インドネシアの女性起業家のデジタル化促進、課題と支援

公開
2025/12/30
更新
2026/06/21
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2023年3月8日の国際女性デーに合わせ、インドネシアでは各地で関連イベントが開催されました。また、インターネットやテレビでは女性のビジネスに関する話題も多く目にしました。

今回はその中から3月9日のBali Puspa News「Hari Perempuan Internasional: Momentum Mendorong Digitalisasi UMKM Perempuan(国際女性デー:女性中小零細事業者のデジタル化促進の勢い)」を始めいくつかのニュースを元に、インドネシアにおける女性事業者の立ち位置、課題、デジタル化支援の例などをご紹介します。

インドネシアの女性起業家とビジネス

インドネシアの中小零細事業所の数

インドネシアの協同組合中小企業省は、2021年現在、UMKM(Usaha Mikro, Kecil, dan Menengah)と呼ばれる中小零細企業・事業所の数は6,400万以上あり、全ビジネスユニットの99%以上を占めると推定しています。インドネシアの中央統計庁によると、6,400万の事業所のうち約65%は事業主が女性で、事業所の規模が小さいほど、女性が事業主である割合が高くなる傾向があります。

インドネシアの女性中小零細事業者の特徴

インドネシア女性エンパワーメント企業連合(IBCWE)が実施した調査によると、出産や育児などによる休職や離職を経験している女性の約99%が職場復帰や再就職に高い意欲と自信を持っており、彼女たちのうち64%が離職前と同じ業界に戻りたいと答えています。

しかし実際は、多くの人が職場復帰や同じ業界への再就職を諦めています。

理由としては、ブランクのある女性は「知識が古い」「モチベーションが低い」などと考えられ、若者の人口が多く求職者で溢れているインドネシアの企業が彼女たちの雇用に消極的である傾向が強いことが挙げられます。

他にも、子育てや介護を任せられる人が他にいない、「女性は家にいるもの」として配偶者や親戚に就業を反対されたなどの事情がある人もいます。

そこで一人または夫婦、兄弟、友人など限られた人たちと小規模な事業を立ち上げ、時流に乗ってeコマースに参入する道を選ぶ人が増えています。

世界銀行の「2021年デジタル化報告書」によると、妊娠・出産を理由に仕事を辞めたインドネシアの女性インターネットユーザーの60%近くが、その後eコマースで活躍しています。

家事や育児を担う女性の中小零細事業者たちにとって、eコマースは非常に魅力的な活躍の機会となっているのです。

インドネシア経済の魅力について

女性中小零細事業者の課題

起業を志すインドネシア人女性が増えている中、彼女たちはいくつもの壁にぶち当たっています。インドネシアの女性中小零細事業者は、どのような課題に直面しているのでしょうか。

社会的な偏見

既にご紹介した通り、インドネシアでは「女性は家庭で家事や育児をするもの」と考える人がまだ多く、家族から就業を許してもらえない女性も多くいます。

加えて、「女性はビジネスの世界で生き残るための強さに欠ける」というイメージが根強く残っていて、女性起業家、またはそれを志す人たちの中には、家族、親戚、知人らに理解されない、協力してもらえないなどの問題に直面する人もいます。

知識の欠如

ビジネスに関する知識の不足は、地方に住む女性にとって、起業の障害となっています。特に地方の農村部の女性には、高校卒業後に就業を経験せず結婚する女性が比較的多いことが、原因の一つと考えられます。

一方で、現在は政府や企業によるオンラインの支援や起業家コミュニティなどの繋がりも増えています。実際にeコマースに参入する地方の事業者も増えており、この状況が徐々に改善されてきていることがわかります。

資金不足

女性事業者の場合、家計とビジネスの会計が混同していることが多いため、明確に構造化された財務報告書がない場合もあります。そのため、男性事業者に比べ、金融機関からの資金援助を受けることが困難なケースが多くなっています。

育児や家事の負担

インドネシアでまだ根強い「男性は外で働き女性は家を守る」という固定観念は、ビジネスで活躍する女性たちの多くが遭遇してきた関門です。

2023年3月8日の国際女性デーに合わせて開催されたウェビナー「デジタル時代の女性たち:ビジネス成長のためのデジタル利用」で、世界銀行シニアエコノミストのRirin Salwa Purnamasari氏は、「私たちがすべきことは、育児や家事の負担を夫婦間で平等にし、女性がビジネスをする機会を増やすことだ」と述べています。

また同氏は、幼児教育の場がほぼ幼稚園一択であり、共働き世帯の就学前児童は祖父母やベビーシッター・チャイルドシッターが世話をすることが一般的なインドネシアにおける「保育園」の必要性についても言及しました。

法的不公正

事業者が男性であることが前提の法律や規則があり、事業許可取得の男女の機会均等などの面で課題が残ります。

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女性中小零細事業者のデジタル化支援策

女性事業者の「デジタル化」の重要性

インドネシアの女性たちの就業や起業を後押しするという意味において、デジタル化は極めて重要な要素になっています。

世界銀行インドネシア・東ティモール駐在員事務所代表のSatu Kahkonen氏は、上述のウェビナー「デジタル時代の女性たち:ビジネス成長のためのデジタル利用」の中で、女性のデジタルリテラシーとデジタル関連の職に従事するためのスキル習得の重要性を強調しました。

同氏は、デジタルの知識とスキルを身につけることで、女性が家庭でも地域社会でもより平等で公平な立場に立てるようになり、さらに収入を得るチャンスもあると述べました。

また、ウェビナーを開催したWomen’s World Bankingの東南アジア地域ディレクターであるChristina Maynes氏は、「デジタルへのアクセスは、正しい情報に基づいて自分の将来の経済的なことを選択するための自信に繋がる」と述べています。

企業による「女性事業者のデジタル化」支援

女性事業者のビジネスのデジタル化を進める上で、企業が行っている支援策をご紹介します。

ECプラットフォームTokopediaの取組み

Tokopediaは、ECプラットフォーム運営企業としては初めて、インドネシア投資調整庁(BKPM:Badan Koordinasi Penanaman Modal)と協力し、女性を含む中小零細事業者が事業基本番号(NIB:Nomor Induk Berusaha)のオンライン取得を支援する取組みを進めています。NIBがあることで、取引先企業や顧客に信頼されやすくなるためです。

現在Tokopediaのセラーは約1,200万店で、そのほぼ99%以上が中小零細事業所です。そこでTokopediaはパートナー企業や政府とともに、インドネシアの多くの地域で、NIB取得関連を含め、様々な女性向けセミナーを開催しています。

インドネシア大学経済経営学部経済コミュニティ研究所の調査では、コロナ禍にTokopediaを通じてゼロからビジネスを始めた女性中小零細事業者の数が、男性の約1.5倍であることが明らかになっています。

Tokopedia広報部長のRizky Juanita Azuz氏は、同社が特定のセラーをピックアップする各種企画やキャンペーンを通して、女性事業者の可能性を引き出すためのイニシアチブを強化し続けていると述べています。

デジタル決済サービスDANAの「SisBerdaya」

DANAは、アリババグループの金融関連会社であるAnt Groupと共同で、2023年3月に「SisBerdaya」を開始しました。「SisBerdaya」は、中小零細事業者、特にマイクロビジネスを所有する女性のビジネスマネジメントスキルやデジタルスキルの向上を支援するプログラムです。

本プログラムは、インドネシアの女性事業者を対象とした3か月間のメンタリングとトレーニングプログラム、およびプレゼンテーション大会から構成されています。この中で参加者は事業戦略、デジタル決済、マーケティング、グローバルセールスなど、幅広い内容を学びます。

トレーニング後、参加者全員がビジネスプランを提出し最終評価を受けます。そして上位5名が2023年5月にジャカルタで開催される最終プレゼンテーション大会に出場し、最高2,000万ルピアの賞金獲得を目指します。

W20と通信会社XL Axiataの「W20 Sispreneur」

セミナーやワークショップなどの教育プログラム受講後の女性事業者に資金的な支援を行う取り組みは他にもあります。

2022年には、インドネシアで開催されたG20に先立って、Women20(W20)とインドネシアの通信会社XL Axiataが女性事業者のデジタル化・グローバル化支援プログラム「W20 Sispreneur」を実施しました。

このプログラムでは、書類選考を通過した1,000名の参加者たちが1か月のトレーニングに参加。彼女たちのビジネスの規模は様々ですが、最終的にはその79%がデジタル化に成功したといいます。

インドネシア各地から集まった1,000名は課題やテストを通して100名、そして25名のファイナリストに絞られ、ファイナリストたちは自らのビジネス計画を発表しました。その上位10名はG20のイベントの一環として開かれた製品展示会に参加する権利と総額3億ルピアの資金、そしてイベント後のビジネス支援が提供されています。

以上のようなプログラム、キャンペーン、イベントの他に、モバイルアプリなどのデジタル技術で中小零細事業者のデジタル化を支援する動きも活発です。詳しくは、以下の記事をご覧ください。

カジュアルにインドネシア進出を試した小売企業様の事例

インドネシア進出は、調べれば調べるほど、そのハードルの高さに頭を抱える方が少なくありませんが、もっとカジュアルに進出する方法もあります。

  • 月額5万円でインドネシア人をフルタイムで雇用し、ドラッグストアやショッピングモールでの市場調査、競合商品の価格調査、現地消費者へのインタビューを実施。市場性を確認した上で、正式なインドネシア進出を決定した。(化粧品企業様)
  • 営業経験のあるインドネシア人を2名チームで雇用し、スポーツジムや病院、リハビリ施設などへの営業活動を実施。販売代理店候補の開拓や市場ニーズを調査し、調査後に販売体制を構築した。(健康器具メーカー様)
  • EC運営経験のあるインドネシア人チームを雇用し、現地ECモールへの出品やSNSを活用したテストマーケティングを実施。売れ筋商品やターゲット層を分析し、本格的な販売開始につなげた。(総合雑貨メーカー様)

上記のように、法人を設立しなくてもカジュアルにインドネシアに進出している企業様はいます。小売関連のビジネスであれば、貴社でもそれが可能です。

女性中小零細事業者のデジタル化支援が持つ意味

インドネシアの女性中小零細事業者の現状と課題、支援の取組みについて見てきました。

インドネシアで中小零細事業者、特に女性の事業者に対する支援の動きが大きくなっている背景には、中小零細事業所がインドネシアの全ビジネスユニットの99%以上を占め、国のGDPの61%と雇用機会の97%を創出しているという事実があります。

そして注目すべきは、6,400万の中小零細事業所のオーナーの65%が女性であるという点です。このことから、女性事業者たちを支援することが、国の経済成長に直接的かつ大きな影響を与えると考えられているのです。

一方で、職場復帰、業界復帰をしたいという希望がかなわず、家庭でできる仕事を探した結果として起業を志す女性もいます。

支援事業を行う政府や企業には、自営業者の支援だけでなく、保育園の普及を含む企業に勤める人に対する支援、就業やキャリア形成における男女の機会均等についての啓蒙など、ハード面、ソフト面共に多角的なアプローチが求められます。

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