インドネシアでの法人設立の流れと実務ポイント:定款作成から事業開始まで
- 公開
- 2026/01/27
- 更新
- 2026/06/20
- この記事は約8分7秒で読めます。
インドネシアで法人を設立する際には、定款の作成、法務人権省による認可(SK)の取得、納税者番号(NPWP)や事業基本番号(NIB)の取得、資本金の払い込みなど、複数の行政手続を正しい順序で進める必要があります。
本記事では、「インドネシアでの法人設立の流れと実務ポイント」というテーマのもと、外資企業がインドネシアで株式会社(PT)を設立する際の全体像を整理しつつ、各ステップでつまずきやすいポイントや実務上の考え方を解説します。
【補足】
本記事の円表記は、2026年1月21日のレート(1ルピア=0.0093円)で換算したものです。
インドネシアでの法人設立までの流れ
インドネシアでの法人設立の流れを、簡単に整理します。本記事では主に、インドネシアで外資の株式会社(PT)を設立するケースを想定して説明していきます。
- 基本情報の確定
- 定款(Akta)の作成
- 法務人権大臣決定書(SK)の受領
- 納税者番号(NPWP)の取得
- 事業基本番号(NIB)の取得
- 銀行口座の開設
- 資本金の払い込み
- 登録完了・情報引き渡し
法人設立の際は、事業内容に合う事業コード(KBLI)を取得します。NIBの取得から使用するオンラインシステム「OSS(オンライン・シングル・サブミッション)」はKBLIによって事業をリスク別に分類し、低リスクであるほど手続きが簡略化されています。したがって、同じ外資法人の設立であっても、事業内容によって違いが出る工程もあります。
法人設立の概要や流れについては、社内で共有しやすいように資料にまとめています。こちらから無料でダウンロードできるのでご活用ください。
基本情報の確定~定款の作成について
定款(Akta)とは
日本語で「定款」と訳される「Akta Pendirian PT(株式会社設立証書)※」は、会社を設立することについて創設者間で合意した内容を記載した、公証人(ノタリス)作成の正式な法的文書です。
定款には、会社名、事業目的、所在地、資本構成、株式の内容、組織体制など、会社の基本事項が網羅的に記載されます。
インドネシアにおいては、2007年法律第40号(有限責任会社法)により、株式会社の設立は、インドネシア語で作成された公正証書(定款)によって行うことが義務付けられています。定款は、法人設立に先立ち、公証人によって作成・署名され、その後、法務人権省へ提出されます。
定款は、以下の目的で作成・使用されます。
- 会社が適法に設立されたことを示すため
- 事業許可や各種ライセンスを取得するため
- 株主の権利義務や会社運営ルールを定めるため
- 将来、第三者との契約や法的紛争が生じた際の判断基準にするため
【補足】
※厳密には、定款そのものは「Anggaran Dasar」といい、公証人が作成する正式な設立文書(定款など複数の書類を含む)を「Akta Pendirian PT(株式会社設立証書)」といいます。
定款の内容
定款には、法令に基づき、以下の事項が記載されます。
- 会社の名称および本店所在地
- 会社の目的、趣旨および事業内容
- 会社の存続期間
- 授権資本、引受資本および払込資本の額
- 株式数、株式の区分(該当する場合)、各区分ごとの株式数、各株式に付随する権利、および各株式の額面価額
- 取締役および監査役(コミッショナー)の役職名および員数
- 株主総会(RUPS)の開催場所および開催方法
- 取締役および監査役(コミッショナー)の選任、交代および解任の手続き
- 利益の使用方法および配当の分配方法
定款の作成には、上記の内容を盛り込むため、創設者・取締役・株主の個人情報や、会社所在地に関する資料などが必要です。なお、法令に抵触しない限り、上記の内容以外の規定を定款に含めることもできます。
- 参考:DATABASE PERATURAN「Undang-undang (UU) No. 40 Tahun 2007」
定款の作成方法
定款の作成は、一般的に、以下の流れで進められます。
- 創設者が、公証人または法務サービス提供者と相談し、会社設立の計画や必要事項を整理する
- 合意した内容に基づき、公証人が定款の草案を作成する
- 草案完成後、創設者全員が公証人立会いのもとで定款に署名する
- 署名済みの定款が法務人権省へ提出され、内容の審査・承認が行われる
- 承認後、法務人権省から設立認可を示す決定書(SK)が発行され、法人が正式に成立する
株主の出資比率と株価
株主ごとの出資比率については、固定の割合は定められておらず、株主間の合意に委ねられます(外資出資比率の上限が定められている一部業種を除く)。ただし、払込資本金が最低要件を満たしていること、各株主が最低でも1,000万ルピア(約9万3,000円)を出資することが条件です。
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インドネシアで法人を設立する際、定款作成に電話番号やメールアドレスは必要ですか?
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定款の内容に電話番号やメールアドレスは必要ありませんが、「申請情報」として必要になります。手続きを進めるための連絡先がわかればよいので、この段階では代表者のものか、設立準備用の仮の電話番号やメールアドレスを使用して問題ありません。
必要な情報が見つからない方は、下記のサイト内検索を活用してください。
法務人権大臣決定書(SK)について
法人設立のSKとは

インドネシアで法人を設立する際は、公証人が作成した設立証書(定款を含む)を法務人権省に提出します。その後、法務人権省から発行されるのが、会社設立についての法務人権大臣決定書(SK Kemenkumham)、通称「SK」です。
SKを取得したPTは、
- 法令に基づき事業を行う資格を有すること
- 国家により法人として認識されていること
が、正式に確認された状態となります。
また、SKは単なる設立完了の証明にとどまらず、事業運営における基礎書類として、以下のような場面で使用されます。
- NIBや各種追加ライセンスの申請
- 会社名義の銀行口座開設
- 取引先・投資家との契約や提携
- 行政手続・税務対応
SKの申請には、作成済みの定款に加え、株主および取締役に関する情報などが必要です。
SKの受領方法
SKの申請から受領までは、以下のような流れで進みます。
- 公証人による設立証書の作成
- オンラインシステムによる申請
- 法務人権省による審査
- SK Kemenkumhamの発行
定款作成後、公証人が法務人権省の法人管理システム「AHU Online」を通じて、SKの申請を行います。
法務人権省が内容の確認・審査を行い、不備や誤りがある場合は、修正や追加提出が求められます。すべての要件を満たし、審査を通過すると、SKが電子的に発行されます。SKの発行をもって、PTは法的に有効な法人として成立します。
インドネシア進出は、調べれば調べるほど、そのハードルの高さに頭を抱える方が少なくありませんが、もっとカジュアルに進出する方法もあります。
- 月額5万円でインドネシア人をフルタイムで雇用してリサーチチームを作り、バンドンでのLPKの調査や大学との連携可能性を確認。事業化の見通しが立った段階で正式な進出を決定した。
- 営業経験のあるインドネシア人を2名チームで雇用し、スポーツジムや病院、リハビリ施設などへの営業活動を実施。販売代理店候補の開拓や市場ニーズを調査し、調査後に販売体制を構築した。
- 飲食業界経験者を3名チームで雇用し、現地食材の調達先や厨房設備、物流体制を調査。あわせてフランチャイズやライセンス展開の可能性も検証し、最適な進出方法を決定した。
上記のように、法人を設立しなくてもカジュアルにインドネシアに進出している企業様はいます。インドネシア向けのビジネスとして、貴社でもそれが可能です。
NPWPの取得について
納税者番号(NPWP)とは
NPWP(Nomor Pokok Wajib Pajak:納税者番号)は、インドネシア税務総局(DJP)が発行する、納税者を識別するための公式番号です。
NPWPは、納税者が税務上の権利と義務を果たすために使用され、税務行政の円滑な運営を目的としています。経済活動を行うすべての個人および法人は、インドネシアで合法的に事業を行うためにNPWPの取得が義務付けられています。
NPWPの取得方法
AHU Onlineと税務総局のオンラインシステムが連携されているため、特に問題がなければ、SKと同時にNPWPも自動発行されます。ただし、データが同期していない場合や、システム障害が発生している場合などについては、公証人または事業者が別途手続きを行う必要があります。
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NPWP取得の際に初年度の推定年商を聞かれるのはなぜですか?
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NPWP取得の際に初年度の推定年商を聞かれることがあるのは、課税事業者か非課税事業者かの判断に関係するためです。外資系株式会社(PT PMA)は多くの場合、初年度から課税事業者となります。
― ビジネス最前線の声
NIBの取得について
事業基本番号(NIB)とは
NIB(Nomor Induk Berusaha:事業基本番号)とは、インドネシアで事業を行う企業や事業主が取得しなければならない事業者の公式IDであり、事業活動を行うための登録証明でもあります。
NIBは、以前は別々に取得していた会社登録証(TDP)や輸入者識別番号(API)、税関アクセス権など複数の登録や番号を統合・連携する役割を持ち、法人設立や事業運営における基礎情報として機能します。正式な法人・商業活動を行う企業は、NIBを取得しなければ、合法的に営業できません。
NIBの取得方法
NIBは、OSSシステムを通じて発行されます。
OSSシステムを通したNIBの申請は、法人設立過程において、SKとNPWPを取得したあとに行います。OSSシステム上でNIBを含むすべての手続きが済むと、事業者は正式に営業許可を得たことになります。
なお、KBLIに従い「低リスク」に分類された事業の場合、NIBの取得をもって事業を開始できます。「中低リスク」以上の事業は、指定された追加の手続きをOSSおよび関連システム上で行い、事業許可を取得します。
銀行口座の開設と資本金の払い込みについて
銀行の法人口座の開設は、基本的には、NIB取得後に行います。必要書類や口座開設要件を確認するなどの準備を事前に進めることはできますが、必要書類としてNIBを求められるケースが多いため、本格的な開設は一般的にこのタイミングになります。
外資企業の資本金と投資額
2025年の投資大臣規則により、外資企業の資本金および総投資額は以下のように定められています。
- 払込資本金:最低25億ルピア(約2,325万円) ※以前は100億ルピア
- 土地および建物を除く総投資額:100億ルピア超(約9,300万円)
外資法人設立の際に必要な資本金は、「法人ごとに最低25億ルピア」です。一方、投資額は法人の数ではなく、原則としてKBLI(5桁)およびプロジェクト所在地ごとに判断されますが、業種によっては例外的な算定方法が適用されます。
なお、投資額は資本金とは異なり、最初に一括で払い込む必要はありません。一般的に、法人設立後のLKPM(投資活動報告)で報告する投資計画に沿って段階的に投資を進めればよいとされています。
【補足】
投資・ワンストップ統合サービス局(DMPTSP)によると、現状では、KBLIを追加せずに支店・支社を新たに設立する場合、投資額として100億ルピアを追加する必要はありません。ただし、個別のケースについては、確認が必要です。
内資企業の資本金
内資企業の場合、外資企業のように「最低いくらの総投資額が必要」という一律の基準は設けられていません。資本金は、原則として設立者の判断で自由に設定することができ、授権資本のうち少なくとも25%を引き受け、払い込めば足ります。
また、事業規模についても、外資企業のように必ず大規模事業として扱われるわけではなく、実際に事業に使用する資金(設備・在庫・運転資金など)や売上規模に応じて、零細・小規模・中規模・大規模に区分されます。
このため、内資企業は小規模な事業からスタートすることも可能です。
資本金の払い込み
前述の通り、銀行の法人口座の開設には、通常、NIBの発行を待つ必要があります。
一方で、SKの申請の際には「払込資本の払込証憑(bukti setor modal)」を貼付することになっています。そのため、一般的にはまず、取引保全(エクスロー)口座やいずれかの発起人の口座または共同口座などへ入金します。
その払込票か、発起人と取締役が作成した「資本金を払い込んだ旨の宣誓書」を貼付してSKを申請し、法人口座の開設後に資本金を移します。
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インドネシアで法人設立の際に払い込んだ資本金をすぐに日本に戻せますか?
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法人設立時の払込資本金は、会社の運営に必要な支出(運転資金、資産購入、事業活動など)を除き、原則最低12か月間は保持する必要があります。
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インドネシアの外資法人設立の払込資本金が、25億ルピアでは足りないと判断されるケースはありますか?
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最低25億ルピアあれば法的要件は満たせますが、運転資金を多く要する分野(製造業、建設業など)に該当するなど一部のケースで、運営する事業の規模に見合う払込資本金であることの証拠を求められることがあります。
法人設立「後」に必要になるライセンス
法人設立と事業許可の取得後、特定の認証・ライセンスの取得が義務付けられている分野・事業もあります。例えば、以下のようなものです。
飲食店のアルコール販売ライセンス
イスラム教徒が国民の9割弱を占めるインドネシアでは、アルコール飲料の販売が厳しく規制されています。
アルコール飲料は原則、観光関連法令の要件を満たしたホテル、バー、レストラン、免税店、地方政府が指定する特定の場所でのみ販売可能で、販売事業者はアルコール飲料販売許可を取得する必要があります。
申請は、国内商業統合許認可情報システム「SIPT PDN」を通じて行います。SIPT PDNは、OSSと連携しています。申請には、
- 観光事業登録証(TDUP)を取得していること
- 正規ディストリビューターまたはサブディストリビューターからの直接販売者指定書を有していること
などの要件があります。
医薬品・化粧品・加工食品の製品登録(BPOM認証)
インドネシアのBPOMは、医薬品、化粧品、加工食品などの安全管理を担う独立機関です。これらのカテゴリーに分類される製品をインドネシアで流通させるには、一部例外を除き、BPOMの認証が必要です。
BPOMの認証が必要なカテゴリーの製品を製造する事業者は、各製品についてBPOM認証を取得します。また、海外から製品を輸入して販売する事業者も、同様に認証を取得する必要があります。
該当する製品を製造または販売する事業者は、事業者の身分証明書類、製品関連書類、製品の安全性・規格・品質に関する書類、表示・包装に関する書類などを揃えたうえで、BPOM公式サイトから認証の申請(製品の登録)を行います。
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インドネシアで法人を設立するにあたり、社判は必要ですか?
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社判は、インドネシアにおいて法人設立の法的要件ではありません。ただし、OSSでのNIB申請、銀行口座の開設申請、税務関連書類の作成、その他の日常的な業務で用いられるため、法人設立後(SK取得後)すぐに作成することをおすすめします。
映像で観るインドネシアの法人設立
法人設立支援サービス

Growther.idは、西ジャワ州Bogor(ボゴール)で法人設立支援、許認可申請・商標登録支援、バーチャルオフィス・クリエイティブスペースの提供などを行っています。
法人設立支援はいくつかのプランから選べますが、例えばスタンダードプランの場合、PT名の確認、設立証書の作成、SKの取得、NPWPの取得、NIBの取得、CoretaxやOSSのアカウント作成などが含まれます。こちらの動画では、書類に忙しくサインする、2名のクライアントの様子が紹介されています。
インドネシアではこのように、レンタルオフィスの事業者が法律や税務のサポートサービスを提供している例も多くなっています。
合弁会社の誕生

こちらの動画は、PT Amita Tamaris LestariとPT Sari Bhakti Sejatiが新しく設立したPT Amita Prakarsa Hijauに関する合弁契約調印セレモニー(2024年10月)の様子を紹介したものです。アミタホールディングスの末次貴英代表取締役社長も出席しています。
環境・資源循環分野で事業を展開するアミタグループの海外事業統括会社であるAMITA CIRCULAR DESIGN SDN. BHD.(ACD)は、東南アジア最大級の複合企業サリムグループ傘下で再生可能エネルギーや上水道事業を手がけるTamaris Moya Groupの関連会社と協力し、まず合弁会社PT Amita Tamaris Lestariを設立しました。
さらにPT Amita Tamaris Lestariは、インドネシアの大手セメントメーカーPT Indocement Tunggal Prakarsa Tbk.の子会社であるPT Sari Bhakti Sejatiと共同で、産業廃棄物やバイオマスを活用した100%再資源化事業を担う新会社PT Amita Prakarsa Hijauを設立しています。
インドネシア法人設立で押さえるべき実務ポイント
インドネシアの法人設立は、定款作成からSK取得、NPWP・NIBの取得、銀行口座開設、資本金の払い込みへと段階的に進みます。順番は場合によって前後したり同時進行になったりすることもあるものの、重要なのは基本の流れを理解することです。
ただし、外資・内資、事業内容などによって工程に差が出たり、追加の手続きが必要になったりする場面もあります。例外規定も含め、詳細や最新情報を確認しながら、準備段階から余裕を持ったスケジュールで進めていきましょう。
必要な情報が見つからない方は、下記のサイト内検索を活用してください。
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