インドネシアのオンライン事業許認可システム「OSS」とは?

公開
2025/10/31
更新
2025/11/11
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インドネシアでは、企業が事業を開始する際の行政手続きを効率化するため、2018年に「OSS(Online Single Submission)」システムが導入されました。従来は省庁や地方機関ごとに許可を個別申請する必要があり、時間と労力を要していましたが、現在はすべての手続きがオンラインで一元管理されています。

本記事では、OSSの仕組み、申請の流れ、そして新システムOSS-RBAの特徴やメリットを解説します。

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インドネシアのOSSシステムとは

OSSの概要と導入の経緯

2018年に導入されたインドネシアのOSS(Online Single Submission:オンライン事業許認可システム)は、企業が事業活動を開始・運営する際に必要な許可をオンラインで一元的に申請できる仕組みです。OSSは、事業許認可を従来の複雑な手続きから、電子的に迅速・簡素化することを目的とするシステムです。運用は主に投資・下流産業省が担い、各省庁・地方政府とも電子的に連携しています。

2021年には、事業リスクに応じた段階的な許可制度を導入した新システムOSS-RBA(Online Single Submission Risk Based Approach)の運用が始まりました。リスクの高低を問わずすべての企業が多くの許可を個別に取得する必要があった従来のシステムから、リスクに応じて必要な許認可を取得するシステムに変更することにより、低リスク事業の手続きが大幅に簡素化されています。

法人設立からOSSでの事業許可取得まで

OSSは法人設立後の事業許可取得の際に使用します。法人設立からの流れは以下の通りです。

  1. 法人設立(定款作成・公証)
  2. 法務人権省での承認(法人設立承認書「SK Kemenkumham」発行)
  3. OSSでの登録・事業基本番号(NIB)取得

上記の「2」で法人は法的に法人格を獲得します。さらに「3」で事業を行うための行政上の許可を取得します。OSSでの手続きが終わり、許可が下りて初めて、その法人は営業活動を開始できます。

事業基本番号(NIB)とは

NIBは「Nomor Induk Berusaha(事業基本番号)」の略語です。NIBは、いわば「法人の事業活動ID」であり、税務番号(NPWP)や輸入業者認定番号(API)とも連動します。

インドネシアの事業許可申請にOSSが導入されたのはなぜですか。

インドネシア政府が進める行政のデジタル化の一環として、事業許可申請もオンラインシステムになりました。以前は事業許可(Izin Usaha)や営業許可(SIUP)、納税者番号(NPWP)、輸出入番号(API)などを、それぞれ異なる役所に個別に申請する必要がありました。

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OSSでできること

OSSを利用すると、企業はインドネシアでの事業運営に必要な各種許認可手続きをオンラインで完結できます。主な手続き内容は次の通りです。

  • リスクに応じた許可区分による事業基本番号(NIB)や事業許可(PB:Perizinan Berusaha)の発行
  • 事業開始後の追加の許認可の取得・手続き(事業拡張、合併、清算など)
  • 事業場所の適合性(KPPR)、環境許可(PL)、建築許可(PBG/SLF)など基本要件の申請・確認
  • 政府による監督情報の確認・更新・報告手続きなど

これらの申請は、すべて公式サイト上で行うことができます。

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新システムOSS-RBAについて

OSS-RBAのメリット

旧システム(OSS 1.1)と比べ、OSS-RBAでは以下の改善が図られています。

  • リスクベースの判断により、低リスク業種の手続きが大幅に簡素化
  • 申請から許可発行までを完全電子化(一部例外あり)し、政府機関間での連携を自動化
  • 透明性と説明責任の確保(全ての分析プロセスをデータ化)
  • 中小企業にも対応し、投資促進のエコシステムを形成

2025年のシステム変更

OSS-RBAは政府規則第28号(2025年)により一部システム変更が実施されています。主な変更点は以下のとおりです。

  • 立地許可(KKPR)や環境許可(PL)等の「基本要件」を順に満たしてから次工程に進む設計
  • PL区分はOSS上の自己スクリーニング(企業側がシステム上で区分判断を実施)で判定
  • 税務(NPWP)・法人登記の自動連携により、データはOSSで自動照合(不一致がある場合は差し戻し)
  • 当局側が対応を遅らせた場合、一定の要件下で許可が自動発行される可能性あり
  • 苦情申告・監視機能がOSSに統合

申請企業の負担が一律に増えるわけではないものの、他システムとの統合と自己申告の厳密化により、入力精度の担保と工程順守の重要性が高まっています。

リスクレベルとは

事業許可の関係

OSS-RBAの最大の特徴は、事業活動の「リスクレベル」に応じて必要な許可が変わる点です。特にリスクレベルが低い企業の手続きが簡素化されています。4段階のリスク区分は、以下の通りです。

リスク区分  必要な許可主な対象事業例
低リスクNIBのみサービス業、代理業など
中低リスクNIB+標準証明書(自己宣言)飲食業、小売業など
中高リスクNIB+標準証明書(政府等が発行)製造業、小規模工場など
高リスクNIB+事業許可(政府等が発行)採掘業、大規模プラントなど

KBLIコードにおけるリスクレベル

KBLI(Klasifikasi Baku Lapangan Usaha Indonesia)とは、インドネシア政府が定める「標準産業分類コード」で、すべての事業活動はこの分類に基づいて登録されます。OSSシステムでは、申請時に必ずKBLIコードを選択する必要があり、これがリスク分析と許可の基礎情報になります。

OSS-RBAでは2020年版(KBLI 2020)で設定された1,349のKBLIコードを基に、事業分野が1,702に分類されています。

リスクレベルは、各業種の性質・影響度・運営規模に基づいて政府により決められ、OSS上で自動的に表示されます。このリスクレベルには、「健康への影響」、「安全上のリスク」、「環境への影響」、「天然資源の利用・管理」、「その他、特定業種に応じた要素」に関する総合的な評価が反映されています。

OSSシステムでの事業許可申請

事業許可申請の流れ

ここでは、外資系株式会社(PT Penanaman Modal Asing/PT PMA)を想定した一般的な流れを紹介します。

1.OSSサイトでアカウント登録

有効なメールアドレスを使い、ユーザー名・パスワードを作成します。外国人はパスポート番号、インドネシア人は住民登録番号(NIK)が必要です。

2.KBLIコードと投資額を入力

登録する事業活動内容をKBLIコードに基づき選択し、投資額を入力します。KBLIコードによって自動的にリスクレベルが判定されます。

3.事業基本番号(NIB)の発行

入力内容をもとにシステムがNIBを自動発行します。これが法人の事業活動IDとなり、NPWPなどとも連携されます。低リスクの事業者は、NIBの発行と同時に事業を開始できます。中低リスクの事業者は、自己宣言による標準証明を追加します。

4.関連機関への通知と審査

中高・高リスクの事業者の場合、環境、建築、衛生、エネルギーなど所管官庁が必要な許認可を確認・審査します。必要に応じて追加資料の提出が求められます。

5.事業許可(PB)の発行

審査が完了すると、OSSシステムを通じて事業許可(PB:Perizinan Berusaha)が電子発行されます。不備がある場合は修正依頼が届きます。

6.事業開始

PBの発行をもって、中低リスクから高リスクの事業者も正式に事業を開始できます。

外資系株式会社の注意点

外資系株式会社がOSSで事業許可申請を行う際に注意すべき点を紹介します。

KBLIコードの選択を正しく

KBLIコードは、NIB取得の基本となる大切な情報です。これが間違っていると申請が通らなかったり、後々問題が発生したりする可能性があります。自身の事業に最適なKBLIコードが選べているかどうかの確認は、非常に重要です。

住所、資本金、その他データを正しく

当然ながら、申請の過程で入力するデータに間違いがないことも大切です。

PBが本当に発行されたかどうか確認

中低リスク以上の企業の場合、申請後、PBが発行されます。申請内容に不備があり申請が差し戻しになった場合でも連絡が来るので、連絡が来たことをもって「申請が受理された」と判断しないようにしましょう。

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業種ごとのインドネシアでのビジネスの始め方
「インドネシアで送り出しビジネスを始めたい」「インドネシアでネット広告代理店を始めたい」といった業種ごとのビジネスの始め方については下記をご参照ください。

対象企業 インドネシア進出の目的 参考ページ
人材紹介会社 インドネシアから技能実習や特定技能の人材を送り出したい 進出方法はこちら
広告代理店 在インドネシアの日系企業の広告運用案件を獲得したい 進出方法はこちら
Web制作会社 インドネシアでサイト制作やオフショア開発を行いたい 進出方法はこちら

【映像でみる】インドネシアのOSS

OSSシステムでKBLIコードを検索

OSSシステムでKBLIコードを検索

こちらの動画は、OSSでKBLIコードを検索する方法を紹介しています。

まず公式サイトを開き、「INFORMASI(情報)」→「Klasifikasi Baku Lapangan Usaha Indonesia(KBLI)2000」と進むと、事業分野別のKBLI一覧のページに遷移します。このページの検索窓に事業内容を入力すると、候補となるKBLIが表示されます。

動画では例としてKafe(カフェ)と入力。「56303」というKBLIコードが表示されました。事業内容によっては、ここで複数の候補が提示されます。正しいKBLIを選ぶことが、事業許可取得の第一歩になります。

事業許可取得支援イベント

事業許可取得支援イベント

2024年9月、中部ジャワ州Semarang(スマラン)市の投資・ワンストップ統合サービス局は、Boyolali(ボヨラリ)県Randusari(ランドゥサリ)村でOSS-RBAを使用した事業許可取得支援イベントを開催しました。

多くの地方政府が、このように地元の小規模事業者を対象としたNIB取得講座を開催しています。

小規模な個人事業主もNIBを取得する必要がありますか。

小規模個人事業者の場合、NIBがなくても商品の販売やサービスの提供を行うことはできます。一方、正式な許可を得ることで、政府・金融機関・取引先から法的に正式な事業体として扱われ、各種許認可取得や契約の締結がスムーズになるため、ビジネス拡大を目指す場合はNIBを取得するメリットが大きいといえます。

法人設立の概要やステップをまとめた資料などはありますか?

通常はご契約後に詳細な資料を共有していますが、法人設立の概要やステップが分かる簡易版の資料で良ければ、こちらからご確認ください。

インドネシア進出に欠かせないOSS

インドネシアでの法人設立から事業開始までの道のりは、OSSの導入によって飛躍的にスムーズになりました。さらに新システムOSS-RBAの運用開始により、事業活動をリスクレベルに応じて分類し、低リスク事業はNIB発行のみで営業開始できるなど、許認可プロセスが大幅に簡素化されました。

インドネシアでのビジネスを始める際は、OSSシステムの活用が欠かせません。今後、システムや規則の改正がある可能性もあるため、最新情報に注目していきましょう。

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