インドネシアでの人材紹介会社(P3MI)の設立方法と注意点

公開
2024/06/29
更新
2024/09/30
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インドネシアには、日本が好きなインドネシア人が多くいます。インドネシアが親日であるということを受け、日本で働きたいインドネシア人を対象とした人材紹介事業を展開する日本企業も存在します。

インドネシアで人材紹介事業を始める場合、事前に理解を深めておきたいのがP3MIについてです。P3MIとは職業紹介事業者のことで、LPK(職業訓練機関)やSO(送出し機関)とはまた違った役割を果たしています。

そこで本記事では、P3MIとは何なのかを説明するとともに、資格の取得方法やインドネシアで活躍するP3MIについてまとめました。特にインドネシアの人材紹介事業について興味がある方は、参考にしてみてください。

円表記は2024年6月20日のレート(1ルピア=0.0096円)で換算したものです。

P3MIとは

P3MI(Perusahaan Penempatan Pekerja Migran Indonesia :インドネシア移民労働者紹介会社)とは、インドネシア政府から認可を受け労働者の海外への送出しを行う職業紹介事業者(=人材紹介会社)のこと。法的に設立された有限会社で、日本でいうと国が運営するハローワークが近いといえます。

P3MIは大臣から書面で許可を取得して事業を運営しており、特定技能外国人の送り出しも行います。2024年5月時点で、インドネシアには362のP3MIがあるとされています。

P3MI ・SO(LPK)の違い

P3MIはSO(Sending Organization、送り出し機関)と似ていますが、役割が異なります。上述の通り、P3MIは特定技能制度を含む人材紹介のための機関ですが、SOは技能実習制度向けの機関です。

P3MIやSOと混同されやすい機関にLPK(Lembaga Penilaian Kesesuaian:職業訓練機関)があります。LPKはインドネシア人登録者が海外で働くための言語スキルや技能を教育する機関のことを指します。LPKはあくまで「職業訓練」に事業範囲が留まっており、P3MIやSOのような送り出しをすることはできません。

一方でLPKは追加の申請でSOの資格を取得することができ、実際はSOを兼業するLPKが増えてきています。また、P3MIと提携して特定技能外国人として来日したい人のサポートをすることも可能です。

インドネシアでは法人を設立する際にKBLIコードと呼ばれる事業コードを取得する必要がありますが、P3MIとSO・LPKは上述のように事業内容が異なるため、KBLIコードも別のものになります。したがって、P3MIとSOのどちらの事業も手掛けたい場合は、両方のKBLIコードを取得しなければいけません。

なお、特定技能外国人として来日を目指すインドネシア人が日本での就労先を探す方法としては、P3MIに登録する方法のほか、インドネシアの労働市場情報システム 「IPKOL:Sistem Informasi Pasar Kerja Online」に登録する方法があります。

特定技能に関するより詳しい情報を知りたい方は、以下の記事をご覧ください。

特定技能のインドネシア人を日本で採用する際のプロセスや注意点

2019年に運用が始まった在留資格「特定技能」について、制度の概要と、インドネシアにおける送り出し機関、インドネシア人受入れのプロセスや注意点をご紹介します。

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P3MIを通した特定技能外国人送出し・就労の流れ

インドネシアからの特定技能外国人送出し・就労の流れ

上の図の通り、特定技能候補者が日本で働きたい場合、利用するサービスや機関にはIPKOL やP3MIなどいくつかの選択肢があります。

IPKOLもインドネシアでは推奨されていますが、登録方法に不明点も多く、便利なサービスとは言い難いのが現状。そのため特定技能での日本滞在・就労を目指す人にとっては、P3MIが今のところ1番の近道です。

認可の条件

P3MIとして自社を登録し、許可番号や許可証を取得するためには、海外の受け入れ機関や企業との連携が不可欠です。

そのほかにも、P3MIになるためには以下の条件をクリアすることが求められます。

  1. 最低50億ルピア(4,800万円)の事業資本の証拠を提示すること
  2. 15億ルピア(1,440万円)が政府によって保証金として凍結・所有化されることに同意すること
  3. 不動産や建物の所有権などの事業に関する証拠を提出すること
  4. 3年間の労働者派遣計画とそれに関連する活動、企業の組織構造、派遣労働者に関する問題が発生した場合の対処策書を提出すること

P3MIとして認可を受ける方法

P3MIとして活動するためには、「78102(海外人材の選考・紹介活動)」の事業コードを取得しなければいけません。これから新たに法人を設立する方はもちろん、すでに法人を設立している場合でも、事業コードが78102でない場合は新たな取得手続きが必要です。

そこで以下では、インドネシアでまだ法人を設立していない状態から、P3MIになるための方法を解説します。

KBLIコードを取得し法人を設立

外資法人であっても、78102のKBLIコードを取得していればP3MIとして活動することは可能です。ただし、外資法人は資本金が100億ルピア(9,646万3,300円)と高く、よほどの資金力がある企業でないと設立が難しいため、ここでは内資法人としてP3MIになる方法を紹介します。

以下は、内資法人としてP3MIになるための具体的な手順です。

  1. 会社名を予約する
  2. 定款(会社設立証明書、AKTA Pendirian)の作成・設立公正証書の申請を行う
  3. 所在地証明書(SKTU)を取得する
  4. 納税者番号(NPWP)・課税事業者番号(PKP)を取得する
  5. 資本金の払込みをする
  6. 法務人権省へ申請する
  7. OSS RBAシステムで申請する

上記1~6は、法務人権省で登記をするためのステップです。登記をするためには、事前に資本金を払い込むための銀行口座を開設したり、納税者番号などを取得したりと、さまざまな準備が必要です。

78102のKBLIコードの取得は、7番目のステップ「OSS RBAシステムの申請」で行います。OSS RBAの公式サイトへアクセスすると、78102になることができる企業の規模や事業範囲などを確認できるので、申請前に確認しておくとよいでしょう。

内資法人の設立やKBLIコード(事業ライセンス)についてより詳しい情報を知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。

インドネシアにおける内資法人(PMDN)の設立手順と書類準備

インドネシアの内資法人(PMDN)の特徴と外資法人(PMA)との違い、内資法人を設立する手順を説明します。

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インドネシアの事業ライセンス(KBLIコード)とその調べ方や注意点

インドネシアでの会社設立に必要なKBLIコード(事業ライセンス)の調べ方や外資法人の参入が禁止・規制されている事業などを説明します。

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P3MI取得にあたっての注意点・意識すべきポイント

P3MIを取得する際の注意点・意識すべきポイントを紹介します。

資本金などを検討して法人を設立する

インドネシアでは、法人ごとではなくKBLIコードごとに資本金が発生します。このKBLIコードごとの資本金は、外資法人の場合は最低100億ルピア(9,646万3,300円)、内資法人の場合は最低1,250万ルピア(12万1,000円)です。内資法人と外資法人で資本金が大きく変わるため、どちらでKBLIコードを取得するのか考えておきましょう。

100億ルピア(9,646万3,300円)の資本金を支払うのが難しい場合は、必然的に内資法人を設立することになります。ただ、内資法人の場合は日本人(日本企業)が株主になれないため、会社を所有することができないという点が最大のデメリットです。

これから新たにP3MIのKBLIコードを取得する場合は、まず内資法人と外資法人のメリット・デメリットについてよく調べることが大切です。

KBLIコードで定められる義務に従うこと

P3MIになるためには、「最低50億ルピア(482万3,200円)の事業資本の証拠を提示すること」や「不動産や建物の所有権などの事業に関する証拠を提出すること」などの条件を満たす必要があります。そのため、P3MIとして事業を行う能力があるかどうかについても、よく確認しておくことが大切です。

また、OSS RBAでP3MIのページを見ると「事業ライセンスが発行されてから、遅くとも1年以内に将来のインドネシア人移民労働者の募集と選考を実施すること」が義務付けられています。KBLIコードで定められるルールを破った場合、罰則を受ける可能性もあるので注意してください。

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P3MIの例

最後に、インドネシアで活躍しているP3MIを3つ紹介します。

JIPA P3MI

2018年に設立されたJIPA P3MIは、主に日本で働きたい登録者に対して、日本での生活に戸惑いなく順応できるようさまざまなサポートを行う機関です。インドネシア人のAris Widodo(アリス・ウィドド)氏が取締役を務めていますが、日本人もマーケティングアドバイザーやコミッショナーとして参加しています。

具体的なサポート内容は、言語教育や渡航先の国の規制に関する情報共有、渡航先の国の文化や習慣に合わせたトレーニングなど。今まで、畜産業や食品製造業、農業、電気・電子製造業、建設業など幅広い分野の登録者を送り出してきました。

同社は海外で働きたいインドネシア人を応援するだけでなく、インドネシアの失業率を下げることも目標に掲げています。

参考:JIPA P3MI

Talent Indonesia Jaya

ジャカルタに拠点を持つ企業Talent Indonesia Jayaは、2020年から特定技能インドネシア人と日本の企業・登録支援機関を繋ぐマッチングサイトTalent Indonesiaを運営しています。同サイトは、インドネシア人材に新たな雇用のチャンスを与えることを目的に始まりました。

特定技能外国人として日本へ渡航したいインドネシア人は、サイトに無料で登録し、日本企業の求人を探すことが可能。一方、日本の企業は無料で同サイトに求人を掲載し、気になる登録者にはスカウトメールを送ることが可能です。

Talent Indonesiaのスタッフは、面接の際など採用ステップごとに登録者をサポートします。また、日本企業とのコミュニケーションを円滑にするために通訳や翻訳なども行い、両者の橋渡しのような役割も担っています。

参考:Talent Indonesia

MINORI

西ジャワ州の工業都市Cikarang(チカラン)に拠点を持つMINORIは、日本へ留学経験のあるインドネシア人と日本の大学でインドネシア語を専攻した日本人夫婦が運営する機関です。2008年に技能実習生の送出機関として設立され、これまでに10,000人以上の若者を育成し、日本へ送り出してきました。2024年3月にはP3MIの許可を取得し、特定技能人材の育成と送出しも開始しています。

同社の特徴は、完全オンライン制の登録サービスにより、インドネシア全土から集まる多様な人材の中から、各受入企業のニーズに合致する人材を探すことができるところです。

独自の来日前事前講習も行っており、自社開発したオンライン教材を使用していつでもどこでも学習できるのが強みです。また、日本にも支店があり、同社が送り出した人材は、日本へ渡航後も定期巡回訪問などを通して訪日中のサポートを受けられる安心感があります。グループ系列のTAKUMI短期大学では、学生のインターンシップや技人国人材の育成も行っています。

参考:MINORI

インドネシアで人材紹介事業を始めるために

インドネシア進出を考える方の中には、インドネシアと日本をつなぐ人材紹介事業を検討する方もいます。働き盛りの若い世代が増えていること、日本で働きたいインドネシア人が多いことなどを考えると、人材紹介事業は将来性がある分野だと考えていらっしゃるからです。

その一方で、インドネシアで人材紹介事業を始めるためには、KBLIコードを取得するなど諸々の手続きをクリアする必要があり、高いハードルが存在します。

こういったインドネシア進出の際の手続きに不安を感じる方は、弊社カケモチまでご相談ください。事務手続きだけでなく、マーケティングや集客など進出に関わる幅広いサポートをさせていただきます。

インドネシアでのビジネスにお悩みの方へ

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最後まで文章を読んでいただきありがとうございます。ここまでご覧いただいたということは、記事の内容に対して一定の信頼感や満足感を得ていただいたのかなと推測しています。
もし宜しければ、現在抱えているお悩みを弊社に壁打ち的に相談してみませんか。何かしらお役に立てる情報を共有できる自信があります。

インドネシアのP3MIとは何ですか?

P3MI(Perusahaan Penempatan Pekerja Migran Indonesia :インドネシア移民労働者紹介会社)とは、インドネシア政府から認可を受けた職業紹介事業者のことです。

P3MIとして認可を受けるにはどうすればよいですか?

P3MIとして認可を受けるためには、「78102(海外人材の選考・紹介活動)」の事業コードを取得する必要があります。

インドネシアで活躍するP3MIについて教えてください。

インドネシアで活躍するP3MIには、JIPA P3MI、Talent Indonesia Jaya、 MINORIなどがあります。

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