輸出入手続きの電子ハブ、インドネシア・ナショナル・シングル・ウィンドウ(INSW)とは何か
- 公開
- 2026/05/15
- 更新
- 2026/05/15
- この記事は約8分52秒で読めます。
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インドネシア・ナショナル・シングル・ウィンドウ(INSW)とは何ですか?
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INSWは、インドネシアの輸出入に関わる税関、検疫、許認可、港湾・物流関連の手続きを電子的につなぐ国家的な手続きハブです。実際の電子システムはSINSWと呼ばれています。
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日本からインドネシアへ輸出する企業もINSWを理解する必要がありますか?
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直接INSWで作業を行わなくても、現地輸入者や通関業者がINSW / SINSW上で申告・許認可確認を行うため、HSコード、インボイス、パッキングリスト、必要に応じた原産地証明、規制品目の確認などを求められることがあります。
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INSWを理解していないと、どのようなリスクがありますか?
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必要な輸入承認や許認可を船積み前に確認できず、到着後に通関が止まるリスクがあります。また、各システム上の免税関連のリスト・証明書・申告情報に不整合があると、手続きの遅延や想定外の税負担につながる可能性があります。
インドネシア・ナショナル・シングル・ウィンドウ(INSW)は、インドネシアの輸出入に関わる税関、検疫、許認可、物流関連手続きをつなぐ電子的な手続きハブです。
日本企業が直接操作しない場合でも、現地輸入者や通関業者がシステム上で申告・確認する情報は、日本側が用意するインボイス、HSコード、原産地証明、製品仕様などと密接に関係します。
INSWを理解しておくことは、船積み後の通関遅延や追加コストを防ぐための重要な準備になります。
インドネシア・ナショナル・シングル・ウィンドウ(INSW)とは
INSWの制度概要とはたらき
INSWは、インドネシアの輸出入に関するデータ提出、データ処理、意思決定を一元化するための国家的な仕組みです。
なお、INSWは制度・仕組み全体の名称です。構造の理解のためには、以下の用語を押さえておきましょう。
- INSW(Indonesia National Single Window)
:インドネシアの輸出入手続きを一元化する制度・仕組み - SINSW(Sistem Indonesia National Single Window)
:INSWを実際に動かす電子システム・ポータル - LNSW(Lembaga National Single Window)
:INSW / SINSWを管理・運営する財務省傘下の組織
インドネシア政府はINSW導入により、貿易手続きの電子化、行政機関間の連携強化、物流パフォーマンスの改善、投資環境の改善、国家競争力の向上を目指しています。
ASEANの貿易電子化とINSW
INSWはインドネシア国内だけの仕組みではなく、ASEAN全体の貿易電子化の流れともつながっています。アセアン・シングル・ウィンドウ(ASW)は、ASEAN加盟国それぞれのナショナル・シングル・ウィンドウを接続し、国境貿易関連文書を電子的に交換する地域的な取り組みです。
国ごとに制度・運用・必要書類は異なるため、ASEAN全体で完全に同じ実務になるわけではありませんが、INSWを知っていると、周辺国の類似制度を理解する手がかりになります。反対に、周辺国での輸入事業の経験がある場合、INSWも「各国版の電子化された貿易手続き基盤」として理解しやすいでしょう。
【補足】
ASWでは、従来の紙のForm D(原産地証明書)に対応する電子版として、ATIGA e-Form Dが導入されました。2025年6月時点ではASEAN全加盟国がATIGA e-Form DおよびACDD(ASEAN税関申告書データ)をASW経由で交換しています。
- 参考:ASEAN「Overview of The Sector」
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INSWとSINSWは同じものですか?
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厳密には同じではありません。INSWはインドネシアの輸出入手続きを一元化する制度・仕組み全体の名称で、SINSWはその仕組みを実際に動かす電子システムです。
INSWが関係する業務範囲
INSWの主な守備範囲
INSW / SINSWが関係する代表的な手続きは、まず、輸出入申告です。
輸入実務では、輸入申告書をINSW経由で税関へ電子提出する際、インボイス、パッキングリスト、事業基本番号(NIB)、納税者番号(NPWP)に加え、必要に応じて輸入承認(PI)や原産地証明書などの情報が求められます。
加えて、税関申告との連携も、INSWの中心的な機能の一つです。他にも、検疫、PI、品目別許認可、港湾・空港関連、物流関連システムなど、輸出入に関わる複数の行政・民間プレイヤーをつなぎ、情報を共有する役割を持ちます。
日本企業にとってのポイント
現地輸入者や通関業者がINSW / SINSWを通じて申告する前提として、日本からの輸出者が提供する情報が正確である必要があります。
特に、
- HSコード・品名
- 用途
- 数量
- 価格
- 原産地
- 製品仕様
- 規格・認証への適合状況
などは、現地側の申告・許認可判断に直結します。INSWが、書類審査、税関確認、許認可確認が集中し、輸入手続きの中核に位置する仕組みであるためです。
インドネシア向け輸出では、現地輸入者や通関業者との役割分担が重要です。自社製品の輸出可否や現地パートナー探しについては、こちらからご相談ください。
輸入規制品の確認先としてのINSW
INSW / SINSWは、輸入禁止・制限品目(Lartas:Larangan dan Pembatasan)の確認先としても機能します。
輸入者または通関業者は、輸入前に、INSW / SINSW関連のポータルで取り扱う予定の製品がLartas対象かどうかを確認します。日本側輸出者も、現地側を通じて確認しておくと安心です。
日本企業が現地法人を設立し、自社で使う原材料や設備を輸入するケースでも、品目によっては「自由に輸入できる」わけではありません。こうした規制の有無や必要な手続きは、一般的に、SINSWや連携システム上で確認・申請されます。
【補足】
Lartasの主な対象カテゴリーとしては、鉄鋼・鉄鋼製品、食品、医薬品・化粧品、化学品、農畜産品、塩、砂糖、アルコール、中古資本財などが挙げられます。ただし、品目によって扱いが異なる可能性があるため、個別に確認する必要があります。
必要な情報が見つからない方は、下記のサイト内検索を活用してください。
INSWと各機関・システムの連携と輸入規制対応

INSWに関わるプレーヤー
INSW / SINSWと連携する、または輸入許認可の所管機関として関係する行政機関は、品目によって異なります。税関や財務省に加えて、商業省、工業省、農業省、検疫庁、国家医薬品食品監督庁(BPOM)、運輸関連機関などが関わることがあります。
INSW / SINSWは、こうした各省庁のシステムと税関・物流手続きをつなぐ連結ハブとして機能します。
民間側では、輸入者、輸出者、通関業者(PPJK)、運送業者、保税地域・倉庫関連事業者、フォワーダーなどが関係します。
システムごとの連携
INSWは各省庁が運用するそれぞれのシステムと連携しています。以下では主なものを紹介します。
商業省「INATRADE」
代表例の一つが、商業省所管の輸出入許認可を処理するシステム「INATRADE」です。商業省が管轄する許認可(IT、IP、PIなど)は、SINSWを入口としてINATRADEと連携して処理されます。
登録輸入業者(IT)・製造輸入業者(IP):輸入品目によってAPIに加えて必要な輸入業者の許認可
輸入承認(PI):特定の品目をインドネシアに輸入する際に必要となる個別許可
経済担当調整省「SNANK」
経済担当調整省が商品バランス(NK:Neraca Komoditas)に関する情報・システムを提供する一元的なシステム窓口「Sistem Nasional Neraca Komoditas(SNANK / SINAS NK)」は、INSWのサブシステムとされています。
NKは、特定の品目について、国内需要・供給データを踏まえ、輸出入政策や許認可判断の基礎にする仕組みです。
NKが適用される品目は段階的に見直し・拡大されていますが、米、砂糖、牛肉、塩、水産品などが代表例です。NK対象品目では、政府が把握する需要・供給や輸入可能数量が、PIが発行されるかどうかなどの判断に影響する場合があります。そのため、正規の輸入事業者でも、自由に輸入できるとは限りません。
- 参考:DATABASE PERATURAN「Peraturan Presiden (PERPRES) Nomor 32 Tahun 2022|Pasal 1」
事業許認可システム「OSS」
インドネシアで輸入事業を行う現地法人を設立する場合、定款(AKTA)の作成などに続いて、事業許認可システム「OSS」からNIBや事業許可を取得します。このOSSへの登録内容は、輸入手続きの前提情報となります。
そのため、OSSでNIBを取得したら、それがAPI(輸入業者認識番号:輸入ライセンス)や税関アクセスとして有効か確認する必要があります。ここで情報に不備や不整合があると、後でSINSWや税関手続きの利用時に問題が生じる可能性があります。
また、OSSでNIBや会社情報を変更した際には、税関・INSW / SINSW側に変更が正しく反映されたことを確認する必要があります。
インドネシアで輸入事業を行うには、法人設立やNIB取得などの前提準備も欠かせません。法人設立の流れを知りたい方は、こちらから資料をダウンロードできます。
日本企業にとってINSWが必要になる場面
日本企業にとってINSWが関係する場面は、大きく分けて2つあります。
一つは、日本からインドネシアへ輸出するケースです。もう一つは、インドネシア現地法人が輸入者となり、自社使用製品、設備、原材料、部品などを輸入するケースです。
日本からインドネシアへ輸出するケース
日本側の輸出者は、INSWに直接ログインしないことが多いでしょう。
しかし、現地輸入者はINSW / SINSWや税関システムを通じて輸入申告や許認可確認を行います。そのため、日本側の輸出者は、INSW上に流れる情報の提供者として関係します。
例えば、インボイス上の品名が曖昧で、HSコードや用途説明が現地側の申告と一致していない場合、現地輸入者や通関業者がLartasやPIの要否を判断しにくくなります。
また、経済連携協定やRCEPなどが関係する優遇税率の適用に関しても、原産地証明・申告情報の整合性が重要となります。
輸入関連情報がオンラインで管理・照合されるようになったことで、各システム上で参照される輸出者や製品に関する情報の整合性が、現地側の申告や許認可判断に大きく影響するようになっています。
現地法人が自社使用目的で輸入するケース
日本企業がインドネシアに設立した現地法人が、自社で使用する機械、部品、原材料、副資材などを輸入する場合、輸入者である現地法人は、INSW / SINSWを使った輸入実務の主体の一つになります。
一般に流通させず、自社で使用する製品であっても、輸入規制と無関係ではありません。個々の輸入品について規制の有無や必要な手続きを確認する際にも、INSW / SINSWや関連システムを利用します。
現地法人が輸入者となる場合に特に注意したいのが、設備輸入時の免税手続きです。
関税免除やPPN(インドネシアの付加価値税。VATに相当)免除を受けるには、関税免除対象リストであるMasterlist、輸入・取得計画書であるRKIP、PPN免除証明書であるSKB PPNなどの情報と、実際の輸入申告情報が整合している必要があります。
これらの情報に不一致があると、本来適用できるはずの免税措置を受けられず、想定外の関税・税負担が発生する可能性があります。
規制変更に注意
インドネシアでは、近年も繰り返し輸入規制の見直しが行われています。そのため、輸出前に「前回と同じ品目だから問題ない」と判断するのは危険です。規制の変更がないかどうか、毎回確認するのがおすすめです。
インドネシアの輸入規制や品目別の対応、社内体制の構築などに不安がある方は、こちらから一度ご相談ください。
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現地法人が自社使用目的の製品を輸入する場合、輸入承認(PI)やLartas対応は不要ですか?
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不要とは限りません。自社向けの製品であっても、品目によっては輸入承認(PI)、Lartas、SNI、検疫、NKなどが関係するため、船積み前に品目別規制を確認する必要があります。
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インドネシア進出を検討していますが、海外コンサル会社の費用が想定以上に高く、また契約期間も1年間等で縛られることが多くて悩んでいます。
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INSWに関する注意点
INSW導入により、データ連携、電子申請、手続きの可視化、審査の効率化が進んでいます。複数の行政機関へ個別に紙の書類を提出し、担当官や窓口ごとに進捗を確認する従来の手続きと比べると、輸出側・輸入側双方の負担が軽減したといえますが、注意点も残っています。
完全にシームレスではない
INSWがあるからといって、インドネシアの輸入実務が完全にシームレスになるわけではありません。
品目・省庁ごとの制度差、品目別規制、各省庁システム、システム反映タイミング、追加書類、現場運用、税関判断など、トラブルが起きやすい点や個別対応にやりやすい点は残ります。INSWは「すべてを自動で解決するシステム」ではなく、複数の手続き・省庁・データをつなぐためのハブです。
実務上の負担としては、以下のような点があります。
- HSコード、品名、用途、仕様、数量、価格、原産地などの情報整合性を確保すること
- 輸入者のNIB・API・NPWP、KBLI、税関アクセスが最新であること
- LartasやPIの要否を確認すること
- 品目に応じて適切な許認可の取得・登録を行うこと
- 免税関連書類・証明・申請情報を確認すること
- OSSの登録内容に変更があった場合、各システムに反映されていることを確認すること
輸出側も理解が必要
輸出する側の企業としては、インドネシアのシステムの話はあまり関係ないと感じるかもしれません。しかし、ここまで説明してきたとおり、INSWは輸出側とまったく無関係というわけではありません。
輸出者が直接操作しなくても、現地側がINSW / SINSWで申告する情報の多くは、日本側が提供する書類と製品情報に基づきます。特にLartas対象品目では、船積み後に必要な許認可が未取得であることがわかると、通関遅延、保管料、再輸出、行政制裁などのリスクにつながります。
特に、船積み前に確認が必要なHSコードとLartas、PI、検疫、SNI、BPOM、NKなどの各種規制・許認可については、輸出者も現地輸入者や通関業者と連携して確認する必要があります。
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INSWによって、インドネシアの輸入手続きはかなり簡単になったと考えてよいですか?
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紙中心・窓口分散型の実務と比べると、電子化・一元化は進んでいます。ただし、品目別規制や必要な許認可への対応は実務として残っており、手続きのための事前確認や準備が不要になるわけではありません。

映像でみるインドネシアの輸入手続き
税関・検疫統合システムの説明会

こちらは、スラバヤのTanjung Perak(タンジュンペラック)税関とINSW / SINSWを管理・運営するLNSWが実施した、「SSmQC Generasi II」の説明・支援イベントを紹介する動画です。SSmQCは、輸出入や検疫・税関関連の手続きを効率化する仕組みの一つで、イベントでは輸入者・輸出者向けにシステム更新のデモや利用支援が行われました。
このようにINSW / SINSWは、SSmQCを含め、税関、検疫、港湾・物流関連のシステムと事業者をつなぐ実務インフラとして運用されています。
税関職員による輸入品確認

こちらの動画では、税関職員が港に到着した輸入品を確認している場面が紹介されています。今回の対象製品はブルドーザーのスペアパーツや溶接機器などで、箱を開け、書類を確認しながら慎重に調査している様子がわかります。
輸入業者はこのような調査にそなえ、書類間や書類と実物との整合性を担保しなければなりません。そのためには輸出側も、正確な情報を提供する必要があります。
INSWを理解することで見えるインドネシア貿易の全体像
INSWは、インドネシアの輸出入手続きを支える「手続きのハブ」です。このシステムは、複数の省庁・機関が運用する輸入関連の制度・規制・システムと連携しています。
日本企業の輸出側担当者にとって重要なのは、現地輸入者や通関業者がINSW / SINSW上で確認・申告する情報が、輸入者側の登録情報だけでなく、日本側が提供する書類や製品情報にも大きく左右されることを理解することです。
インドネシア向け輸出や現地法人による輸入では、「貨物を送る前に、現地側で何が確認されるのか」を把握しておくことが、通関遅延や追加コストの予防につながります。
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