インドネシア人を特定技能外国人として日本へ送り出す際の課題

公開
2024/10/25
更新
2026/01/01
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2019年に始まった特定技能制度を利用して日本に在留する外国人のうち、約半数はベトナム出身者です。それに次ぐのがインドネシア出身者で、2024年6月の統計によると、人数は44,298人。特定技能1号で在留する外国人数全体の17.6%を占めます。

直近1〜2年ではインドネシアからの人材の送り出しの伸び率が最も高く、この勢いで増えていけばベトナムを抜いて、インドネシア人が日本で働く特定技能外国人としては最も多くなることが予想されています。

その上で、本記事をいまご覧になっている方はどのような目的でこの記事を読まれていますでしょうか。

(1)インドネシアから日本への特定技能外国人の送り出しビジネスを具体的に検討している。
⮕「インドネシアでのLPK(職業訓練機関)の設立方法と注意点」をご覧いただいた方が参考になるかもしれません。送り出しビジネスをインドネシアで始めるにあたり、まずは始めやすいLPKを起点にご説明しています。その後に、こちらの記事を読んでいただくと全体感をつかみやすくなります。

(2)すでにインドネシアでの人材の送り出しビジネスを始めている(日本でインドネシア人を受け入れている)
⮕本記事をこのまま読み進めてください。

インドネシアは今後も、自国民の派遣を推進することにしていますが、制度開始からこれまでに浮き彫りになった課題や問題点もあります。本記事ではその特定技能制度におけるインドネシア側の課題を紹介します。

特定技能制度とは  

特定技能制度とは  

特定技能制度は、人手不足が深刻な産業分野に即戦力となる外国人労働者を受け入れる仕組みを整えるため創設され、2019年に運用が開始されました。特定技能は外国人が日本に滞在するための「在留資格」で、特定技能の在留資格で在留・就業する外国人のことを一般的には「特定技能外国人」と呼びます。

発展途上国の人々に日本の技術や知識を習得してもらうことを目的とする技能実習制度とは異なり、特定技能制度の目的は、人材不足を補うことにあります。そのため特定技能外国人は実習生ではなく、就労者として扱われます。

インドネシア人が特定技能外国人になるための条件

資格

特定技能1号の資格は、各産業分野の技能試験と日本語能力試験に合格するか、「技能実習2号」から移行することで取得できます。最近は、この技能実習から特定技能への移行を狙って、転職を希望するインドネシア人にどうやって効率的にアプローチしたら良いかとご相談を受けることも増えました。弊社で運用しているメディアもあるので、集客にお困りの企業様はこちらからまずはお気軽にご相談をください。

技能試験は、特定技能1号対象の14業種・12分野それぞれについて実施されます。日本語能力試験としては、日本語能力試験(JLPT)のN4レベル以上、もしくは、国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic A2)に合格することが条件となります。これらの試験は、インドネシア国内の会場でも受験できます。

ルート

(1)インドネシア人が特定技能制度を利用する場合は、原則、外国人本人と受け入れ機関(企業)の二者のみですべてのプロセスを進められます。
(2)しかし実際は、インドネシア政府が運用するオンラインシステム「IPKOL」や、P3MIと呼ばれる人材紹介会社を経由して、募集、紹介、派遣が行われています。

P3MIはインドネシア人の海外派遣を行う企業の名称ですが、このP3MIをインドネシアで立ち上げれば、上記(2)にある通りインドネシアから日本への人材の送り出しが可能になります。ただし、この立ち上げのハードルが非常に高いという現実もあり、検討はするものの断念してしまう企業も少なくありません。

そこで、P3MIはインドネシアで立ち上げずに、より設立ハードルが低いLPKを立ち上げて、上記の(1)のルールをうまく活用して送り出している企業の存在も見聞きします。

法律的にも運用的にも非常にデリケートな問題なので、インドネシアでの人材送り出しビジネスを検討されている企業様は、こちらからお気軽にご相談をいただければ課題の壁打ちをさせていただきます。

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インドネシアの特定技能外国人候補者が抱える課題

言語の壁

特定技能制度を利用して日本で就業する人は、JLPT N4かJFT-Basic A2に合格している必要があります。しかしこれらは「日常生活に苦労しない程度の会話が可能」という、日本語初級レベルです。より期待値を調整するなら、この資格の取得者の多くは、日常生活レベルの会話でも正直難しいことが多いと言えます。

多くの候補者が、特定技能外国人になるために、数か月前から日本語を勉強し始めたばかりの人たちです。資格に合格するための日本語を詰め込んだだけで来日しているので、仕方がないと言えば仕方がないとも言えます。

よって、受け入れ機関側はインドネシア人たちの日本語力が不十分であることを承知しておく必要があります。

文化・習慣の違い

インドネシアと日本とでは、文化や習慣に多くの違いがあります。

例えば、インドネシアは人口の9割近くがイスラム教徒の国です。敬虔なイスラム教徒は日々の礼拝やラマダン月の断食を欠かさず、また、口にするものを慎重に選びます。

職場での勤務態度も異なります。例えばインドネシアでは、飲食店の店員が店の隅にしゃがんでスマートフォンを見ていたり、店の横でたばこを吸っていたりすることがよくありますが、いずれも日本では受け入れられないでしょう。

これはインドネシア人が不真面目ということではなく、習慣の違いです。日本人が「働く者として当たり前」と思っているマナーや習慣を、インドネシア人の多くは知りません。時間や衛生に関する価値観や感じ方も異なります。

インドネシア人本人も、日本の文化や習慣について、ある程度学んだうえで渡日します。しかし、それだけでは十分ではありません。インドネシアから働きに来る人たちが不要なストレスを抱えず、のびのびと働けるよう、受け入れ機関からの情報共有、指導、配慮も重要です。

費用負担

特定技能制度を利用して日本での就労を目指すインドネシア人にとって、費用は頭の痛い問題です。例えば、技能試験および日本語試験を受験するだけでも、それぞれ数千円から1万円程度の受験料がかかります。

また、日本語をまったく知らない状態から日本語学校などに通い、試験合格を目指すとなると、受講料は数か月で10万円程度となります。日本語とは別に、職業訓練が必要な人は、その費用も必要です。

月収の平均が3万円に満たないインドネシアの求職者、特に中卒や高卒で応募している登録者が支払う金額として、いかに大きいかがわかるでしょう。

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インドネシアの特定技能制度の試験についての課題

技能試験の受けづらさ

特定技能外国人になるための技能試験はインドネシア国内でも受験可能と紹介しましたが、実際は、インドネシアで試験を受けられる産業分野は限られています。2024年の特定技能1号試験日程を確認すると、インドネシアで受験できるのは12分野のうち、介護分野、建設分野、航空分野、宿泊分野、農業分野、外食業分野の6分野のみでした。

また、この6分野の中でも、会場の数や試験実施頻度が異なり、十分な受験者数、合格者数を確保できる分野と、そうでない分野に大きな差が生まれています。

試験を受けやすいかどうかは、特定技能制度そのものの認知度や、応募者の数に直接影響します。送り出したいインドネシア側としても、受け入れたい日本側としても、実施できる会場や試験の数、頻度を上げていくことが課題となります。

日本語試験のキャパシティーオーバー

日本語試験にも課題があります。まず、JLPTは年2回のみの実施です。一方のJFT Basicは年に6回実施され、受験直後に結果がわかるので、候補者にとってはより選びやすくなっています。

しかし、JFT Basicの試験会場は2024年10月現在、全国8都市に限られています。このうちジャカルタ以外は1都市1会場で、アクセスしやすいとはいえません。さらに、受験希望者の数が定員を超えることが続いており、受験番号の取得が難しくなっています。受験番号の取得を代行するブローカーを利用する受験希望者もおり、問題視されています。

こうなると、特定技能制度を利用して日本での就労を希望するインドネシア人は、渡航までの予定を立てづらくなります。場合によっては、無職の期間が想定よりも伸びたり、費用負担が増えたりするでしょう。

インドネシアの特定技能外国人の送り出し機関についての課題

仲介業者による搾取

インドネシアにおいて、特定技能外国人の送り出しを行うのは、人材紹介会社P3MIです。P3MIは政府から認可を得た事業者で、労働者を保護する役割を担うことが期待されていました。しかし実際は、P3MIによる不正が何件も発覚しています。

インドネシア労働省によると、2012年から2020年3月までに、同省が業務停止の処分を行ったP3MIは505機関、営業許可を取り消したP3MIは252機関にのぼります。処分の主な理由は、登録者の募集や派遣に際して必要な手続きを怠ったことや、登録者に対し、派遣後に契約書に則った適切なサポートを提供しなかったことなどとなっています。

参考:Dinas Tenaga Kerja dan Transmigrasi Provinsi NTB「Langgar Aturan, Dua Penyalur Pekerja Migran Disanksi Kemnaker」

また、紹介料の過剰請求も問題視されています。2024年1月、インドネシア移民労働者保護庁(BP2MI)は、P3MIのうち約半数が、営業許可を取り消される可能性があるほどの費用の過剰請求をしていると指摘しました。

参考:ANTARA「BP2MI tegur keras P3MI yang menerapkan “overcharging” kepada PMI」

機関間の連携

特定技能制度はまだ新しいため、日本への人材派遣を行うP3MIも、歴史が浅い機関がほとんどです。

以前から技能実習生の送り出し機関(SO)として活動していた企業がP3MIの認証を取得したり、関連会社としてP3MIを設けたりするパターンもありますが、その多くが、日本の企業や職業紹介業者とのネットワークを構築している最中です。

今後は、インドネシア側で登録者を募集し、日本企業と上手にマッチングさせていく傍らで、日本側の関係機関とのつながりを広げ、それをインドネシア人人材の活用に繋げていくことが、ますます求められます。

また、日本の求人情報とインドネシアの求職者のマッチングにおいては、P3MIとは別に、両国の政府機関が提供するシステムの普及や認知度向上の必要性も指摘されています。

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特定技能外国人送り出しに対する政府の取り組み

インドネシア・日本人材フォーラム

インドネシア労働省と日本の独立行政法人国際協力機構(JICA)は共同で、「インドネシア・日本人材フォーラム」を開催しています。第1回は2023年11月、第2回は2024年9月に実施されました。

2024年の第2回フォーラムでは、「受入・送出実務上の課題」や「労働者保護と人権促進」といったテーマでパネルディスカッションが行われたほか、各産業分野の分科会も開かれました。

またこの会でインドネシアのIda Fauziyah(イダ・ファウジヤ)労働大臣は、今後5年で日本に25万人の労働者を送り出す目標を明らかにしています。インドネシアはそれまで「5年で10万人」としていましたが、日本政府が特定技能外国人の受け入れ見込み数を拡大したことなどを受けて、目標を引き上げました。

参考:JICA「「インドネシア・日本 人材フォーラム」を開催〜外国人材の円滑かつ適正な受入れに向けて〜」

「9つの飛躍」プログラム

イダ労働大臣は上述の「インドネシア・日本人材フォーラム2024」の挨拶のなかで、インドネシアが自国の労働者の競争力を高めるための9つの「飛躍的な取り組み」を準備していると話しました。

イダ大臣によると9つの取り組みとは、職業訓練センターの改革、雇用のマッチング強化、雇用機会拡大プログラムの改革、若い才能の育成、海外労働市場の拡大、新しい産業関係のビジョン、監視体制改革、SIAPKerjaデジタルエコシステム(労働省が提供する雇用・求人マッチングシステム)の充実、そして官僚制度の改革です。

大臣は、特定技能制度の成功は人材の質に大きく依存するため、すべての関係者がインドネシアの労働者の質を高め、彼らが即戦力となるよう努める必要があると説明しました。

参考:ANTARA「Menaker: Pergeseran demografi buka peluang kerja sama Indonesia-Jepang」

インドネシア政府による法律・規則の整備

インドネシア政府は2021年、政府令第59号「インドネシア人労働者保護の実施に関する規定」を発行しました。この政府令ではP3MIの職務が、「就労機会の探索、PMIの派遣、派遣後の問題解決」などと、以前より詳細に規定されました。

また2023年、政府はインドネシア移民労働者保護庁(BP2MI)を通して、「インドネシア人労働者の派遣費用免除に関する規則」を発表。この規則により、高齢者介護者、清掃員、農場労働者、漁船乗組員など10の職種で海外派遣指されるインドネシア人について、往復航空券、ビザ取得費用、職業訓練、宿泊費などの支払いが免除されることになりました。

以前の「インドネシア移民労働者の保護に関する法律(2017 年第18号)」では、登録者がP3MIに支払う費用について、「紹介(斡旋)料はかからない(免除する)」とされていますが、細かい規定はなく、運用方法があいまいなままになっていました。

一方、2023年の規則では、免除された費用の一部を地方政府と職業訓練機関が負担することが規定されています。この規則の背景には、P3MIを利用して派遣される登録者の多くが低学歴で就業経験がなく、経済的な余裕がないという事情があります。

参考:KEMENTERIAN KOORDINATOR BIDANG PEREKONOMIAN「Sinergi Pemerintah Pusat dan Daerah Dalam Melindungi Seluruh Pekerja Migran Indonesia」

帰国者のフォローアップはこれから

特定技能の制度は2019年に始まり、やっと5年が経過したところです。その間にコロナ禍もあったので、特定技能1号の資格で就労し、通算5年の在留期間を最大限使ってからインドネシアに帰国した人は、まだほとんどいません。

今後予想されるインドネシア側の課題としては、帰国したインドネシア人のフォローアップが挙げられます。帰国した人に対する職業紹介や、アップスキリング、リスキリングできる機会へのアクセスを確保することの重要性が指摘されています。

紹介してきた通り、人口ボーナス期真っただ中のインドネシアは、自国民の海外派遣に積極的です。インドネシアからの人材派遣や人材受け入れに興味をお持ちの企業様は、ぜひ一度、お気軽に弊社カケモチにお問い合わせください。

読後のお願い

弊社で公開している記事の1つ1つは、日本人とインドネシア人のライターと編集者が協力しながら丁寧に1記事ずつ公開しています。弊社からの不躾なお願いになってしまうのですが、是非SNSでこちらの記事をご紹介いただけないでしょうか。一言コメントを添えてシェアしていただけると本当に嬉しいです。

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インドネシアからの特定技能外国人は何人いますか。

2024年6月の統計によると、インドネシアからの特定技能外国人の人数は44,298人。特定技能1号在留外国人数全体の17.6%を占めます。

インドネシア人が特定技能制度を利用するには、送り出し機関を利用する必要がありますか。

インドネシアには特定技能制度のための送り出し機関はありません。人材の派遣は多くの場合、P3MIと呼ばれる人材紹介会社が行っています。

特定技能の在留資格を取得するための試験にはどのような問題点がありますか。

特定技能の在留資格を取得するためには技能試験と日本語試験を受験する必要がありますが、いずれも受験会場や回数、受けられる人数に限りがあり、希望するすべての人が受験できていないという問題点が指摘されています。

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