インドネシアの証書「Akta」とは?目的や種類を解説

公開
2025/10/21
更新
2025/10/22
この記事は約5分59秒で読めます。

インドネシアでは、会社の設立や不動産の売買、融資契約、婚姻・相続といったあらゆる法的手続きに「Akta(アクタ)」と呼ばれる正式な証書が用いられます。

Aktaは、法的事実や契約の成立を公的に証明する書面です。特に公証人(Notaris)や土地証書作成官(PPAT)が作成した公正証書は、裁判においても強い証拠力を持つのが特徴です。

本記事では、Aktaの定義、作成の目的、種類、そして実際に活用される場面を具体例とともに解説します。

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インドネシアの証書「Akta」とは

Aktaの定義

インドネシアの「Akta(アクタ)」とは、法的な事実や行為を証明するために作成される正式な証書を指します。

民法第1867条に基づき、Aktaは「ある出来事を証明する目的で作成され、関係者が署名した文書」と定義されています。Aktaは契約や登記、婚姻、相続など、個人・法人を問わず法的効力を発生させる基礎となる重要な書類であり、インドネシア社会のあらゆる場面で用いられています。

Akta作成の目的と機能

Aktaが作成される主な目的は、法的な証拠を明確に残すことにあります。ある事実を公式に証明する手段として、Aktaは当事者双方に安心をもたらします。裁判などの紛争時にも、Aktaは有力な証拠として機能します。

Aktaには大きく2つの機能があります。

1つ目は、形式的機能です。

法律行為が有効と認められるためには、Aktaという形式を伴うことが必要な場合があります。例えば、請負契約や利息付き貸借契約などがこれに該当します。

2つ目は、証拠機能です。

Aktaは将来の法的紛争において、当事者間の事実関係を証明する確実な書面となります。特にNotaris(ノタリス)と呼ばれる公証人が作成した公正証書は、「完全な証拠(bukti sempurna)」として裁判でも高い効力を持ちます。

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Aktaの種類

インドネシア民法では、Aktaは次の2種類に分類されます。

1.公正証書

Aktaは直訳すると「文書」「証書」という意味です。このうち、法的権限を持つ公務員(主に公証人や土地証書作成官(PPAT)が作成する正式なAktaを「公正証書(Akta Resmi/Akta Otentik)」と呼びます。

公正証書は法律に定められた形式に従い、公務員の面前で署名されるため、非常に高い証拠力を持ちます。裁判においては、原則としてその内容が真実とみなされます。

2.私署証書(私文書)

私署証書(Akta di Bawah Tangan)は、公務員の関与なしに当事者間で作成・署名されたAktaを指します。形式は自由ですが、公正証書に比べて証拠力は弱く、署名の真正が否認されると効力を失う場合があります。

ただし、私署証書も後日公証人による署名認証や登録日付証明を行えば、一定の公的効力を付与することができます。

インドネシアの証書「Akta」を作成するには、必ず公証人(Notaris)などに依頼する必要がありますか。

インドネシアの証書「Akta」には、公証人(Notaris)などの法的権限を持つ公務員の関与が法律で定められているもの(不動産売買、会社設立、担保設定などに関するもの)と、当事者のみで作成できるものがあります。動産売買、短期賃貸、金銭貸借、業務委託、雇用契約などは、通常、当事者間の合意と自由な形式のAktaで契約が成立します。

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Aktaの具体例

会社設立に関わる主なAkta

会社の設立や運営に際しては、以下のようなAktaを作成します。

会社設立証書(Akta Pendirian Perusahaan:定款

会社設立証書には会社名、所在地、目的、資本金、株主、取締役などが明記されます。このAktaが法務人権省の承認を得て初めて、事業体が法人として認められます。

定款変更証書(Akta Perubahan Anggaran Dasar

定款変更を行う場合に必要な公正証書です。

株主総会議事録証書(Akta Risalah RUPS

株主総会の議事を記録する公正証書です。株主による重要な決議事項の法的証拠となります。

融資契約証書(Akta Perjanjian Kredit

銀行や金融機関から資金を借り入れる場合や、設備投資・運転資金・不動産購入のための融資を受ける場合に作成する公正証書です。

債務承認証書(Akta Pengakuan Hutang

債務者が債権者に対して支払義務があることを、正式に認めるための公正証書です。

担保権設定証書(Akta Pemberian Hak Tanggungan)

土地や建物を担保に融資を受ける際に必要な公正証書です。金融機関から融資(特に担保付き融資)を受ける場合、担保の種類に応じて、担保権設定証書や、それに相当する公正証書を作成する必要があります。

不動産取引に関わる主なAkta

不動産の売買や譲渡などの取引でも、Aktaは欠かせません。インドネシアでは、土地・建物に関する契約は原則として土地証書作成官(PPAT)による公正証書で行う必要があります。いずれも公的登録を経て初めて法的効力を持ち、裁判でも強い証拠となります。

売買証書(Akta Jual Beli

不動産の売主と買主の間の売買プロセスを記録する公正証書です。土地または家屋が売主から買主へ移転したことを証明し、名義変更の法的証拠として機能します。

贈与証書(Akta Hibah

不動産、動産、または知的財産などの所有権を、ある個人または団体から別の個人または団体へ、無償かつ自発的に譲渡するための公正証書です。親族間の不動産贈与などに使用されます。

交換契約証書(Akta Tukar Menukar

現金取引を伴わず、二者間で不動産など財産の所有権を相互に移転する交換契約を正式に記録するための公正証書です。

共有権分割証書(Akta Pembagian Hak Bersama

共有財産(共同名義の土地や建物など)の共有権を解消(分割)する際に作成する公正証書です。

賃貸借証書(Akta Sewa Menyewa

長期賃貸契約を正式に記録する場合に作成する公正証書です。不動産または資産の賃貸に関する両当事者の条件、規約、権利、責任を規定します。

個人的な届け出に必要な主なAkta

外国人がインドネシアで生活する中で必要となる個人関係のAktaも多数あります。以下では、在留者が関わる可能性の高い代表的なものを紹介します。

  • 婚姻証書(Akta Perkawinan):婚姻の成立を証明するためのAkta
  • 婚前契約証書(Akta Perjanjian Perkawinan):結婚前に将来の夫婦が財産分離や各種権利について定めるAkta
  • 出生証明書(Akta Kelahiran):出生の事実を正式に記録するためのAkta
  • 死亡証明書(Akta Kematian):死亡の事実を正式に記録するためのAkta
  • 相続権証書(Akta Hak Waris):遺産に関する権利関係を明確にするAkta
  • 離婚証明書(Akta Perceraian):離婚判決確定後に発行されるAkta
  • 委任状証書(Akta Kuasa):不動産取引、銀行手続き、ビザ申請などの際に代理人へ権限を委任するためのAkta

インドネシアで会社を設立するために必要なAktaは何ですか。

インドネシアで会社を設立する際に必ず必要なのは、会社設立証書(Akta Pendirian Perusahaan)です。このAktaをもとに法務人権省に登記申請を行い、承認されることで初めて事業体が法人格を持つことができます。

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合弁会社の設立

インドネシアで合弁会社の設立

2024年10月、インドネシアの国営企業PT Industri Baterai Indonesia(Indonesia Battery Corporation:IBC) と、中国の電気自動車(EV)用バッテリーメーカー CBL International Developmentが、バッテリーセル製造の合弁会社設立証書に調印しました。動画の中盤では、代表者が証書に署名する場面が映されています。

IBCは、主にバッテリー材料の製造、バッテリーセルの生産、バッテリーのリサイクルを手がけています。CBLとの協業を通じて、ニッケルの採掘・精錬から下流工程までをつなぐEVバッテリーの一貫したサプライチェーンを構築する考えです。

世界最大級のニッケル埋蔵量を持つインドネシアは、この取り組みによりEVバッテリー供給網における国際的地位の強化を目指しています。

住居購入の際のローン契約

住居購入の際のローン契約

こちらの動画は、「銀行契約式(Akad Bank)」の様子です。銀行契約式は銀行ローン契約を正式に締結するための最終手続きで、動画では公証人、住居の販売者、購入者、銀行の担当者が参加し、「融資契約証書(Akta Perjanjian Kredit)」などの書類への署名(調印)が行われています。

銀行契約式の最後には、銀行の担当者または住居の販売者が購入者に、融資契約証書を含む各種契約書・証書のセットを手渡します。「住宅購入契約が正式に成立した瞬間」を象徴するシーンです。

適切なAktaで正しく手続きを

Aktaは、インドネシアにおける法的行為の「証拠」として機能する極めて重要な文書です。企業活動の基盤である会社設立証書や不動産取引の売買証書から、個人の人生に関わる婚姻・出生・相続まで、あらゆる局面でAktaが必要になります。

インドネシアで事業を行う企業にとって、Aktaの作成とその際の公証人(Notaris)や土地証書作成官(PPAT)との連携は欠かせません。また外国人在留者にとっても、これらのAktaを正しく理解し、適切に公証・登録することが、各種手続きを円滑にし、現地生活を安心できるものにします。

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