インドネシアでP3MI(人材紹介会社)の法人を設立する方法
- 公開
- 2026/01/17
- 更新
- 2026/02/26
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インドネシアは、日本向けを含む海外就労人材の主要な送り出し国として、年々その存在感を高めています。こうした背景から、インドネシアで人材紹介事業を展開したいと考える日本企業も増えつつあります。
その際に選択肢の一つとなるのが、インドネシア人移民労働者配置会社(P3MI)としての法人設立と事業許可の取得です。P3MIは単なる人材紹介会社ではなく、労働者の海外配置と保護を担う高度に規制された事業であることに注意する必要があります。外資規制があり、内資でも許認可の取得や更新にハードルが設けられています。
本記事では、企業がインドネシアでP3MIを設立する際に押さえておくべき制度の全体像、必要な資本金・保証金、許認可取得の流れ、実務上の注意点を、法令に基づいて整理します。
P3MI(人材紹介会社)とは
P3MIの事業内容と事業コード
P3MIは、インドネシア人労働者を海外に配置(紹介・派遣)する業務を行うため、SIP3MI(P3MI向け事業許可)を取得した人材紹介会社です。正式名称は、「インドネシア人移民労働者配置会社(Perusahaan Penempatan Pekerja Migran Indonesia)」といいます。
P3MIの事業内容
インドネシア人移民労働者の保護に関する2017年法律第18号によると、P3MIが負う法定上の任務および責任は、以下の3点です。
- 就労機会の開拓
- インドネシア人移民労働者の配置
- 自社が配置したインドネシア人移民労働者に関する問題の解決
日本との関係では、インドネシア政府側の制度運用において、特定技能、技人国、その他の在留資格で就労するインドネシア人の送り出し機関としてP3MIが関与します。特定技能外国人を雇用したい日本企業にとって、P3MIを使うことは、もっとも現実的で便利な選択肢となっています。
インドネシアから日本への人材紹介ビジネスにおける主要プレーヤーとしては、職業訓練機関(LPK)や、技能実習生の送り出し機関(SO)もあります。それぞれ別の事業ですが、LPKおよびSOとして事業を行う法人がP3MIの事業許可を追加で取得し、人材育成から紹介・フォローまでを行うケースもあります。
KBLI(事業コード)
インドネシアでは法人設立の際、または既存の法人が事業を追加する際は、事業内容に合ったKBLI(事業コード)を取得する必要があります。P3MIのKBLIは、「78102(海外への労働者の選考および配置活動)」です。
外資(外国資本)によるP3MI設立
P3MIはインドネシアにとって特に重要かつリスクの高い事業者であるため、外資による設立は現状では許可されていません。内資企業であっても、「人材の海外派遣」と「移民労働者の保護」を行うP3MIは「高リスク事業」に分類されており、その性質上、行政監督が強い事業です。
一方、技能実習生の送り出しを手掛けるSOは、外資の参入が可能です。SOになるにはまずLPKとしての資格を取る必要があります。興味がある方は、「インドネシアで外資LPK(職業訓練機関)の法人を設立する方法」をご覧ください。
なお、「本当に外資はP3MIを設立できないのか」「インドネシアには外資P3MIは存在しないのか」と問われると、結論としては存在しています。公の文章で説明するのは非常に難しいため、外資P3MIについて詳しい話をお聞きになりたい方は、こちらから一度弊社までお問い合わせください。
事業許可「SIP3MI」とは
SIP3MIとは、P3MIとして事業を行うために必要な、「大臣による書面の事業許可」です。SIP3MIの主な特徴は以下のとおりです。
- 譲渡・移転(名義・主体の移転)不可
- 有効期間は5年間
- 更新には厳格な要件あり
SIP3MIは、事業許認可システム「OSS」で発行(表示)され、労働省の審査を経て有効化されます。
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法人設立からP3MI認可取得まで
P3MI認可取得までの流れ
P3MIとして事業を行うためには、以下の流れを踏み、SIP3MIを取得する必要があります。
- 法人(株式会社)を設立
- OSSにてNIBを取得
- SIAPkerja経由でSIP3MIを申請
- コミットメント(条件付承認)の履行
- 大臣によるSIP3MIの有効化
SIP3MI申請プロセスと所要日数
P3MIの設立などについて定めた2019年労働大臣規則によると、OSSシステムを利用したSIP3MIの申請から有効化まで(上記3~5)は、以下のプロセスで実施されます。
①企業がOSSを通じてSIP3MIの申請
分野によってはNIBの取得をもって事業を開始できますが、P3MIについては続きの手続きが必要です。
②OSSが企業のコミットメント履行を前提にSIP3MIを発行(表示)
企業が申請すると、OSSがSIP3MIを「条件付き仮発行」します。
③企業がSIAPkerjaでコミットメントを履行:5営業日以内
SIAPkerjaは、労働省が運用するコミットメント履行のためのポータルで、NIBを使ってログインできます。「コミットメント」とは、要求される追加書類の提出など、事業許可取得のための事業者側の責務を指します。またこの段階で、保証金を預託します。
【主な追加書類】
- 払込資本金の保有証明
- 事務所の所有証明または最低3年間の賃貸契約書(公証人による合法化済み)
- 5年間の賃貸契約書を求められるケースもあります
- 承認済みの会社組織図
- 3年間のP3MI業務計画
- 遵守誓約書およびその他の法的書類
④労働省が書類を確認:2営業日以内
書類の修正や追加を求められた場合は対応します。
⑤労働省が適格性評価・現地確認を実施:4営業日以内
書類が完備と判断されると、原則として労働省による現地確認が実施されます。SIP3MIの審査および現地確認は、インドネシア労働省においてP3MIを所管する部署の局長(Direktur Jenderal)が担当します。
⑥労働省がOSS機関に通知→通知に基づきSIP3MIが有効化:5営業日以内
すべての「コミットメント」の確認が完了し、事業が適切と認められると、労働省の担当者(局長)がOSSにその旨を通知します。すると、OSSが仮発行していたSIP3MIが有効になります。
条文で規定される所要日数によると、コミットメント履行後、書類確認・適格性評価・現地確認を経て、大臣がSIP3MIを有効化するまでの期間は、ほぼ滞りなく進んだ場合で、2~3週間程度が見込まれます。
ただし、書類や現地の準備に不備がなくても、システムエラーやシステム改定に伴う追加資料の要求などにより、通常以上に時間がかかるケースもあります。スケジュールには余裕をもって準備を進めましょう。
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P3MIの法人を設立後、支店の設立も可能ですか?
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P3MIは支店を持つこともできます。支店の活動はすべて本社責任となります。また、支店が所在する州政府への登録が必要です。
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インドネシアから日本への送り出しビジネスについてまとめた資料はありますか?
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こちらから資料を無料でダウンロードできます。
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P3MI(人材紹介会社)の法人設立要件
資本金・保証金要件
払込資本金
2017年法律第18号では、P3MIの払込資本金要件は、「会社設立証書に記載された払込資本金を有し、その額が最低50億ルピア(約4,700万円)であること」と定められています。
この資本金は、一般的にはまず、取引保全(エクスロー)口座やいずれかの発起人の口座または共同口座などへ入金します。その払込票か、発起人と取締役が作成した「資本金を払い込んだ旨の宣誓書」を貼付してSKを申請し、法人口座の開設後に資本金を移します。
保証金(定期預金)
P3MIの設立にあたっては、さらに、「政府系銀行に対し、最低15億ルピア(約1,410万円)を定期預金の形で預託すること」という「保証金要件」もあります。
保証金はSIAPKerjaでコミットメントを履行する際にまず会社名義で受託し、SIP3MIを受領する際に、これを「大臣名義」の原本に変更して、労働省の担当局長に提出します。
保証金は「P3MIが本来負うべき義務を果たさない場合に、その代わりに労働者側を保護するための最後の安全装置」です。この保証金は、事業継続中、緊急事態が発生した場合の対処に充てられます。
【補足】
本記事の円表記は、2026年1月14日のレート(1ルピア=0.0094円)で換算したものです。
業務計画・設備要件
P3MI特有の必要書類・要件を紹介します。
業務計画
2017年法律第18号および2019年労働大臣規則第10号によると、P3MIの設立にあたっては、少なくとも3年間の「インドネシア人移民労働者の配置および保護に関する業務計画」を提出する必要があります。
業務計画には、以下を含みます。
- 就労機会の見通し
- 国別・年別配置目標
- 問題解決策
事務所の施設・設備
2019年労働大臣規則は、P3MIが最低限備えておくべき施設・設備として、以下のものを挙げています。
- 労働安全衛生の標準設備
- 取締役・監査役・職員用の執務室
- 礼拝室
- トイレ
- 応接室 / 待合室・会議室
- 四輪車用駐車場
- 交通手段
- 事務機器
- P3MIの組織図掲示板
- 1m×1.5mの社名看板(事務所前)
ISO 9001認証の取得義務
P3MIには、「SIP3MI取得後1年以内にISO 9001認証を取得する」義務があります。そのため、P3MI事業者は品質マネジメントシステム(QMS)を構築し、第三者認証機関(Certification Body, CB)に申請を行う必要があります。
自社で完結させるには負担が大きすぎると考えられる場合は、法律事務所などのISO 9001認証取得支援サービスを利用して手続きを進める選択肢もあります。
ISO 9001認証の取得が必須であることからは、P3MIが人命・権利・国家責任が関係する分野であることと、その事業の公共性の高さから、特に組織としての管理能力・統制能力が重要視されていることがわかります。
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最低払込資本金や保証金を規定通り収められれば、P3MIの法人を設立できますか?
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P3MIの事業許可を取得するには、資本金や保証金以外にも、適切な業務計画や十分な施設・設備といった要件があります。したがって、業務計画の実現性が低い、施設・設備不足、誓約内容違反などがあると、事業許可が下りない可能性があります。
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P3MIの保証金はどのような場合に使われるのですか?
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P3MIの保証金が使われる場面としては、P3MIと労働者(候補者)との間で紛争・争議が発生し、解決費用が必要な場合や、SIP3MIが取消・失効・更新されなかった後に、未解決の問題が残っている場合で、P3MIが自力で解決できないケースが挙げられます。
このようなケースでは、労働省の担当局長の申請と労働大臣の承認により、保証金が使用されます。
P3MI(人材紹介会社)の法人設立にあたっての注意点
SIP3MIの有効期間と更新条件
前述の通り、SIP3MIは5年間有効です。事業を継続させる場合は、5年ごとに更新する必要があり、更新には、配置計画の75%以上の実施、無損失決算、業務停止処分なしなどの要件を満たしている必要があります。
つまり、P3MIの設立を考える場合、その継続性についてもよく検討することが重要です。
保証金の返還と事業許可取り消し後の責任
労働大臣規則によると、15億ルピアの保証金は、以下の場合に返還されます。
- SIP3MIの有効期間が満了し、かつ更新されなかった場合
- SIP3MIが取り消された場合
- SIP3MIの更新申請が却下された場合
保証金は、以上のような場合で、「すでに配置されたインドネシア人移民労働者の雇用契約がすべて終了した後」に返還申請を行えます。SIP3MIが取り消された場合でも、すでに海外にいる労働者に対する責任が免除されないことは、重要な注意点です。
保証金の充足要件
また、事業が継続する限りは15億ルピア以上の保証金をキープしておく必要があります。
P3MIが適切に事業を行い、問題が発生しても自社で誠実に対応できる限り、保証金は使われません。
ただし、何らかの問題対応のため保証金が使われて一時的に不足した場合には、15億ルピア以上になるよう、その銀行口座に追加でお金を預けます。追加の預け入れを行わない場合には、行政処分の対象となります。
- 参考:DATABASE PERATURAN
「Undang-undang (UU) No. 18 Tahun 2017」
「Peraturan Menteri Ketenagakerjaan Republik Indonesia Nomor 10 Tahun 2019」
映像で観るインドネシアのP3MI設立
日本語・日本文化研修プログラムの選考会

P3MIである「PT OHM」とLPK兼SOである「LPK SO OHM」から成るOHMグループは、2025年5月、バンドン県人材事務所と共同で、日本語・日本文化研修共同プログラムの選考を実施しました。
この選考プロセスでは、面接、日本語テスト、色覚検査などが実施され、242名の応募者の中から、90名が選考されました。
選考に合格した参加者には、寮や1日3食の食事を備えた日本語・日本文化研修プログラムが提供されます。また、PT OHMから、日本で就労する機会や、日本留学のための奨学金を受け取る機会が得られる可能性もあるとされています。
P3MIフォーラム

2025年2月、30社のP3MIが集まるフォーラムに、インドネシア移民労働者保護担当副大臣兼BP2MI(インドネシア移民労働者保護庁)副長官であるChristina Aryani(クリスティナ・アルヤニ)氏が出席しました。
このイベントでは、各P3MIの代表者らが移民労働者の海外への紹介において直面する課題について意見を交わしたり、副大臣に要望を出したりしました。
外貨獲得のためにも大きな役割を果たす移民労働者の紹介を担うP3MIは、インドネシア移民省の「戦略的パートナー」と位置付けられます。
公正で人道的な移民労働者保護システムの構築、規則順守、責任あるサービス提供のため、地域のP3MI関係者を集めた会合、研修、意見交換会などが、各地で実施されています。
取得予定のビザについて、以下から詳しい情報を検索できます。



P3MI設立で押さえるべきポイント
P3MI設立のハードルは、決して低くありません。P3MIは移民労働者の海外配置と保護を担う公共性の高い事業であり、最低払込資本金50億ルピアや15億ルピアの保証金、厳格な業務計画・設備要件が法令で定められています。また、SIP3MIの取得後もISO 9001認証の取得義務や、資格更新要件への対応が求められます。
P3MIの設立を検討する際は、単なる法人設立ではなく、長期的なコンプライアンス体制と事業運営を前提に、制度を正しく理解した上で準備を進めることが大切です。








