インドネシアで寿司業態を成功させるための市場ガイド

公開
2026/04/09
更新
2026/04/20
この記事は約9分52秒で読めます。

本記事は、インドネシアへの飲食業進出を検討している寿司レストランのオーナー、またはチェーン店の海外進出担当者を主な対象に、「インドネシアで寿司は受け入れられるのか」「どの価格帯を狙えばよいのか」「ハラール(ハラル)対応はどこまで必要か」といった疑問に対して、現地から見えるリアルな市場の姿を整理してお伝えします。

日本から見聞きすると、インドネシアの寿司市場は「まだ小さい」あるいは「可能性はあるがハードルが高い」といったイメージを持たれるかもしれません。

しかし現地で見ると、状況はすでに相当に動いています。カッパ寿司やスシローといった日本の大手チェーンがジャカルタに参入し、高級おまかせ店は予約が取りにくいほどの人気に。そして日系ショッピングモールのフードコーナーには寿司のパックを求める行列が連日できています。

本記事を読むことで、インドネシアにおける寿司の受容性、価格帯ごとの市場の特徴、出店形態の選び方、そしてハラール対応の現実について把握することができます。

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インドネシアにおける寿司人気

Google Trendsでインドネシア国内の「Sushi」という検索キーワードの推移を見ると、2016年から2021年にかけてはほぼ横ばいで、スコアは概ね25〜50の範囲で推移していました。それが2022年以降に明確にステージが変わり、2025年から2026年にかけては過去最高水準に達しています。

インドネシアの寿司人気
(Google Trends:インドネシア「Sushi」検索推移 2016年3月〜2026年3月)

緩やかではあっても確実に需要が積み上がり、ここ数年でその傾向が加速しているといえるでしょう。

店舗数についても、現地の代表的なチェーン店であるSushi Tei Groupの動きを見るだけでも市場の拡大傾向は明らかです。

2025年2月時点でSushi Tei Groupはインドネシア国内18都市に計110店舗を展開しており、今後もさらなる拡大が予定されているとのことです。2003年のジャカルタ1号店からわずか20年余りでこの規模に達していることは、市場の成長を如実に示しています。

とはいえ、机上の情報だけでは判断が難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。インドネシアでの飲食業進出について具体的に検討されている方は、進め方やパートナー選定も含めて、こちらからお気軽にご相談ください。

インドネシアで寿司は本当に人気がありますか?

はい、近年は明確に人気が高まっています。ジャカルタでは寿司チェーンの出店が増え、スーパーの寿司売り場にも行列ができるなど、日常的に食べられる存在になりつつあります。

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ジャカルタの主な寿司レストラン

市場は「日系か否か」という単純な構造ではなく、価格帯ごとにプレイヤーの顔ぶれや戦略が大きく異なります。以下では3つの価格帯に分けて代表的な店舗をご紹介します。

【補足】
本記事の円表記は、2026年4月10日のレート(1ルピア=0.0093円)で換算したものです。

高価格帯(おまかせ・高級和食系)

ジャカルタにおける寿司の超高価格帯は、現在ほぼ「OMAKASE(おまかせ)」一択といっていいでしょう。

ショッピングモール以外の立地(オフィスビル内や路面店など)が多く、基本的には完全予約制です。オーナーの国籍を問わず、日本人料理長を「顔」として起用しているケースが大半で、ネタの鮮度や演出面での日本らしさが価値の源泉になっています。

II Yawara OmakaseYawara Group

SCBDエリアのSequis Tower 3階(オフィスビル内)に位置する、ジャカルタを代表する高級おまかせ店のひとつです。寿司専門というわけではありませんが、寿司を含む海鮮・牛肉を中心としたおまかせコースを提供しており、ランチは10コース、ディナーは15〜20コースで構成されています。

価格はコース内容によって異なりますが、概ね150万ルピア(約13,950円)程度からが目安です。現地の富裕層だけでなく、日系駐在員からも高評価を得ています。(参考価格は執筆時点の情報です。最新情報は公式サイトでご確認ください)

Tatemukai Signature Omakase

南ジャカルタのGunawarman通りに位置し、Chef ShimamotoとChef Moriという日本人シェフが腕を振るっています。

コース構成は10〜14種類から選択でき、価格は250ルピア(約23,250円)程度からと、ジャカルタの高級おまかせの中では比較的入りやすい設定です。なお、Chef Masayuki Tatemukai氏が手がける別業態「Hakuren」は、豚肉・豚由来油脂不使用で運営されています。

Sushi Ichi(銀座鮨一 ジャカルタ店)

Pullman Hotelの2階に位置する、銀座鮨一の海外展開拠点です。

12コース350万ルピア(約32,550円)、16コース450万ルピア(約41,850円)という価格設定で、「日本の高級カウンター寿司」に最も近い体験を提供できるお店といえます。ネタは築地(豊洲)から空輸しており、現地のおまかせシーンの中でも特に「本物志向」の顧客に支持されています。

このカテゴリーで日本企業が参入する場合、日本人料理長の確保は実質的に必須条件であり、それだけで固定費がかさむことは覚悟しておく必要があります。また、超高級店については、後述するハラール認証の取得が難しい業態が多い点も留意が必要です。

中価格帯(モール展開・日常〜特別日使いの中間層)

インドネシアのすし屋Sushi Tei

最も競争が激しく、かつ最も市場規模が大きいのがこの価格帯です。ショッピングモールへの出店が基本で、日常的な外食から記念日使いまで幅広い客層を取り込んでいます。

Sushi Tei

2003年の創業以来、インドネシアに日本食の本格的な普及を牽引してきたチェーンです。インドネシアに寿司を広めた立役者と呼んでも過言ではないでしょう。2025年2月時点でグループ全体で国内18都市・110店舗を展開しており、うちSushi Teiブランドだけでも61店舗(2024年時点)に上ります。

生寿司のほかローカル向けメニューも豊富で、日常使いだけではなく「特別な日」に訪れる層からも根強い支持を集めています。ちなみにSushi Tei、Tom Sushi、Hokkaido-Yaなどはハラール認証を取得済みです。

Sushi Hiro

Hiro Groupが展開するローカル資本の寿司チェーンで、現在ジャボデタベック(ジャカルタ首都圏)をはじめバンドン、スラバヤ、パレンバン、メダンなど国内30店舗超まで拡大しています。

一見すると日本の高級なお寿司屋さんのような雰囲気ですが、スパイシーなサーモン料理やチーズを使ったアレンジ寿司など、ローカルの好みを的確に反映したメニュー構成が特徴です。価格帯は1皿4万〜20万ルピア(約370円〜1,860円)程度と幅広く、コストパフォーマンスを重視する客層に強い支持を持っています。

ただし、2026年3月現在、Sushi Hiroはまだ公式のハラール認証を取得していないとされています。

カッパ寿司

日本の大手寿司チェーンとしてジャカルタに最初に参入した存在です。食べ放題(AYCE)業態で、現在はCentral Park Mall、Lippo Mall Puri、Pondok Indah Mall 1、Lotte Avenue、AEON Deltamasなど5店舗を展開しています。

インドネシア×寿司食べ放題の宿命か、カウンターではほぼ常時サーモンをさばいており、テーブルにサーモンが山積みになっているテーブルを見かけることも珍しくありません。ハラール認証済みです。参考価格は食べ放題が33万ルピア(約3,070円)前後(2025年時点の参考情報)です。

スシロー

2023年11月にPondok Indah Mall 1に1号店をオープンし、その後急速に拡大。2025年8月時点でインドネシア国内8店舗まで成長しています。日本式の本格的な回転寿司を提供しており、価格は1万4,000ルピア〜4万4,000ルピア(約130円〜410円)となっています。

「サーモン以外も食べてみたい」という少し食の幅が広がった層が多く来ている印象です。なお、スシローはno pork・no lardを謳っているものの、2025年時点でハラール認証は未取得とのことです。

低価格帯(ローカル向け手軽な寿司)

インドネシアの寿司店Sushi Go

この価格帯は、ローカルがローカルのために展開しているお店が中心です。

回転寿司のようなインテリアを採用しているケースも多いですが、流れているのは加熱された「SUSHI Matang(マタン=調理済み、のような意味)」が大半です。生ネタがあるとしても、とびっこ・サーモン・マグロ程度の品揃えになります。

日本の寿司を知らずにこの価格帯のお店で「SUSHI」に親しんでいる層も多く、今後の生寿司市場を担う予備軍ともなり得る重要な顧客層です。

Sushi Go!Hiro Group

Hiro Groupが展開する低価格ラインのブランドで、「ワンプライスシステム」を採用し、すべての寿司が1皿1万5,000ルピア(約140円)という設定です。ジャカルタ、ブカシ、タングラン、デポック、ボゴール、バンドン、スラバヤなど全国規模で展開しており、特に若年層からの支持が高いです。毎週月曜日には1皿1万ルピア(約90円)のプロモーションが実施されることもあります。

この価格帯での出店は、進出直後の認知獲得には有効ですが、利益を出すにはオペレーションの徹底した効率化が前提条件になります。また「安いから行く」という動機が強く、ブランドロイヤルティの醸成は難しい傾向があります。

ここまで見てきたように、価格帯や業態によって戦い方は大きく変わりますが、いずれにしても実際に出店するには現地での事業体制の構築が欠かせません。飲食店開業の最初のハードルとなる法人設立について詳しく知りたい方は、こちらから資料をダウンロードしてみてください。

インドネシア人はどんな寿司が好まれていますか?

サーモンを中心に、加熱された寿司(SUSHI Matang)やチーズ・マヨネーズを使ったアレンジ寿司が人気です。生寿司を好む層も増えていますが、現時点では加熱系や創作系の方が幅広い層に受け入れられています。そのため、現地では日本の寿司をそのまま提供するだけでなく、ローカルの嗜好に合わせたメニュー設計が重要です。

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インドネシア人の嗜好の特徴

「食べる人」は確実に増えている

AEONのスーパーマーケットのすし売り場
AEONのスーパーマーケットの寿司売り場

Google Trendsのデータが示す通り、Sushiへの関心は着実に拡大しています。

ジャカルタのAEONモールの寿司惣菜コーナーは連日行列ができるほどの人気で、パック寿司だけでなく1個単位で買えるシステムも受け入れられています。訪日旅行の人気が高まる中で「日本で本物を食べた経験がある」層も着実に増えており、この層が生寿司需要を引っ張る存在になっていくでしょう。

「生寿司だけ」では届かない層の方がまだ多い

サーモンと過熱寿司がメインの持ち帰りすし店
サーモンと加熱寿司がメインの持ち帰り寿司

率直に申し上げると、現時点ではSUSHI Matang(加熱寿司)しか口にしない人の方が多数派です。

カリフォルニアロールやドラゴンロールのような創作系、またはチーズをかけて炙ったアレンジ寿司を「本物のSUSHI」として楽しんでいる人も少なくありません。店舗数を広げることを目指すのであれば、生寿司だけのメニュー構成では確実に苦戦するでしょう。

サーモン一強の現実

インドネシア人の多くがサーモンを好む傾向は、現地を訪れれば体感レベルでわかります。

カッパ寿司の食べ放題では、テーブルの上はサーモンばかりというテーブルが珍しくなく、カウンターではほぼ絶え間なくサーモンをさばいています。マグロやホタテも出てはいますが、サーモンとは人気の差があります。メニュー設計においてサーモンを主軸に置くことは、現時点での必須戦略といえるでしょう。

こうした嗜好の違いは、実際に現地で見ないと把握しきれない部分でもあります。弊社では、現地視察アレンジも行っておりますので、ご関心のある方はサービス詳細をこちらからご覧ください。

市場の競合環境

ジャカルタ中価格帯は激戦区

Sushi TeiをはじめSushi Hiro、カッパ寿司、スシローと、中価格帯はすでに国内外の有力プレイヤーがひしめき合っています。加えて、インドネシア全体で中間層の拡大ペースが鈍化しており、このセグメントでの競争はさらに厳しくなっていくと見られます。

ジャカルタの中価格帯に後発で参入するのであれば、明確な差別化軸(独自のメニュー、立地、価格帯のポジショニングなど)なしに勝ち筋を描くことは難しいでしょう。

ラーメンほどの飽和ではない

一方、ラーメン市場と比較すると、寿司はまだ相対的に余白があるといえます。特定の価格帯・立地に集中しており、大都市以外では有力プレイヤーが少ない地域も残っています。

ジャカルタの最新ラーメン屋事情(日系とローカルのラーメンチェーン店比較)

日系やローカルの人気ラーメンチェーン店情報や、インドネシア進出の失敗事例など、ジャカルタを中心としたインドネシアのラーメン事情を紹介します。

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地方都市はまだチャンスがある

スラバヤ、メダン、バリ、バンドンなどの主要都市でも中価格帯の市場は存在します。

さらに低価格帯であれば、より小規模な地方都市にローカライズされたSUSHIの専門店として出店するという選択肢も考えられるでしょう。日本の寿司というよりは「インドネシア流SUSHI」として展開するモデルです。

インドネシアで寿司店を出す場合、ハラール対応は必要ですか?

インドネシアではハラール認証が義務化されており、飲食店のハラール対応は原則必須です。インドネシアは人口の多くがムスリムであり、ハラール認証の有無が来店判断に大きく影響します。実際に主要な寿司チェーンの多くが認証を取得しています。

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ハラール対応について

インドネシアでは「ハラール義務化」が進んでおり、現地でビジネスを行う上で、ハラール対応は「対応するかどうか」ではなく「どう対応するか」を考える問題です。インドネシアの人口の約87%がムスリムであり、特に中価格帯以下の飲食店において、ハラール認証は集客の前提条件といっても過言ではありません。

寿司業態においても、Sushi Teiやカッパ寿司がすでにハラール認証を取得しており、認証取得は不可能ではありません。日本では醤油・みりん・日本酒などの調味料のハラール対応が難しいケースがありますが、インドネシア国内ではハラール対応の調味料が市場に広く流通しており、日本よりも認証取得のハードルは低いと経験則から感じています。

また、インドネシアのムスリム客の多くはお酒を飲まないため、日本式の寿司屋でいうビールやお酒のメニューは基本的に不要です。超高級店を除けば、ノンアルコール前提での店舗設計・メニュー構成が自然な形といえます。

ハラール認証の取得は時間とコストがかかりますが、対象顧客層を大幅に広げる効果があります。進出検討段階から認証取得プロセスを計画に組み込むことを強くお勧めします。

出店戦略

モール vs 路面店

ジャカルタにおける出店形態は、基本的に「モール」か「路面店(ルコなど)」のいずれかです。

モール出店

メリットはある程度の集客が見込めることです。

ただし、初期費用(保証金、内装費など)は高く、モールの客層とお店のコンセプトが合っていなければ、通行量があっても繁盛には至りません。中価格帯のお店が最も多く、低価格帯でも店舗数を増やしているチェーンはモールを主戦場にしています。

路面店

初期投資を抑えられる場合が多い反面、ゼロからの集客が必要です。高価格帯のおまかせ店(Tatemukai、II Yawaraなど)はオフィスビルや路面店で、リピーター中心のビジネスモデルが成立しています。エリアによって需要が大きく異なるため、ターゲット客層の動線と生活圏を見極めることが重要です。

最近は、郊外の路面店に小さく出店し、Gojek FoodやGrabFoodなどのデリバリーサービスを主体とした業態も増えています。ただし、これは現時点ではSUSHI Matangが中心であり、生寿司のデリバリーは品質管理の面で課題があります。

価格帯ごとの出店形態の傾向

価格帯主な出店形態主な出店エリア
高価格帯
(おまかせ)
オフィスビル内・路面店南ジャカルタ(SCBD・Senopati・Kemang周辺)
中価格帯モールジャカルタ全域・主要都市のモール
低価格帯モール・路面店ジャカルタ近郊・地方都市も視野

競争が始まったインドネシアの寿司業界

インドネシア(ジャカルタ)の寿司市場は、すでに「可能性を探る」段階から「プレイヤーが本格参入し競争が始まっている」段階に移行しています。

高価格帯のおまかせ市場は予約困難な店が出るほどの活況で、中価格帯では日本の大手チェーンも本格参入しています。一方、「生寿司だけで勝負できる」という環境にはまだなく、ローカル好みのメニューをどう取り込むか、そしてハラール認証をいかに早期に取得するかが、参入後の成否を大きく左右するでしょう。

後発での参入であれば、ジャカルタ中価格帯という最も競争が激しい土俵を避け、地方都市での展開や、高価格帯での日本人シェフを前面に出したプレミアム業態という選択肢も十分に検討に値します。

インドネシアへの寿司業態での進出を具体的に検討されている方は、現地視察や市場調査のサポートについて弊社までご相談ください。

【補足】
本記事内の店舗情報(価格・メニュー構成・ハラール認証の取得状況など)は、記事執筆時点で確認できたものをもとに記載しています。記事をご覧になるタイミングの実情とは異なる場合がありますので、最新情報は各店舗の公式サイトや直接のお問い合わせにてご確認ください。

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