程は、毎年7月と12月、それぞれ1日ずつです。
インドネシアの試験会場
インドネシアでは、以下の都市に試験会場が設置されています。いずれも日本の試験会場と同じく、年2回開催さています。
- ジャカルタ、バンドン、スラバヤ、メダン、ジョグジャカルタ、パダン、デンパサール、マナド、マラン、スマラン、マカッサル、パレンバン、チレボン、ボゴール
受験者数と合格率
2023年実施の、JLPT N4レベルの受験者数や合格率を紹介します。なお、海外の国別の合格者数は公表されていません。
日本の試験会場
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
---|---|---|---|
第1回(7月)試験 | 39,237人 | 17,993人 | 45.9% |
第2回(12月)試験 | 45,891人 | 15,130人 | 33.0% |
受験者数合計:85,128人 | 合格者数合計:33,123人 | 合格率:38.9% |
海外の試験会場
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
---|---|---|---|
第1回(7月)試験 | 109,173人(4,395人) | 45,191人 | 41.4% |
第2回(12月)試験 | 103,443人(6,059人) | 32,113人 | 31.0% |
受験者数合計:212,616人 | 合格者数合計:77,304人 | 合格率:36.4% |
※()内はインドネシアの受験者数
合格基準点はさほど高くないのに、合格率が低いと感じられる方もいるかもしれません。合格率が低い要因としては、単純に「日本語が難しい」「試験が難しい」ということに加え、JLPTが、世界中の国々の多くの人が受験する試験であり、受験者の目的やモチベーションがさまざまだということが挙げられます。
参考:日本語能力試験JLPT「過去の試験のデータ2023(令和5)」
申込方法
日本の試験会場
個人が日本の試験会場で受験する場合、まずは専用Webサイトにアカウント登録(MyJLPT登録)します。登録するとIDが付与されます。
MyJLPTへログインすると、次回の試験に申し込めます。受験料は、クレジットカード支払い、銀行振り込み、コンビニ支払いで納めます。受験料の支払いが完了すると申込受付番号が発行され、申し込み完了です。
7月実施の試験の申込期間は3月下旬~4月中旬頃、12月実施の試験の申込期間は8月下旬~9月中旬頃です。受験票は試験の前月頃、メールで届きます。
- 日本で受験する方のWebサイト:https://info.jees-jlpt.jp/
インドネシアの試験会場
インドネシアで受験する場合も、専用Webサイトにアカウント登録し、必要事項を入力・選択して支払いを済ませるという流れは同じです。支払いには、銀行のバーチャルアカウントへの振り込み、QRIS(QRコード)、および電子ウォレットが利用できます。
- インドネシアで受験する方向けWebサイト:https://jlptonline.or.id/
受験料
JLPTの受験料は、7,500円です。海外で受験する場合、その国の通貨で金額が決められています。インドネシアではレベルによって受験料が異なり、N4の受験料は18万ルピア(1,730円)、N3は22万ルピア(2,100円)です。
特定技能1号の資格取得に必要な国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)の概要
試験内容

JFT-Basicは、各国のテスト会場のコンピューターを使用し、コンピューター・ベースト・テスティング(CBT)方式で行われます。設問は各国語で表記され、インドネシア語にも対応しています。
試験時間は60分間です。「文字と語彙」「会話と表現」「聴解」「読解」の4つのセクションがあり、それぞれ12問前後、合計50問ほどの試験になっています。
合格基準
JFT-Basicの満点は250点で、200点が合格基準点です。総合得点は正答数そのままの素点ではなく、等化と呼ばれる統計処理によって算出されます。
試験結果は、テスト終了時の画面に表示されます。また、試験後5営業日以内に、予約サイトにログインして確認することができるようになります。
会場と日程
日本の試験会場
JFT-Basic の試験会場は47都道府県の各都市にあり、年6回実施されています。「年6回」とは、5~6月、7~8月、8~9月、10~11月、12~1月、2~3月の6回(6ターム)で、それぞれ複数の日程から受験日を選べます。
インドネシアの試験会場
2025年1月時点で特定技能に関する二国間の覚書を交わした国、つまり、日本が特定技能外国人を受け入れられる相手国は17か国あります。JFT-Basicを受験することができるのはそのうち11か国です。インドネシアでは、以下の都市に試験会場があります。
- ジャカルタ、スラバヤ、バンドン、ジョグジャカルタ、メダン、スマラン、デンパサール、マナド
インドネシアでも日本と同様に、年6回、それぞれ複数日程で実施されています。
受験者数と合格率
2023年度の試験の実施結果を紹介します。
日本の試験会場
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
---|---|---|---|
2023年5月~6月 | 1,614人 | 783人 | 48.5% |
2023年7月~8月 | 1,147人 | 561人 | 48.9% |
2023年8月~9月 | 1,396人 | 607人 | 43.5% |
2023年10月~11月 | 1,670人 | 847人 | 50.7% |
2023年12月~2024年1月 | 1,561人 | 782人 | 50.1% |
2024年2月~3月 | 2,706人 | 1,336人 | 49.4% |
受験者数合計:10,094人 | 合格者数合計:4,916人 | 合格率:48.7% |
インドネシアの試験会場
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
---|---|---|---|
2023年5月~6月 | 4,518人 | 1,982人 | 43.9% |
2023年7月~8月 | 5,140人 | 2,142人 | 41.7% |
2023年8月~9月 | 5,821人 | 2,549人 | 43.8% |
2023年10月~11月 | 8,947人 | 3,717人 | 42.6% |
2023年12月~2024年1月 | 8,416人 | 3,765人 | 44.7% |
2024年2月~3月 | 9,581人 | 4,466人 | 46.6% |
受験者数合計:42,423人 | 合格者数合計:18,621人 | 合格率:43.9% |
参考:JFT-Basic国際交流基金日本語基礎テスト「2023年度テスト実施報告」
申込方法
JFT-Basicの申し込みのためにはまず、プロメトリック株式会社のWebサイトからIDを取得します。そのIDでログインすると試験の申込ページが表示されます。
- プロメトリック株式会社特定技能試験サイト「JFT-Basic」:https://www.prometric-jp.com/ssw/test_list/archives/1
申し込みや予約の変更は、試験日の3営業日前の23時59分(日本時間)まで可能です。試験日が土・日、日本の祝日の場合は、4営業日前までとなります。
受験料
JFT-Basicの受験料は、日本の試験会場では1万円です。海外の試験会場の場合、国により異なり、インドネシアの試験会場の場合は55万ルピア(5,270円)となっています。
JLPTとJFT-Basicのメリット・デメリット
ここまで、JLPTとJFT-Basicの概要を紹介しました。2つの試験のレベルはほぼ同じですが、いくつか大きな違いがあります。
まず、JLPTが一般の日本語学習者を対象に世界各地で実施されている試験であるのに対して、JFT-Basicは試験の主な対象者が日本で就労する外国人であり、内容も日本で働くにあたって遭遇する日常的な場面に特化している点が挙げられます。
2つを比較すると、受験機会が多く、結果がすぐにわかるJFT-Basicの方が、特定技能1号の資格取得を目指す受験者にとっては、メリットが多いといえます。一方、JLPTのメリットは受験料の安さで、インドネシアではJFT-Basicの3分の1(N4の場合)です。
※右にスクロールできます
インドネシアは世界で2番目に日本語学習者が多い国
インドネシアは、世界で2番目に日本語学習者が多い国です。
国際交流基金(JF)が2021年度に実施した、「海外日本語教育機関調査」の結果報告書によると、世界でもっとも日本語学習者が多いのは中国で、105万7,318人です。インドネシアは2位を維持しており、71万1,732人でした。
世界の日本語学習者に占める割合は中国が27.9%、インドネシアが18.8%で、この2か国で合計46.7%になります。3位は韓国で、47万334人でした。
参考:国際交流基金「2021年度 海外日本語教育機関調査報告書|P.12-13」
インドネシアにおける日本語学習者の90.3%が、中等教育段階、つまり、高校やそれに準じた学校教育の段階にあります。かつて中等教育で第二外国語が必須科目であり、日本語がその選択肢の一つになっていたためです。
しかし、2013年の教育課程の改定により第二外国語が選択科目になって以来、日本語クラスを開講する学校が減り、中等教育における学習者数も減少しました。
一方で近年は民間の日本語学校や職業訓練機関(LPK)で日本語を学ぶ人が増えており、2018年からの3年間で50%増加しました。この背景には、技能実習制度や特定技能制度を利用して日本で就労するために、日本語を学習する人が増えていることが挙げられます。
参考:国際交流基金「2018年度海外日本語教育機関調査報告書P.34-35」/「2021年度 海外日本語教育機関調査報告書 P.29-32」
インドネシア人にとって「難しいが馴染みのある」日本語
若者人口が多く、失業率が高いインドネシアでは、海外への出稼ぎは珍しくありません。インドネシア政府も日本への人材派遣に力を入れる計画で、今後も特定技能制度を利用して日本で就労するインドネシア人はますます増える見込みです。
インドネシア人にとって日本語は、文字も文法も異なる難しい言語です。ただ、大人になるまでに日本語に触れる経験をする人は多く、学校教育だけでなく、漫画やアニメが好きで、独学で日本語を学ぶ人も大勢います。
そんなインドネシア人にとって、日本は主要な出稼ぎ候補地の一つになっています。
インドネシア人の人材紹介や受け入れに興味をお持ちの企業さまは、ぜひ一度、弊社カケモチまでお問い合わせください。
-
特定技能1号の在留資格を取得するために必要な日本語試験は何ですか。
-
特定技能1号の在留資格を取得するためには、日本語能力試験(JLPT)のN4レベル、または、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)に合格する必要があります。
-
日本語能力試験(JLPT)はいつ実施されますか。
-
日本語能力試験(JLPT)は毎年7月と12月に1回(1日)ずつ実施されます。海外の会場では、どちらか一方の場合もあります。
-
国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)はインドネシアでも受験できますか。
-
国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)はインドネシアでも受験できます。試験会場は、ジャカルタ、スラバヤ、バンドン、ジョグジャカルタ、メダン、スマラン、デンパサール(バリ島)、マナドに設けられています。
読後のお願い
弊社で公開している記事の1つ1つは、日本人とインドネシア人のライター、日本人とインドネシア人の編集者がそれぞれ協力しながら丁寧に1記事ずつ公開しています。
記事の内容にも自信がありますし、新しい情報が入り次第適宜アップデートもしています。これだけ手間ひまかけて生み出した記事はできれば一人でも多くのインドネシアのビジネス関係者に読んでもらいたいです。
そこで、弊社からの不躾なお願いになってしまうのですが、是非SNSでこちらの記事をご紹介いただけないでしょうか。一言コメントを添えてシェアしていただけると本当に嬉しいです。そうやってご紹介いただくことで関係者全員の励みにもなりますので、どうか応援宜しくお願いします!
SNSでも積極的に情報発信をしています
おすすめのインタビュー記事
-
インドネシアの財閥グループに参画したBeautynesiaの強みとインフルエンサーマーケティングの秘訣
月間約400万人のインドネシア人女性が訪れるライフスタイルメディア「Beautynesia(ビューティーネシア)」のマーケティング戦略や組織運営をお伺いしました。
-
インドネシアのSNSは日本とどう違う!?インフルエンサー兼芸人として活躍するそこらへん元気さんに丸っと聞いてみた
インドネシアで活躍する芸人兼インフルエンサーのそこらへん元気さんに、3つのSNSの活用方法や戦略などを教えてもらいました。