インドネシアの美容業界における持続可能性(サスティナビリティ)向上に向けた取組み

公開
2025/12/30
更新
2026/06/21
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インドネシアでは、多くの化粧品メーカーが、環境保護や持続可能性(サスティナビリティ)向上のためのアクションを起こしています。環境に配慮した原材料・梱包材の使用、空き容器の回収、環境保護団体との協力などを通して社会的責任を果たし、環境問題に対し意識の高い消費者の選択肢になろうとしているのです。

本記事では、インドネシアの消費者のサスティナビリティに対する意識について触れた上で、化粧品メーカーやECプラットフォームが実施しているプロジェクトやキャンペーンについて取り上げます。

インドネシアの若者世代の間でスティナビリティへの関心が高まっている

環境問題とサスティナビリティへの関心の高まり

近年インドネシアでは、気候変動問題を始めとする環境問題と、それに対処するため「持続可能性(サスティナビリティ)」への関心が高まっています。

IDN Research Instituteの調査レポート「Indonesia Gen Z Report 2022」および「Indonesia Millennial Report 2022」によると、Z世代の70%、ミレニアル世代の71%が気候危機問題の影響を緩和するための個人的な責任を感じています。

また、インドネシアの若者の多くが気候変動を深刻な問題ととらえており、将来世代への影響を懸念していることも同調査でわかりました。

美容製品とサスティナビリティ

環境に配慮した、あるいはサスティナブルなライフスタイルという概念は、インドネシアの若者たちに定着しつつあります。意識が高い人は、既に生活のあらゆる場面で環境に配慮した選択をしており、その中には美容製品の購入も含まれています。

特に、SNSネイティブでインターネットを通した情報収集に熱心なZ世代は、美容製品や美容サービスの事前リサーチを積極的に行っています。彼ら・彼女らは、購入する前に、成分、効果、副作用などについて、多くの時間をかけて調べています。さらに、効果だけでなく、製品や梱包、製造過程が環境に優しいかどうかを気にする人も増えています。

前述のIDN Research Instituteによる調査では、インドネシアのZ世代の66%、ミレニアル世代の67%が、環境に配慮したサスティナビリティな製品にお金をかけることを好んでいることがわかっています。

一方で、化粧品メーカーL’Oréal Indonesia(ロレアル・インドネシア)のチーフ・コープレート・アフェアーズMelanie Masriel(メラニー・マスリエル)氏によると、インドネシアにおいてサスティナビリティへの関心は高まっているものの、その意識が製品の購入に結びついているケースはまだ多くはないと述べています。

同氏は、「今後の美容ブランドの役割は、サスティナブルな製品の購入を促進することだ」と述べています。

インドネシア経済の魅力について

サスティナブルな美容製品の例

インドネシアでは多くの化粧品ブランドが動物実験を行わないことを明言していたり、自然由来成分使用を売りにしていたりするブランドが多数あります。

他にも、動物由来成分や動物由来の副産物(ハチミツなど)を使用しない「ヴィーガン化粧品」の販売、植樹活動やサンゴ礁保護活動への参加、空き容器の回収・リサイクルなど、さまざまな取組みを行う企業があります。

環境に優しい原材料を使用:Sensatia Botanicals

2000年、Sensatia Botanicals(センサシア・ボタニカルズ)は「天然素材を使った化粧品を作りたい」という創業者の思いからバリ島で生まれました。

同社はココナッツオイルのボディーソープを製造する小さなチームからスタートし、消費者からの要望に応えるように製品を増やしながら、国際的に知られるブランドへと成長してきました。サスティナブルなビジネスを営む企業や個人事業主から原材料を厳選して調達しており、動物実験、化学物質や人工物質の添加はしていません。

入荷したすべての原材料は、事前に同社の研究所でテストされており、高品質で効果の高い成分を豊富に含みながら、クリーンでシンプルな製品を製造しています。

環境に優しい包装を使用:Raine Beauty

Raine Beauty(レイン・ビューティー)は、インドネシアで有名な歌手Raisa Andriana(ライサ・アンドリアーナ)氏が設立した化粧品ブランドです。

Raine Beautyはクリーン(有害物質不使用)、クルエルティフリー(動物実験なし)、ヴィーガン、ハラール、そしてアースラビングパッケージング(地球環境に優しいパッケージ)という5つのコンセプトを掲げています。

コンセプトを体現する様々な取組みの一つとして、同社は製品パッケージの50%以上に再生プラスティック(PCR)を使用しています。

環境に優しい包装の使用を謳う化粧品メーカーは多く、各社が生分解性素材やリサイクル可能素材、ガラス、紙などを使用し、サスティナブルな製品づくりを工夫しています。

パッケージをリサイクルする:Sukin

Sukinはオーストラリア発祥のナチュラル化粧品ブランドです。サスティナブルをコンセプトとし、自然由来の成分にこだわった化粧品を製造することに加え、環境負荷の小さいパッケージや製造プロセスにも気を配っています。

同社は、世界各国で人々のサスティナブルな生活をサポートするための活動を行っており、その1つがインドネシアです。

インドネシアで美容専門ECプラットフォームSociolla(ソシオラ)と協力し、Sociollaのオフラインストアすべてにリサイクルステーションを設置。製品のプラスチック容器を回収し、リサイクルしています。

報告によると、SukinとSociollaはわずか2か月で1.4tの容器を回収しました。

他に、自社製品のパッケージのリサイクルを進める企業は、インドネシアのスキンケア・ヘアケアブランドControl Zeroが挙げられます。Control Zeroは空き容器を郵送でオフィスに送ってもらう形で回収し、リサイクルしています。

海洋生態系の保護活動に参加:Oasea Laboratories

Oasea Laboratoriesのインスタグラム投稿
画像出典:Oasea Laboratories Instagram @oasea.id

Oasea Laboratories(オアシー・ラボラトリーズ)は、海の生態系を守ることに重点を置いた美容ブランドで、皮膚科医が認めた再生可能な美容製品を製造・販売しています。

環境に配慮したパッケージづくり、動物実験を行わないことに加え、Oasea Laboratoriesはサメの保護活動を行う団体Thresher Shark Indonesia(Thresher Shark:オナガザメ)と協力し、東ヌサ・トゥンガラ州のAlor(アロール)島におけるネズミザメの保護活動を実施中。同社は売上の1%をサメの保護プログラムに寄付しています。

直接的な保護活動の他にも、サメ由来の成分の不使用、パッケージのリサイクル、海洋環境保護教育の実施などを進めています。

※サメの保護活動:サメを保護することは、食物連鎖を正常な状態で維持し、海洋生態系のバランスを保つために重要な役割を果たします。

日本と同じく島国であるインドネシアでは、海洋環境保護活動が活発です。例えば化粧品メーカーSulo’s Legacyは、売り上げの一部をスラウェシ島のサンゴ礁修復活動の支援にあてています。

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サスティナビリティを追求する美容業界の動き

Sociollaの「Waste Down Beauty Up」 キャンペーン

Sociollaは、2022年から「Waste Down Beauty Up」キャンペーンを実施しています。このキャンペーンには、消費者が美容製品を「賢く購入すること」を促進・支援する目的があります。

第一歩として、Sociollaは梱包の「プチプチ」の代わりに再生紙を使用したり、段ボール箱をより環境に配慮したものに変更したりしています。プチプチから再生紙への移行により、年間25万㎥以上のプチプチの使用量を削減できる見込みです。「プチプチゼロ」の取組みは、インドネシアのECプラットフォームでは初となります。

また「Waste Down Beauty Up」キャンペーンでは、美容製品を無駄にしない「賢い消費行動」を促すため、消費者に以下の4つのアクションを呼びかけています。

  • Look Up on Trusted Reviews(まずはレビューを読もう)

確実に自分に合ったものを選べるよう、Sociollaはユーザーに対してアプリに投稿された評価やレビューを確認することを勧めています。使用されずに廃棄される美容製品を減らすことができます。

  • Try tester in Sociolla stores before buying(購入前に店舗でテスターを活用しよう)

お気に入りのインフルエンサーが最新の化粧品を使っているのを見て、多くの消費者は衝動的に購入しがちだとSociollaは考えます。購入前にオフラインストアでテスターを使ってみることで、その商品が自分の肌に合うかどうかや使い心地を確認し、無駄な消費を抑えられます。

  • Buy minis/small size before full size(フルサイズの前にミニサイズを買おう)

使い切っていない美容製品の破棄を減らすため、フルサイズの製品を購入する前にミニサイズで肌に合うかどうか確認することを推奨しています。

  • Gift with less waste(ゴミの出ないギフトを贈ろう)

プレゼントを贈りたい相手が使用しないものを贈って製品が無駄になることを防ぐため、Sociollaはデザイン豊富なeギフトカードを用意しています。

Sociollaのデザイン豊富なeギフトカード
画像出典:Sociolla「E-GIFT CARD」

#PakaiSampaiHabis(最後まで使おう)キャンペーン

インドネシア初のミニマリストのためのメディア・コミュニティー「Lyfe With Less」が2022年に実施した調査によると、回答者の53%が空容器を分別せず、他の家庭ごみと交ぜて捨てていると答えました。

そこでLyfe With Lessは廃棄物削減ためのオンラインプラットフォームZero Waste Indonesiaと協力し、2021年と2022年に#PakaiSampaiHabis(最後まで使おう)キャンペーンを実施しています。

#PakaiSampaiHabisキャンペーンでは、参加者を「Empties Hero」と呼びます。キャンペーンサイトの所定のフォームに自分が持っている空き容器を登録し、それぞれのブランドが指定する住所に郵送すれば、だれでも「ヒーロー」になれるのです。Empties Heroは、キャンペーンに参加するブランドや運送業者か割引の特典を受けられます。

2021年のキャンペーンでは、1,277人のEmpties Heroたちから10,954の空き容器が回収されました。この反応を受け、2022年は、15の化粧品ブランドと47のリサイクル業者、および2つの配送業者と協力して再実施。加えて、シンガポールとマレーシアでも同じキャンペーンが行われました。

Lyfe With Lessは#PakaiSampaiHabisキャンペーンにより、インドネシアと近隣諸国で「持続可能な美」に対する意識が高まることを目指しています。

本キャンペーン主催者のLyfe With Lessは、他ミニマリストになって環境問題に立ち向かうための情報発信やイベント、キャンペーンを実施しています。

カジュアルにインドネシア進出を試した小売企業様の事例

インドネシア進出は、調べれば調べるほど、そのハードルの高さに頭を抱える方が少なくありませんが、もっとカジュアルに進出する方法もあります。

  • 月額5万円でインドネシア人をフルタイムで雇用し、ドラッグストアやショッピングモールでの市場調査、競合商品の価格調査、現地消費者へのインタビューを実施。市場性を確認した上で、正式なインドネシア進出を決定した。(化粧品企業様)
  • 営業経験のあるインドネシア人を2名チームで雇用し、スポーツジムや病院、リハビリ施設などへの営業活動を実施。販売代理店候補の開拓や市場ニーズを調査し、調査後に販売体制を構築した。(健康器具メーカー様)
  • EC運営経験のあるインドネシア人チームを雇用し、現地ECモールへの出品やSNSを活用したテストマーケティングを実施。売れ筋商品やターゲット層を分析し、本格的な販売開始につなげた。(総合雑貨メーカー様)

上記のように、法人を設立しなくてもカジュアルにインドネシアに進出している企業様はいます。小売関連のビジネスであれば、貴社でもそれが可能です。

スローな消費を化粧品から

森林保護団体Hutan Itu Indonesiaが上掲の#PakaiSampaiHabisキャンペーンについて紹介した記事「#PakaiSampaiHabis, Aksi Nyata Mendukung Sustainable Beauty」によると、化粧品市場は成長を続けており、化粧品メーカーも増えています。

同団体は、化粧品メーカーが増え、新製品がどんどん登場する状況が消費者の購買欲を刺激し、化粧品の大量廃棄に繋がることを懸念。「環境問題といえばファストファッションという言葉をよく耳にしますが、美容業界もファストビューティーになる可能性を秘めている」と警鐘を鳴らしています。

インドネシアでは、「クリーンビューティー(※)」、「コンシャスビューティー(※)」といった言葉が注目されています。

多くの化粧品メーカーが環境とサスティナビリティを重視した製品づくりを行っており、商品購入の際にメーカーの姿勢を考慮する人が少しずつ増えている中、今後も環境保護とサスティナビリティは美容業界のトレンドになっていく可能性があります。

※クリーンビューティー:肌と環境に対し害のない製品を製造・使用すること

※コンシャスビューティー:その美容製品が自分だけでなく地球環境にとってよいものかどうか考慮して購入すること

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