JD.ID、2023年3月にインドネシアから撤退
- 公開
- 2025/12/30
- 更新
- 2026/01/02
- この記事は約8分49秒で読めます。
2023年1月30日、インドネシアの大手ECプラットフォームの一つで中国のJD.comの子会社であるJD.IDが、2023年3月31日をもってインドネシアから撤退すると発表しました。注文の受け付けは2月15日で停止しています。
そこで本記事では、JD.IDのインドネシアにおける歩みやそのECプラットフォームの特徴、撤退の経緯や要因などについて、このニュースを伝えた1月30日のSWA Online Magazine「JD.id Umumkan akan Tutup Permanen Mulai 31 Maret 2023」を含め、複数の報道を参照しながらご説明します。
JD.IDのインドネシアでの歩み

JD.com創設とインドネシア進出
JD.IDは、中国に本社を置くJD.com(京東商城:ジンドンしょうじょう)の子会社です。JD.comは創立当初は電子機器の小売店で、北京のショッピングセンターの一角に小さな店を構えていました。創業者の劉強東(りゅうきょうとう)氏は2004年、JD.comの前身となるオンラインショップを立ち上げ、2014年にはNASDAQに上場しました。
現在JD.comは中国のECプラットフォームのシェア第2位であり、Tmall(天猫:テンマオ)と並ぶ二大ECモールの一つです。
JD.comはその後海外展開を始め、2015年にはインドネシア進出のためGojekと投資会社Provident Capitalの3社で合弁会社JD.IDを立ち上げました。JD.IDは2015年11月にインドネシアで通信販売事業を開始。当初出品されていた商品は1万点程度でしたが、2016年末には約10万点と急増しました。
- 参考:SWA Online Magazine「JD.id Umumkan akan Tutup Permanen Mulai 31 Maret 2023」
JD.IDの特徴
それでは、数あるECプラットフォームの中で、JD.IDにはどのような特徴があったのでしょうか。
オリジナル保証
JD.comの創業者である劉氏はECプラットフォーム開設にあたり、中国での模倣品販売を減らすため、模倣品を一切取り扱わないという宣言を行っています。JD.IDもそれを継承し、「Dijamin Ori(オリジナル保証)」というキャッチコピーを使ってアピールしていました。
インドネシアの模倣品市場は世界的にも有名であり、大手ECプラットフォームも模倣品の売買に加担してしまっている現状があります(100%取り締まれていないという意味で)。
インドネシアの模倣品市場については、以下の記事もご覧ください。
■欧州委員会、Bukalapakを模倣品・海賊版ウォッチリストから削除
インドネシアの模倣品・海賊版市場の大きさは世界的に有名であり、昨今はECプラットフォームでの販売も増えていることが問題視されています。
自社配送
インドネシアの365都市をカバーする自前の配送サービスも、JD.IDの売りの一つです。各地にハブ倉庫を建設し、数千台の自社所有車両でユーザーに直接商品を配送していました。同様のサービスを行うECプラットフォームとしては、Lazadaが挙げられます。
越境EC
加えて、日本、韓国、シンガポールなどの国際市場とのネットワークを持ち、越境ECに強いこともJD.IDの特徴でした。日本からインドネシアへの越境ECも可能で、JD.IDの越境EC専用ページには、日本からの商品を取り扱う「Japan Pavilion」が開設されていました。
2021年9月にはAEONと協業の覚書を締結し、越境ECを含めたオンラインとオフライン両面での協業が進んでいく予定でした。実際に、西ジャワ州ボゴールの「イオンモールセントゥールシティ」や東ジャカルタの「イオンモールタンジュンバラット」には、JD.IDの家電製品店「JD.ID Electronic」が出店しました。
人気のECプラットフォームベスト10入り
インドネシア市場に参入すると、JD.IDはさっそく物流網を整え、事業を展開していきました。
ここで、2つの調査結果を見ながら、JD.IDがインドネシアでどの程度受け入れられていたのかをご紹介します。
訪問者数9位
以下のグラフは、主なECプラットフォームの訪問者数を比較したグラフです。2021年第三四半期の調査で、数字は1か月あたりの平均訪問者数(単位:百万人)です。

こちらを見ると、JD.IDは上から9番目で、BtoC向けの総合ECプラットフォームの中ではTokopedia、Shopee、Bukalapak 、Lazada、BliBliに次ぐ6位となっています。
また、月間の平均訪問者数「380万人」は、1位のTokopediaの約42分の1、5位のBliBliの約4分の1であり、苦戦している様子がうかがえます。
なお、6位のOramiはベビー&マザー用品、7位のRalali.comはBtoB向け、8位のBhinekaは家電・電子機器のECプラットフォームです。
- 画像出典・参考:Katadata「Peta Persaingan E-Commerce di Indonesia」
人気調査6位
また以下の画像は、調査会社JAKPATが行ったECプラットフォーム人気調査(2022年上半期)の中の、「最もよく使うECプラットフォームは」という質問の回答結果です。

先ほどの訪問者数のランキングと比べると一部が入れ替わってはいますが、JD.IDが総合ECプラットフォームの中で第6位だという点は変わりません。
同率5位のArfagiftと、同率6位のKlik Indomaretは、いずれもインドネシアの大手コンビニエンスストアのオンラインショップです。
- 画像出典・参考:GoodStats「Shopee Masih Jadi E-Commerce Pilihan Utama Masyarakat Indonesia」
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JD.ID、インドネシアから撤退
撤退直前の動き
各調査でTokopediaやShopeeとの差を見ると、やはりJD.IDは、非常に苦戦していたように見えます。中国の親会社が同国でシェア2位の最大手だということを考えると、なおさら「インドネシアでは失敗している」という印象を受けます。
JD.IDの取引額などは公表されていないので詳細は不明ですが、訪問者数で見ると、2022年12月、中国のJD.comサイトへの訪問者数が月間1億6,180万人だったのに対し、インドネシアのJD.ID はわずか160万人でした。
インドネシア市場で元々苦戦していたところに昨今の世界的インフレの影響が重なって、収益が徐々に減少し、これまでと同じように営業することが難しくなったのではと推測されています。
そこでJD.ID は、2022年には5月と12月の2回、大規模な従業員の解雇を行いました。5月に解雇された人数は明らかになっていませんが、12月には全従業員の30%にあたる約200名が解雇さています。さらに2023年1月には、物流部門JDL Express Indonesiaを閉鎖しています。
コーポレートコミュニケーションおよび広報担当責任者であるSetya Yudha Indraswara氏は、JD.IDの閉鎖はJD.comの戦略的決定であると述べました。
なおJD.comは、タイ市場からも同時期に撤退すると発表しています。
撤退の原因
では、JD.IDがTokopediaやShopee、Lazadaといった競合他社に対抗できず、撤退に至った原因は何でしょうか。
インドネシア経済法律研究センターCeliosのエグゼクティブディレクターであるBhima Yudhistira氏は、JD.IDのインドネシア撤退の要因について、以下のように分析しています。
プロモーション不足
1つ目に、インドネシアの市場、特にBtoC(Business to Consumer)eコマースが、期間限定キャンペーンや割引による一時的なプロモーションへの依存度が高いことが挙げられます。Bhima氏によると、JD.IDは競合他社に比べてプロモーションが少なく、ユーザー獲得に失敗したと考えられます。
オリジナル保証の影響力不足
2つ目に、JD.IDの「オリジナル保証」がインドネシア市場では十分に支持されなかったことが挙げられます。上述の通り、インドネシアではいまだに模倣品が多く出回っており、生産者や販売者に加え、消費者に対する模倣品撲滅のための啓蒙も十分とは言えません。
したがって、「オリジナル保証」を掲げてクリーンさをアピールしても、そのために取り扱う商品の価格が割高になってしまったことが、かえってマイナスに作用したものと考えられます。
マーケティング戦略不足
3つ目はマーケティング戦略不足です。JD.comは、中国ではマーケティング戦略に力を入れていますが、インドネシアではマーケティングのための予算が限られていたため、必要な戦略を実施できなかった可能性があります。
EC市場の伸び悩み
4つ目に、インドネシアのEC市場が既に飽和状態であり、成長が伸び悩んでいることが挙げられます。Bhima氏によるとインドネシアにおけるEC市場規模は国内の小売市場全体の5%に過ぎませんが、その顧客は最大手2、3社に集中しています。
これは、最大手の品揃え、決済システム、配送方法などが既によく整っており、一度使い始めたユーザーが他に乗り換えることが少ないためだと考えられます。
さらに、最近は外出する人も増え、オンラインショッピングメインの生活から実店舗でのショッピングを楽しむ生活に切り替える人が増えています。このような状況下では、JD.IDのようなより小規模なECプラットフォームが最大手に肩を並べることは難しくなります。
また、商品調達から配送までを一貫して自社でてがけるJD.IDは、TokopediaやShopeeと比べて不景気の影響を受けやすかったことも、撤退の要因の一つとされています。
- 参考:CNBC Indonesia「JD.ID Tutup, Bukti Warga RI Tak Peduli Produk Ori?」 / 「JD.ID Tutup, Kenapa Model Bisnis Ala Amazon Gagal di RI?」
JD.ID撤退の影響
最後に、JD.IDがインドネシアから撤退することによる各方面への影響に関するニュースをご紹介します。
JD.IDのオフラインストア閉店
JD.IDは、オンラインストアとオフラインストアを組み合わせたOtoO(Online to Offline)マーケティングを実施していました。
例えば、北ジャカルタのPIKアベニューにある「JD.ID X」は、インドネシア初のAI技術ベースのショッピング体験センターで、顔スキャン技術や無線周波数識別技術(RFID)を実装する革新的なスタイルの小売店でした。
また、中央ジャカルタのシティウォーク・スディルマンや南ジャカルタのコタ・カサブランカなどには、家庭用電化製品やガジェット、衣料品など、家庭で必要な様々なカテゴリーのものを取り扱う複合型小売店「Wellio by JD.ID」がありました。
JD.IDはインドネシア撤退を発表する前から、こういったオフラインストアを閉店したり、クリアランスセールで在庫を一掃したりしています。
Blibliがシェア吸収へ意欲
BlibliとJD.IDには、いくつかの共通点があります。例えば、正規品の取り扱いを重視する点や、オンラインECプラットフォームに加えて実店舗の運営も行っている点などです。
JD.ID撤退について、BliBliのコンシューマーグッズ・エグゼクティブ・バイスプレジデントFransisca Krisantia Nugraha氏は、BliBliはJD.IDの穴を埋める準備ができていると述べています。
株主としてのGOTO
GojekとTokopediaが合併して設立されたPT GoTo Gojek Tokopedia Tbk(GOTO)は、JD.IDの12.2%の株式を保有していると噂されています。これについて問われたGOTOのコーポレートアフェアー主任Nila Marita氏は、JD.IDの閉鎖がGoToのキャッシュフローに影響を与えることはないと述べました。
またGOTOは、シンガポールのJD.com e-commerce Singapore Pte Ltd(JD)へも出資を行っています。これについては2021年4月からGOTOの財政状態計算書の「その他の投資」として再分類されており、同社はもはやJD.comに大きな影響を及ぼしていないとしています。
- 参考:
Bisnis.com「JD.ID Tutup, GOTO Hitung Ulang Investasi di Startup?」
LIPUTAN6「JD.ID Tutup Layanan di Indonesia Tak Berdampak terhadap GOTO」
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インドネシアのECプラットフォーム二強体制の今後
訪問者数やモバイルアプリのダウンロード数などの各種調査結果を見ると、インドネシアのECプラットフォームがTokopediaとShopeeの二強体制だということは、誰の目にも明らかです。
二番手はLazadaとBukalapakで、それ以外のプラットフォームは同じようなシステムやコンセプトでは、もはや太刀打ちできそうにありません。
最近はTikTokやInstagramなどのSNSを利用したオンラインショッピング(ソーシャルコマース)の人気が急上昇しています。加えて、コロナ禍の社会的行動制限が終了し、人々が外出を始めたこともあって、ECプラットフォームにはいくつかの懸念材料が浮上している状況です。
今後も、最大手の動向に加えて、限定的なカテゴリーで勝負するユニークなECプラットフォームや、スタートアップ企業のサービスにも注目しながら見守っていきたいところです。
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