インドネシアの現地企業を視察する際の注意点
- 公開
- 2025/04/04
- 更新
- 2025/04/04
- この記事は約7分38秒で読めます。
インドネシアは2億7,000万人以上の人口を抱え、東南アジア最大の経済規模を誇る成長市場です。多くの日系企業がビジネスチャンスを求めて現地企業の視察を検討していますが、現地の商習慣や文化的背景を理解せずに飛び込むと、思わぬ困難に直面することがあります。また、期せずして無礼な印象を与えてしまうこともあるでしょう。
本記事では、インドネシアの現地企業を視察する際の準備や知っておくべき注意点を、実務経験に基づいてご紹介します。この記事を参考にすることで、効率的かつ実りある視察にしていただければ幸いです。
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現地視察の目的を明確にする
現地企業の視察を成功させるためには、「なぜ現地に行くのか」という目的を明確にすることが何よりも重要です。市場調査なのか、パートナー候補の選定なのか、あるいは既存取引先との関係強化なのか。目的によって準備すべき内容や訪問先、アポイントの取り方も大きく変わってきます。
曖昧な目的のまま現地に飛び込むと、貴重な時間とコストを無駄にしてしまう恐れがあります。準備の際は、弊社のように現地視察の支援実績が豊富な企業と連携し、事前の打ち合わせを重ねると、より有意義な現地視察のスケジュールを作成することができます。是非こちらからお気軽にお問い合わせください。
インドネシアへの現地視察についてもっと情報が必要な方へ
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情報が足りなければ、こちらからご連絡をいただければ必要な情報を共有させていただきます。インターネットで1週間や1ヶ月時間を使って調べるよりも、弊社の進出専門家と30分お話いただくだけで、意外と簡単にお悩みが解決できたりするのでおすすめです。
適切なミーティング相手を選定する
現地企業の視察では、話を聞く相手によって得られる情報の質や視点が大きく異なります。目的に応じて最適な相手を選びましょう。
[駐在員] 法規制や商習慣の違いを知りたい場合におすすめ
日本からの駐在員は、日系企業の視点からインドネシア市場の特徴や苦労話を聞くのに最適です。特に進出初期段階での障壁や、日本とインドネシアのビジネス文化の違いについて、生の声を聞くことができます。
FacebookやLinkedInなどから友達申請をしてメッセージを送ると、丁寧に対応してもらえることも多いので、まずは思いきってコンタクトを取ってみましょう。
[現地採用社員] 長期的な視点での市場変化を知りたい場合におすすめ
現地採用の日本人社員は、駐在員よりも長くインドネシアに滞在しているケースが多いのが特徴です。また、複数の会社を渡り歩いた経験から語れることもあるかもしれません。
このような背景もあり、現地採用の日本人社員からは、より長期的な視点でのインドネシア市場の変化や現地に根差したビジネス展開のヒントが得られるでしょう。
[ローカル社員] トレンド情報などを含めた市場理解を得たい場合におすすめ
インドネシア人ローカル社員と話すことで、現地の消費者心理や文化的背景に基づいた市場理解が深まります。日本では日本人が外国人よりも圧倒的に多くの情報を持っているように、インドネシアではインドネシア人の方が現地事業に詳しいのは当然です。
特に若手社員は最新のトレンドや消費者動向に敏感なことが多く、マーケティング戦略を考える上で貴重な情報源となるでしょう。
[ローカルの一般消費者(インタビュー調査)] 隠れたインサイトやサービスの種を見つけたい場合におすすめ
一般消費者へのインタビューは、製品開発やサービス改善に直結する生の声を集める絶好の機会です。経験から申し上げると、ほとんどの場合で「我々日本人が想定していなかった視点や気づき」を与えてくれます。
インタビューは英語ではなく、彼らが普段使うインドネシア語での実施が必須です。事前に質問項目を整理し、伝わりやすい簡潔な質問を準備しておくことをお勧めします。
インドネシア在住の駐在員なり現地採用社員なり、あるいはインドネシア人へのインタビュー設定などを調整するのは非常に手間でもあります。弊社では、車やドライバーの手配はもちろん、上記のようなミーティング相手のアレンジもすべてまとめて承ります。ぜひ、こちらからお問い合わせください。
ミーティング相手へのお礼を欠かさない
ビジネス土産の用意
現地でビジネスを展開している人たちにとって、日本からの訪問者が直接ビジネスチャンスにつながることは稀でしょう。単なる情報収集や自社PRだけでは、訪問相手にメリットがありません。訪問する際には「ただ話を聞く」のではなく、こちらからも「相手にメリットのある話を提供する」スタンスが重要です。
訪問の際には、以下のような「ビジネス土産」を用意しておくと良いでしょう。
- 日本の最新市場動向や技術トレンドについての情報
- 将来的な協業可能性についての具体的な提案
- 自社が持つネットワークの紹介や仲介の申し出
- 相手企業の製品やサービスへのフィードバック
こうした「持ちかけ」があることで、単なる一方的な情報収集ではなく、双方向のビジネス対話が生まれます。
紹介者への感謝を忘れずに
日本に負けず劣らずインドネシアはコネクション重視の社会です。誰かの紹介でアポイントを取った場合は、その紹介者への感謝の気持ちを示すことが非常に重要です。現地視察後には必ず紹介者にお礼のメールや電話をし、どのような話ができたか、どれだけ有益だったかを伝えましょう。
日本のお土産を持っていくのも良いですが、単に物を渡すだけでなく、「あなたのおかげで貴重な機会が得られた」という気持ちを伝えることが大切です。この「恩を忘れない」姿勢が、日本人・インドネシア人問わず、長期的な信頼関係の構築につながります。
ここまで記事をご覧いただいて何かご不明点や疑問点があれば、下記よりご質問ください。
一両日中にご返信をさせていただきます。
目的に応じた適切な種類のビザを選ぶ
訪問の目的によって、インドネシア入国のために必要なビザの種類が異なります。間違ったビザで入国すると、最悪の場合は入国拒否や罰金の対象となる可能性があります。
オフィスでのミーティングのみであれば、VOA(Visa On Arrival / B2 / 到着ビザ)で問題ありません。30日間有効で、空港でもオンラインでも取得できます。
ただし、工場視察やビジネス目的での活動を幅広く行う場合は、事前にC2(旧B211Aビザ)を取得する必要があります。
2024年の制度改正でVOAでも工場視察はできるとされていますが、現場ではイミグレーションの職員によって解釈が異なる場合もあります。特に工場視察は「就労活動」とみなされるケースがあるため、VOAでの入国は避けるべきです。
- 参考:JETRO「2024年改定、新入国ビザの概要と注意点(インドネシア)」
ビザ申請には時間がかかる場合もあるため、余裕をもって準備しましょう。こちらからご連絡をいただければ、弊社の方でビザの手配をすべてサポートさせていただきます。
- インドネシアの就労ビザ申請についてお困りの方へ:https://kakemochi.co.jp/visa-services/work-visa/
インドネシアに会社を設立してみませんか
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アポイント時間に対する感覚の違いを理解する
日本とインドネシアでは、時間に対する感覚が大きく異なります。この違いを理解せずに訪問すると、思わぬフラストレーションを感じることになるでしょう。
日系企業の日本人担当者とのミーティングは、大概の場合、日本と同様に時間通りに始まります。約束の10分前には到着しておくのが無難でしょう。
一方、インドネシア人担当者とのアポイントは柔軟な心構えと対応が必要です。30分から1時間程度の遅れは珍しくなく、場合によっては直前のキャンセルや日程変更もあり得ます。これは無礼ではなく、「ジャムカレット(ゴム時間)」と呼ばれるインドネシア人の多くが持つ時間感覚に起因しています。
予定変更に対応できるよう、一日のスケジュールには十分な余裕を持たせることが大切です。また、インドネシア人とのアポイントの前には、必ず確認の連絡を入れておくことをお勧めします。少なくない確率で「日時の勘違い」や「約束自体の失念」が発生するからです。
移動時間の現実(渋滞)を知る
ジャカルタを始めとするインドネシアの大都市における渋滞は、日本人の想像を超える深刻さです。この現実を知らずにスケジュールを組むと、一日の計画が完全に狂ってしまうことになります。
車やタクシーでの移動は、通常時間の2〜3倍を見込んでおく必要があります。特に朝夕のラッシュ時には、数キロの移動に1時間以上かかることも珍しくなく、歩いた方が早いと感じることも多々あります。Grabなどの配車アプリは便利ですが、それでも渋滞を避けることはできません。
MRTや近郊鉄道などの公共交通機関を組み合わせる方法もありますが、駅から目的地までの移動も計算に入れる必要があります。場合によっては電車で一区間移動し、そこからGrabなどで最終目的地に向かうという方法が効率的な場合もあります。
なお、バスは路線や時刻表が分かりにくく、初めてのインドネシア訪問では避けた方が無難です。
一日のスケジュールを立てる際は、移動に十分な余裕を持たせ、午前と午後でそれぞれ1〜2件程度のアポイントにとどめるのが現実的です。アポイントの間に2時間以上の余裕を持たせることで、渋滞による遅れにも柔軟に対応できます。
くれぐれも日本と同じ感覚で予定を詰め込まないよう、ご注意ください。
ビルへの入館時には身分証明書を忘れずに持つ
ジャカルタの中心部にあるオフィスビルは、日本以上にセキュリティ対策が厳重です。ほとんどのビルで入館時に身分証明書の提示が求められ、記帳や写真撮影が必要なケースもあります。
そのため、現地企業を訪問する際は、パスポートは必ず持参しましょう。コピーでは入館を断られる場合があります。また、時間に余裕を持って到着することで、入館手続きに時間がかかっても焦らずに済みます。
TPOに合わせた服装を心掛ける
ビジネスミーティングの服装は、訪問先や相手によって適切なドレスコードが異なります。
公的機関や大企業を訪問する場合は、スーツもしくはバティック(インドネシアの伝統的な柄物の服)が適切です。特に政府機関ではフォーマルな服装が期待されます。
一方、スタートアップや一般的な企業訪問であれば、ビジネスカジュアル(襟付きシャツに長ズボン、革靴)で十分な場合が多いでしょう。ただし、初対面の場ではフォーマル寄りの服装を選び、相手を見て次回以降調整するのが無難です。
Tシャツに短パン、サンダルといったカジュアルな服装は、親しい関係が築けている相手とのリラックスした場面でのみ許容されます。南国とはいえ、初めての訪問ではビジネスカジュアル以上の服装を心がけましょう。
お土産はハラールへの配慮を忘れずに選ぶ
インドネシアは世界最大のイスラム教人口を抱える国であり、多くの人々がハラール(イスラム法で許されている)食品しか口にしません。お土産を持参する際には、この点に十分注意する必要があります。
特に以下の食品には注意が必要です。
- 豚肉や豚由来の成分を含む食品
- アルコールを含む食品(みりんや料理酒も含む)
- ゼラチンを使用した菓子類
- 原料が明確でない食品
安全なお土産としては、ハラール認証のある和菓子や、文房具、小物などがおすすめです。特に、日本らしさを感じられる品物は喜ばれます。
会食は信頼関係構築の重要な機会
形式的なオフィスミーティングとは別に会食の場を設けることは、インドネシアでも非常に有効です。くだけた雰囲気の中で本音の話ができることが多く、公式の場では得られない貴重な情報やアドバイスを聞ける機会となります。
特にアルコールを飲みながらの日本人駐在員とのディナーは、インドネシアビジネスの裏側や苦労話、現地でのビジネス展開の実情など、より深い話が聞ける貴重な機会です。
会食を申し出る際のマナーは、日本と同様です。「お忙しいところ恐縮ですが、もし可能であればお食事でもご一緒できれば」といった丁寧な表現で、相手の都合を最優先する姿勢を示しましょう。
まとめ
インドネシアでの現地企業視察は、事前の準備と現地の文化・習慣への理解があってこそ、実りあるものとなります。一見すると些細なことでも、相手への配慮や現地のビジネス文化への適応が、長期的な信頼関係構築につながります。
インドネシアは成長著しい魅力的な市場であると同時に、日本とは異なるビジネス環境が存在します。この違いを「障壁」ではなく「学びの機会」と捉え、柔軟な姿勢で臨むことが、インドネシアビジネスを成功させるカギとなるでしょう。
適切な準備と心構えで、実りあるインドネシア企業視察を実現させてください。
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インドネシアでの新規ビジネスに関わる方へ
最後まで文章を読んでいただきありがとうございます。ここまでご覧いただいたということは、記事の内容に対して一定の信頼感や満足感を得ていただいたのかなと推測しています。
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インドネシアの現地企業を訪問して社員に話を聞くため、どのような準備が必要ですか。
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現地企業を訪問する際には「ただ話を聞く」のではなく、こちらからも「相手にメリットのある話を提供する」スタンスが重要です。訪問の際には、「ビジネス土産話」を用意しておくと良いでしょう。
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インドネシアで現地企業を訪問する際、移動について注意すべきことは何ですか。
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ジャカルタを始めとするインドネシアの大都市における渋滞は、日本人の想像を超える深刻さです。そのため、予定を詰め込み過ぎず、十分に時間的な余裕を確保しておくことが大切です。
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インドネシアの現地企業を訪問する際の手土産の注意点は何ですか。
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インドネシアにはイスラム教徒が多いことに注意する必要があります。ハラール認証のある食品や、日本らしい文房具、小物などがおすすめです。
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