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インドネシア・ジャワ島のほぼ中央に位置するスマランは、中部ジャワ州の州都として政治・経済の中心地となっています。スマランは、豊かな歴史と多文化が融合する港町であり、近年では工業団地の整備も進んでいます。

本記事では、スマランの基本情報やアクセス情報に加え、主要産業、日系企業が進出する際のメリットや注意点を紹介します。

【補足】
本記事の円表記は、2025年4月22日のレート（1ルピア＝0.0085円）で換算したものです。

スマランの基本情報

位置・面積・人口

スマラン市は東西に長いジャワ島の、ほぼ真ん中に位置します。北海岸側に中部ジャワ州の州都であるスマラン市が、その南側の内陸部にスマラン県があります。

スマランの面積と人口（2023年）

• スマラン市：面積 373.78㎢　人口 1,694,743人
• スマラン県：面積 1,019.27㎢　人口 1,080,648人

過去10年、スマラン市は、インドネシアの都市別人口でベスト10に入ります（ジャカルタを1つの都市とした場合）。過去10年を見てみると、2019年の181万人まで増えたあと、2020年以降は160万人台で推移しています。一方スマラン県の人口は、2014年の99万人から10年で9.4%増加しました。

参考：

• BPS Kabupaten Semarang「Luas Wilayah Kabupaten Semarang (km2), 2023」 / 「Jumlah Penduduk Menurut Kabupaten/Kota (Jiwa), 2022-2023」
• BPS Kota Semarang「Luas Wilayah, Jumlah Penduduk, dan Kepadatan Penduduk (Jiwa/km2), 2021-2023」

スマラン県とスマラン市

スマランには、「中部ジャワ州スマラン県」と、「中部ジャワ州スマラン市」があります。

インドネシアにおける「県（Kabupaten）」と「市（Kota）」は、行政単位としては対等です。スマランの場合、同じ名前の県と市がありますが、県の中に市があるのではなく、それぞれ独立して中部ジャワ州の下に属しています。

北海岸に面したスマラン市は、歴史と多文化が融合する港町として知られます。オランダ植民地時代の建物が今も残るコタ・ラマや、歴史ある教会・仏教寺院がモスクと共存する街並みが特徴です。

気候

ジャワ島は東西に長いものの南北には短く、平地であればどこでも気候に大きな差はありません。スマランもジャカルタなどと同じ熱帯気候で、季節は10月～3月頃の雨季と、4月～9月頃の乾季の2つです。

ただしスマラン市は沿岸部にあるぶん、気温や湿度が比較的高いのが特徴です。スマラン市の年間平均気温は28.0℃（2022年）で、インドネシア平均の27.2℃（2023年）よりもやや高くなっています。

スマラン県は内陸部に広がり、標高が1,000mを超えるエリアもあります。そのため場所によっては朝晩に気温が下がる高地気候で、年間平均気温は25℃（2022年）です。山間部は乾季でも雨が降りやすく、霧が出る日が多いのも特徴的です。

参考：

• GoodStats「Simak Rata-Rata Suhu Tahunan di Indonesia」
• BPS Provinsi Jawa Tengah「Suhu Udara Rata-rata menurut Stasiun Pengamatan di Provinsi Jawa Tengah, 2018 – 2022 (°celcius) (Celcius), 2021-2022」

交通

電車

スマラン市には、スマランという名称の駅が2つあります。「スマラン・タワン駅」と、「スマラン・ポンチョル駅」です。2つの駅は2㎞ほど離れています。

中長距離/都市間路線

「スマラン・タワン駅」は都市間を結ぶ中長距離列車の駅で、ジャカルタ、バンドン、ジョグジャカルタ、スラバヤなど、ジャワ島各地からスマランにアクセスする場合の降車駅です。

また中部ジャワ州とジョグジャカルタを一周するジョグロスマルケルト線（ジョグロセマークルト、Joglosemarkerto）も停車します。ジョグロスマルケルト線はジョグジャカルタ、ソロ、スマラン、テガル、プルワケルトなど20駅を巡る路線で、座席には2つのクラスがあります。

ローカル線

「スマラン・ポンチョル駅」は中長距離列車が停車するほか、ローカル列車「クドゥン・セプル線」の始発駅にもなっています。クドゥン・セプル線は、「スマラン・タワン駅」を経由し東に75㎞ほど離れたングロンボ駅までを繋ぐ路線です。

バス

スマラン市は市内のほぼ全域をカバーする路線バス「トランススマラン（Trans Semarang）」を運行しています。利便性と手ごろな料金で、通勤や通学にもよく利用されています。

その他

バスが通れない狭い道でも走れる路線シェアタクシー「アンコット（Angkot）」が、庶民の足として親しまれています。アンコットは主な駅や教育機関を経由し、住宅地近くまで市内・県内の広い範囲を網羅しています。

観光客向けには、スマラン市が3種類（Si Kenang、Si Denok、Si Kuncung）の周遊観光バスを運行しています。これらのバスに乗ると、スマランの主要な観光スポットや歴史的建造物を、バスの中から見ることができます。3種類のバスはそれぞれ、コンセプト、運行ルート、料金が異なります。

日本からスマランへの行き方

日本からジャカルタまで

スマラン市内にはアフマド・ヤニ国際空港がありますが、日本からの直行便は就航していません。そのためスマランにアクセスするにはまず、ジャカルタ郊外のスカルノ・ハッタ国際空港を目指す必要があります。

日本からは、成田空港および羽田空港からスカルノ・ハッタ国際空港への直行便が運航しています。所要時間は約8時間です。関西国際空港など他の空港からは乗継便を利用することになります（2025年4月時点）。

ジャカルタ（スカルノ・ハッタ国際空港）からスマランまで

飛行機

アフマド・ヤニ国際空港は、2025年時点では国際便が就航していません。そのためアクセスには国内便を利用することになります。スカルノ・ハッタ国際空港からは、ガルーダインドネシア航空、バティック・エア、シティリンクを利用できます。所要時間は約1時間10分です。

電車

ジャカルタからスマランまでは、ジャワ島を横断する各種中距離列車を利用できます。

ジャカルタの出発駅は、中央ジャカルタのガンビール駅、パサール・セネン駅、東ジャカルタのジャティネガラ駅です。所要時間は早いもので5時間前後です。料金は利用する列車や座席の等級によって異なり、通常はエコノミーなら25万ルピア（2,110円）前後から、エグゼクティブなら40万ルピア（3,380円）前後からです。

スカルノ・ハッタ国際空港から上記の各駅まではまず、ジャカルタのターミナル駅であるマンガライ駅を目指します。KAIスカルノ・ハッタ空港鉄道線でマンガライ駅まで約55分。ジャティネガラ駅まではチカラン線（ブカシ行）で約6分、パサール・セネン駅まではジャティネガラ駅でチカラン線（カンプン・バンダン行）に乗り換えてさらに約10分です。

ガンビール駅は電車でアクセスしづらいため、空港からは高速バス「ダムリ」やタクシーを利用するのが良いでしょう。

バス

スカルノ・ハッタ国際空港からスマランに直行する長距離バスはありませんが、空港近郊やジャカルタ市内からは多数の高速バスが運行しています。そのため、タクシーなどで乗車地まで行って、スマラン行きのバスを利用することはできます。乗車地や降車地はバスによって異なるので、調べてから利用しましょう。

ジャカルタからスマランまでの運賃は利用するバスや乗車日によりますが、通常は20万～30万ルピア（1,690～2,540円）程度で、所要時間は8～10時間です。チケットは各バスの運行会社のWebサイトや、Travelokaなど旅行予約サイトから購入できます。

スマランの主要産業

製造業

スマランには、ブキット・スマラン・バル工業団地、チャンディ工業団地、テルボヨ・スマラン工業団地など複数の工業団地があり、製造業が発達しています。中でも多いのは、食品、家具、ゴム・プラスチック、衣服などです。特に食品製造業者には小規模・零細事業者も多く、地域の経済を支える特徴的な産業の一つです。

• 参考：BPS Kota Semarang「DIREKTORI INDUSTRI MANUFAKTUR BESAR DAN SEDANG KOTA SEMARANG 2023｜P.2」

工業地域としてのスマランは、ジャワ島の中心部に位置し、中部ジャワ州だけでなく東西どちらへもアクセスしやすいことや、国内でも有数の規模を誇るタンジュン・エマス港やアフマド・ヤニ国際空港に近い戦略的な立地が強みです。

スマラン市政府も工業地帯の発展のため、積極的に支援しています。道路、電力、上下水道、通信といったインフラ整備に加え、投資を希望する企業に対して財政的インセンティブの提供や許認可手続きの簡素化を行っています。

• 参考：PORTAL INFORMASI DATA INDUSTRI KOTA SEMARANG「MAPPING PENDATAAN KAWASAN INDUSTRI KOTA SEMARANG」 / 「STATISTIK」

観光

スマラン市には歴史的建造物や多文化共生のシンボルでもある教会、中華街などがあります。市では観光周遊バスを運行するなど、観光客の誘致に積極的です。

さらに、高地にあり、湖や森林など自然に触れあえるエリアの多いスマラン県も、観光産業が盛んです。スマラン県の観光地として特に有名なのは、スマラン市街地から40㎞ほど南のバンドンガン地域で、多くのリゾートホテルやキャンプ場があります。

スマラン県によると、かつては製造業と農業に次ぐ3番目の規模の産業だった同県の観光産業は、2023年までに域内総生産（PDRB）の19%を占め、農業を抜いて2番目に大きな産業に成長しました。

同県の観光振興策の特徴として、デサ・ワイサタ（観光村）の開発があります。

この観光村は農村地域を観光地として開発したもので、自然観光、文化体験、アグリツーリズム（農業体験型ツーリズム）など、さまざまなアクティビティを提供しています。現在スマラン県には、カンドリ観光村、ジャマルサリ観光村、ウォノロポ観光村など、30か所以上の観光村があります。県は観光スポットだけでなく、ローカルグルメや工芸品の開発も積極的に進めています。

参考：

• PPID Kabupaten Semarang「Pariwisata Kabupaten Semarang Berdayakan Ekonomi Warga」
• Visit Jawa Tengah「5 Desa Wisata Di Semarang Dan Sekitarnya Yang Menarik Untuk Dikunjungi」

農業

スマラン県は中部ジャワ州における一大農業地域であり、タンジュン・エマス港からの輸出も行われています。主な農産品としては、米、落花生、キャッサバ、コーヒー豆、唐辛子、白菜やネギなどの野菜があります。また、鶏、アヒル、ヤギなど畜産もさかんです。

参考：

• BINUS University「7 Sektor Bisnis dan Industri Paling Potensial di Semarang」
• BPS Kabupaten Semarang「Luas Panen Tanaman Sayur-Sayuran di Kabupaten Semarang (Hektar), 2020」

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スマランに進出している日系企業

スマランに生産拠点、代理店、出資した現地法人の拠点などを置いている主な日本企業を紹介します。

• ヴォークス・トレーディング
• 日本通運
• 近鉄エクスプレス
• 服良
• 三菱電機
• 矢崎グループ
• CKD株式会社

他にも日本の自動車・バイクの販売店や修理店、飲食店、コンビニエンスストアなどがスマラン市内を中心に支店を展開しています。

スマランに進出する上での注意点

洪水

海抜の低いスマラン市北部は、地盤沈下や排水インフラ不足などの影響で、高潮や集中豪雨による洪水の被害が出やすい地域です。またスマラン県の山間部では、雨季には河川の氾濫や土砂災害が発生しやすい地域があります。工業団地は比較的インフラが整っており、洪水の被害を受けにくいものの、事前の調査は欠かせません。

市と県の違い

スマラン市とスマラン県は隣接しており名称も同じですが、行政区分が異なるため、企業の拠点がどちらに位置しているかで行政手続きの方法が異なります。

また、スマラン市とスマラン県は中部ジャワ州とは別に地域最低賃金を設定しています。中規模および大規模企業は従業員の賃金に対し地域最低賃金を適用する義務があるため、注意が必要です。中部ジャワ州は2025年の州別最低賃金が一番低い州ですが、地域最低賃金がそれを上回る場合、その市や県に所在する企業は地域最低賃金を参照しなければいけません。

2025年州・地域最低賃金

• スマラン市地域最低賃金：345万4,827ルピア（2万9,200円）
• スマラン県地域最低賃金：275万136ルピア（2万3,240円）
• 中部ジャワ州最低賃金：216万9,349ルピア（1万8,330円）
• 全国平均州最低賃金：331万5,728ルピア（2万8,020円）

参考：Kompas.id「Upah Minimum 2025 Rata-rata Rp 3.315.728」 / 「Daftar Lengkap UMP dan UMK Jawa Tengah 2025」

現地文化への理解

スマランに限りませんが、地方都市ではジャカルタとは違った現地の文化や習慣があり、それに対応する柔軟さが求められます。

ビジネス習慣のほか、大きいのが宗教的な習慣です。イスラム教徒が大多数を占めるという点で同じでも、ジャカルタよりも郊外都市や地方都市の方が敬虔な（堅実な）イスラム教徒が多い、伝統行事が盛大で参加を求められる機会が多いなど、より配慮が必要なケースが多くなっています。

なお、スマラン県の住民の94.5%がイスラム教徒です。ジャカルタの場合、イスラム教徒の比率は89.1%です。

参考：

• BPS Provinsi Dki Jakarta「Jumlah Penduduk Menurut Agama dan Kabupaten/Kota di Provinsi DKI Jakarta (Jiwa), 2022-2023」
• BPS Kabupaten Semarang 「Jumlah Penduduk Menurut Kecamatan dan Agama (Jiwa), 2022-2023」

映像でみるスマランの街と産業

スマラン市のランドマーク

こちらはスマラン市のランドマークです。

手前のろうそくのような形の塔は、インドネシア独立の際にスマランで戦った若者たちを記念した、「トゥグ・ムダ」です。トゥグ・ムダの後ろは100年以上前に建てられたヨーロッパ人のための高等裁判所で、現在はインドネシア国軍に関連するデータや物品を展示する博物館になっています。

左右2つの塔が印象的な赤い屋根の建物「ラワン・セウ」は、オランダ植民地時代に蘭印鉄道の本社ビルとして建設されたもので、現在は国営鉄道会社KAIが所有し、ギャラリーなどとして使用されています。

スマラン県の豆腐工場

1980年創業、スマラン県最古の豆腐工場として紹介されている「Tahu Oom Shin（シンおじさんの豆腐）」は、スマラン県のバンドンガン地区にあります。こちらでは、豆腐の伝統的な製造過程を見学でき、併設されたイートインスペースでは作り立ての豆腐や豆乳を味わうことができます。

豆腐や、同じく大豆を使った発酵食品「テンペ」など、伝統的な食品を製造するこのような小規模な工場は、スマランの製造産業のシンボルでもあります。

スマラン県バンドンガン観光

こちらは、バンドンガン地区の観光スポットを紹介する動画です。紹介されているのは、ゲドン・ソンゴ寺院（8～9世紀のヒンドゥー寺院）、Ayanazゲドン・ソンゴ（フォトスポット）、2つの花公園、最後はビュースポット兼キャンプ場です。

インドネシア人にはSNS好きが多く、自然でも人工物でも、SNS映えを狙えるスポットの需要が高まっています。そのため観光スポットに写真撮影コーナーがあるのは当たり前で、写真やビデオを撮影することを主な目的とする観光スポットも、各地にできています。

ポテンシャルを秘めたスマラン

ジャカルタ首都圏やスラバヤ、バンドンに比べると、日本人にとってはなじみの薄いスマランですが、ビジネスの拠点としてはポテンシャルを秘めています。

スマランは北部海岸に位置し、国内最大の市場であるジャカルタとスラバヤに挟まれた立地のよさに加え、陸路、空路、海路の充実した輸送インフラがあります。豊富な労働力、多くの工業団地、地方政府の支援なども魅力です。

インドネシア進出には、地域の特性を理解した戦略が重要です。興味をお持ちの企業さまは、ぜひ一度、弊社カケモチにお問い合わせください。

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