インドネシアのYayasanとは?定義、活動分野、設立要件を解説

公開
2025/10/07
更新
2025/10/07
この記事は約4分55秒で読めます。

インドネシアで「Yayasan」と呼ばれる組織は、日本における「財団」にあたります。企業がCSR(社会的責任)活動の一環で設立する財団も多く、インドネシアに進出する日本企業にとっても、Yayasanの存在を理解することはとても重要です。

本記事では、定義、活動分野、設立要件など、インドネシアのYayasanの概要をまとめます。また、代表的なYayasanの活動の様子を、動画で見ていきます。

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インドネシアの「Yayasan」とは

Yayasanの定義

法律の定義によると、Yayasanとは「分離された財産を基盤とし、社会・宗教・人道の分野における特定の目的を達成するために設立された法人で、会員を持たない組織」です。

つまり、Yayasanは、株式会社のように株主を持つわけではなく、社団法人のように会員を構成員とすることもありません。あくまで財産そのものが基盤となり、公益目的のために使われる点が最大の特徴です。

また、Yayasanは非営利を前提としますが、自らの活動を支えるために事業体を設立することが認められています。その収益は財団の活動資金や関連機関の維持に充てられ、設立者個人の利益になることはありません。

【補足】
※Yayasanに関する初めての法制度は、2001年に制定された「インドネシア共和国法第16号(Yayasan法)」です。Yayasan法はその後、2004年に改正されました。

Yayasanの目的と活動分野

Yayasanの活動は大きく3つの分野に分けられます。

  1. 社会分野:学校、病院、孤児院、研究機関など、教育・医療・福祉を中心とする活動。
  2. 宗教分野:モスクや教会など宗教施設の運営、宗教教育機関の設立・管理。
  3. 人道分野:災害時の救援活動、貧困層支援、住宅提供や難民支援など。

活動分野に規定がない日本の一般財団法人や、23の事業が指定される公益財団法人に比べると、Yayasanの活動分野は「3つの分野と10ほどの事業に限定されている」ように見えます。しかし実際は、社会貢献のための活動分野の多くをこの3つのいずれかと関連付けることができるため、「活動内容に大きな制限はない」ともいえます。

Yayasanの設立と組織構造

Yayasanは「設立者が自らの財産を分離し、Yayasanの資産とする」または「資産家が遺言を残す」ことで設立され、法務人権省の承認を得ることで法人格を取得します。

Yayasan設立にあたっては、次の3つの機関を設ける必要があります。

  1. Pembina(評議員):最高意思決定機関。定款の変更や基本方針を決定する。
  2. Pengurus(理事):日常の運営や財産管理を担う。年次報告を作成し、評議員へ提出する義務がある。
  3. Pengawas(監査役):理事の業務を監督し、助言を行う。

なお、日本の一般財団法人および公益財団法人は、設立にあたって一定額以上の基本財産が必要ですが、インドネシアのYayasanには資産要件はありません。

インドネシアのYayasan(財団)の具体的な活動にはどのようなものがありますか。

インドネシアのYayasan(財団)の活動としてわかりやすいのは、私立学校や病院の運営です。学校や病院の看板に財団名が書かれていることが多く、誰が見てもすぐにわかります。他に、研究機関の運営、奨学金の提供、宗教教育、環境保護活動、高齢者・障がい者・貧困者支援など、その活動は多岐にわたります。

インドネシアでYayasanの設立を支援したことはありますか。

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インドネシアで有名なYayasanの例

インドネシアには多くのYayasanが存在します。創設者は、企業、財閥のオーナー、宗教指導者などさまざまで、個人のこともあれば、グループや団体のこともあります。

Yayasan Dharma Bhakti Astra(アストラ財団)

アストラ財団は、大手コングロマリット「Astra International(アストラ・インターナショナル)」がCSR実施機関の一つとして設立した財団で、中小零細企業支援を中心に活動しています。

Yayasan Djarum(ジャルム財団)

ジャルム財団は、タバコ大手として知られる財閥「Djarum Group(ジャルム・グループ)」のハルトノ兄弟が設立しました。学生向け奨学金、環境保護、感染症予防、災害被災者支援、スポーツ・文化支援などの事業で知られています。インドネシアの富豪は慈善事業に熱心で、ハルトノ兄弟をはじめ多くの「クレイジー・リッチ」が財団を設立しています。

Yayasan Pesantren Islam (YPIAl Azhar(イスラム寄宿学校財団(YPI)アル・アズハル)

アル・アズハル財団は、宗教指導者や有識者が1952年に共同で立ち上げた財団です。南ジャカルタのMasjid Agung Al-Azhar(アル・アズハル大モスク)を拠点に信徒育成、布教活動、学習会などを行いながら、教育、旅行、金融、医療などの分野で幅広いサービスを提供しています。特に教育事業は規模が大きく、200以上の学校を持ちます。

Yayasan Buddha Tzu Chi Indonesia(ツーチー財団)

ツーチー財団は、台湾の仏教系国際NGO「慈済(ツーチー)」がインドネシアで設立した財団です。設立から30年で、教育、医療、高齢者福祉、災害被災者支援などさまざまな活動を行ってきました。現在は国内18都市に支部または連絡事務所を構えています。

インドネシアの富豪が設立したYayasan(財団)にはどのようなものがありますか。

インドネシアの富豪が設立した有名なYayasan(財団)としては、ジャルム・グループのハルトノ兄弟が設立した「ジャルム財団」、シナル・マス・グループのウィジャヤ一家が設立した「エカ・チプタ財団」、ロイヤル・ゴールデン・イーグル・グループのスカント・タノト氏が設立した「タノト財団」などがあります。

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映像で観るインドネシアのYayasan

財団を通じて大阪・関西万博に参加

財団を通じて学生が大阪・関西万博に参加

上述のアストラ財団は、教育を通じて地域文化の継承と発展を支援する教育支援財団「YPA MDR」を持っています。

2025年、アストラ財団はYPA MDRを通じ、インドネシア国家開発企画庁と協力して、支援対象校である小学校、中学校、職業高校の教師と生徒を、大阪・関西万博2025に招待しました。

事前の審査で選ばれた参加者たちは、5月27日から30日までの4日間、財団の支援によるプログラムで習得した、インドネシア各地の伝統的なダンスや音楽を披露。ジョグジャカルタの子どもバティック職人コミュニティによる、バティックワークショップも開催されました。

バクティ・バリト財団の活動報告

バクティ・バリト財団の活動報告

Yayasan Bakti Barito(バクティ・バリト財団)は、総合エネルギー産業企業「Barito Pacific(バリト・パシフィック)」が2011年に設立した財団です。財団はバリト・パシフィックとその子会社の慈善事業の責任者として、SDGsを推進する多様なCSR活動を実施しています。

こちらの動画では、バクティ・バリト財団の2024年の活動内容が紹介されています。

緑色の壁の学校は、財団が再生プラスチックを使用して再建した西ジャワ州Garut(ガルト)の小学校です。また、白い大きな袋を囲んで関係者が写真を撮っているシーンは、ラマダンの時期、貧困コミュニティに食料品や礼拝用具を配布する事業の様子です。

この投稿では「社会と環境にとって意義のある変化を推進するために、約371億8,000万ルピア(3億3,700万円)を投資しました」という説明と共に、その内訳(社会:46.5% 、教育:25.2%、経済:15.6%、環境:12.7%)が紹介されています。

【補足】
※2025年10月6日のレート(1ルピア=0.0091円)で換算しています。

インドネシアの社会に根差すYayasan

インドネシアのYayasanは、社会・宗教・人道を目的とした非営利法人であり、分離された財産を基盤に活動する団体です。また、アストラ財団やダルム財団のように、大企業や実業家が設立したYayasanが社会に大きな影響を与えていることも特徴的です。

ビジネスでインドネシアに関わる際には、こうした財団の存在を理解しておくと、社会貢献やパートナーシップの可能性を見出す手がかりになるでしょう。

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