インドネシアで外資LPK(職業訓練機関)の法人を設立する方法
- 公開
- 2026/01/14
- 更新
- 2026/01/19
- この記事は約8分45秒で読めます。
インドネシアでは、産業人材の育成を担う職業訓練機関(LPK)の制度整備が進み、近年は外資企業によるLPK設立も現実的な選択肢となっています。
海外で出稼ぎする人が多いインドネシアでは、各国で就労するための技術や言語を教えるLPKの需要は高く、日本向けLPKも例外ではありません。
本記事では、外資(PMA)によるLPK設立について、法律・制度、必要な許認可、実務上の注意点などを整理します。
LPK(職業訓練機関)とは
LPKの法的な位置づけ
LPK(Lembaga Pelatihan Kerja)は、職業訓練を提供するための認可を得た教育機関です。政府機関や、民間の法人または個人がLPKを設立することができます。
LPKの種類
LPKには、その運営主体により、以下の3つの種類があります。本記事で取り上げるのは、企業が運営する「民間LPK」です。
- 政府系LPK:中央政府、州政府、または県・市政府が所有するLPK
- 民間LPK:民間(法人または個人)が所有・運営するLPK
- 企業LPK:企業内部に設置された職業訓練部門
LPKの目的
LPKの主な目的は、職業訓練の提供です。実施できる職業訓練の分野としては、農業、建設業、情報産業、造船業、各種製造・加工業、高齢者介護、外食産業などがあります。
外国人労働者に関わる事業を行う日本企業にとっては、技能実習制度や特定技能制度を使った日本での就労を目指すインドネシア人の教育を行うLPK(LPK Jepang:日本向けLPK)が身近な存在です。
ただし、国外への労働者の送り出しには専用の許可を得る必要があります。現状では、日本への技能実習生の送り出しには送り出し機関(SO)、特定技能外国人の送り出しにはインドネシア移民労働者紹介会社(P3MI)の資格が必要です。
外資企業のLPK
外資企業でも、LPKの設立は可能です。法律および各種規則のうえでは、外国企業がLPKの株式を100%保有することや、外国籍の取締役を置くことについても、制限はありません。
ただし、外資企業のLPK設立にあたっては、追加要件が定められています(後述)。
最低資本金
2025年の投資大臣規則により、外資企業(PMA)の資本金および総投資額は以下のように定められています。
- 払込資本金は最低25億ルピア(約2,325万円) ※以前は100億ルピア
- 土地および建物を除く総投資額は100億ルピア超(約9,300万円)
【補足】
円表記は、2026年1月9日のレート(1ルピア=0.0093円)で換算したものです。
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法人設立からLPK認可取得まで
インドネシアに外資LPKを設立するためのおおまかな流れは、以下のとおりです。
- 法人設立
- 事業者番号(NIB)の申請・発行
- 標準証明書の検証
- 事業許可(PB)の有効化
上記の1番(法人設立)のプロセスは、法務人権省のオンラインサービス「AHU Online」を使って進めます。
2番以降は実際に事業を開始するための許可を得るプロセスで、事業許認可システム「OSS」を使います。
法人設立~事業者番号(NIB)の取得
LPKとして事業を行うためにまず大事なのは、事業内容に合ったKBLIコード(事業コード)を取得することです。民間LPKとして事業を行いたい場合は、職業訓練の内容によって、以下のいずれかのKBLIコードを取得する必要があります。
- 78421(技術者職業訓練)
- 78422(情報技術職業訓練)
- 78423(クリエイティブ産業職業訓練)
- 78424(観光・ホスピタリティ職業訓練)
- 78425(ビジネス・管理職職業訓練)
- 78426(家政婦・介護・保育などの職業訓練)
- 78427(農業・水産業職業訓練)
- 78429(その他の職業訓練)
法人設立からNIBの取得までのプロセスは他の事業内容の法人設立と同じですので、ここでは割愛します。
標準証明書の検証
民間LPKは、「中高リスク」のリスクレベルに分類されます。このカテゴリーの事業者は、OSSシステムでのNIB取得に続き、その事業者が事業を開始できる状態であることを証明する「標準証明書」の検証申請を行います。
このプロセスでは、追加書類(後述)の提出が求められます。また、労働省により、提出書類の内容が実態と一致しているかを確認する実地検証が実施されます。
実地検証に要する期間は、提出書類や事業内容により、数週間から数か月が見込まれます。
事業許可(PB)の有効化=LPK設立完了
OSSでNIBが発行されたあと、標準証明書はシステム上で自動的に発行されますが、その時点では「未検証」の状態です。
その後、事業者によりOSSシステムを通じて検証申請が提出され、検証が完了すると、「検証済」となり、PBが有効化された、つまり、事業許可が下りた状態になります。
なお、以前は事業許可が下りたあと、事業者は地方の労働局でLPKの認可申請を行う必要がありました。しかし、OSSシステム導入(2021年)以降は、PBの有効化をもって、その事業体はLPKとして合法的に事業を行えることになっています。
つまり、以前は「事業許可を得て職業訓練事業を行っているがLPKの認可を受けていない事業者」がありましたが、2021年以降に新しく設立されたLPKには、LPKとして認可済みか否かという問題は発生しなくなっています。
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LPK(職業訓練機関)の設立要件
LPKを設立するための基本要件
外資系株式会社(PT PMA)としてLPKを設立するためにクリアすべき主な要件は、以下のとおりです。
- 法人格
- 施設・設備要件
- 講師の資格・要件
- カリキュラム・訓練プログラム
主な要件の一つが、実施予定の研修内容に適した施設を有していることです。研修場所には、十分な広さの教室(研修・実習室)、適切な研修機材、受講者がアクセスしやすい立地条件などが求められます。
また、LPK設立者は、一定の資格を有する講師を確保する義務があります。具体的には、1つのLPKの講師陣のうち、職業訓練を実施する各分野(専攻)において、それぞれ最低1名は、国家職業資格認証機関(BNSP)※などが認定する能力証明書を保有する講師である必要があります。
地域によって審査の観点や重視されるポイントが異なる場合があるため、まずは所轄の労働局や投資・ワンストップ統合サービス局(DPMPTSP)に問い合わせ、LPKに求められる運営体制について確認しておくと安心です。
【補足】
※国家職業資格認証機関(BNSP):労働法に基づきインドネシア政府によって設立された独立機関で、さまざまな分野における職業能力認証(コンピテンシー認証)制度の整備および実施を担う。
LPK設立のための必要書類
前述のLPK設立プロセスのうち、OSSシステムにより進められる「標準証明書の検証」の段階で、事業者は以下のような書類を提出します。
- 職業訓練事業の責任者の身分証明(KTPまたはパスポート)および履歴書
- 職業訓練施設・設備の所有または賃貸を証明する、印紙を貼付した書類
- LPKのプロフィール
LPKのプロフィールは、以下のような内容を含みます。
- 組織構成および各職務の説明
- 能力認証を有する講師一覧と履歴書
- 3年間の事業計画および資金計画
- 実施予定の能力基準型職業訓練プログラム(PBK)※
- 年間の訓練実施能力(受講者の受け入れ人数)
- PBKごとの施設・設備の一覧と写真
【補足】
※能力基準型職業訓練プログラム(PBK):国家職業能力基準(SKKNI)に基づき受講者が修了時に習得すべき能力を明確化した、LPKの訓練カリキュラム。
外資LPKに対する追加要件
外資企業の民間LPKの場合、以下の追加要件が求められます。
- 職業訓練機関認定機関(LA-LPK)※から認定を受けたLPKとの協力契約書
- 国家職業能力基準(SKKNI)ではなく独自の能力基準※を使用する場合、当該能力基準が所管省庁に登録されていることを証明する書類(労働省が発行する「特別能力基準(SKK)登録証明書」)
- 外国人労働者(TKA)を雇用する場合は、関連する法令に従って実施すること
自社で認定講師を十分に確保できない場合、他のLPKに協力を仰ぐ選択肢もあります。このような協力関係を明記したものが、上記の「協力契約書」です。
事業の内容によっては、ほかの情報や書類が必要になる場合もあります。
【補足】
※職業訓練機関認定機関(LA-LPK):ノンフォーマル教育国家認証機関(Badan Akreditasi Nasional Pendidikan Nonformal:BAN-PNF)などのLPKを評価・認定する第三者機関。
【補足】
※能力基準(standar kompetensi):職業訓練や資格認証において、修了時に到達すべき技能・知識・態度を明文化した基準を指す。SKKNIは、各分野の専門家チームが策定した草案をもとに、労働大臣が認定する国家職業能力基準。
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インドネシアのLPK設立の許認可取得は、オンラインで完結しますか?
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インドネシアのLPK設立における許認可取得プロセスは概ねオンラインで進みますが、事業許可取得前には、労働省による実地検証が行われます。また、追加資料の要請や、確認の電話・メール連絡などがある場合もあります。
LPK(職業訓練機関)設立にあたっての注意点
LPKを設立する際の注意点を紹介します。
該当するKBLI コードを取得する必要がある
前述のとおり、LPKとして事業を行うためには、該当するKBLIコードを取得しなければいけません。
すでにインドネシアで法人設立が完了している企業であっても、職業訓練事業を新たに始める場合は、適切なKBLIコードを追加で取得します。
LPKの資格だけでは人材の送り出し不可
LPKの主な役割は職業訓練です。国内の就職あっせんはできますが、登録者を海外へ送り出すための資格は持っていません。
そのため、LPKとして設立した法人は、追加でSOやP3MIの資格を取得しない限り(厳密には、SOは資格取得、P3MIはKBLIの追加)、登録者を海外に送り出すためのパスポートやビザの発行、空港送迎の手配、現地受け入れ団体との手続きなどはできません。
実際、インドネシアでは多くのLPKが送り出し機関の資格を持ち、1つの機関で職業訓練から送り出しまでを手掛けています。職業訓練に特化する場合、別の送り出し機関と提携することで、海外への人材紹介が間接的に可能になります。
実地検証の注意点
労働省による実地検証では、現地の状況と提出された書類の内容が一致しているかどうかを調査されます。加えて、運営面を含む包括的な確認が行われるため、以下のような点を満たしていることを示す必要があります。
- 各訓練分野(専攻)において、能力認証を受けた講師が最低1名、および事務・運営担当者が最低2名が実在すること
- 実習設備・機材が実際に備えられていること
- 訓練施設の安全性、実習スペース、教室の収容人数などを含め、施設全体が事業内容に適合すること
- 運営・管理システムや、実施予定の訓練プログラムが適切に整備されていること
- サービス提供手続きに関する文書、事務システムの準備ができていること
なお、外資企業は、NIB発行日から1年以内に検証を完了させる必要があります。1年以内に検証を完了させられなかった場合、NIBおよび標準証明書が取消される可能性があります。
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外資LPKの最低払込資本金について、実際に承認される確率を高めるために、推奨される金額はありますか?
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法令に則った最低金額を収められれば問題なく、地方政府レベルでも、LPKの許可承認に関して特別に定められた最低資本金要件は存在しません。実際の認可プロセスにおいては、資本金の額そのものよりも、設備や備品が十分か、講師が能力認証を受けているか、詳細かつ現実的な3年間の資金計画があるかといった技術的要件の充足状況が重視される傾向があります。



LPKの「認定」と「パートナーLPK」登録
LPKの「認定」とは
法人設立後、OSSシステムを通した各種申請・検証・承認を経て、民間LPKは事業許可を取得し、職業訓練事業を実施できるようになります。
一方、「認定LPK」となるには、ある程度の実績が必要です。法令で具体的な基準が定められているわけではありませんが、少なくとも1つ以上の研修プログラムを1期間行った実績(修了証の発行実績、事前・事後テストの評価結果、講師の稼働状況など)を証明できる必要があります。
認定(アクレディテーション)は、前述の職業訓練機関認定機関(LA-LPK)が行います。認定を受けたいLPKは、労働省のサービスにアクセスするためのオンラインアカウント「SIAPkerja ID」を作成し、専用フォームから申請します。認定を受けることで、信頼性・競争力の向上が期待できます。
「パートナーLPK」登録
LA-LPKからの認定を受けたLPKは、研修機関(職業訓練事業を行う場所)を労働省のオンラインプラットフォーム「Skillhub」に登録することが推奨されます。
Skillhubに登録すると、「パートナーLPK」として、認定・認証などの政府サービスや、研修参加者データダッシュボードなどのLPK向け機能にアクセスできます。登録や利用は無料です。
また、Skillhubに登録することで、検索したユーザーがそのLPKの情報を見つけたり、Skillhubを通してLPKが開講する研修に申し込んだりできるようになります。
Skillhub登録に必要な書類
- 事業識別番号(NIB)
- OSSで有効化された事業許可(PB)
- 納税者番号(NPWP)
- LA-LPK認定証
- LPK協力契約(案)
- 研修機関名義のBNI口座番号
- 研修プログラムのシラバス
- 証明書(職業訓練修了書)のフォーマットまたはサンプル
- 受講者向け事前テスト、小テスト、事後テストの問題集と解答
- 講師のプロフィール情報
- 受講者向けの課題または実技試験
- 受講者向けの評価基準
Skillhubへの登録にはLPKの実績を評価する「LA-LPK認定証」が必要であるため、設立直後のLPKは、Skillhubに登録できません。
映像で観るインドネシアのLPK設立
LPKの施設紹介

こちらは日本向けLPKの施設・設備紹介の動画です。2階建ての建物のそれぞれのフロアに、広々とした教室と、清潔なトイレがあることがわかります。日本の漫画コーナーも、大いに活用されていることでしょう。
LPKの主な設備としては、職員用のオフィス、応接コーナー・カウンター、礼拝室、軽食コーナーなども一般的です。加えて、LPKが提供する職業訓練の分野に応じ、必要な設備や道具をそろえた実習室が設けられます。
また、受講者用の寮を併設しているLPKもあります。
LPK講師の研修

1つのLPKの講師のうち、各分野につき最低1名は、国家職業資格認証機関(BNSP)が定める能力基準を満たしていることを示す認定書を持っている必要があります。
この認定を取得するため、あるいはより上のレベルの認定を取得するため、講師たちは定められた研修・試験を受けています。
外資LPK設立で押さえるべきポイント
外資企業(PMA)による民間LPK設立手続きは、OSSシステムを通じて概ねオンラインで進めることができます。ただし、標準証明書の検証を受け、労働省による実地検証を経て、初めて事業許可(PB)が有効化されます。
また、PBの有効化時点でLPKとして事業開始は可能ですが、LA-LPKによる「認定(アクレディテーション)」制度があることにも留意する必要があります。設立したLPKの信頼性向上のためにも、事業開始時点で認定取得についても念頭に置いておくとよいでしょう。
法令・制度はもちろん、実務上の要件を正しく理解することが、スムーズな設立と安定した運営の鍵となります。
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