インドネシアの決定書「SK」とは?役割や種類を解説
- 公開
- 2025/10/22
- 更新
- 2025/10/23
- この記事は約4分1秒で読めます。
インドネシアで仕事をしていると、社内文書や行政手続きの中で頻繁に目にする「SK(エス・カー)」という略語。正式にはSurat Keputusanといい、日本語では「決定書」「決議書」にあたります。役職の任命から業務委任、規則制定まで、組織のあらゆる重要な意思決定はこの文書によって正式に確定されます。
インドネシアでの組織運営に際しては、SKがなければ「決定が成立していない」と見なされることもあります。本記事では、ビジネスに関わるうえで知っておきたいSKの基本と種類をわかりやすく解説します。
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インドネシアの決定書「SK」とは
SKとは
インドネシアのビジネス現場や行政手続きでよく登場する「SK(Surat Keputusan)」は、日本語に訳すと「決定書」「決議書」といった意味を持つ公式文書です。インドネシア語では「エス・カー」と発音します。政府機関、企業、学校、財団など、あらゆる組織で用いられており、特定の事項に関する正式な決定を文書化するための手段として機能します。
SKは、権限を持つ職員や機関が自ら発行する文書で、法的効力を持たせるためにNotaris(公証人)の関与は必要ありません。ただし、SKの内容が会社法上の登記や定款変更など外部の法的手続きに関係する場合には、別途、公証人によって作成された公正証書「Akta(アクタ)」が必要となります。
SKの形式はある程度統一されており、組織のレターヘッド、文書番号、発行日、決定内容、そして権限者の署名と印章などが記載されます。
SKの役割と機能
SKの基本的な役割は、組織内で行われた決定を明文化し、その決定に法的な確実性を与えることです。口頭やメールでの通知では曖昧になりがちな決定事項を、公式文書として記録・共有することで、関係者全員が内容を正確に把握できるようになります。
インドネシアの行政や企業では、「決定は文書化されて初めて有効」とみなされる傾向があり、SKの存在が極めて重要です。例えば、役職の任命、部署の設立、業務委任、方針の改定など、あらゆる組織的な意思決定についてSKが発行されます。
もう一つの重要な役割として、内部統制の透明性向上が挙げられます。文書番号や発行日が明記されることで、どの時点で誰がどのような決定を行ったのかを後から検証することができます。この仕組みは、監査やコンプライアンスの観点からも非常に重要です。
さらにSKは、組織間・機関間での正当な証拠書類としても活用されます。例えば、ある人が外部の組織に対し「所属組織においてあるプロジェクトのリーダーに任命されている」ことを証明する際、SKがその根拠となります。このように、SKは単なる内部文書ではなく、外部への説明責任を果たす手段としても役立つのです。
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インドネシアの法人設立承認書「SK Kemenkumham」

具体的なSKの例として、インドネシアで法人を設立する際に必要な「会社設立についての法務人権大臣承認書(SK Kemenkumham)」を紹介します。
「SK Kemenkumham」とは、「インドネシア法務人権大臣(Menteri Hukum dan Hak Asasi Manusia Republik Indonesia)による決定書(Surat Keputusan)」の略称です。さまざまな種類がありますが、法人設立の文脈では、このSKは法人設立承認書(SK Pengesahan)のことを指します。
インドネシアで法人を設立する際は、公証人が作成した設立証書/定款(Akta Pendirian)などを法務人権省に提出します。その後、法務人権省から発行されるのが、この法人設立承認書です。
法人設立承認書があることで、その事業体は法人としての法的正当性を証明できます。また、事業許可など各種許認可申請、銀行口座の開設、法人NPWP(納税者番号)の取得などが可能になります。
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主なSKの種類
SKには、組織の性質や決定内容に応じて、いくつかの種類があります。以下に、企業などでよく作成されるSKの例を紹介します。
任命決定書(SK Pengangkatan)
組織内での人事異動や人員配置に関して公式な根拠を与える文書です。社員の昇進、委員会メンバーの任命、学校での教員配置などがこれにあたります。「異動決定書」「昇進決定書」などに細分化できます。
解任決定書(SK Pemberhentian)
特定の役職や職務を終了させる決定を示す文書です。任期満了、組織改編、職務不履行による解任など、理由を明記したうえで発行されます。解任に関するトラブル防止のため、明確な法的根拠を残す役割を果たします。
広義には、任命や解任に関するSKをまとめて「従業員任命決定書(Surat Keputusan Karyawan)」などと呼ぶこともあります。
業務決定書(SK Tugas)
特定の業務や任務を個人またはチームに割り当てる際に発行される文書です。例えば、新規プロジェクトチームの設置やイベント委員会の結成などに使われます。プロジェクトの開始を正式に承認し、関係者の責任範囲を明確にします。
規定決定書(SK Peraturan)
組織内の方針や規則を定めるための文書です。勤務時間、休暇制度、報酬基準など、運営上のルールを明文化する際に用いられます。類似のものとして、組織や機関のビジョンとミッションを定める際に作成する、「ビジョン・ミッション決定書(SK Visi Misi)」などがあります。
映像でみるインドネシアの決定書「SK」
公務員の任命決定書(SK)の授与式

2025年4月、南カリマンタン州の国家公務員候補(CPNS)および契約公務員(PPPK)、合計1,234名に対する任命決定書(SK)の授与式が実施されました。式典では国歌斉唱や宣誓が行われ、州政府事務局長代行や副知事が「あなた方は何千人のなかの勝者となりました」「成功を祈ります」などと参加者を激励しました。
なお、公務員候補者(CPNS)とは、公務員(PNS)採用選考プロセスに合格したものの、1年間の試用期間中である人を指します。試用期間を終え、所定の要件を満たした後、正式に公務員として採用されます。
担任教師任命のSK

教師の担当クラスや職務の割り当てを通知する際には、SKが発行されるのが一般的です。こちらの動画は、ある小学校の教師が、学校から受け取った任命決定書(SK)を開封する様子です。手紙の上部にヘッダー、下部に署名・スタンプが見えます。
動画では、「私たちはまたクラス担任になる機会を得ました。低学年、1・2年生の担任です」と紹介されています。動画の概要欄に「surat cinta dari sekolah(学校からの愛の手紙)」とあることから、このSKが、彼女たちが待ち望んだものだということがわかります。
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円滑な組織運営に欠かせないSK
SK(決定書)は、インドネシアの行政・企業活動における公式な意思決定の記録であり、組織運営の透明性と法的確実性を支える重要な文書です。
日本人にとっては少し馴染みの薄い制度ですが、インドネシアではSKが存在しない限り「決定が成立していない」と見なされる場合も少なくありません。したがって、現地でビジネスを行う際には、SKの形式や意義を理解しておくことが、組織運営や契約実務を円滑に進めるうえで欠かせないポイントとなります。
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