インドネシアでのLPK(職業訓練機関)の設立方法と注意点
- 公開
- 2024/06/14
- 更新
- 2025/03/22
- この記事は約8分27秒で読めます。
インドネシアでLPK(Lembaga Pelatihan Kerja、職業訓練機関)を設立する目的は2つあります。1つはLPKをもとにSO(送り出し機関)の資格を取得して、インドネシア人を技能実習生として日本に送り出すこと。もう1つは、LPKのままで、LPKを通して育てたインドネシア人を特定技能として日本に送り出すことです。
SO(送り出し機関)であればインドネシア人の送り出しが可能ですが、LPKでは送り出しの業務はできません。よって、LPKで育てたインドネシア人を既存のSO(技能実習生の送り出しができる)やP3MI(特定技能の送り出しができる)に依頼して、自社の代わりに送り出してもらう必要があります。
LPKはインドネシア人登録者が職に就くためのあらゆるサポートを行う機関で、法人だけでなく、個人や財団もLPKとして事業を行うことができます。
インドネシアから日本への送り出しビジネスがトレンドになっている現在、手軽に送り出しビジネスに関われる方法としてLPKが注目されています。お問い合わせも非常に増えており、本記事を読まれている方で、LPKを利用したインドネシアからの送り出しビジネスを検討されている方は、まずはこちらからお気軽にご連絡をください。
以降では、LPKの詳細や技能実習との関係性、インドネシアでLPKとして事業を始めるための資格・方法などをまとめています。LPK取得にあたっての注意点もまとめているので、参考にしてみてください。
円表記は2024年6月7日のレート(1ルピア=0.0096円)で換算したものです。
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LPK(職業訓練機関)とは
LPKはインドネシアの職業訓練機関で、インドネシア人登録者が国内外で職に就くためのさまざまなサポートを行っています。主なサポート内容は、言語スキルや各技能を習得するための教育と求人情報の提供です。
LPKとして活動している団体の多くは法人ですが、政府関連団体または個人や財団など法人以外のLPKもあります。2023年下半期で、法人のLPKはインドネシアに8,082機関あり、年々着実に数が増えています。
尚、LPKとは職業訓練機関であるため、語学学校を指す言葉ではありません。最近、弊社に人材紹介会社様からのお問い合わせが増えており、「LPK=語学学校」と認識されている方が少なくありませんが、厳密にはLPKは語学学校を指す言葉ではありません。こちらの記事を読むことで、その違いがより明確に分かります。
LPKの資格取得条件
インドネシアでは、法人を設立する際にKBLIコードと呼ばれる事業コードを取得しなければいけません。KBLIコードはインドネシア政府が公表している事業分野ごとの番号のことで、それぞれの番号で事業内容や事業範囲、リスクレベルなどが定められています。
LPKとして事業を行いたい場合は、職業訓練に関わる以下のいずれかのKBLIコードを取得する必要があります。多くの場合、すでに日本側で人材を紹介したい業界が決まっており(介護なり、農業なり)、そのターゲット業界に合わせてLPKのライセンスを取得するのが一般的です。
- 78421(技術者職業訓練)
- 78422(情報技術職業訓練)
- 78423(クリエイティブ産業職業訓練)
- 78424(観光・ホスピタリティ職業訓練)
- 78425(ビジネス・管理職職業訓練)
- 78426(家政婦・介護・保育などの職業訓練)
- 78427(農業・水産業職業訓練)
- 78429(その他の職業訓練)
なお、外資法人であっても、上記のKBLIコードのいずれかを取得していればLPKになることができますが、インドネシアにおける外資法人の設立ハードルは非常に高いです。

外資法人にしろ内資法人にしろ、インドネシアにおける法人設立のハードルは高いと言えます。そこで、法人を設立することなく、異なるスキームで人材の送り出しが可能な方法があります。インドネシアから日本へ特定技能(あるいは技能実習)のインドネシア人の送り出しを検討されている企業様は、まずはこちらからお気軽にご相談ください。
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LPK(職業訓練機関)を活用した人材の送り出し
技能実習と特定技能による送り出し
発展途上国の経済発展を担う人材の育成を目的に始まった技能実習制度ですが、2024年に現行の制度が廃止されることが決まりました。2027年以降、今までの国際貢献を目的とした制度から、外国人人材の確保を目的とした「育成就労」制度に段階的に変わる予定です。
技能実習と似た制度に「特定技能」がありますが、特定技能は企業の人材確保を目的としており、国際貢献を目的とした従来の技能実習とは異なります。インドネシア人を特定技能として日本に送り出したい方はこちらの記事が参考になります。
参考:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)」
LPKを活用してインドネシア人を「技能実習生」として送り出す
LPKは登録者が国内外で職に就くためのサポートを行う機関で、実際に海外へ労働者を派遣する業務は、別の機関に引き継ぐのが一般的です。LPKで言語や技能の研修を行った後は、登録者をSO(Sending Organization、送出し機関)へ引き継ぐことになっています。
日本を対象にした技能実習制度においても例外ではなく、登録者はインドネシア国内のSO(Sending Organization、送出し機関)へ引き継ぐ必要があります。SOは技能実習生の募集や選定、応募者と日本の監理団体との橋渡しなどの役割を担います。
SOになるためには、まずLPKの資格を取得しておく必要があります。最近はSOの資格を持つLPKが増えており、実際は1つの機関が送り出しまで行うケースも少なくありません。

LPKを活用してインドネシア人を「特定技能」として送り出す
LPKとSOは直線上の関係にあります。つまり、LPKとしての実績を積んで、その他の条件を満たせばSOの認定を得ることができます。SOになれれば、上述の通り自らインドネシア人技能実習生を日本に送り出すことが可能です。
一方で、LPKやSOとP3MIは全く別になります。インドネシア人を特定技能として日本に送り出したいのであれば、LPKとしてではなく、P3MIとして法人を設立する必要があります。P3MIとは、海外へ人材を送り出せる人材紹介会社だと一旦ご理解ください。
よって、LPK起点で考えるのであれば、基本的には自ら人材を送り出すことは諦めて、既存のP3MIと連携して(手数料を払って)インドネシア人を日本へ送り出す枠組でビジネスを考えます。
尚、既存のP3MIの企業情報(企業名やコーポレートサイトURLなど)をまとめたリストを弊社で保有しています。そのリストに興味がある企業様はこちらから弊社までご連絡をください。

特定技能の人材を送り出すなら、最初からP3MIで検討した方が良さそうですが、そうしない理由はP3MIの設立ハードルが高いことに起因しています。外資法人であれば約1億円の資本金、内資法人であっても約5,000万円の資本金が必要です。その上、政府への預け金が約1,500万円ほど要求されます。
このハードルの高さ故に、何とかLPK起点で特定技能の人材を送り出そうと各社様が苦慮されています。この送り出し方については、実はノウハウや抜け道のようなものがあるので、そういったお話をお聞きになりたい方はこちらから弊社までお問い合わせください。
インドネシアで人材ビジネスの立ち上げを検討されているなら、一度弊社にご相談してみませんか。インドネシア市場専門で進出支援を行っているため、貴社の状況に合わせた最適な解決案を提示できます。
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LPK(職業訓練機関)の資格取得方法
LPKの資格取得方法には以下の3つのパターンがあります。
これから法人を設立する場合
職業訓練事業を手がける企業として、該当するKBLIコードを取得して法人を設立してLPKの資格申請をする
すでに法人があり職業訓練事業のKBLIコードを持っている場合
特別な事前準備は不要
すでに法人があるが職業訓練事業のKBLIコードを持っていない場合
該当するKBLIコードを新たに取得してからLPKの資格申請をする
LPKの資格取得
職業訓練関連の事業自体は職業訓練のKBLIコードを取ればできますが、LPKの資格も取得することで、地方政府に認可されているという信頼性を示すことができます。
法人がLPKの資格を取得するためには、まず、上述の職業訓練事業のためのKBLIコードのうちのいずれかを取得する必要があります。取得後、地方の役所へLPKになるための許可を申請します。
法人LPKの資格取得の際には複数の情報を提供する必要があり、例えば、以下のような情報が必要です。
- 責任者の身分証明書および履歴書
- NPWP(納税番号)のコピー
- 組織構造および職務内容が分かるもの
- LPK の1年間の業務計画と資金調達計画
- 認定を受けた講師および訓練担当者のリストと履歴書
- 職業訓練施設やインフラの所有権、またはそれをレンタルすることを証明するもの
ただし、事業の内容によってはほかの情報や書類が必要になる場合もあるため、詳細は地方役所の担当課に問い合わせるか、弊社までご相談ください。
参考:Disnakertrans Kabupaten Paser「Persyaratan Penting Untuk Mendirikan Lembaga Pelatihan Kerja」
研修機関の登録
KBLIコードの取得に加えて、研修機関(職業訓練事業を行う場所)を労働省のWebサイトに登録すると、検索したユーザーが見つけることができます。
トップページ右上「Pendaftaran lembaga」をクリックし、必要事項を入力します。労働省のサイトを一度も利用したことがない場合は、まずはアカウント登録をするところから始めてください。
- Kementerian Ketenagakeerjaan Republik Indonesia:https://kelembagaan.kemnaker.go.id/

入力するセクションは大きく3つに分かれています。それぞれのセクションで以下の情報を入力するので、あらかじめ必要なデータや書類、画像ファイルを用意しておきましょう。
【研修機関の詳細】
- WLKP(義務的雇用報告書)登録コード
- 研修機関名
- 責任者の名前
- 設立年
- 研修機関の現在の状況
- 住所
- 研修機関の概要
【連絡先】
- 電話番号
- ファックス番号(任意)
- メールアドレス
- WebサイトのURL(任意)
【研修機関を運営する法人の信頼性】
- 法人の登録番号
- 法人の登録証明書
- NPWPの番号
- NPWPの登録証明書
- 登録担当者のKTP番号(ID番号)
登録証明書とNPWPの登録証明書は画像ファイルとしてアップロードします。
ここまで入力すれば申請が完了しますが、LPKの申請と同様に必要書類は状況によって変わるため、場合によっては追加で書類が求められる場合もあります。
参考:Kementerian Ketenagakerjaan Republik Indonesia「Bagaimana cara melakukan pendaftaran lembaga?」
LPK(職業訓練機関)の資格取得にあたっての注意点
LPKの資格を取得する際の注意点を紹介します。
該当するKBLI コードを取得する必要がある
「LPKの資格取得条件」で説明した通り、LPKとして事業を行うためには、該当するKBLIコードを取得しなければいけません。すでにインドネシアで会社を設立している方であっても、既存の事業が該当するKBLIコードとは異なる場合は、追加で職業訓練に関するKBLIコードを取得しなければいけません。
なお、インドネシアではKBLIコードごとに資本金を支払う必要があります。内資法人設立の最低資本金は1,250万ルピア(12万円)で済みますが、外資法人設立の資本金は100億ルピア(9,594万4,800円)と高額です。外資法人としてLPKの事業を始める場合は、まず資金面をクリアできるのかどうかを、よく検討する必要があるでしょう。
一般的な内資法人であれば最低資本金で設立可能ですが、LPKを前提とした法人を設立する場合は約1,000万円の資本金を準備された方が無難です。
LPKの資格だけでは人材の送出し不可
本記事内で何度もお伝えしましたが、LPKは職業訓練機関であり、登録者を海外へ送り出すための資格は持っていません。そのためLPKの資格だけで、人材のパスポートやビザの発行、空港送迎の手配、日本の受入れ団体との手続きなどはできないので、注意してください。
こういった送り出しに関わる事業も行いたい場合は、送り出し機関であるSOの認可を取得する必要があります。実際に昨今はSOとしての認可手続きを行っているLPKも増えており、1つの機関で職業訓練から送り出しまで行う団体が多くなっています。
LPKの機関の例
最後に、技能実習生候補の育成を含め、LPKとして活動している機関を紹介します。
LPK Jembatan Karya Jepang(LPK・ジェンバタン・カルヤ・ジェパン)
LPK Jembatan Karya Jepangは、1970年に設立された老舗のLPKです。ジャカルタの西側に位置するTangerang(タンゲラン)に研修施設を構えており、日本語教育のほか、介護の現場で働きたい登録者向けの面接対策などを行っています。
LPK Jembatan Karya Jepangが所属するSJIグループにはほかに、力仕事に従事したい登録者向けの教育を行う「LPK Padang Center」などもあります。いずれも、歴史の長い老舗ならではの確かな教育ノウハウが強みです。
LPK HIKARI HARUKA(LPK・ヒカリ・ハルカ)
LPK HIKARI HARUKAは、スラウェシ島のManado(マナド)にあるLPK。日本語や韓国語、中国語、英語など、特に東アジアの言語の教育に力を入れているのが特徴です。
工事現場や自動車産業、アパレル、漁業、農業、印刷会社、看護師、介護士など、多様な職業に対応した知識・技能の習得をサポートしています。また、姉妹校には日本の職業訓練に特化した「LPK Cahaya Matahari Manado」があります。
ZEN INDONESIA(ゼン・インドネシア)
ZEN INDONESIAは2011年に設立されたLPKで、2022年までに1,000人以上が登録しています。溶接や機械加工、重機など特殊な技術を使って日本で働きたい人をサポートするプログラムを提供しています。
日本で働く際に役立つ言語と文化の教育に力を入れている点や、渡航前にインドネシア国内でのインターンシップ研修を実施している点などが特徴です。
LPKとして事業を始めるならまずは会社設立から
LPKとして事業を行いたい場合は、まずインドネシアで会社を設立する必要があります。インドネシアでの会社設立は日本とルールが異なるため、設立の段階で高いハードルを感じる企業様も少なくありません。
インドネシアでの法人設立に際しては、内資法人と外資法人どちらで進出するのか、どのKBLIコードを取得するのかなど、検討すべき項目が多々あります。また、すでにインドネシアで会社を設立している方であっても、LPKの資格取得に向けて書類を集めるなど、新たな作業や手続きを行うことになります。
こういった諸々の手続きに関して不安がある方は、弊社カケモチへお気軽にご相談ください。会社の設立や各手続きのサポートはもちろん、会社設立後の集客や事業運営に関わるサポートも行っています。
インドネシア人の紹介ビジネスに関わる方へ
最後まで文章を読んでいただきありがとうございます。ここまでご覧いただいたということは、記事の内容に対して一定の信頼感や満足感を得ていただいたのかなと推測しています。
もし宜しければ、現在抱えているお悩みを弊社に壁打ち的に相談してみませんか。何かしらお役に立てる情報を共有できる自信があります。
どのような進出形態を検討していても、その進出方法だけに固執はしないでください。進出ハードルが高いインドネシアでは、リスクを管理して慎重にステップを踏みながら進出することをおすすめしています。
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市場調査フェーズ
会社を作らない
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雇用代行フェーズ
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会社設立フェーズ
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インドネシアのLPKとは何ですか?
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LPKは、インドネシア人登録者が国内外で職に就くためのさまざまなサポートを行うインドネシアの職業訓練機関です。
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どうすればLPKになることができますか?
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LPKになるためには法人を設立後、職業訓練に関わるKBLIコードを取得し、地方の役所にLPKの登録申請を行う必要があります。
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インドネシアでLPKとして活動する機関の例を教えてください。
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インドネシアのLPKには、LPK Jembatan Karya Jepang、PK HIKARI HARUKA、ZEN INDONESIAなどがあります。
読後のお願い
弊社で公開している記事の1つ1つは、日本人とインドネシア人のライター、日本人とインドネシア人の編集者がそれぞれ協力しながら丁寧に1記事ずつ公開しています。
記事の内容にも自信がありますし、新しい情報が入り次第適宜アップデートもしています。これだけ手間ひまかけて生み出した記事はできれば一人でも多くのインドネシアのビジネス関係者に読んでもらいたいです。
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