日本人がインドネシアで起業する際に知っておきたい情報まとめ(起業方法や制度、日本人起業家)
- 公開
- 2024/08/20
- 更新
- 2025/02/08
- この記事は約6分52秒で読めます。
一昔前と比べて海外起業に興味を持つ日本人は増え、インドネシアでもITや小売、飲食などさまざまな分野で日本人が事業を立ち上げ活躍しています。
ただ、インドネシアで起業する場合は、インドネシアならではの手続きや制度について調べる必要があり、日本で起業するより面倒な点が多いのも事実です。
そこで本記事では、インドネシアで日本人が起業する際に知っておきたい情報をまとめました。インドネシアで日本人が起業する方法や関連制度、起業環境、インドネシア人の起業マインド、現地で活躍する日本人起業家などを紹介しているので、参考にしてみてください。
円表記は2024年5月14日のレート(1ルピア=0.0097円)で換算したものです。

インドネシアの起業家数と起業マインド・意欲
インドネシアのビジネス統計データポータルサイトのdataboksによると、2023年8月時点でインドネシアには5,200万人の駆け出し起業家と約450万人の安定した起業家がいるとされています(※)。
2013年2月からの約10年間で、駆け出し起業家の数は31.8%、安定した起業家の数は8.7%増加しています。実際、2021年に合併したスーパーアプリGojekとECプラットフォームTokopedia、旅行予約サービスのTravelokaなど、国の経済や人々のくらしに大きな影響を与えるスタートアップ企業の存在も目立つようになりました。
インドネシアで起業する人の数が増えている背景には、エネルギッシュな若者の人口が増えている、経済成長が著しく成功する可能性が感じられるといったことが考えられます。
また、世界的な栄養食品会社のHerbalife Nutritionが実施した調査によると、インドネシア人回答者の66%が「現在自分のビジネスを持っていないが将来は起業したい」と回答しており、起業に対する意識の高さもうかがえました。
※「駆け出し起業家」は派遣労働者や無給労働者で事業を成り立たせている会社の経営者、「安定した起業家」は正規労働者や有給労働者で事業を成り立たせている会社の経営者と定義
参考:
databoks「Ini Pertumbuhan Jumlah Wirausaha di Indonesia sampai 2023」
Kompas.com「Mayoritas Gen Z dan Milenial Ingin Punya Bisnis Sendiri」
インドネシアで日本人が起業する方法
インドネシアで日本人が起業する場合、駐在員事務所を立ち上げるケースを除き、以下の通り外資法人または内資法人のどちらかで起業することになります。
外資法人(PMA)
インドネシアで外資法人はPMAと呼ばれ、外国からの出資が1%でもあれば外資法人となります。外資法人を起業する手続きは後述の内資法人と大きく変わりませんが、主な違いとして資本金と業種が挙げられます。
外資法人を起業するためには資本金が100億ルピア(9,700万円)必要で、起業できる業種に制限が設けられているのが特徴です。
内資法人(PMDN)
インドネシアで日本人が起業する場合、資本金の問題などから内資法人という選択肢を取る方も少なくありません。内資法人はインドネシアでPMDNと呼ばれます。
外資法人と比べて内資法人は必要な資本金が安く、わずか1,250万ルピア(12万1,000円)で済みます。また、外資法人のように起業できる業種に制限を受けることはなく、事業運営の自由度が高いのが特徴です。
ただし、内資法人の場合は日本人の出資が一切不可で、会社設立後に日本人が株主になることも許されていません。内資法人を起業する場合は、このようなデメリットについてよく検討しておくことが必要です。
インドネシアにおける起業環境と制度
インドネシアでは国内企業を保護するため、外資法人の起業や事業運営に多くの規制を設けています。一方、内資法人は資本金が安く業種の制限がないのに加えて、起業後は中小企業や零細企業の経営の負担を減らす制度も多く用意されています。
これらの背景から、インドネシアは「内資法人」かつ「規模の小さな事業」の場合は、起業がしやすい環境にあるといえそうです。
そこで以下では、インドネシア起業に関連する制度について紹介します。
インドネシア起業後に外資法人でも活用できる優遇制度
インドネシアで起業した後の話になりますが、外資法人の経営者が受けられる優遇制度の1つに「タックスホリデー制度」があります。これは、企業が一定期間にわたり法人税の軽減または免除を受けられる制度のことです。
納税猶予の資格を満たすための要件は、以下の通りです。
- 政府が設定した最低投資額以上の投資をしていること
- パイオニア産業に投資していること
項目2つ目のパイオニア産業としては、石油・天然ガス・石炭ベースの石化産業、医薬品原材料産業、デジタル経済分野などが挙げられます。
外資法人として起業する場合は利用できる優遇制度が少ないですが、法人税の軽減または免除に関しては条件に該当する企業であれば外資法人でも利用可能です。
猶予期間は5~20年と長期にわたり、事業運営に大きな影響をもたらすため、これから起業する方は自社の事業が該当するかどうか事前にチェックしておくのもおすすめです。
参考:ジェトロ「インドネシア 外資に関する奨励 「各種優遇措置」詳細|P1~2. . 特定の投資に対する法人所得税一時減免(タックスホリデー)」
投資家ビザ(ゴールデンビザ)について
2023年8月、投資家や経営者、アスリートなど一定以上の収入や特別な技術がある人を対象とした投資家ビザ(ゴールデンビザ)の運用がインドネシアで開始されました。ビザの対象者には、インドネシアに会社を設立する個人投資家や外資法人の投資家も含まれます。
取得後はインドネシアに最大10年間住める、滞在期間の延長や出入国が簡単になる、一時滞在許可証(ITAS)の申請が不要になるといった優遇措置が適用されます。
対象者は非常に限定的ですが、投資家ビザは通常のビザと比べて受けられる優遇制度が多いのが魅力です。そのためインドネシアで起業する予定があり、投資家ビザの取得条件に当てはまる人は、取得を検討してみるのも1つの選択肢です。
インドネシア起業で利用できる日本政府・民間企業の制度
日本の省庁や民間企業の中には、日本人が海外で起業するのを支援する取り組みを行っているところもあります。
インドネシア起業で利用できる制度の例として、以下が挙げられます。
・ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(独立行政法人中小企業基盤整備機構):https://portal.monodukuri-hojo.jp/index.html
・海外展開・事業再編資金(日本政策金融公庫):https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/kaigaitenkai_t.html
・中小企業等海外出願・侵害対策支援事業費補助金(特許庁):https://www.jpo.go.jp/support/chusho/shien_kaigaishingai.html
「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」と「海外展開・事業再編資金」は、一定の条件を満たす企業が海外進出の際に補助金や融資を受けられるもの。
「中小企業等海外出願・侵害対策支援事業費補助金」は、進出先の国で取得した特許・商標等の侵害を受けている企業が、侵害調査や被害への対策へかかる費用の一部を助成してもらえるものです。
ほかに、地方自治体が海外での起業を支援する取り組みをしている場合もあるので、気になる方は調べてみることをおすすめします。
インドネシアで起業している日本人
最後に、インドネシアで起業して活躍している日本人を3人紹介します。
インドネシアで起業されている日本人の方でこの文章をご覧になられた方は、是非弊社までご連絡をいただけましたら、ここに貴社情報を追記させていただきます。
和出 潤一郎氏(PT. VENTENY Fortuna International)
和出潤一郎氏は、従業員向けアプリ「VENTENY」の提供で知られるVENTENY Fortuna Internationalを創業した起業家です。
同社のアプリを通して、会社で働く従業員は資金の融資を受けられたり、日用品を割安で購入できたり、日々の生活の質を上げるさまざまなサービスを利用できます。
ENTENY Fortuna Internationalは2022年11月にインドネシア証券取引所に上場した日本人経営者初の企業。インドネシアだけでなく、東南アジア市場で日本企業が上場するのは初めてだったため、大きな話題を呼びました。
企業はこのアプリを使って福利厚生業務を外注することで、業務の整理や効率化が叶います。一方従業員にとっては、福利厚生サービスが充実し、利便性が高まるなどのメリットがあります。
木城 拓也氏(PT Rigaku Body Indonesia)
理学療法士の木城拓也氏は、もともと日本のクリニックでスポーツ選手などの身体を施術する仕事に携わっていました。その後、パーソナルトレーナーとして独立し、自身の会社として株式会社理学ボディを開業しました。
それから全国に整体の店舗を開業し、その後はピラティススタジオも開業。このピラティススタジオは2023年に海外進出し、2024年2月にはインドネシア1号店「luluto Pilates Studio ジャカルタ店」をオープンさせています。
理学療法の知見が豊富なインストラクターによるピラティスという独自性が強みで、同社のスタジオはインドネシアで今増えている中間所得層~富裕層から注目を集めています。
徳永 裕氏(PT. Timedoor Indonesia)
徳永裕氏がインドネシアで創業したPT. Timedoor Indonesiaは、Webサイトの制作やインターネット広告サービス、メディア運営、アプリ開発などを行うIT企業です。バリ島に拠点があり、インドネシア人のデザイナーやプログラマーとともに事業を展開しています。
また、子どもたちにプログラミングを学ぶ機会を提供する学習コース「Timedoor Academy」も運営しており、オンラインレッスンのほか、バリ島やジャカルタ、スラバヤなどの大都市を中心にオフラインでのレッスンも行っています。
※右にスクロールできます
インドネシアでの起業に向けて準備を進めたい企業様へ
インドネシアで起業をしたいと思っても、日本からだと情報が手に入りにくく、いざインドネシアへ訪れてみても手続きが複雑で挫折してしまうケースは少なくありません。
インドネシアで起業するのであれば、これから始めようとしている事業にはどのような手続きが必要なのか、外資法人として起業する場合は外資規制に該当しないかなど、まずは情報を集めることが重要です。
そこで、インドネシアでの起業をお考えの企業様は、弊社カケモチへぜひご相談ください。
起業のための事務的な手続きを全面サポートしているほか、オンラインアンケートを活用した市場調査や現地視察、そのほか集客支援などを通して起業やその準備をサポートいたします。
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インドネシアで日本人はどのような方法で起業できますか?
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インドネシアで日本人が起業する場合、外資法人または内資法人として起業することになります。外資法人は資本金が高く業種に制限があること、内資法人は日本人が株主になれないことなどのデメリットがあるので、それぞれをよく比較し検討することが重要です。
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インドネシア起業で日本人が使える制度はありますか?
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インドネシアで起業後、一定期間にわたり法人税の軽減または免除を受けられる「タックスホリデー制度」を活用できます。そのほか、日本政府や民間企業、自治体が提供する制度を活用することもできます。
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インドネシアで活躍する日本人起業家について教えてください。
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インドネシアで活躍する日本人起業家には、PT. VENTENY Fortuna Internationalの創業者・和出潤一郎氏やPT Rigaku Body Indonesiaの創業者・木城拓也氏、PT. Timedoor Indonesiaの創業者・徳永裕氏などがいます。
読後のお願い
弊社で公開している記事の1つ1つは、日本人とインドネシア人のライター、日本人とインドネシア人の編集者がそれぞれ協力しながら丁寧に1記事ずつ公開しています。
記事の内容にも自信がありますし、新しい情報が入り次第適宜アップデートもしています。これだけ手間ひまかけて生み出した記事はできれば一人でも多くのインドネシアのビジネス関係者に読んでもらいたいです。
そこで、弊社からの不躾なお願いになってしまうのですが、是非SNSでこちらの記事をご紹介いただけないでしょうか。一言コメントを添えてシェアしていただけると本当に嬉しいです。そうやってご紹介いただくことで関係者全員の励みにもなりますので、どうか応援宜しくお願いします!
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