インドネシアの納税者番号「NPWP」とは?使用場面・取得方法など

公開
2025/10/26
更新
2025/10/26
この記事は約8分11秒で読めます。

インドネシアで法人を設立したり、現地で事業活動を行う際に欠かせないのが納税者番号「NPWP」です。NPWPは納税者を識別するための公式番号であり、税務申告や銀行口座の開設、事業許可の取得など、あらゆる経済活動の前提となるものです。

本稿では、NPWPの仕組み、取得方法、NPWP取得者の義務とメリットについて、企業に関係する情報を中心に紹介します。

【補足】
本記事の円表記は、2025年10月24日のレート(1ルピア=0.0092円)で換算したものです。

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  • インドネシアのGDP成長率
  • インドネシアの人口とその特徴
  • インドネシアのEC市場規模
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インドネシアの納税者番号「NPWP」とは?

NPWPの正式名称と意味

NPWP(Nomor Pokok Wajib Pajak:納税者番号)は、インドネシア税務総局(DJP)が発行する納税者を識別するための公式番号です。番号は15桁で、以下のような構成になっています。

納税者識別コード(9桁)+税務署管理コード(3桁)+納税者ステータスコード(3桁)

最初の9桁は納税者識別コードで、2桁+6桁+1桁に分かれます。最初の2桁は、法人、起業家、従業員、個人の区別を示します。次の6桁は、税務署によって割り当てられる登録番号(シリアル番号)です。9桁目は偽造防止のためのセキュリティコードです。

次の3桁は、NPWPを発行した登録税務署の管理コードです。最後の3桁は納税者のステータスを表すコードで、個人および本社の場合は000になります。他の数字は、特定の支店を示します。

NPWPは、納税者が税務上の権利と義務を果たすために使用され、税務行政の円滑な運営を目的としています。

取得義務がある法人・個人

経済活動を行うすべての個人および法人は、インドネシアで合法的に事業を行うためにNPWPの取得が義務付けられています。

法人の場合、PT(株式会社)、CV(合資会社)、協同組合など、正式な事業体であれば取得対象です。個人の場合、18歳以上で一定の課税所得を得ている者、または銀行口座開設や雇用契約など特定の経済取引を行う者は取得が必要です。12か月中183日以上インドネシアに滞在する外国人も、対象になります。

NPWPを使用する主な場面

法人の場合NPWPは、次のようなさまざまな場面で使用されます。

  • 法人税などの申告・納付
  • 銀行口座の開設
  • 不動産の購入や登記
  • 事業許可(NIB)取得や契約締結
  • 税還付や控除申請
  • 従業員の源泉徴収税の申告・納付

また、法人にとっては、NPWPを持っていることが企業間取引や金融取引の前提になることがあります。NPWPを取得済みであることで「合法的に事業を行う法人として登録済みであること」「税務・財務上の透明性が確保されていること」「政府への信頼性がある事業体であること」を証明することができ、事業活動の信用確保になります。

日本の法人番号やマイナンバーとの違い

NPWP(15/16桁)法人番号(13桁) マイナンバー(12桁)
対象法人・個人法人個人
主な目的税務管理行政上の法人識別社会保障・税・行政全般
公開性原則非公開公開非公開

インドネシアのNPWPは法人、個人ともに発行されますが、日本の法人番号とマイナンバーは、それぞれ、法人のみ、個人のみが対象です。

NPWPは法的には「税務のための番号」ですが、実務上は本人確認や取引記録のための識別番号として広く使われているという特徴があります。個人については、住民登録番号(NIK)とNPWPが統合されており、日本のマイナンバーに近い一元化システムへと移行しつつあります。

インドネシアの法人のNPWPは公開情報ですか。

インドネシアのNPWPは、取引相手や関係機関に個別に提示することはありますが、日本の法人番号のように誰でもオンラインで検索できるわけではありません。

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NPWPを取得するメリット

インドネシアで法人を設立し、実際に経済活動・収益活動を行う場合は、NPWPの取得が義務となっています。企業がNPWPを保有することには、次のようなメリットがあります。

税務手続きが簡略化される

電子申告や還付申請がスムーズに行えるなど、税務手続きが簡略化されます。また、脱税、二重支払い、不正利用などのトラブルを避けるのにも役立ちます。

優遇措置を受けられる

NPWP所持者は、非所持者よりも源泉徴収の税率が低くなります。他にも、税額の軽減、特定税目の免除などの優遇措置を受けられます。

信用性の裏付けになる

NPWPを持つことで、その事業体が国に正式に登録されたものであることを証明できます。行政手続きや企業間取引・金融取引をする際、NPWPが必須となるケースがあるため、法人の円滑な運営と事業拡大のためにはNPWPの取得が不可欠です。

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NPWP申請の必要書類と取得の流れ

個人と法人のNPWP申請について紹介します。提出書類は、法人の種類などによって多少異なります。

なお、法人の場合、法人設立の申請が法務人権省により承認されると同時にNPWPが割り当てられるケースがあります。その場合、法人が自ら申請する必要はありません。

必要書類

個人の場合

  • 有効な身分証明書(KTP) ※外国籍者の場合はパスポートと滞在許可証(ITASまたはITAP)
  • 世帯証明書(KK)または居住証明書
  • 給与明細または所得証明書
  • 提出データの正確性を誓う署名入り申請書

法人の場合

  • 代表者署名入り申請書
  • 会社設立証書/定款(Akta Pendirian Perusahaan)
  • 法人設立承認書(SK Pengesahan)
  • 事業者番号(NIB)
  • 代表者または取締役のKTP ※外国籍者の場合はパスポート、場合によっては滞在許可証(ITASまたはITAP)
  • 委任状 ※代理人が申請する場合

オンライン申請の流れ

税務総局は2025年1月、新しいオンラインシステムCoretaxを導入しました。申請者はWebサイトにアクセスし、次の手順で登録します。

  1. メールアドレスを登録
  2. アカウントを登録・有効化
  3. 法人設立申請(法人データの登録、電話番号認証、書類のアップロード)

申請が承認されれば、NPWPカード(PDF版)がメールで届きます。また、希望者にはカードが郵送されます。

外資企業の場合の注意点

外資企業がNPWPを取得するにあたっては、以下のような注意点があります。

法人登記と事業許可(NIB)の取得が完了していること

NPWPを取得する企業は、すでに正式に登録され、営業を開始している必要があります。外資系企業の場合、まずオンライン事業許認可申請システム「OSS-RBA(Online Single Submission Risk-Based Approach)」システムを通じて、法人設立登記やNIBの取得を完了させたうえで、NPWPを申請します。

外資資本比率と「事業形態」を明確にすること

NPWPの申請時には、会社の定款(Akta Pendirian)およびNIBに記載された事業形態や資本構成が、税務登録情報と一致している必要があります。また、もし登記変更(資本構成変更)を行った場合は、NPWPのデータ更新も必要です。

代表者が個人NPWPを保有していること

NPWPを取得する法人は、代表取締役など代表者が個人NPWPを保有している必要があります。

代理申請の場合は正式な委任状が必要

もしNPWPの申請を代理人(コンサルタント、公証人(Notaris)など)が行う場合、特別委任状(Surat Kuasa Khusus)を添付する必要があります。

NPWPの管理義務

NPWPを取得し、インドネシアで事業を行う間は、NPWPを正しく管理する義務が生じます。具体的には、登録情報に変更がある場合の更新手続き、年次申告、事業を終了する際の抹消手続きなどです。

【補足1】個人はNIKとNPWPが統合

現在インドネシアでは、住民登録番号(NIK)が正式にNPWPとして機能するようになっています(2022年以降段階的に統合)。税務総局が内務省の住民データベースと自動連携しているため、原則として税務署に行かなくても、NIKがNPWPとして利用可能です。

ただし、データ不一致や未登録などの不備がある場合は、本人確認や修正が必要です。NIKをNPWPとして有効化していない場合、源泉徴収の税率が高くなることもあります。

【補足2】NPWPの登録内容に変更があるとき

以下のような場合、納税者データの変更手続きが必要です。

  • 納税者の名称・身元情報の変更
  • 同一税務署の管轄内での所在地または事業場所の変更
  • 事業内容(業種)の変更
  • 資本構成または株主構成の変更(ただし法人形態は維持)
  • 税務総局システム上の登録データに誤記がある場合
  • 税務データベース上の法人区分または形態と、実際の法人区分・形態が提出書類と一致していない場合

法人形態や管轄税務署の変更がない場合、データの変更手続きは、税務総局Webサイトのライブチャット、コールセンター「Kring Pajak」への電話、または管轄の税務署への書類提出で行います。なお、データを変更してもNPWPの番号は変わりません。

インドネシアの個人NPWPがNIKと連携されたかどうかはどこで確認できますか。

インドネシアの住民登録番号(NIK)とNPWPは自動で連携されますが、登録情報に不備があると、連携できないケースもあります。オンラインシステムCoretax等からの照会・連携が案内されています。

インドネシアの所得税の概要

インドネシアの所得税は、PPh(Pajak Penghasilan)と呼ばれます。インドネシア国内または国外から所得を得た納税者(個人・法人)に課される税金です。

所得税の課税対象は、給与や報酬、事業所得、配当、利息、ロイヤルティ、不動産賃貸料など、納税者が得たすべての経済的利益です。インドネシアの税制では、源泉徴収制度が広く採用されており、雇用主や企業が給与・報酬などから税金を控除して納付します。

個人と法人では税率や課税方式が異なり、また「最終課税(PPh Final)」が適用される所得(定期預金利息や不動産売買益など)も存在します。このようにインドネシアの所得税は、所得の種類や納税者の形態に応じて段階的に設計されています。

【補足】
「最終課税(PPh Final)」とは、一度源泉徴収または納付が行われた時点で課税が完結し、年度の確定申告で再計算されない所得を指します。つまり、他の所得と合算して再度課税されることはなく、それぞれ定められた固定税率で源泉徴収されて完結する仕組みです。

法人所得税

法人(Badan)は、事業を行うか否かに関わらず課税対象となります。法人にはPT(株式会社)、CV(合資会社)、協同組合、財団、国営企業(BUMN)などが含まれます。

課税対象となるのは、その法人が得た年間の課税所得であり、総収入から事業活動に関わる費用(仕入れ、人件費、賃料、利息、減価償却など)を控除して算出します。損失が生じた場合は、原則最大5年間の繰越控除が認められます。

法人税率は原則22%で、上場企業など特定条件を満たす場合は19%まで軽減されます。また、年間売上高が50億ルピア(約4,600万円)以下の中小企業については、課税所得のうち一定部分に対して50%の税率軽減措置が適用される特典もあります。

課税対象期間と申告期限

課税期間は原則として暦年(1月〜12月)ですが、企業が独自の会計年度を採用している場合はその年度が課税期間となります。法人の年次所得税申告書(SPT Tahunan PPh Badan)は、課税年度の終了から4か月以内に提出する必要があります。また、申告前に、計算上の不足税額を全額納付しておく義務があります。

月次申告(SPT Masa)については、課税期間終了後20日以内に申告・納付を行うのが原則です。なお、期限日が土日や祝日にあたる場合は、翌営業日に繰り越されます。

【補足】個人所得税について

個人納税者の場合、年間所得が非課税所得(PTKP)を超える場合に納税義務が生じます。インドネシア国内外で得た給与、報酬、賞与、配当など幅広い所得が課税対象です。

個人の年次申告(SPT Tahunan PPh Orang Pribadi)は、課税年度終了後3か月以内に提出が必要で、申告前に不足税額を納付しなければなりません。給与所得者の場合、勤務先が毎月源泉徴収を行うため、実務上は雇用主を通じて納税が完結します。個人事業主は、確定申告を行います。

インドネシアの非課税所得(PTKP)はどのように決まっていますか。

インドネシアの非課税所得(PTKP)は、既婚・未婚、扶養家族の数によってそれぞれ決められています。

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業種ごとのインドネシアでのビジネスの始め方
「インドネシアで送り出しビジネスを始めたい」「インドネシアでネット広告代理店を始めたい」といった業種ごとのビジネスの始め方については下記をご参照ください。

対象企業 インドネシア進出の目的 参考ページ
人材紹介会社 インドネシアから技能実習や特定技能の人材を送り出したい 進出方法はこちら
広告代理店 在インドネシアの日系企業の広告運用案件を獲得したい 進出方法はこちら
Web制作会社 インドネシアでサイト制作やオフショア開発を行いたい 進出方法はこちら

【映像でみる】インドネシアのNPWP

新しいオンラインシステムCoretax

新しいオンラインシステムCoretax

こちらは税務総局の新システム「Coretax」を紹介する動画です。CoretaxはNPWPだけでなく、税務関係のあらゆる申請ツールや情報を提供してます。

最後に紹介されているSimulator Coretax(シミュレーター)は、Coretaxシステムの操作メニューを体験的に学べるシミュレーション・プラットフォームです。ここでは納税者が納税データを使用することなくCoretaxシステムを操作できるため、企業などでは財務・税務担当者の研修ツールとして活用できます。

小規模個人事業者の所得税

小規模個人事業者の所得税

動画の主人公は、Mie Ayam(ミー・アヤム)と呼ばれる麺料理を1食1万5,000ルピア(約140円)で販売する男性です。注文を受け料理を提供し、スマートフォンで税金に関する情報を見ながら「生きるのも大変、ものは高いし、そのうえ税金まで取られて、この政府はなんて残酷なんだろう」「売り上げもそう多くないのに、本当に税金を払わなきゃいけないのか」とお客さんに愚痴を言います。

実は、お客さんは税務署の職員。この店の主人の月収は約1,500万ルピア(約13万8,000円)、つまり年収1億8,000万ルピア(約165万8,000円)であることを把握したうえで、小規模個人事業者の最終所得税率は0.5%で、しかも年間の総売上高が5億ルピア(正確には4億8,000万ルピア:約442万円)までの事業者は所得税が免除されることを説明します。店の主人は所得税非課税と知り、安堵の表情を見せています。

インドネシアの事業者の多くが、このような小規模・零細事業者です。政府はこれらの事業者の保護を目的とするさまざまな政策をとっており、税制面の優遇措置もその一つです。

【補足】
個人事業者の最終所得税率:
政府規則第23号(2018年)および第55号(2022年)に基づき、年間総売上高が4億8,000万ルピア(約442万円)を超えない個人事業者は、登録年から最長7年間、0.5%の最終所得税率の適用を受けられます。2018年以前に登録された個人事業者については、この7年間の期間は2018年の同規則施行年から起算されます。なお、0.5%の最終所得税率が適用されない場合、課税所得に対して5%~35%の累進税率が適用されます。

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NPWP取得から始めるインドネシア進出

NPWPは、インドネシアで事業を行ううえでの「納税者としての身分証明」であり、企業や個人の信用を示す重要な要素です。法人にとっては、NPWPの速やかな取得に加え、登録情報の更新や年次申告など、取得後の適切な管理も義務となっています。NPWPを正しく理解し活用することが、現地での円滑な経営と信頼確保につながります。

インドネシアでは行政のデジタル化が進んでおり、本記事で紹介したとおり、NPWPの申請や管理、その他の税務サービスについても、多くのことがオンラインで完結できるようになっています。必要に応じて現地の専門家と連携し、最新情報の把握に努めることが大切です。

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